《プロジェクト杉田玄白正式参加作品》

気のよい連中のための学術的寓話

マーク・トウェイン:著

永江良一:訳

この文書は
Mark Twain :
Some Learned Fables for Good Old Boys and Girls (1875)
を日本語訳したものです。
翻訳はxooqiのテキストに基づいています。

2006年10月10日 公開
2006年10月15日 小寺智さんのご指摘により一部修正
2006年12月11日 小寺智さんのご指摘により一部修正

©2006 Ryoichi Nagae 永江良一
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
この翻訳は、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(帰属 - 同一条件許諾)の下でライセンスされています。
ご指摘、ご教示などありますれば永江良一まで


第一部 森の動物が科学探検隊を派遣した顛末

かつて森の生き物たちが大会合を開いて、自分たちのもっとも高名な科学者たちの委員会を任命し、森を突破して知られざる未踏の世界に行って、彼らの学校や大学でそれまで教えられてきた事柄が真実であるか検証し、加えて発見を行わせた。それはこれまで種族をあげて取り組んだ計画の中でも、もっとも壮大なものだった。確かに、かって政府はウシガエル博士に精鋭チームを率いさせて、森の右の角の沼地を抜けて北西へと向かう通路を探させた。その後、何隊もの探査隊がウシガエル博士を探しに送られたが、彼を見つけ出すことはできなかった。それでとうとう政府は彼のことをあきらめて、彼の母親に爵位を授けて、その息子が科学にたいして行った奉仕に謝意を表したのだった。さらに、政府はバッタ卿を派遣して、沼地に注ぐ小川の水源を探させた。その後、多くの探査隊がバッタ卿を探しに派遣され、ついには成功した。彼の死体を発見したのだ。しかし、彼がその間に水源を発見したかどうか、彼は明らかにしていなかった。そこで、政府は死者を丁重に扱い、多くの者がその葬儀に参列した。

しかし、こうした探検は今回のものに比べると、とるに足りないものであった。というのも、今回の探検の参加者には、学識者の中でももっとも優れた者たちが含まれていたし、その上、前にも言ったように、広大な森のむこうにあると信じられている、全く未踏の地域に行くことになっていたのだから。探険隊のメンバーは、祝宴でもてなされ、栄誉を与えられ、多いに噂の種となった。どこであれメンバーの誰かが姿を現すと、たちまち人垣ができて、あんぐり口を開けて彼を見つめた。

とうとう探険隊は出発した。隊員や科学器具、信号係のツチホタルやホタル、糧食、ものを取ってきたり運んだり穴を掘ったりするするためのアリやタマオシコガネ、測量索を運び、その他工学的職務を果たすクモ等々をぎっしり満載したリクガメの長い行列は見ものだった。リクガメの後には、もう一つ長い装甲の列が続いた。水上交通の役を担う堂々として荘重なドロガメの列だ。どのリクガメからもどのドロガメからも、燃え立つようなグラジオラスやらなにやらの華麗な旗が翻っていた。隊列の先頭には、マルハナバチ、蚊、キリギリス、コオロギの大きな群がいて、勇ましい音楽を奏でていた。そして全隊列は、ヨトウガの幼虫の十二の選抜連隊に護衛されていた。

三週間目の終わりに探険隊は森を抜け、大きな未知の世界を見渡した。彼らの目に映ったのは、素晴らしい光景だった。彼らの前には広大な平原がひろがり、蛇行した流れが潤していた。そのむこうには、なにか長くて高い障壁が空に向かってそびえていた。タマオシコガネが言うには、それは端に向かってせり上がったただの土地だと思う。なんとなれば、その上に木々があるのがわかったからだ、と。しかし、カタツムリ教授やその他の面々はこう言った。

「あんたは穴掘りに雇われとる。それだけのことじゃ。わしらが必要なのは、あんたの筋肉であって、脳味噌じゃない。科学的な事柄についてあんたの意見を聞きたいときは、急いで知らせるから。あんたの図々しさってのも耐えられんのじゃ。他の作業員がキャンプを張っているときに、ここらをぶらついちゃ、厳粛なる学問の対象にちゃちゃをいれるんじゃからの。とっとと行って、荷物を片付ける手伝いでもしなされ。」

タマオシコガネはへこみもせずに平然と踵を返しながら、自分にこう言い聞かせた。「せり上がった土地じゃなきゃ、おいらは地獄行きだろうよ。」

ウシガエル教授(先の探険家の甥にあたる)は、この高みは大地を囲う壁だと思うと言った。そして続けて、こう言った。

「ぼくらの祖先は多くの知識を残してくれたが、彼らは遠くまで旅したことはなかった。それで、ぼくたちはこれをすばらしい新発見の一つとしてもよいだろう。たとえぼくらの労力が、この成果一つだけで始終するとも、今やぼくらの名声は保証されているんだよ。この壁は何からできてるのかな。キノコからかな。キノコは壁をつくるには立派な素材だからね。」

カタツムリ教授は自分の双眼鏡を調整して、城壁を注意深く検証したが、やっとこう言った。

「これが透明でないという事実から、わしはこう確信する。これは、屈折によって脱燃素化した上昇する湿気の発熱により形成された濃密な蒸気なんじゃ。わずかの内部計量的実験だけでこのことは確証されるじゃろうが、それは必要ない。ことは明白なのじゃ。」

そうして彼は双眼鏡を閉じると、世界の終端の発見とその本性を記録するため、殻の中にひっこんだ。

「深遠な知力だこと!」とミミズ教授がノネズミ教授に言った。「深遠な知力!尊厳なる頭脳にとっては、どんなものだって神秘のままではいられないよ。」

夜がたちまち迫ってきて、歩哨のコオロギが配置につき、ツチボタルやホタルの灯がともり、キャンプは静まり眠りについた。翌朝、朝食が済むと、探険隊は出発した。正午ごろには、大きな街路に到達した。そこには、なにやら固くて黒い物質でできた、二本の果てしなく続く平行な棒があったが、それは水平面より一番背の高いウシガエルの高さほど高くなっていた。科学者たちはそれによじ登り、さまざまな方法で検証し検査した。彼らはかなりの距離をそれに沿って歩いてみたが、途切れることがなかった。彼らはなんの結論にも至りえなかった。なにかこんなものを記述した科学上の記録はまったくなかったのだ。しかしとうとう、禿げていて、威厳に満ちた地理学者のドロガメ教授、この人は貧しい生まれで、あくせく働く下層の一族の出であるが、もって生まれた力量で当代の地理学者の指導的地位にまでのし上がったのだが、この教授がこう言った。

「諸君、われらはここで、まさしくある発見を成し遂げたのじゃ。御先祖の中でももっとも賢明なる御先祖が単に想像上のものと見なしたものをば、われらは明白かつ簡潔にして不滅の状態で見つけたのじゃ。諸君、恐れ入るのだ。なんとなれば、われらは尊厳たる存在の前に立っているのだから。これは緯線なのだぞ!」

発見の重大さがかくも大きく、かくも崇高だったので、だれもが、心から敬意を表し頭を下げた。多くの者が涙を流した。

キャンプを張り、一日の残りは驚嘆すべきことについての膨大な報告を書き、それに適合するよう天体表を修正することに費された。真夜中ごろ、悪霊のような金切り声が聞こえ、それからガタガタゴトゴトという騒音がした。次の瞬間、長い尾のついた巨大な目がふいに光ったと思うと、暗闇に消えた。勝ち誇った金切り声はまだ聞こえていた。

哀れなキャンプ作業員は驚いて肝をつぶし、一団となって丈の高い草むらに逃げ込んだ。しかし科学者たちはそんなことはしなかった。彼らは迷信なんか信じていなかったのだ。彼らは静かに理論をやりとりしている最中だった。老地理学者の意見が尋ねられていた。彼は甲羅に引っ込んで、長いこと熟慮を重ねた。やっと彼が甲羅から顔を出すと、その敬虔な顔つきから、彼が手がかりをつかんだのは、だれにもわかった。彼はこう言った。

「われらが立ち会うことを許されたこの素晴らしいことに感謝しよう。これは春分なのだ!」

みんな、歓声を上げ、大喜びした。

「しかし」とミミズが言った。「今は夏の盛りだ。」

「ごもっともだが」とドロガメ。「われらは故郷からはるかに離れておる。二つの地点の間の時間の違いで季節も異なるのだ。」

「なるほど、さようですな。しかし今は夜。夜中に太陽がどのようにして通過するのでしょうか?」

「こういう離れた土地では、太陽はいつも夜中のこの時間に通り過ぎていくのだ。」

「確かに、そうでしょうとも。しかし、夜なのに、どのようにして、ぼくらは太陽が見えるのでしょう?」

「それは大いなる謎なのだ。それは認めよう。しかし、円盤に日光の粒子を付着させるのは、こういう離れた土地の大気の湿気であり、そのおかげで、われらは暗闇の中で太陽を見ることができるのだと、確信しておる。」

この意見は十分満足できるものに思えたし、あって当然の事柄は結論にはいっていた。

しかし、その頃、またあの恐ろしい金切り声が聞こえ、ゴロゴロと轟く音が再び夜の闇から速度を上げながらやってきた。そしてもう一度ギラギラ光る大きな目がさっと通り過ぎ、闇の中へ遠ざかって消えた。

キャンプの作業員たちは驚きあわてて我を失った。学者たちは途方に暮れてしまった。それは説明できないような不思議なことだった。彼らは考えてはしゃべり、しゃべっては考えた。学識豊かで年老いたメクラグモ卿は、座り込んで研究に没頭していたのだが、ほっそりした脚をからませ、茎のような腕を組んで、とうとう、こう言った。

「同志諸君、君たちの意見をのべたまえ。さすればわしの考えを披露しよう。なんとなれば、わしはこの問題が解けたと思うから。」

「さようでございましょう、閣下」と、しわだらけのワラジムシ教授が弱々しいかん高い声で言った。「といいますのも、我らが閣下の口から聞くものは、無意味なものではなくて、知恵ある言葉でございますからね。」[ここで話し手は、ありきたりで、陳腐で、苛々するような、昔の詩人や哲学者からの引用のごった煮を差しはさんだが、その引用をもとの言葉の仰々しい華麗さで述べようとするあまり、マストドン語やドードー語などの死語で引用した。]「このような主張で、おそらく、私が天文学に関わる事柄をあえて持ち出す必要などないでしょうが、死に絶えた言語の富の中、絢爛たる古代の伝承をほじくりかえすことを終生の仕事としております私は、壮大なる天文学には不案内であるとはいえ、何卒言わせていただきたいのですが、ついさっき起こったこの不思議な現象は、貴殿が春分であると結論づけられた最初の現象で起こったのとはまるで正反対にことが進みますが、あらゆる特徴は非常に似ていることから、ありそうにないとはいえ、確かに、先ほどのは秋分…」

「うぁあ!黙れ、黙れ!」皆が、うんざりした嘲笑とともに叫んだ。それで哀れな年老いたワラジムシ殿は恥ずかしさでいっぱいになり、退散した。

さらに議論は続いたが、それから委員会の一致した声として、メクラグモ卿に意見を述べるよう求めた。彼はこう言った。

「科学者諸君、わしの信じるところでは、これまで知られるかぎり完全に起こったことは一度しかないことを、我らは目撃したのだ。普通に見ても、それは信じられぬほど重大でまた興味深い現象だが、これまでどの学者も知らず、また感づくことさえなかった、その本質についての知識が得られたということから、我らにとってのその重要性は、いやが上にも大きなものなのだ。我らがまさに立ち会ったこの驚くべきことは、科学者諸君(わしはもう息もつけぬほどだが)、金星の通過にほかならぬ!」

どの学者も驚愕のあまり色を失い、跳び上がった。それに続いたのは、涙と握手、熱狂的な抱擁、それからありとあらゆる乱痴気騒ぎだった。けれどだんだん感情が落ち着き、分別が戻ってくると、熟達した主任監察官のトカゲがこう述べた。

「しかし、そりゃどういうことだ。金星は太陽表面を横切るのであって、地球の表面じゃないぞ。」

矢は急所を射た。これが手ごわい批判であることを誰も否定できなかったから、そこにいた学問の使徒の胸は悲嘆にくれた。しかし気高きメクラグモ公爵はもの静かに脚を耳の後ろで絡ませて、こう言った。

「我が友は我らが大発見の核心に触れなさった。さよう、我ら以前の者たちはみな、金星の通過とは、太陽面上の移動だと思っていた。連中はそう考え、それを支持し、無邪気にも心底からそう信じてきたのだが、連中の知識の制約からはそれも無理からぬこと。しかし、我らには通過が地球面上でも起こることを立証するといういう貴重な恩恵を受けたのだ。というのも、我らはそれを見たのだから!」

集まった学識者たちは、この堂々たる知者への言葉に表せないような崇拝を抱いて座り込んでいた。あらゆる疑念はたちまち去った。稲妻の前に暗闇が消えるように。

ちょうどタマオシコガネが、気づかれぬように割り込んできた。彼は今や学者連の間を、よろけながら進み、あちらこちらと親しげに肩を叩いては、こう言った。「すばらしい(ひっく!)すばらしい、おっさんじゃ!」そして、わざとらしい微笑みを浮かべていた。しゃべるのに絶好の位置にくると、彼は左腕の肘を張って、モーニングコートの裾のちょうど下にある腰の関節にあてがい、右脚を曲げて、爪先を地面におき、踵を寛いだ様子で左脛にあて、役人然とした腹をぷっくり膨らませ、口を開けて、右肩をトカゲ監察官の肩にその右肘で寄りかかり、それから…

けれど、その肩は憤然として引っ込められ、節くれだった苦労人は地面に倒れた。彼はちょいともがいたが、微笑みながら立上り、以前同様に入念に気をつかった態度をとって、今度はダニ教授の肩を支えにして、口を開いたが、それから…

またも地面に倒れた。やがて彼は、まだ微笑みながら、もう一度はい起きると、ゆったりと上着や脚の塵を払ったが、彼の手はまるで機敏に動かず、抑制を失った衝撃の力で、体がごろりと突然回って、脚が絡まり、メクラグモ卿の膝の上に腹這いになった。二、三人の学者がぱっと飛び出して、下司野郎をまっさかさまに隅に投げ飛ばし、貴族閣下を元のように助け起こし、追従やら遺憾の言葉で崩れた体面を繕った。ウシガエル教授がわめいた。

「こんなことは二度とやるんじゃない。こら、タマオシコガネめ!言いたいことを言ったら、さっさと自分の仕事に精を出せ。急いで、お前の用向きを言え。些細なことは忘れろ。馬小屋のような匂いがするぞ。あそこで何をやっていたんだ。」

「あの(ひっく!)その、旦那、おいら、たまたまめっけ物を見つけまして。でも、そ(おぇ!)そりゃたいしたもんじゃありません。もうひとつ、めっけ物があ(ひっく!)ありまして。失礼、閣下、その、最初にここをつっ走ったやつ(ひっく!)は、何と言いましたかな?」

「春分だ。」

「ご(ひっく!)獄分。さよう。そ(ひっく!)そうでしたな。で、もうひとつのほうは?」

「金星の通過」

「わ(ひっく!)分かり申した。たしたことはない。あ(ひっく!)後の方のやつが、何やら落としていったんで。」

「あ、なるほど。そりゃいい。よい知らせだ。早く言え。それは何だろう?」

「ぶ(ひっく!)ぶらついていって、見たんで。そりゃ儲け物だろね。」

二十四時間の間、なんら採決は行われなかった。それから次の記載がなされている。

「委員会は一団となって発見物を見に行った。それは堅くなめらかな大きな物体からできていて、てっぺんは丸くて、真横に折ったキャベツの茎の断面に似た短い垂直な突起がついていた。この突起は中まで詰まっているのではなく、中空の円柱で、我々の地域では見たこともない軟らかな木質の物質で栓がしてあった。というか、栓がしてあったのだが、あいにく、この塞栓は無思慮にも、我々が到着する前に、工兵と地雷兵の隊長のドブネズミが取り除いてしまった。きらめく空間領域からこのように不可思議にももたらされた巨大な物体は、中空で、しばらく溜め置いた雨水のような、茶色っぽい色の刺激性の液体でほぼ一杯に満たされていることがわかった。だが、我々が目にしたのはなんたる光景か。ドブネズミがてっぺんにとまり、中空の突起にその尾を入れては、液を滴らせながら引き上げ、押し寄せる作業員に尾の先をなめさせていた。そして、すぐまた尾を挿し入れては、前と同じように群集に液体を与えていた。明らかにこの液体は、奇妙にも精神に影響を及ぼす性質があった。というのは、これを飲んだ者はみな、すぐに高揚した愉快な気分になり、千鳥足でふらついて、猥雑な唄を歌い、抱擁し、喧嘩し、踊り、罰当たりな言葉を吐き散らし、あらゆる権威に反抗した。我々の周囲には一団となった統制のとれてない群集が入り乱れていた。統制がとれていないばかりか、統制のとりようもなかった。というのは、全軍隊が、歩哨にいたるまで、飲物のせいで、その他の連中と同様、乱痴気状態だったのだ。この無謀な連中にとりまかれ、一時間もたたないうちに、我々は、いや我々でさえ、残りの連中と見分けがつかなくなった。風俗壊乱は完璧で万人共通だった。そのうち、キャンプはどんちゃん騒ぎに疲れ果て、ぼんやりとした嘆かわしい人事不省に陥って、その不思議な結束力で階級は忘れ去られ、奇妙な同衾仲間が出来上がり、あの我慢ならない悪臭のするゴミあさりのタマオシコガネと高名な貴族である我が敬愛するメクラグモ公爵とが、ぐっすり眠り込んで、お互いの腕を仲睦まじくからめているという信じがたい光景を見て、我が目は、復活の日のごとく見開かれ、我が魂はすくみ上がった。こんなことは、歴史始まって以来、あったためしがなく、また疑いもなく、この恐ろしい罪深い光景を見た我々を除けば、この世には、これを信じないようにすることに信仰を見出す人は、一人としていないだろう。神のなされることは、このように不可解ではあるが、神はそれを成し遂げられるであろう!

「この日、命令によって、技師長のクモ氏は、大きな貯蔵器をひっくり返すために必要な装置を装着した。そうやって、その災難をまき散らす内容物を排出して、乾いた大地のうえに流し出した。大地はその液を飲み干し、もはや危険はなくなったが、実験と精密検査のために供するとともに、王様のお目にかけ、その後、博物館の陳列品に加えるため、我々はそのうち数滴を保存した。この液体が何であるかは結論が出ている。疑いもなく、これは稲妻と呼ばれている猛烈で破壊的な流動体なのだ。これは雲の中の貯蔵所から、飛来する惑星の抗いがたい力で、もぎとられ、惑星が通り過ぎたとき、我々の足元に投げ落とされたのだ。ここから興味深い発見が生じる。つまり、稲妻は、それ自身であるかぎりは、無活動なものであり、雷鳴が強引に接触することで、束縛状態から開放され、その恐ろしい火焔に点火し、瞬時の燃焼爆発が生じて、地上のはるか広範囲に災厄と破壊をまき散らすのだ。」

次の日を休息と回復に当てた後、探険隊はその道を進んでいった。数日後、探険隊は平原の心地よい場所にキャンプを張ったが、学者たちは何か発見しようと勇んで出かけた。その褒美はすぐ手に入った。ウシガエル教授が奇妙な木を発見して、仲間を呼んだのだ。彼らは非常な興味を抱いて、この木を調べた。それは非常に高くてまっすぐで、樹皮も大枝も葉もまるでなかった。三角測量でメクラグモ卿はその高さを決定し、クモ氏は根元の周の長さを測って、上方へむかって細くなる度合が一様であるという根拠に基づく数学的論証によって、頂上の周の長さを計算した。これは非常に珍しい発見と思われた。これまで未知の種の木であったから、ワラジムシ教授はその木に学名を与えたが、それは古代マストドン語に翻訳したウシガエル教授の名前にほかならなかった。というのは、発見者を発見物に結びつけて、その名を永遠のものとし、このように発見物に結びつけることで発見者の名誉を讃えるのが、いつもの習いとなっていたのだ。

さて、ノネズミ教授が、その鋭敏な耳を木にあててみると、そこから豊かで調和のとれた音が出ていることに気づいた。それぞれの学者は替わるがわるこの驚くべきことを試しては楽しんだが、誰もが大いに喜び、驚いた。ワラジムシ教授は、この木がもつ音楽的性質を示すよう、木の名前になにか付け足して長くするよう求められた。それで教授は、聖歌の歌い手という付加語を、マストドン語に訳して付与したのだ。

この頃までには、カタツムリ教授は何度か双眼鏡で観測していた。彼はこうした木が多数あり、彼の器具で見える限り、広い間隔をとって、一列になって、北の方にも南の方にも続いていることを発見した。やがて、彼はこうした木が、頂ちかくで、十四本の大綱で互いに結ばれていることも発見した。この綱は、彼の目にした範囲では、木から木へと連続していた。これには驚いた。クモ技師長は頂上に登り、すぐにこの綱は、自分の種の巨大な仲間がかけた、ただのクモの巣であると報告した。なぜなら、あちこちに撚り糸から獲物がぶらさがっているのが見えたというのだ。それは織物のまわりに織り込まれたように見える大きな断片やぼろ布のような形をしていたが、捕食された巨大な昆虫の捨てられた皮に違いなかった。それから彼は、もっと綿密な調査をしようと一本の綱の上を走ったが、足の裏に刺すような突然の痛みを感じたが、それには麻痺させるような衝撃があって、それで彼は手を離し、自分で吐いた糸にぶら下がって地上に降りた。そして、怪物が現れ、学者がその怪物とそれがつくり出したものに興味を持つのと同様、怪物のほうも学者に興味を持つといけないので、全員に急いでキャンプに戻るよう忠告した。それで彼らは急いで出発し、歩きながら巨大なクモの巣のことを記録した。その晩、探険隊の博物学者が巨大グモの美しい模型をこしらえたが、そうするのに、そのクモを見る必要はなかった。なぜなら、彼は木のそばで、その椎骨の破片を拾い、この単純な証拠品から、その生き物がどんなふうに見えるか、その習性や好みが分かったからである。彼は尾、歯、十四本の脚、それに口吻のついた模型をつくり、このクモが草や家畜、小石、泥を同じように貪り食うと言った。この動物は科学に極めて貴重な貢献をなすものと考えられた。剥製にするために死体が見つかるとよいのにという期待もあった。ワラジムシ教授は、自分や仲間の学者が、隠れて静かにしていれば、生きたものを捕獲できるかもしれないと考えた。彼はやってみるよう勧められた。彼の提案に払われた注意はそれだけだった。会合は、怪物に博物学者からとった名前をつけることをもって、終了した。なぜなら、博物学者は、神の次に、この怪物を創り出したのだから。

「おまけに改良したかもな。」とタマオシコガネがつぶやいた。彼は、怠け癖と抑えようのない好奇心から、またしても闖入してきたのだ。

第二部 森の動物が科学的探求をなし遂げた顛末

一週間後、探険隊は驚嘆するような珍奇なもののただ中にキャンプしていた。それは一種の巨大な石の洞窟群で、それは彼らが森を抜け出したとき最初に見た川のほとりの平原から個々に分かれてはいるが房状になってそびえていた。この洞窟は、一列の並木に縁どられた広い通路の両外側に、長いまっすぐな列をなして立っていた。どの洞窟の頂も両側に急勾配で傾斜していた。それぞれの洞窟の正面には、大きな四角い穴がいくつか水平な列をなして穿たれており、その穴は薄くて輝く透明な物質でふさがれていた。内部には洞窟の中の洞窟があった。そして、段々に高くなっていく連続した規則正しい壇からなる奇妙な曲がりくねった道をたどって登っていき、こうした小さな区画を訪れることができる。それぞれの区画には巨大で形の定まらない物体が多数あったが、思うに、これはかつては生き物であったものが、今では薄い褐色の皮が縮んだり伸びたりして、動かすとハタハタと音をたてるのだった。ここにはクモがたくさんいて、そのクモの巣があらゆる方向にひろがり、一緒になって皮ばかりとなった死体を飾りたてているのは、愉快な見ものだった。というのは、それが生命を吹き込み、そうでもなければ見捨てられたわびしさだけを思い起こさせる光景に快活な喜びを与えてくれたからである。このクモは探険隊に加わったクモとは異なった種類のもので、その言語はただの音楽的な意味のないたわごとのように思われた。彼らは臆病で優しい種族であったが、無知であり、未知の異教の神を信奉していた。探険隊は布教のための大分遣隊を送って、それまでは三家族がたがいに仲良く暮らしたことがなく、またどんな宗教体系であれ確固とした信仰のなかったその暗黒の文化に、一週間のうちにすばらしい成果をあげた。このことに勇気づけられて、探険隊は恩寵の御業を続くようそこに永続的な宣教師の居留区を設置しようとした。

だが、我々の物語から逸脱しないようにしよう。洞窟の正面を綿密に調べ、よく考察し、意見を交換した後で、科学者たちはこれらの奇妙な構成のもつ特性について結論を出した。彼らが言うには、それぞれの洞窟は主に古赤色砂岩期に属しており、洞窟正面は無数の驚くほど規則的な層状となって空中にそびえたっている。それぞれの層はおよそ五カエル幅の厚みがあり、今ここにある発見物はこれまで広く認められた地質学を完璧に覆すものであるということだった。というのも古赤色砂岩のどの二つの層の間にも分解した石灰岩の薄い層が挟まっており、それで古赤色砂岩期が一度しかなかったのではなく、百七十五回以上あったのは確かだ!それに同じ証拠から、大地は百七十五回洪水に覆われ石灰岩層が分解されたのは明らかだ!この一組の事実から推論すれば、世界の年齢は高々二十万年ではなく、百万の百万倍ほどの古さだという否応のない真実が、結論されるのは避けられない。そして、もう一つ奇妙なことは、古赤色砂岩のどの層も、石灰岩の縦貫層が数学的に規則的な間隔で貫通し分割していることだ。水成層の破砕面を貫いて火成岩が上昇することは普通だが、これは水成岩が同じように貫入している初めての事例だった。これは偉大で素晴らしい発見であり、その科学的価値は測り知れなかった。

低いところの層をいくつか綿密の検査してみると、アリとタマオシコガネの化石(後者はその特有の財貨が一緒だった)があるのがわかり、大いに満足して、この事実は科学的記録に記載された。それというのは、こうした下賎な労働者は被造物の最初にして最下層に属するという事実が証明されたからである。とはいえ、同時にそこには、最上層の完璧で申し分のない生き物は、摩訶不思議な種の発展の法則によって、こうした卑しい存在にその起源をもつのだと考えると、なにか嫌悪を催すものがあるのだが。

タマオシコガネは、この議論を小耳にはさんで、「当代の成金どもが連中の知恵を絞った理論の中にどんな慰めを見出そうとかまわんね、だって自分としちゃあ、古い最初の一族の出で、土地の古くからあるもともとの貴族制の中の自分の居場所を示してもらうだけで満足だからな。」と言った。

「あんたたち成り上がり者の威厳とやらをお楽しみなされ。お望とあれば、つい昨日に張った化粧板のニスの悪臭でもお嗅ぎなされ。」と彼は言った。「タマオシコガネ一族にとっちゃ、わしらが古代の荘厳な回廊で香しい球体をころがしていた種族の出で、時の大通りを行進しながら、過ぎさっていく幾世紀にもわたってそのことを高らかに言うために、不滅の言葉を古赤色砂岩に留めてきたというだけで十分だ。」

「こら、とっとと消えるんだ!」と探険隊長が、あざけりを込めて言った。

夏が過ぎ、冬が近づいていた。多くの洞窟の中や周囲には、碑文とおぼしきものがあった。多くの科学者がこれは碑文であると言ったが、少数派はそうではないと言った。主任言語学者のワラジムシ教授は、これは碑文であるが、学者たちには全く未知の文字で、また同様に未知の言語で書かれているのだと主張した。彼は早いうちから、部下の美術家や製図工に発見したものをすべて模写を作るよう命じていた。そして自分でこの神秘の言語を解く鍵を見つけようと取り組んだ。この作業で、彼は以前から暗号解読家がいつも使ってきた方法にならった。それはつまり、たくさんの碑文の写しを自分の前に並べ、それらを概括的かつ詳細に研究するというものだった。まず手始めに、彼は次のような写しを一緒に並べた。

アメリカン・ホテル
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ビリヤード
ウォータサイド・ジャーナル
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雨季中貸し別荘
廉価販売
廉価販売
廉価販売
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最初、教授にはこれは符号言語で、それぞれの言葉は異なった符号で表されているように思えたが、さらに検証を進めると、これが書かれた言語であり、そのアルファベットのそれぞれの表音文字はその字そのものの表意記号によって表されていると確信するようになり、最終的にはこれは一部は表音文字で、一部は符号ないし象形文字で伝えられた言語であると判断した。次のような種類の見本がいくつか発見されたことから、彼はそうした結論を出さざるをえなかったのだ。

彼は、ある碑文がほかのものより目にする頻度が高いことに気づいた。それは「廉価販売」とか「ビリヤード」とか「S. T.— 1860— X」とか「キーノー」とか「生ビール」とかいうものだ。そこで、当然、こうした碑文は宗教上の金言にちがいなかった。しかし、未知のアルファベットの謎が明らかになってくるにつれて、この考えはしだいに捨て去られた。ついに教授は、いくつかの碑文を、かなりもっともらしく翻訳することができた。とはいっても、学者全員を完全に納得させたわけではなかった。それでも、彼は倦まず弛まず作業を進めた。

最後に、次のような碑文のある洞窟が発見された。

ウォーターサイド博物館
終日開館
入場料五十セント
蝋人形、古代化石等の
素晴らしい収集物

ワラジムシ教授は、「博物館」という言葉は「ルムガトゥ・モロ」あるいは「埋葬所」という語句と同じものだと断言した。入ってみると、科学者たちはど肝を抜かれた。さてまあ、彼らが見たものは、連中の公式報告書の言葉がうまく伝えてくれるだろう。

「一種の硬直した大きな像が、列をなして建ち並んでいたが、我々はこれが、我々の古代の記録に述べられている、ずっと以前に絶滅した人間という爬虫類の種に属するものの像だとただちに気づいた。これは特に満足のいく発見であった。なぜなら、最近では、この生き物は神話や迷信、はるか昔の祖先が想像の産物だと見なすことが流行するようになっていたからである。しかしここに、人間が化石状態で完全に保存されていたのである。ここはその埋葬所であり、そのことはすでに碑文から確実である。また今や、我々が調査してきた洞窟が、人間が地上をうろついていた昔には、その古代の根城ではなかったのかと推測され始めている。というのは、これら背の高い化石のどの胸にも、以前から注目されてきた表意文字で碑文があるのだ。あるものには「海賊キッド船長」、あるものには「ヴィクトリア女王」、またあるものには「エイブ・リンカーン」、べつのものには「ジョージ・ワシントン」等々といった具合である。

「激しく興味をかきたてられて、我々の古い科学的記録を捜し出し、そこに書かれた人間の記述が、我々の前にある化石と一致するかどうか知ろうとした。ワラジムシ教授が、その風変わりで古くさい言い回しで、それを大声で読み上げた。すなわち

言い伝えで知られるがごとく、我が父祖のころには、人間はまだ地上を歩き回っていた。それは極めて巨大なる生き物にて、時には単色、時には多色のたるんだ皮膚に包まれるが、その皮膚、意のままに脱ぎ捨てることをえて、そのようにしていた。後ろ脚はモグラの鉤爪に似るも、より幅広の短い鉤爪を備え、珍妙にも細く、カエルよりはるかに長き指の生えた前脚もまた、大地より餌を掻き出さんがための鉤爪を備えておった。その頭には、ネズミのごとき羽毛があったが、それより長く、また餌を匂いにて探すに適した嘴が生えていた。幸せで感極まれば、眼より水のあふれ、苦しみ、あるいは悲しいときは、それを示すのに、ぞっとするほどひどく騒ぎたて、聞くに耐えられぬほど恐ろしげで、わが身を引き裂き滅し去るほど長々と続け、そうやってその災厄を終わらせるのだ。二人の人間が一緒にいると、互いに「やぁ−やぁ−やぁ−、ごき、ごき」みたいに叫びあい、そのあとに多少なりともそれに似た音を続けるのだ。それゆえに詩人は彼らが話していると考えたのだが、知ってのとおり、詩人というものは、狂気の沙汰の愚行に飛びつこうと身構えているものだ。時には、この生き物は、長い杖をもってうろつき、その杖を顔に押し当て、同じ杖から突然、ひどい騒音をたてて火と煙を噴き出し、驚きのあまり獲物は死んでしまうのだ。そうして、獲物を鉤爪でつかんで住処に戻り、獰猛で残忍に喜びをもって喰い尽くすのだ。

「さて我々の先祖が書き残した記述は、驚くべきことに我々の前にある化石によって保証され確かなものとなった。それをこれからみていこう。「キッド船長」と記された標本を詳細に調査した。その頭部および顔の一部には、馬の尾部にあるのと同様の一種の毛があった。非常に苦労して、そのたるんだ皮膚を取り去ると、その体は光沢のある白い肌理で、完全に石化していることがわかった。それが食べた麦ワラは、長い年月を経ても、まだ未消化のままその体内に残っており、脚にすら残っていた。

「これらの化石の周囲にあるものは、無学の者には無意味であろうが、科学の眼にとっては天啓なのだ。それらは過ぎ去った時代の秘密を解き明かす。このかび臭い記録が、人間が生きていた時代やどんな習性だったかを語りかけてくるのだ。というのも、ここには、人間と共に、それが創造の最初期に生きていたことを示す証拠、つまりそれに随伴して、忘れ去られた時代に属する下等生命が見られるのだ。ここには太古の海を泳いでいたイカの化石、マストドンやイクチオサウルス、ドウクツグマ、巨大なヘラジカの骨格があったのだ。またここには、こうした絶滅した動物のいくつかや人間自身の幼生の焦げた骨があったが、縦に割けており、その味覚にとって、骨髄がおいしい贅沢品であったことを示していた。こうした骨には獣の歯跡がないことから、人間がそれから中身を抜き出したことは明らかだ。タマオシコガネの 「どんな獣もどうやったって骨に歯跡をつけることなんかできない」という意見表明があったとしても、そうであるのだ。ここには人間がぼんやりした、野卑な芸術概念の持ち主だった証拠があった。というのはこの事実は「原始人の燧石製手斧、ナイフ、鏃、および骨製装身具」という翻訳不能の言葉が記されたいくつかの物からわかるのだ。そのいくつかは、燧石から削り出した粗雑な武器のように思われた。また隠れた場所には、製造中のものが見つかったが、そのそばには、薄くて脆い素材に次のような翻訳不能な記載があった。

ジョーンズ君、博物館をクビになりたくなかったら、次に原始時代の武器を作るときは、もっと慎重にやるんだね。最近のものでは、君はあのクーリッジ家の寝ぼけた科学狂いのお節介屋どものだれひとりとして、だますことすらできないだろう。それに、骨製装身具に彫刻する動物が、いつもばかをやっていた原始人にしちゃあ上出来すぎるのも、非難の眼で見られるってことに、気づきたまえ。
支配人 ヴァーナム

「埋葬所の後には灰が堆積していたが、そのことは人間が葬儀の際にはいつも宴会を開いていたことを示している。そうでなければ、なぜこんな場所に灰があるのだろうか。また、それは人間が神と魂の不死なることを信じていたことを示している。そうでなければ、なぜこうした厳粛な儀式をおこなっていたのだろうか。

「約言すれば、こうだ。我々は人間が書かれた言語を持っていた思う。我々にわかっているのは、人間がかって実際に存在したのであって、神話ではないこと、人間はドウクツグマやマストドンその他の絶滅種に随伴しており、こうした動物を調理して食し、また同様に自分自身の種の幼生も食していたこと、粗雑な武器を身につけていたが、芸術は全く知らなかったこと、また自分たちが魂を持っていると思っており、その魂が不死であると想像することで自らを慰めていたことである。だが我々は嗤いはすまい。我らもその虚栄心も深遠な思いも、滑稽とみなす生き物があるやもしれぬゆえ。」

第三部

大きな川の岸辺で、科学者たちはやがて、次のような碑文のある、巨大で均整のとれた石碑を発見した。

一八四七年春、川が氾濫して郡区全域が水没した。水深は二フィートから六フィートに達した。九百頭以上の牛が失われ、多数の家屋が破壊された。市長の命により、この事件を永遠に記念するためこの記念碑を建立した。

際限なく苦労を重ねたあげく、ワラジムシ教授はこの碑文を翻訳することに成功した。この翻訳が故郷に送られると、すぐにそれをめぐって異常なまでの興奮がまきおこった。それは、驚くべきやり方で、古代の心に留めるべき伝承を確証したのだ。翻訳は二、三の翻訳不能な言葉でやや損なわれているものの、意味の全般的な明晰さを減ずるものではなかった。ここにそれを掲げておこう。

一千八百四十七年前、(火事?)が全市域を襲い焼き尽くした。わずか九百人の命が救われ、それ以外は皆死滅した。(王?)はそれが繰り返される...(翻訳不能)...ようこの石に命じた。

これが、絶滅した人間がその後に残した謎の文字からの、最初のうまくいった満足のいく翻訳だった。それによってワラジムシ教授は高い評判を得て、それでその故国のどの学府もただちに彼に最高位の学位を授けたし、それに彼が兵士で、その優れた才能を爬虫類の遠縁の種族の絶滅に振り向けていたとしたら、彼は王様から爵位を授けられ金持ちになっていたろうにと思われた。またこのことが、人間と呼ばれる絶滅鳥類の古代の記録の判読を専門とするヒト学派という科学者の学派の起源ともなったのである。[というのは、現在では人間は爬虫類ではなく鳥類とされているのだ。]それで、ワラムシ教授はこの学派を開くとともに、その指導的地位にとどまり続けた。というのは、彼がやったような誤りのない翻訳は存在しないと思われたからである。ほかの者たちは誤りをしでかしたが、彼はそんなことはありそうにはなかった。失われた種族の記念物は、その後に多数発見されたが、「市長の石」ほど有名で崇敬を集めたものはなかった。この石はその中の「市長」という言葉からそう呼ばれたが、その言葉が「王」と翻訳されたことから「王の石」とも呼ばれた。

また別の時に、探検隊は大きな「発見」をした。それは巨大な丸くて平たい集積で、直径が十カエル幅、高さが五から六カエル幅であった。カタツムリ教授は眼鏡をつけて周囲からそれを調査し、それからよじ登って頂上を丹念に調べて、こう言った。

「この等周長の隆起を汎査究考した結果、塚作り族が残した珍しくもすばらしい創作物の一つだと思う。これが単にその形態では弁鰓類であるという事実は、わしらが科学上の記録から読み取るものならなんであれ、異なる種類のものであってもよかったはずなのにという興味をかき立てるものではあるが、とはいえ、それが本物であることをいささかなりとも損なうものではない。巨鳴バッタに一発鳴かせて、やる気もなしにふらふらしておるタマオシコガネをここへと呼び出して、発掘作業をやり遂げさせて、学問に新たな財宝を加えようではないか。」

タマオシコガネは持ち場にいなかったので、塚は働きアリが発掘した。何も発見されなかった。高貴なるメクラグモ卿が事態を説明しなかったら、大いに失望するところだった。彼はこう言った。

「今、私に明らかなのは、塚作り族という謎の忘れ去られた種族がこうした大建造物を、いつも霊廟として建てたのではないということだ。さもなくば、この場合も、それ以前のあらゆる場合と同じように、ここでもその遺骸がみつかり、それにともなって、その生き物が生前に使った粗雑な道具も出てきたことだろう。それは明らかではないだろうか?」

「そうだ!そうだ!」とみな口をそろえた。

「さて、我らはここで特別の価値のある発見を成し遂げたのだ。この生き物が消え去った地でその生き物についての知識を大いに増やす発見を。この探検の成果の輝きを増し、世界中の学者からの称賛を勝ち得る発見を。ここには通例あるはずの遺骸がないということで、次のことを意味しないということにはなりえないのだから。すなわち、塚作り族が、我らが教えられたきたような無知で未開な爬虫類ではなく、その種の偉大さと高貴さにふさわしい偉業をちゃんと評価できるだけでなく、それを賛美するだけの能力のある洗練された高い知性を持つ生き物だったのだ、ということを。学者諸君、この堂々たる塚は墓所ではない。記念物であったのだ!」

この演説は深い感銘を与えた。

しかし、無作法で嘲るような笑い声がじゃまをして、タマオシコガネが現れた。

「記念物ですと。」と彼は言った。「塚作り族が建てた記念物ね!おっしゃる通り、そうなんでしょう!科学の洞察力のある鋭い眼には、実際のとこ、そうでしょう。だけども、大学なんぞ見たこともない無学で哀れな使い走りにとっちゃ、きっちり言うと、これは塚じゃない。そんなのじゃなくて豪勢で高貴なるお宝ですぜ。閣下のお許しあれば、おいら、こいつからすばらしく優美なる球を作り出すのに取り掛かりまして、そうして...」

タマオシコガネは鞭で追い払われ、それから探険隊の製図工たちがさまざまな場所から見た記念物の眺望画の作成にとりかかった。一方、ワラジムシ教授は、科学熱に取りつかれ、その上を歩き回り、その周囲を跳ね回って、碑文を探し出そうとした。しかし碑文があったにしろ、破壊されたか、遺物として心無い破壊者に持ち去られていた。

眺望画が完成すると、今度は貴重な記念物そのものを最大級のリクガメの背に載せて、故国の王立博物館に運んでも安全だとみなされ、そうしたのだった。それが到着したときは、多大の喝采を受け、何千という熱狂した市民が、その将来の安置所までつき従い、国王ウシガエル十六世ご自身が臨席されて、ことが進む間ずっと、その上に玉座を据えられたのであった。

気候がだんだん厳しくなって、科学者たちは目下の作業を終わらせるころだと悟った。そこで帰還の準備にかかった。しかし洞窟の間で過ごした最後の日にさえ、成果があった。というのは学者の一人が博物館、つまり「埋葬所」の人目につかない隅で、とても奇妙で異常なものを見つけたのだ。それは生来の靭帯によって胸と胸が結びつけられた二重化した人間鳥であり、翻訳不能な言葉で「シャム双生児」と標識が付けられていた。これに関する公式報告書はこう締めくくられている。

「それゆえ、古代においては、この威厳ある鳥類には二つの異なった種があったようである。一つは単体のもので、もう一つは二重体のものである。何事であれ、自然には理由がある。科学の眼には、二重体の人間はもともと危険の多い地域に生息していたことは明らかである。それで一対となって、一方が眠っている間は、もう一方が警戒したのである。同様に、危険が発見されると、一体の力ではなく二体の力でそれに立ち向かったのである。謎を一掃する神の如き科学の眼に栄えあれ!」

そして、二重人間鳥のそばには、薄くて白い素材の無数のシートを綴じ合わせたものに、明らかに彼が記した古代の記録が見つかった。ワラジムシ教授は最初の一瞥で次の文を見つけ、たちまち翻訳すると、震えながら科学者たちの前に置いたが、それは歓喜と驚愕で居合わせたすべての者の魂を震わせた。それにはこうあったのだ。「実のところ、下等動物が理性を持ち互いに会話することを、多くの者が信じている」と。

大部の公式探検報告書が出されたとき、上述の文には次の評注がつけられた。

さて、人間より下等な動物がいるのである!この注目すべき一節にはそれ以上の意味はない。人間自身は絶滅しているのであるが、その下等な動物はまだ存続しているのかもしれない。それはどんなものなのか?どこに生息しているのか?科学に開かれている発見と調査という輝かしい沃野について考えてみると、熱狂というものはあらゆる束縛を突き破るのだ。我々は次のつつましい祈りをもって、その作業を終わろう。陛下がただちに委員会を任命され、神の造りし給うたもののうち今はまだ存在すら知られぬこの種族の探査が成功の栄冠を得るまでは、たゆむことなく犠牲を払うようお命じになることを。

それから、故国を永きにわたり留守にし、誠実な努力を重ねたあと、探険隊は帰還し、大いに歓迎され国をあげての感謝を受けた。もちろん粗野で無知なあら捜し屋もいたが、それはいつもながらのことである。当然その一人はあの忌々しいタマオシコガネであった。彼がこの旅行で学んだことと言えば、科学はスプーン一杯の仮説がありさえすれば、そこから証明された事実の山を築くものだということだけだと語り、将来自分は、自然があらゆる生き物に自由に使わせてくれる知識で満足し、神の荘厳なる奥義を詮索するつもりはないと言ったのだ。


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