■オテサーネク −妄想の子供−
2001年9月11日 草月ホール(青山一丁目)

 ベルリン映画祭アンジェイ・ワイダ賞&ピルゼン映画祭グランプリ受賞。原作:チェコ民話。原案&脚本&監督&美術監督:ヤン・シュヴァンクマイエル。美術監督:エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー(ヤン監督夫人)。アニメーション:ベドジフ・グラセル&マルティン・クブラーク。原題は『OTESANEK』。2000年、チェコ映画。カラー・スタンダード。ドルビー・デジタルEX。上映時間132分。2001年11月3日よりユーロスペース(渋谷)ほか全国順次公開。配給:チェスキー・ケー&レン・コーポレーション。
 現代のチェコ共和国が舞台。ホラーク(ヤン・ハルトゥル)は見るもの全てが赤ん坊に見えるほど追い詰められていた。産婦人科医に完全なる不妊症であると宣告された妻(ヴェロニカ・ジルコヴァー)の様子も沈みがちである。不妊症に悩むホラーク夫妻を気づかって、アパートの隣人であるシュタードレル(パヴェル・ノヴィー)と、その妻(ヤロスラヴァ・クレチュメロヴァー)は、2人に別荘購入を勧めた。別荘を購入したホラークは、畑作りのために切り株を抜く。ふと、切り株が人間の赤ちゃんのように見えたホラークは、切り株で赤ん坊を作った。妻を慰めるつもりが、妻は自分の赤ちゃんだと主張し始める。戸惑うホラークは、いきなり「赤ん坊」を連れて帰ったら誘拐したと思われると妻を説得。「赤ん坊」は別荘に置いていくことになった。しかし、妻は「赤ん坊」を家に連れて帰るために妊娠したふりをする。妻の異常な行動が周囲に気付かれないか心配するホラーク。やがて、シュタードレル夫妻の1人娘であるアルジュビェトカ(クリスティーナ・アダムツォヴァー)に感付かれてしまうが、少女の言うことに大人は耳を貸そうとしなかった。さて、「臨月」を迎えたホラーク夫人は別荘で「赤ん坊」を「出産」。すると、木の切り株に過ぎなかった「赤ん坊」が、まるで人間の赤ん坊のように動き出した。異形の赤ん坊を「オティーク」と名付けたホラーク夫妻は、人目を避けるように「赤ん坊」をアパートで育て始める。だが、アパートの管理人である老婆(イジー・ラーブス)は、ホラーク夫妻の様子がおかしいことに気付き警察に通報。しかし、警察は本気で対応しない。一方、「オティーク」の食欲は凄まじく、夫妻が目を離した隙に、ネコや郵便配達人、ソーシャルワーカー(イトカ・スムトゥナー)、果てはアパートの老人(ズデニェク・コザーク)まで食べてしまうほどだった。行方不明者の続出に、さすがの警察も重い腰を上げ、警官(ダグマル・ストシーブルナー)をホラーク夫妻の元に派遣するが……。
 『アリス』のヤン・シュヴァンクマイエル作品。切り株の赤ん坊「オティーク」やTVCM、アパートの老人の股間部分(苦笑)などにコマ撮りアニメが使用されていた。このコマ撮りアニメが何とも言えない良い味を出している。
 それにしても面白い!!上映時間は132分と言うが、もっと短く感じられたほどだ。原作は『オテサーネク』というチェコの民話。ある不妊の夫婦が木の切り株に「オテサーネク」と名付け育て始めるが、貪欲な「オテサーネク」は両親さえ食べてしまう。やがて、少女、豚、豚飼い、羊、羊飼い等を食べ続けた「オテサーネク」は、キャベツ畑の農婆に鍬で殺される……というお話だ。このような民話には元になった実在の事件があるもの。この「オテサーネク」も例外ではなかった。不妊夫妻が「オテサーネク」に食べられてしまうくだりは、養子を得た領主夫妻が、その養子の謀叛により殺害されたことを意味する。少女を食べたのは、新しく領主になった養子が少女たちを無理やり性奴隷としたことを意味するし、豚飼いや羊飼いを食べたというくだりは、彼らに重税をかけたと読み取ることが可能だ。すると、農婆に殺されたラストは、農民一揆に遭って滅ぼされたことを示しているのだろう。だが、ラストの場面は、もしかすると、そういった圧政に苦しめられた民衆が、自分たちを慰めるために創作した部分である可能性が高い。なぜなら、もし、領主を本当に倒していたのなら、わざわざ「オテサーネク」という怪物に悪行領主を例える必要は無かったからだ。
 さて、そのような民話の舞台を現代に置き換えた本作には、どのような暗喩(メタファー)が隠されているのだろう?それは、皆さんに映画館で確かめてもらいたい。松下怜之佑(まつした れいのすけ)オススメの1本でござる!!

●おすすめ対象
 不妊症に悩む人にはツライ場面が多いかも……。あと、子供には観せないほうが良いだろう。

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●一言で言えば……
 現代に蘇る残酷で美しい寓話!!


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