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ロシアの結婚式について

 今回は、世界共通で人生のはれ舞台といえる結婚式を皆さんにご紹介しながら、ロシア人の習慣や考え方について述べていきたいと思います。

−ロシアの結婚式の特色−

 新婦の白い衣装は、古来から喜び、無垢と純潔のシンボルの色とされていたことから来ている。その為今日では、白色は、概して厳かな結婚式と結び付けられている。

 ロシアの結婚式には“新婦を攫(さら)う”というイベントがあるが、これは両親の家との別離と新しい家へ入ることを象徴している。
 具体的には、新婦の親戚もしくは友人が新婦をさらってどこかの部屋に隠し、もし新郎が新婦を見つけられなければ、彼女を解放するために、いくらかの金額(現在の通貨でなくても良い)を払わなければならないというものである。この金額は、新郎がどのくらい新婦を敬っているかを表わすものである。“身代金”の受取りの後、新婦は解放され、お金は新郎新婦に渡される(お客のものにはならない)。
 また、この時、新婦を引き止めている親戚や友人は、新郎に彼女が結婚式で履いているパンプスに注がれたシャンパンを飲み干すように促す。大抵、新婦のパンプスは、結婚式の為に買ったばかりの全くの新品であるため、ロシアではこのような習慣でも全く普通に受け入れられている。

−結婚にまつわる昔からの習わし−

 古い時代、新郎と新婦はキスによって、男性と女性のお互いの愛する心が完全に一体になるという迷信があった。私たちの先祖は新郎新婦の精神性と純潔さを重んじていた為、人々の前での新郎と新婦のキスは正当な義務とみなされる。

−各儀式について−

◇“Хлеб-соль(フリェープ - ソーリ)”◇
 この儀式は、結婚式を行う家において、その家の両親がパン(Хлеб)と塩(Соль)を用いて新郎新婦を出迎える方法である。
 まず長くて綺麗な布巾の上に丸い黒パンの塊と、その真ん中に濃い塩の入った塩入れを置く。
 出迎えのスピーチは新郎の義母、もしくは姑が行う。
 「正式な結婚おめでとうございます。幸運と健康、末永い夫婦生活を祈ります。さあどうぞ私たちの家、あなたたちの家へ。パンと塩(Хлеб-соль)を食べてください。私たちは誰が家の主になるか見ていましょう。」
 新郎新婦はパンをむしり取るかかじり取るなどして、それを塩につけて食べる。よりたくさん取った人が、そこで主(あるじ)になると見なされる。そしてもう一度祝福され彼らはキスする。
 この儀式は真の、素直な合意の象徴とされ、そして新郎新婦がこれからまさにひとつのパンのように一体となって生きていくことのあらわれとなっている。

◇ブーケを投げる◇
 新婦は自分のブーケを投げるが、これは注目すべき古くからの儀式で、特にヨーロッパにはこのような儀式が広まっている。式の終わりに新婦は客に背を向け自分のブーケを投げる。若い女性たちはそれを掴もうとするが、それを掴むと掴んだ本人もしばらくして結婚できると信じられているからである。また、その時、新郎新婦の後を追ってキビ、穀物、キャンディ入りチョコ、ホップ、コインを裕福な生活の象徴として2人に向かって投げる。

◇“Тещины блины(チシヌィ ブリヌィ)”◇
 まず結婚式初日は新婦の客が新郎の客をブリヌィ(ロシアのパンケーキ)のもてなしに招待して終わり、そしてその翌日のことを“Тещины блины”と呼び、代父、代母(代父、代母は名付け親であったり、信仰を通した一般的な生活の相談相手であったりする)、新郎とその親戚が、大抵、媒酌の後に会いに来る。
 家に入り、挨拶を交わし、あまり長居しない程度に席につくが、その席には何もなく、冬には上着を着たまま座る。この訪問の目的は、新婦のお披露目である。新婦は3度、お披露目のために代母に連れてこられ、毎回新しい衣装で着飾っている。また着替えは納戸で行われる。新婦は皆が揃っている席に行き、客にお辞儀をしてから去る。

◇“Девичник(ジヴィーチニク=別れの宴)”◇
 これは花嫁が婚礼前夜に女性のみを招く別れの宴である。

 その他、結婚式の後、新婦が席につく前に新婦の髪をお下げに編むというものもある。それは彼女が既に結婚した女性であるという印であり、そのお下げは2本編まれる。お下げは既婚の女性、もしくは仲人の女性によって編まれる。お下げを編んだ頭に上に結婚式の花の冠を戴き、“Кичка(キーチカ=既婚女性の晴着用頭巾)”という特別なベールをかぶる。

 結婚記念日は自分自身の結婚の“記念日”として伝統的に祝われる。

−結婚の実例−

◇家長の決め方◇
 ・新郎新婦のどちらか、ЗАГС(ザックス:登録戸籍課)、挙式の際は教会のホールのカーペットに最初に入った方がそこで家長となる。家の主(あるじ)は誰が最初に敷居をまたいだかで決められる。そのため花婿は花嫁を抱きかかえてまたぐという習慣がある。
 ・ЗАГСから帰ってきた新郎新婦に舅と姑がХлеб-сольを手に取って彼らのそばまで行き、新郎新婦のどちらもその一部を両手で触らないでむしり(かじり)取らなければならない。大きくむしり取った方が、そこで家長となる。

◇忌み嫌われる出来事/避けるべき行い◇
 ・新郎と新婦はЗАГСへ行くときも戻るときも道を横切ってはならない。ロシアの田舎では今日でも新郎新婦の道を短くするのは2人をダメにしようと望んでいる魔女だけだと思われているからである。
 ・もし結婚式までに花嫁衣裳を完全にまとった自分の姿を鏡で見てしまったら、新婦には失敗が待ち受けている。この不幸は、例えば、手袋を片方つけてない姿であれば免れることが出来る。
 ・鏡の前で妻は女友達を自分の前に立たせてはならない。夫を持ち去られてしまうからである。これは夫にも言えることである。
 ・婚礼の際、結婚指輪の交換時に、新郎新婦のどちらかがそれを落としたら、悪いことが起こる予兆であると見なされる。
 ・新郎が結婚指輪を新婦にはめたあと、新婦は指輪が入っていた空の小箱をその指輪から下に下ろしてはならない。その小箱は大抵、間もなく嫁いでいくと思われる新婦の女友達に渡される。なぜならその結婚指輪より下に小箱を下ろした女性は、次に嫁ぐと信じられているからである。
 ・もし結婚式のとき新婦のヒールが折れれば、新郎に良くないことが起こる。
 ・もし結婚式のとき冠が頭からずり落ちたら、やもめで暮らすことになる。
 ・習慣を知らなかった為に新郎新婦に与えられてしまったナイフとフォークのセットは家庭生活での不幸を予言してしまうとされている。
 ・夫と妻がひとつのスプーンで食べることは、後にお互い不満足になってしまう。
 ・新婚カップルのどちらかが(新郎新婦とは結婚から1年未満のカップルのことを指す)指輪を壊したりなくしたり、もしくはそれを単に指から落としたりすれば、それは相手を失うことを意味する。

◇幸せをもたらす行い/兆し◇
 ・雨は新郎新婦にとって優しい兆しと見なされている。
 ・新婦が結婚式のために家を出発した後、家の床が拭かれる(敷居は拭かれない)。これは新婦がもう実家に戻ってこないためである。
 ・新郎新婦の通る道を花でちりばめている子供たちは、古い概念では、果樹の結実の女神の機嫌をとるとされている。
 ・新郎新婦は結婚式の後、一緒にひとつの鏡に映らなければならない。これは成功をもたらすと信じられているからである。
 ・新郎新婦は結婚式の後パーティー会場へ行く途中、2人の結婚指輪をモチーフにしたものなどで飾られた車に乗り、ちょっとした市内観光をする。この時、男の子が欲しい新郎新婦は戦車のおもちゃなど男性に関係したものを、女の子が欲しい新郎新婦は人形など女性に関係したものを車の上に飾る。
 ・結婚式のときに新郎新婦のグラスに入れられたコインは、家でテーブルクロスの下に仕舞っておかれる。これは常時豊かであることのおまじないである。

 こうして列挙してみると、ロシアの結婚式には古くからの習慣や言い伝えに基づく多くの決まりごとがあるが、新郎新婦の末永い幸せを願い、今でもこれらの決まりごとが守られているのである。

※読者の方からロシアの結婚式の際に行われる「コインを投げる」「ワイングラスを割る」という習慣についてのご質問が寄せられましたので、ここに合わせてご紹介します。

◇「コインを投げる」という習慣◇
 新郎新婦が結婚式を行う建物に入る時、結婚式に招待された人々が2人の前にコインを投げるという習慣があります。これは、2人の歩く道にはまるでお金が溢れてくるかの如く、若い夫婦が将来、物的に豊かな暮らしを送るということを象徴している。

◇「ワイングラスを割る」という習慣◇
 結婚式の時、新郎新婦は大抵アルコールを飲まないのだが、乾杯の辞の後、一杯のワイングラス(酒盃)を飲みほさなければならない。この時、2人が飲んだワイングラス(酒盃)は床に投げられ、“幸福の為に”壊される。
 何故壊された食器が“幸福”と繋がるかというと、実際のところ、はっきりとした理由は不明だが、2つのワイングラス(酒盃)の割れた破片が混ざり合うことで新婚夫婦が一体になるということを表わしていると思われている。もし、お客の誰かが偶然にグラスもしくはワイングラス(酒盃)を落として壊してしまった時でさえ、招待主はお客が気まずさを感じないように「幸福を」と言う。

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