シリーズ通算24作目。監督は市川崑の下で助監督を務めてきた手塚昌明。特殊技術は『ゴジラ2000』に引き続き鈴木健二が担当。脚本:柏原寛司&三村渉。音楽:大島ミチル。2000年、日本映画(製作:東宝映画)。カラー・シネスコ。ドルビー・デジタル。上映時間105分。2000年12月16日より全国東宝邦画系にて公開。チェーン・マスターは日劇2。配給:東宝。興行収入成績:12億円。
架空の日本が舞台。1996年、ゴジラを引きつける原子力発電に代わり、プラズマ発電所が首都・大阪に建設される。だが、ゴジラはプラズマ発電所を襲撃。自衛隊特殊戦闘部隊がゴジラを迎撃するが、逆に隊長・宮川卓也(永島敏行)を始め多数の死傷者を出すことになった。宮川隊長に想いを寄せていた隊員・辻森桐子(田中美里)は、ゴジラを憎む。桐子は後に防衛庁内に設立されるG対策本部戦闘部隊「Gグラスパー」において、新倉誠(勝村政信)、美馬和男(池内万作)、細野精一(山口馬木也)、奥村知治(山下徹大)ら4人を指揮する隊長に就任した。2001年、G対策本部長・杉浦基彦(伊武雅刀)は「ゴジラ消滅作戦」を提案する。物理学者・吉沢佳乃(星由里子)によって、プラズマ発電開発の際に副産物として生み出されたブラックホール生成技術を応用し、ゴジラをブラックホールに吸い込んでしまおうという作戦だ。しかし、天才科学者・工藤元(谷原章介)の協力により完成したブラックホール生成機「ディメンション・タイド」のテスト中、時空に歪みが生じ、巨大な昆虫が現れる。古生物学者・山口剛(中村嘉葎雄)によれば、巨大な昆虫は、白亜紀のトンボ「メガニューラ」だと言う。時空を超えたメガニューラは卵を産み落とし、再び元の世界へと戻っていった。産み落とされた卵は少年によって拾われ、少年の母親・早坂薫(かとうかずこ)と共に渋谷へと移動し、孵化する。やがて、巨大なヤゴ「メガヌロン」の大群により水没させられた渋谷をメガニューラが覆い尽くすことに……。
メガヌロン→メガニューラ→メガギラスと今度のゴジラの相手は3段階に変化するが、そもそも、メガヌロンは実在した白亜紀のトンボ。学術名をメガネウラ(英語名メガニューラ)と言う。『空の怪獣ラドン』(1956年)にも登場している由緒正しい(?)怪獣である(苦笑)。だが、そんなことよりもメガギラスの必殺技が問題だ。なんと必殺技は「プラズマ火球」。これは、ガメラの必殺技ではないか!?
実は、今回のゴジラ、『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』を相当意識した作りになっているのだ。想いを寄せていた隊長をゴジラに殺され復讐に燃えるヒロイン・桐子は、ガメラに両親を殺され復讐を誓う比良坂綾奈と重なる。また、両作とも渋谷が被災地となっているが、ガメラの大量虐殺に対して、ゴジラは渋谷を水没させるという斬新なアイデアで真っ向から対抗していた。さらに、お台場でゴジラとメガギラスが対決する際、ゴジラの刃物のような背ビレがメガギラスの左手を切り落とす場面があるのだが、まるで時代劇の決闘シーンの様である。この場面を観た時、私はガメラの京都駅でのイリスとのクロスカウンターを思い出した。全体的な映像の作り方もゴジラを巨大に見せようと下から仰ぎ撮る場面が『ゴジラ2000』に比べて遙かに多くなり、ガメラから真摯に学ぶ姿勢が見られる。CG合成などはガメラより上をいっているので、ガメラもうかうかしていられないだろう。
しかし、今回のゴジラの最大のウリはストーリーがしっかりしていて面白いということではないだろうか。今までのゴジラ作品はゴジラの周りで出演者が騒いでいるだけでゴジラと絡んでいかないという致命的な問題があった。だが、今回は辻森桐子vsゴジラというストーリーであり、特撮部分でもそこがきちんと強調されている(例えば、無人島でVTOL戦闘機グリフォンに乗っている桐子とゴジラの視線が重なる場面など)。また、最初に「大阪=首都」だと大阪城と国会議事堂のツーショットで示されるのだが、それが観客に架空の世界だという心構えをさせ、後で出てくるトンデモ兵器(ウルトラマンに出てきそうな戦闘機グリフォンやブラックホール砲「ディメンション・タイド」)に拒絶反応を起こさせない巧い演出がなされているのにも感心した。これは『マルコヴィッチの穴』でも使われた手法である。『マルコヴィッチの穴』では、まずエキセントリックな夫婦を出し、次に7と1/2階を出し、最後にマルコヴィッチへとつながる穴を出していた。最初からマルコヴィッチへの穴を出していたら観客が拒絶反応を示してしまったであろう。
大変良く出来ていて、満足できる作品だが、2つ気になったことがある。1つは字幕にふりがなが無いこと。小さな子供たちにはアルファベットや漢字は読めないだろう。子供は読めない漢字を親に聞くのだが、彼らの声は他の鑑賞者には迷惑になる。もう1つは個人的な趣味の問題だが、音楽がイマイチだったこと。全体的に単調で『ゴジラ2000』のほうが(音楽だけは)良かったと思う。
●おすすめ対象
普通の映画ファンも楽しめる。意外と大人向け。
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●一言で言えば……
やはり『ガメラ3 邪神〈イリス〉覚醒』がライバル!?