1994年、世界で初めて化学兵器が使用されたテロ「松本サリン事件」を映画化。原作は平石耕一の『NEWS NEWS』である。監督&脚本は熊井啓。制作協力として「松本サリン事件」で冤罪被害者となられた河野義行さんが名を連ねている。2000年、日本映画(製作:日活ほか)。カラー・ビスタ。DTSステレオ。上映時間119分。2001年、全国松竹・東急洋画系にて公開。チェーン・マスターは渋谷東急3。配給:日活。興行収入成績:2億5000万円。
1995年、日本の東京において、化学兵器「サリン」を用いたオウム真理教によるテロ「地下鉄サリン事件」が発生する。犯行後、逮捕された教団幹部が前年6月27日に発生した「松本サリン事件」もオウム真理教による犯行であると自供した。「松本サリン事件」当時、第一通報者であり、自身も被害者であった神部俊夫(寺尾聰)の「容疑」は、ようやく晴らされたのである。神部は自分の妻(二木てるみ)が植物状態にされたのにも関わらず、警察から犯人だと決めつけられ、警察に呼応したマスコミによって「冤罪」の餌食にされたのだ。高校の放送部に籍を置く女子高生・島尾エミ(遠野凪子)は、この冤罪事件の真相を知るべくドキュメンタリー・ビデオの制作を思いつく。早速、あちこちの放送局に取材を申し込むが、全て断られてしまった。唯一、取材を許可してくれたのはテレビ信州だけ。エミの取材に応じたのはテレビ信州の報道番組「エクスプレス」を担当する部長の笹野誠(中井貴一)、アンカーマンの花沢圭子(細川直美)、浅川浩司(北村有起哉)、野田太郎(加藤隆之)の4人である。笹野は事件を担当した吉田警部(石橋蓮司)に取材した際、彼から「神部さんは無罪だと上司である鈴木捜査一課長(梅野泰靖)に主張したが、彼を犯人だと決めつけていた警察上層部によって黙殺された」と聞かされたこと、そして、神部さんの弁護士である永田威雄(北村和夫)氏に協力を得て制作した神部さんをシロだとする特別番組の放送を巡って、テレビ信州の小田営業部長(平田満)やスポンサーからの突き上げを受けたことをエミに語った。野田は、事件直後の病院で大出女医(根岸季衣)から毒ガスが有機リン系であると取材していながら神部さん宅から発見された青酸カリにとらわれてしまったことや、藤島教授(藤村俊二)の「サリンは素人にもできる。バケツさえあればOK」という言葉を鵜呑みにして放送し、後日、古屋教授(岩崎加根子)から「サリン生成には特別な施設を要し、簡単には出来ない」と指摘されていたこと告白する……。
マスコミの暴力を扱った『破線のマリス』とテーマが重なっていて、とても興味深かった。就職活動でマスコミを志望する人は多いが、せめて、この2作は観ておいて欲しい。必ず得るところがあるはずだ。ところで、当時、マスコミが河野さんを犯人扱いしたことは今でも記憶に新しい。新聞は後日、謝罪文を出すなどしていたが、テレビ局は謝罪をしたのだろうか?
さて、演出は正直言って古臭い感じ。しかし、その古臭い演出が映画にリアリティーを与えている。それにしても、医師から「神部さんに対する事情聴取は2時間以内にせよ」と診断書で指示を受けておきながら7時間も取り調べを行った警察には憤りを感じた。日本の警察は、いまだ自白偏重の傾向があり、それが冤罪の温床となっているのが分からないのだろうか。自白に頼らず、物的証拠を重視する捜査がスタンダードになるよう捜査技術のレベルアップに努めるべきだ。また、「松本サリン事件」での虚報の多くが、東京にある警察庁のリークを裏も取らずに配信したマスコミによるものだったことにも注目してもらいたい。「記者クラブ」などという税金で賄われた部屋で「お上」から与えられた情報を垂れ流しにした結果、マスコミは冤罪の片棒を担ぐことになった。そのことを私たちは忘れてはならない。ジャーナリストを気取るなら「記者クラブ」に頼ってんじゃねぇ(怒)。
ところで、「委員長タイプ(笑)」の女子高生、島尾エミを演じる遠野凪子が、とても良かった。彼女の純粋な熱意が、大人たちの「タテマエ」を崩していく過程は観ていてグッとくるものがある(涙)。特に、北村有起哉が演じる浅川浩司との絡みは印象深かった。オススメ作である。
●おすすめ対象
マスコミ志望者は必ず観るべし!!
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●一言で言えば……
これが「松本サリン事件」の真実だ!!