原作:中薗英助『拉致−知られざる金大中事件』(新潮文庫刊)。脚本:荒井晴彦。監督:阪本順治。音楽監督:布袋寅泰。2002年、日本=韓国合作(製作:シネカノン&デジタルサイトコリアほか)。カラー・ビスタ。DTSステレオ。上映時間138分。2002年5月3日よりシネ・アミューズ系にて公開。チェーン・マスターは銀座シネ・ラ・セット。配給:シネカノン。
1970年11月25日、東京の市ヶ谷。三島由紀夫の割腹自殺現場に花を手向ける陸幕2部所属の情報将校である富田満州男3等陸佐(佐藤浩市)は、彼から強引にコメントを取ろうとする夕刊トーキョーの記者である神川昭和(原田芳雄)を殴りつけた。1971年5月25日、独裁者である朴正煕大統領に支配される韓国で、大統領を批判する金大中(チェ・イルファ)暗殺未遂事件が発生する。「韓国にいては危ない」と思った金大中は、日本とアメリカを往復する亡命生活に入った。1972年、日本の東京。満州男は、韓国人女性の李政美(ヤン・ウニョン)と付き合うようになる。だが、彼女が韓国語を教えている相手は、北朝鮮のスパイだった。北朝鮮スパイを監視するのが、陸幕2部に所属する満州男の仕事である。その日も部下である佐竹(香川照之)と共に、スパイが住むアパートを見張っていた。すると、彼らの視界に駐日韓国大使館の1等書記官である金車雲(キム・ガプス)が入ってくる。北朝鮮のスパイを拉致するつもりなのだ。恋人である政美が巻き込まれそうになったのを見て、満州男は車雲のもとに駆け寄る。そして、スパイ拉致を見逃す代わりに彼女を取り戻すことに成功した。1973年、金大中は、民団東京本部総務部長である趙勇俊(平田満)のもとに身を寄せて、日本での活動を精力的に行うようになる。これに危機感を感じたのが、朴正煕大統領であった。彼は駐日韓国大使館の公使で日本駐在KCIA総責任者でもある金俊権(キム・ビョンセ)に金大中暗殺を命じる。俊権から指令を受けた車雲は、ヤクザの親分(白竜)に金大中暗殺を依頼。しかし、外国の要人暗殺と聞いて、さすがの極道も尻込みする。そこで朴正煕は、日本の陸軍士官学校時代の同期生である陸幕2部長の塚田昭一(大口ひろし)に金大中暗殺を頼んだ。塚田は満州男の上司(柄本明)を通じて、満州男に「大和リサーチ」という興信所を作らせる。一方、KCIAによる金大中暗殺計画を察知した神川は、それを記事にした。……が、編集長(麿赤兒)からボツにされてしまう。その記事を神川は別の出版社に持ち込んだ。記事は採用され、暗殺計画は多くの人の知るところとなる。金大中の身の危険を感じた韓青同副委員長の金君雄(木下ほうか)は、韓青同に所属する金甲寿(筒井道隆)に金大中の警護を命じた。そんな甲寿を恋人である高島俊子(仲本奈奈)やオモニ(江波杏子)は心配する。KCIA、自衛隊、公安、アメリカ……。各国の諜報機関が暗躍する中、ついに運命の日、1973年8月8日を迎える……。
拉致事件の主人公であり、2002年5月現在、韓国大統領である金大中氏に「真実は、この(映画の)ようであったと思う」とまで言わしめた快作!!綿密な取材と証言に基づいて作られたこの作品は、もはや「ドキュメンタリー映画」と言っても過言ではないだろう。だが、あまりのリアルさ故、防衛庁や自衛隊からは協力を拒否され、阪本監督には尾行まで付いたそうだ(まじ)。スゴイ!!
スゴイと言えば、当時(1970年代前半)を再現するためにかけられた労力もスゴイ!!「ヒストリック・カー」と呼ばれる名車を全国から集め、消費者金融などの看板を隠し、パラボラアンテナなども取り外してもらえるよう頼み回ったと言うのだから頭が下がる。
映画全編、どこも見所であるが、特に印象的だったのは、アメリカの指令を伝えにやって来た自衛隊のヘリコプターに対して、金車雲が拳銃を撃つシーンであった。ここで、ちょっと歴史の勉強。1894年の日清戦争では、朝鮮半島を巡って日本と中国が対立した。そして、1910年、欧米列強の後押しを受けた日本は韓国を併合する。1945年にはアメリカとソ連が朝鮮半島を分断した。このように朝鮮民族は大国に振り回されてきた歴史を持つ。そんな彼らの悲しみを代弁するかのように「俺たちのことは放っておいてくれーっ!!」と絶叫する車雲の姿に涙が止まらなくて仕方がなかった(号泣)。
●おすすめ対象
日本人と韓国人、そして、旧車ファン(失笑)は必見!!
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●一言で言えば……
これが「金大中拉致事件」の真実だっ!?