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「あんた・・・・誰の許可を得てここまで入ってきた?」

憮然とした俺の口調に、正面に座っていた女は如何にも気分を害したと言わんばかりの表情を露にした。

正座をしたまま、キッと睨み付けるように真っ直ぐな瞳で見上げる少女と

初めてその時・・・・視線がぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

 



とある部屋の前に差し掛かった時
見知った者とは明らかに違う気配を感じ瞬間気を張った。
常日頃,斬ったり斬られたりを繰り返す日々に体が馴染むと自然と人の放つ気配を探る癖が付く
殺気ではない・・・凛とした気配だが・・・・
油断は出来ぬと襖の向こうにいる気配を探りながら襖を開け放った。

瞬間に目にしたのは娘盛りの美少女・・・・

「あんた・・・・一体誰の許可を得てここまで入ってきた?」

剣呑とした言葉と憮然とした表情を顔に乗せた少年とも見れる赤い髪をした男の顔を
吃驚した表情で見詰めていた当の美少女は一気に表情を固くしてキッと睨み付けた。

「何も言わずにいきなり入って来て開口一番それなの?初対面の人間に対して随分な物言いね」

顔に似合わぬようなハッキリとした物言いに襖を開け放った当の青年は面食らった。

「このご時世だ・・・・・恩人の家にまったく知らぬ人間が入れば警戒するのは当然の事だ」

なるほど・・・と言うような表情を見せた少女はそれでも非難めいた表情を新たに顔にのせた。

「・・・・確かにね。だけどあなたが思うような人間ならばこんな場所で のほほんと座ってる訳ないでしょう」

戦闘態勢を解かないままの青年の放つ剣気に怯む事無く
真っ直ぐ見据えたまま言い放つ少女に対して 青年は内心大した者だと感服していた。
大抵の者は自分の殺気を放った視線に尻込みをするのに・・・・と不思議な気分に支配仕掛かっていた。
同時に放つ剣気も当然弛む・・・・視線を真っ直ぐ青年に向けていた少女は
直ぐにその気配を感じたかのように少し不思議そうな表情を浮かべた。

(・・・・この・・・・女・・・・・)

女でありながら剣気に敏感に反応を返すなど ただのその辺に居る女ではありえない

(この女・・・・・一体何者だ?)

またピリッとした空気が青年の周りに張り詰めた。

「桂さんの新しい女じゃぁねぇのか?」

赤い髪をした青年の後ろからヒョイと顔を覗かせた無精ひげを生やした男はあごに手を当てながら
ジロジロと少女を眺めた後 口笛を吹く

「えらい別嬪さんだなぁ〜なぁ・・・・緋村」

「植松さん・・・・」

場に合わないような言葉に呆れながら緋村と呼ばれた青年はジロッと植松と言う名の男を睨む

「あははっ!お前と俺が入れば物騒な事も起こせないだろうよ・・・・ましてや女一人でな」

緋村と呼ばれた青年が警戒して入ってきた時と同じ眼を
座っている少女向かって放つ・・・・が
緋村の時と変わらず、目の前の少女は植松の放つ視線も真っ向から受け止めた

「・・・ただの女じゃねぇみたいだな・・・・」

流石の植松も真っ向から視線を受け止める少女に面食らう・・・自然と周辺の気がピンっと張り詰める。
それは当の男達だけでなく・・・少女の放つ気配も混じる。
初夏を向かえ青く澄みきった青空に静かで良く手入れをされた庭が
張り詰めた気配に支配され、いつの間にか鳥の気配も消えていた。

「おいおい・・・それぐらいにしてくれないか?」

「桂さん」

少女が居る部屋の正面・・・庭に設置されている離れから急に声がかかる。

「そのお嬢さんは私のお客人の大事な一人娘さんだよ・・・・
まぁ確かに・・・・驚くほどの美少女で心動かされるものがあるが・・・・」

と言う桂の肩に大きな手を乗せながらヒョイと顔を覗かせた。
体格のガッチリした大きな男だが・・・人の良さそうな表情をしてにこやかに桂へと向けられた。

「何に心動かされると?」

そんな男の言葉に余計なことを言ったかと苦笑いを浮かべて冗談だと軽口を叩く
その声に呼応したように睨みあっていた相手である少女が動く

「父様・・・・お話はすんだのですか?」

座っていた少女はスッと立ち上がり廊下へと歩み出る。
自然・・・襖に付近にいた少女は緋村と植松の間に立つ事になる
相対していた時の感じと違い少女は笑顔で父親に声をかける
あまりの違いに 植松と呼ばれた男も
少女に大して不審者発言をした青年も驚くように少女を見詰めた。


視線を感じて少女は左右に視線を巡らす。

「何ですか?」

少し小首を傾げて見上げる少女に二人とも警戒心を一気に解くこととなる。
先ほどの剣呑とした様子がどこに行ったのかと思わせるぐらい
少女の真っ直ぐな瞳は逸らすことなく二人の目を交互に見詰めていたのだ
海千山千を越え・・・女も人より嗜んでいる男でも子供のように純粋な瞳を向けられては
対処の仕方に困るのだろう。
植松と呼ばれた男も面食らいながら緋村へと目を向ける。
植松の仕草につられる様に少女も自然と顔を緋村へ 
さして背丈の変わらぬ少女の瞳は
青年とは頭一つ半違う植松より、より近い位置で見詰め合う事となる。

トクン・・・・・と一つ青年の心臓が跳ね上るのを感じたが
それを振り払うかのように少女から視線を逸らす。

その瞬間少女の両手が青年の頬を挟んで少女の方へと無理やり向かせる

「ちょっと!ジロジロ見てるから何?って聞いてるのに、何で目が合ったとたん嫌な顔して
そっぽ向くなんて失礼じゃない!」

綺麗な眉を吊り上げ、顔を近づけて怒る少女に面食らう

「なっ離せ!」

自分の顔を挟んでいる二の腕を加減して叩き落としてその場から立ち去ろうと踵を返す。

「っ!何すんのよ!絶〜対っ理由聞くまで離さないんだから!」

ガシッと青年の左腕にしがみ付き 逃がさないんだからっ! と息巻く少女

「これっ!薫止めんか!」

「絶対・・・・嫌っ!」

諌める父の言葉に反発しながら青年の二の腕をしっかり掴んでいる二人の姿をみて
少し離れた所で桂は隣にいるため息を付いている少女の父親と視線を交わしながらクスリと笑う。

先程・・・・空気まで張り詰めたやり取りをした同一の少女とは思えぬほどの代わり様に
腕にしがみ付かれた青年はもちろん
植松も目の前の状況を唖然として見ていた。

「植松さん!黙って見てないで、この娘引き剥がしてください!」

「何よ!男の癖に女相手に二人で向かう気!この卑怯者!」

しがみ付かれた腕を剥がそうと躍起になっていた緋村は急に行動を止めて
娘を呆れたよに見詰ながら言い放つ

「年頃の女が男の腕にしがみ付くって言うのも・・・・・どうかと思うがな」

穏やかな物言いとは裏腹に辛らつな言葉を放つが
少女は怯む事もなく緋村に食ってかかる。

「あなたが私の質問にちゃんと答えてればこんな事しないわよ!早く離れて欲しいのなら
ちゃんと言いなさいよ!」



「緋村・・・・・ちゃんと話した方が早く解放されるそうだぞ」

最早笑いを込み殺しながら植松は緋村に助言にもならぬ事を吐く
最後の頼みの綱は・・・・と視線を桂の隣に居る娘の父親に視線を向けるが
その父親は 苦笑しながら 悪いね・・・・と肩を窄めていた。

左腕にしがみ付く少女に視線を移し薫と呼ばれた少女と目が合う
キッと眉を吊り上げて真っ直ぐ緋村の顔を見詰める姿に
緋村は深くため息を付いた。


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