■いのちの地球 ダイオキシンの夏
2001年7月21日 豊島公会堂(池袋)

 1976年にイタリアのセベソで起きたダイオキシン汚染をアニメ映画化。原作:蓮見けい『ダイオキシンが降った街』。脚本:小出一巳&末永光代。監督:出崎哲。2001年、日本映画(製作:「ダイオキシン」製作委員会)。カラー・スタンダード。モノラル。上映時間83分。シネ・リーブル池袋ほか全国順次公開。
 1976年、北イタリアの街セベソが舞台。11歳の誕生日を迎えた少女ジュリア(声:佐久間信子)は、陸上クラブの仲間であるルチオ(声:本田貴子)、エンリコ(声:折笠愛)、アンジェロ(声:佐々木静香)、マリア(声:白鳥由里)を自宅の庭に招き誕生パーティーを開いていた。その時、イクメサ化学工場で事故が発生。爆発音と共に、どす黒い雲が発生しセベソの街に白い粉を降らせた。イクメサ化学工場の幹部から「白い粉は工場で生産しているトリクロロフェノールで害はない」との説明を受けたエンリコの父であるカーロ市長(声:玄田哲章)は安堵するが、幹部たちの言葉に疑問を持つ。やがて、白い粉が降った街では頭痛や吐き気などの症状を訴える人達が続出。妊娠中であったジュリアの姉アンナ(声:水谷優子)も倒れてしまった。また、小動物が次々に死んでいくという事態に至り、マリアの飼い犬も様子がおかしくなる。アンナの夫でルチオの兄でもある獣医のアントニオ(声:室園丈裕)に診せに行くが原因も判らぬまま安楽死せざるを得なかった。ジュリアたちは、この奇怪な現象の原因が化学工場の事故にあるのではないかと考え、工場に忍び込む。そこで、イクメサ工場の若い工員ヴィーロ(声:松本大)から工場の安全対策のズサンさを知らされたジュリアたちは、工場事故を取材に来た日本人ジャーナリスト安藤史郎(声:井上和彦)と協力して原因究明に努める。ついにミラノのマレーラ生物医学博士によって白い粉の正体が「ダイオキシン」と判明するが、それは長い悪夢の始まりに過ぎなかった。ジュリアの弟マルコ(声:小林沙苗)を始め多くの子供たちにクロルアクネと呼ばれる塩素が原因の黒いニキビが発生。ジュリアの家は汚染地域とされ、ジュリアの父ジーノ(声:楠見尚巳)は泣く泣く家を離れた。そして、胎児に奇形が頻発すると聞いたアンナはカトリックではタブーとされている中絶をするかどうかで思い悩む。そんな彼女を励ましたのは、自らもダイオキシン被害のために病床にあったアンナの隣に住む老婦人ソニア(声:倍賞千恵子)であった。
 「ダイオキシン」。かつて、ベトナム戦争でアメリカ軍が使用した「枯葉剤」に、この物質が含まれていた。結果、ベトナム人やベトナム帰還兵であるアメリカ人や韓国人にガンや腫瘍が多発。その子供たちに奇形が頻発するという最悪の事態を招いた。だが、安定性が強く無味無臭である「ダイオキシン」は「プルトニウム」並に厄介な代物だということは意外と知られていない。この映画はヨーロッパで「化学のヒロシマ」と呼ばれた「セベソ事件」を取り上げた実話モノである。
 さて、実話モノなだけに物語は大変興味深いものであった。さらに、鳥や小動物の遺体が累々と道路に転がっている場面は衝撃的。しかし、アニメとは言え、子供に観せたらトラウマになるのでは……。また、クライマックスである加害企業「ホフマン・ラ・ロッシュ」の記者会見シーンは、声優陣の演技に迫力があり、感動さえ覚えた。
 アニメーションのレベルがTVアニメ並なのが辛いが、それでも83分間、退屈せずに観ることが出来たのは素材に魅力があったからだろう。大金をかけ、技術あるスタッフを集めて丁寧に作れば傑作になり得ただけに勿体無い。

●おすすめ対象
 環境問題に関心の高い人に観てもらいたい。

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●一言で言えば……
 ダイオキシン版『沈黙の春』!?


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