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常人では考えられない程の距離を息を切らす事無く駆けて行く

それでも緋村の意識は一秒でも早くと己を攻め立てる。

 

 

あの日・・・神谷親子から離れた後

彼女らの素性や状況を植松から聞いた・・・・

京にいる間 厄介になっていると言う 町外れの屋敷へと緋村は韋駄天のように駆けてゆく

真っ暗な闇の中 風を切るように駆ける

目的の場所へ近づくと緋村の鼻腔に嗅ぎなれてしまった赤い匂いが

風の中に混じって来て緋村の心臓が一瞬跳ねあがる

キッと自分を睨む少女の顔が緋村の頭を掠めた。

不安を消し去るように一気に走る速度を更に上げ、匂いの元へと向う。

 

 

 

 

 

暗闇に現われた塀を迷う事無く緋村は一気に飛び越える。

庭の中に足を付いた瞬間激しい剣気に触れた。

同時に耳に飛び込む野太い声の怒号と 薫の悲痛な声

「父上!!・・・・っ父上 返事をしてっ!!」

激しい刀の嘶きが耳を付く

「娘から早く刀を奪え! 女一人に何をやってるんだ!!」

複数の男達の焦りと苛立ちが真っ暗な闇の中にドロリと溶け込んでるようで

緋村はあまりの不快な気配に思わず顔を歪めた。

「父上!!」

薫の悲痛な声に緋村はハッとする。

父のを叫ぶ薫の元へ向うため気配を消して一気に屋敷の中へと駆け込んでいく。

 

薫の入る部屋に向かう緋村の目に

真っ暗な部屋の中で 刀の閃きが一瞬見え

激しい剣気が部屋の中に満ちていた。

剣気の主が薫である事に瞬時に緋村気付く

師範代の腕前とは聞いていた。

刀を持てば一流の剣客だろうと言われている事

それ故に刀を持つ者達から

門下生集めの剣術小町・・・・とも揶揄されているらしい事も

全ては彼女自身の持つ実力から・・・・と気が付かされる。

激しい剣気を 鬼気迫る気配に感じるのであろう 賊は 自覚もなしに息を呑む気配が感じられた。

たった一人の少女に対して迂闊に間合いの範囲に飛び込めずに躊躇している賊の面々

激しい怒りを隠しもせず・・・・父の身を案じる薫の剣気は激しいだけでなく

悲痛な痛みを湛えていて緋村に取っては胸が締め付けられる程の気配だった。

 

少女一人とその父親・・・・侮って忍び込み奇襲をかけたは良いが

予想していた状況とはかなり かけ離れてしまった現状

単純かつ低俗な男共の事・・・・・

長引けば 賊の精神の均衡が崩れるであろう

 

影として己が身を投じている緋村にとって暗闇の中でも目が利く

薫の刀を持つ姿は一部の隙もなかった。

一流の剣術家と肩を並べる程の腕前・・・精神力・・・・判断力は 女にしておくのは惜しいほど

同時に これだけの人数を相手にしておきながら

部屋に転がる賊の中で命が消えてる者は一人もいない・・・上に 反撃出来る状態な奴は一人もいない

 

 

(・・・・・・・・・・・・風に乗って嗅いだ 血の匂いは・・・・・・・・・・まさか・・・・)

 

 

一瞬思考を巡らせていた緋村は 先ほど予想した通り 賊は緊張感に絶えられず奇声をあげ

闇雲に刀を振り回しだした。

無茶苦茶な動きと乱れた気配に薫は一瞬躊躇したのか 対応する反応が遅れた。

薫に向って振り下ろす刀の前に気に躍り出た緋村は 脇に挿した刀を抜刀して一瞬に3・4人の賊を

蹴散らし薫の前に躍り出る。

「!!・・・緋村さん?!」

目を見開き驚く薫の前に滑り込み 自分の背後に薫の身を置いた。

「越路郎さんは?」

振り向かずに薫へと尋ねる

気を張った状態が瞬時に崩れる。

「急に父の気配が分からなくなってから・・・・・・ズッと呼んでいるのに・・・・返事がないのっ!!」

泣くのをギュッと堪えるように刀の柄を握り締める薫

屋敷の中には既に人の動く気配はなく

外からの気配・・・・しかも争うような気配ではない事が 緋村は内心で苦虫を噛み潰したような

苦々しい気持ちで一杯になる。

 

 

「・・・・・・賊の目当てはアンタを連れ去る事が目的だ。入り込んだ賊がまだ居る以上・・・・全員倒すまでは 

俺から離れるな」

その言葉に薫の息を呑む気配と怪訝な様子が手に取るように伝わった。