第58回ヴェネチア映画祭クロージング作品。第26回トロント映画祭招待作品。原題『FROM HELL』。原作:アラン・ムーア&エディ・キャンベル。脚本:テリー・ヘイズ&ラファエル・イグレシアス。監督:ヒューズ兄弟。2001年、アメリカ映画(製作:20世紀フォックス映画ほか)。カラー・シネスコ。ドルビー・デジタル&DTS&SDDS。上映時間124分。2002年1月19日より東宝洋画系にて公開。チェーン・マスターは日比谷映画(現:廃館)。配給:20世紀フォックス映画。
1888年の大英帝国、ロンドンが舞台。メアリ・ケリー(ヘザー・グラハム)は、ホワイトチャペル通りをナワバリにする売春婦である。だが、ヤクザのマックイーン(デビッド・スコーフィールド)と、その手下ゴーディ(ラルフ・イネソン)から用心棒代を支払うよう強硬に迫られていた。メアリたちが「ミカジメ料」の工面に苦心している所へ、かつての売春婦仲間アン・クルーク(ジョアンナ・ペイジ)が、娘アリス(ポッピー・ロジャース)を連れて現れる。アンは、自称「絵描き」の金持ちアルバート(マーク・デクスター)とカトリックの教会で結婚していた。アンはアルバートに頼んで金を作ると約束して去る。しかし、アンとアルバートは何者かによって拉致されてしまった。そのことを知ったメアリたちは困惑するが、とにかく、自分たちで金を稼ごうと街へ繰り出す。だが、次の日、メアリの売春婦仲間ポリー(アナベラ・アプション)の惨殺死体が発見され、フレッド・アバーライン警部(ジョニー・デップ)は、アヘン窟で、その光景を見ていた。正確に言うとアヘンによる幻覚なのだが、彼の幻覚は事件解決の糸口になることで知られている。アバーラインの良き部下ピーター・ゴットレイ巡査部長(ロビー・コルトレーン)は、警部をアヘン窟まで迎えにいった。売春婦ポリー殺しの捜査をアバーラインが担当する事になったからである。早速、遺体を検分した彼は、犯人が解剖学に精通した上流階級の人間だと推理した。しかし、警視総監チャールズ・ウォーレン卿(イアン・リチャードソン)は、事件の猟奇性を知り、犯人はインディアンかユダヤ人だと主張する。だが、総監の言うことを無視してアバーラインは、外科学会の会合に赴いた。そこで、アバーラインはフェラル医師(ポール・リス)に捜査の協力を依頼する。学会の重鎮ウィリアム・ガル卿(イアン・ホルム)の協力の下、捜査を継続することになったアバーライン。しかし、殺人鬼の凶行は止まらなかった。メアリの売春婦仲間ダーク・アニーことアニー・チャップマン(カトリン・カートリッジ)は、御者ネットリー(ジェイソン・フレミング)から、彼の主人の「相手」を頼まれる。その翌日、彼女は酷たらしい状態になって発見された。事件現場に残された「儀式の跡」に注目したアバーラインは、秘密結社「フリーメーソン」に詳しい者の犯行だと推理する。捜査線上に浮かんできたのは公安部の部長であるベン・キドニー(テレンス・ハーベイ)。だが、明確な証拠が掴めぬうちに、レズの気がある売春婦リズ・ストライド(スーザン・リンチ)や、売春婦ケイト・エドウズ(レスリー・シャープ)が殺害されていく。メアリの仲間ばかり殺害されていることから犯人の次の標的は彼女だと考えたアバーライン。彼はメアリに、どこかへ身を隠すよう指示する。ベルギー娘アダ(エステール・スコーニック)と隠れ家に身を潜めることにしたメアリ。一方、アバーラインは、この殺人事件にヴィクトリア女王(リズ・モスクロップ)が、関わっていることを知る……。
字幕で「butcher」を「屠畜人(「とちくにん」と読むのか?)」と訳していたが、これは「屠殺人(とさつにん)」のことだろうか?……素直に「肉屋」と訳したほうが、文字数的にも「しっくり」くると思うのだが(失笑)。どうでしょう?本作の日本語字幕を担当した石田泰子さん(ニヤリ)?
……と、いきなり字幕に文句をつけてしまった(苦笑)。さて、ジョニー・デップが捜査官に扮したホラー物と言えば『スリーピー・ホロウ』が思い出される。しかし、あちらが伝奇的なストーリーだったのに対して、こちらはリアル指向。犠牲者から引きずり出される臓物等の出来は「素晴らしい!」の一言であった(オエッ!……エライもん見ちゃったな〜って感じ)。また、通好みな脚本は、観客に近代英国に対する「ある程度」の知識を要求するので、気軽に観ることが出来ない作品に仕上がっている。近代英国史が苦手な人は、かなりの予習が必要かもしれない。せめて、イギリスが「カトリック」では無く「英国国教会」であることくらいは知っていて欲しいものだ(このレベルでつまづいているようでは、この作品の面白さの半分も体験できないので、そのつもりで)。
ところで、アヘン中毒のカリスマ的「探偵」と言えば、ミステリー・ファンなら「ピン」と来るだろう。そう。シャーロック・ホームズである。ホームズを産み出した小説家コナン・ドイルが活躍したのは「ジャック・ザ・リパー」こと「切り裂きジャック」が暗躍した時代と重なる(ホームズの部屋の壁に「V.R」と弾痕で書かれているのは有名。「V.R」とは「ヴィクトリア女王」のイニシャル)。勘の良い人は、もう気付いているかもしれないが、この物語、架空の人物である「ホームズ」と実在の人物「切り裂きジャック」を「競演」させようとしたのである(もちろん、版権等の問題でホームズを登場させるのは出来ないので「アバーライン警部」という良く似たキャラクターを設定しているのだ)。まさに、ミステリー・マニアにとっては「ドリーム・マッチ(夢の対決)」と言えるだろう!!
●おすすめ対象
R−15指定。15歳未満(中学生以下)は鑑賞禁止。近代英国に対するヲタク的造詣がないと楽しめない。
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●一言で言えば……
シャーロック・ホームズVS切り裂きジャック!!