なぜ怪我をするのだろう。

それはあなたが動きまわれるから…。

なぜ痛みを感じるのだろう。

それはあなたが健康だから…。

なぜ血が流れるのだろう。

それはあなたが生きているから…。

 

 

 

ー目覚めればマフィア!?〜鉄と薬と貴方の臭い〜ー

 

 

 

「ひ、ひ、雲雀さん…;」

擬音を付けるならギギギギ…と錆びた蛇口のようにゆっくりと振り返りながら、は新たな命の危機に顔を青ざめた。
何度、目をこすっても入り口には腕を組んだ雲雀が斜に構えてこちらを見ている。

「な、なななななな何で…;」

飛び込んだ時には部屋には最初誰もいなかったはずなのだ。
それは転がり込んですぐに確認した。
まったく音もなく気配もなくこの人はどこから沸いて出たのだろう。
窓を壊した罪悪感からか、若干いつもよりも目が鋭く見えるのは気のせいだろうか…。(気のせいだよBy雲雀)
立ち上がる途中だったのに完全に動けなくなってしまった。
きっと今の私は、どこかへっぴり腰のようで何とも情けない格好だっただろう。

「・・・割れてるね」

足下に散らばるガラスの破片に目を落としながら言えば、面白いくらい大きく肩を揺らすに雲雀は思わず
笑いそうになるのをこらえた。
外の様子を見れば彼女が故意に窓ガラスを割った訳じゃないことくらい想像がつくのに。

「まったく、どこで何してるのかと思えば…」

雲雀はゆっくりとの居る方へ足を踏み出した。
怒られるか殴られるとでも思っているのだろう。
彼女はきょろきょろと挙動不審に室内を見渡していた。

「隠れ場所なんて無いよ?」

僕としては親切で言ってあげたつもりだったんだけど(どこが!?)
逆に恐怖を煽ってしまっただけのようだった。(日本語って難しいね)
歩くたびに靴の下でガラスが砕ける音が聞こえる。

「放課後は、応接室来てって言っておいたよね?」

瞬間、「ぁ」と声を上げてしまったに雲雀はあからさまに眉を寄せた。

「へぇ、僕との約束忘れて群れてたんだ?」
「ッ//////////(ち、近い…;)」

歩みを止めた雲雀との間には、もう拳一つ分ほどの距離しかなかった。

「君、ちょっと教育した方がいいかもね…?」

凶悪な笑みを浮かべて顔を近づけてくる雲雀にはどう返したらいいか解らなかった。
ハッキリきっぱり正直に且つ常識的に言えば今の心境は怖いの一言につきるだろう。
だがそう思う反面、格好いいなーなどと呑気なことを思ってしまってる自分に泣けてくる。
断言しておくが私は決してMじゃない!!(泣

 

「あんまりを虐めるなよヒバリ」

 

胸の内で泣き叫んでいたの耳に救いの声が聞こえた。

「リボーン!!(泣」
『この前の赤ん坊…』

雲雀とがほぼ同時に視線を送れば、割れた窓の枠の上に危なげなく立っている小さなヒットマンの姿があった。

、よくツナを護ったな。ファミリー合格だぞ」

心なしか嬉しそうにリボーンはそう告げた。

「ファミリー?何の群れ?」

そして心なしか不愉快そうに雲雀はそう呟いた。
は雲雀の意識がリボーンに向いている隙にそっと身体をずらした。

えぇ、この期に乗じて帰る気満々ですよ。

それが何か?(開き直り)

だってこのままここにいたら確実に雲雀さんに怒られる。(約束の事とか窓の事とか…;)

一晩経ったところでこの人は忘れなさそうだけど、それでも明日の無事より今の無事!

この後リボーンが一言「じゃぁ帰るぞ」って声をかけてくれれば、自然に流れに乗って雲雀さんから脱出できる。
そんな期待を込めてリボーンにアイコンタクトを送れば、そこは流石一流なだけある。
私の視線にすかさず気づいてリボーンはパチンとウィンクを返してくれた。
犯罪級の可愛さとはまさにこのことを言うのだろう。
しかし、キュ〜〜ンとしながらリボーンを見つめていたに、彼は犯罪級に恐ろしいことをおっしゃりやがった。

 


「んじゃ、俺たちは帰るからな」

 

ぇ。・・・・私は?

 

「お前はヒバリに送ってもらえ」

 

Why!?

 

「夕飯までには帰ってこいよ?ママンが心配するからな」

ピョンッと窓枠から飛び降りながら言うリボーンには慌てて駆け寄ろうとした。

「ちょっとリボーン!?私も帰ッ…!?」

が、それは太股下に走る引きつるような痛みに阻止された。

「その足じゃ無理だろ?バイクで送ってもらえ」

グランドに降りたリボーンの声を聞きながらは足に走る痛みの原因を見た。
これがなければリボーンの後を追って窓枠を飛び越えていたところだ。

「そう言うわけだ。よろしくなヒバリ」
「仕方ないね」

『手は出すんじゃねーぞ?』
『さぁ?僕の知ったことじゃないね』


「ふん。んじゃな」

肩をすくめながらも承諾の言葉を口にする雲雀に、リボーンは策士的な笑みを帽子の下に隠して歩き出した。
は俺のだからな…』暗にそう語っているような笑みだった。
逆にそんな笑みを浮かべるリボーンに雲雀は不愉快そうに口をへの字にした。
だが、今のはそんな二人の様子など気にしている場合ではなかった。
ましてや暗に交わされてる内容なんて問題外。


「嘘でしょぉ〜〜(泣」

意識すればするほど痛みを増しているようで、傷は次第に熱を持ち始めた。
心臓が移動してしまったかのような脈動が足から伝わってくる。
傷の存在を知った今では気付かずにいたことの方が不思議なほど、彼女の足には大きな亀裂が走っていた。

「君、鈍いんじゃない?」

ズイッと顔を近づけて傷を覗き込む雲雀にはうっすらと頬を赤らめた。

「リ、リボーンは/////?」
「帰ったよ」
「そ、そぅ/////ですか////」

は雲雀に悟られないようにさり気なくスカートの裾を押さえた。
傷はスカートの裾のちょうどすぐ下あたりにある。
別に中を覗き込まれてるわけではないのだけれど、そんなに顔を近づけられてじっくり見られるのは…。
なんだか、ちょっと恥ずかしい。

「深くはないみたいだけど」

体を起こしながら雲雀は言った。

「歩ける?」

歩けたらとっくに帰ってます。
…とは流石に言えなかった。(泣 

第一、まだ歩けないと確定したわけではない。
は試しに必死で窓にしがみついている手を放し、足に体重をかけてみた。

結果はすぐに出た。

「なにやってるの」


足に力など入らなかった。

「が、がんばってみようかと…;」

割れたガラスの散らばる上に崩れ落ちそうになったの腕を掴みながら、雲雀は呆れた視線を送ってきた。

「君のがんばりっていつも空回りしてるよね。怪我増やしたいの?」
「…すいません」
「歩けないなら歩けないって言いなよ」
「ぅぅ…すいません。…肩を貸してください(泣」

あの雲雀恭弥に肩を貸せだなんて…ツナが聞いたら失神するだろう。
頭の上から降ってくる故意としか思えない馬鹿でかい溜息に、は身をすくませた。
私だってもう気絶しそうです。
ほら、何かもう身体に重力を感じない。
浮力でも生じたかのようにフワっと…って、
はぁ!?
そこでの思考は現実へと戻ってきた。

「君と僕の身長差考えなよ。肩なんて貸したところで僕も君も歩きにくいだけでしょ」
「だ、だからって何でお姫様だっこなんですか////////!?」
「怪我人がうるさいよ」
「う、う、腕折れちゃいます//////!!!」
「馬鹿にしてるの?折れないよ」

ボッと顔を赤くさせて抗議するの声を右から左に聞きながしながら、雲雀はスタスタと彼女を抱き上げたまま歩き出した。

 

 

 

校内にはほとんど誰も残っては居なかった。
だからといって恥ずかしさが紛らわされる訳じゃない。

「ッ〜〜〜///////」

は雲雀に抱かれたまま両手で顔を覆って恥ずかしさに耐えていた。
廊下に続く窓の向こうから部活動に励む生徒のかけ声が聞こえてくる。
その声が反響しているせいか、ただでさえ静かな校内は更に静かに感じられた。
だから余計なのかもしれない。
心臓はやたらとバクバクとなってる気がするし、頭はその音でぐるぐるになっていた。
もう何が何だか解らない。

「し、死ぬ…///////;」
「大袈裟だよ」

絞り出すように呟くに雲雀はやれやれと肩をすくめた。
本来、群れることが嫌いな雲雀が他人の面倒をここまで見るのは本当にまれなことだった。
相手が相手ならとうの昔に捨て置いていたところだ。
下手をすれば噛み殺していた可能性だって無くはない。
それを自らの手を煩わせているなんて、他の風紀委員の面々が聞いたら卒倒するだろう。

「恥ずかしさと混乱で人が死ねるなら私は後3分ももちません…/////////」

まだ会って二日目だが、それ程までに雲雀はのことを気にかけていた。
人との接触すら疎ましく思っていた雲雀が持った、始めてと言ってもいい他人への好意。
そんな彼の想いが燃え上がるのに時間などかからなかったのは言うまでもない。

「…僕には君の発言の方がよっぽど恥ずかしいよ…;」

雲雀はうっすらと染まる顔を誤魔化すように小さく溜息を吐いた。

 

 

 

幸いなことにが死ぬ前に彼らは保健室にたどり着くことができた。

「良かったね。3分以内にたどりつけて」

雲雀は意地悪く笑いながらをベッドに腰掛けさせた。
物知り顔で棚をあさり始める雲雀を横目に、は足の傷に視線を走らせた。
固まりだした血と、いまだに流れ出ている血とで傷口はかなりえぐいことになっていた。
大きさこそあれど深くはないこの傷は、窓ガラスを突き破った時にかすったか何かしたのだろう。
以後、安易に窓は突き破らないしようとは心に誓った。
ズキズキする傷口から視線を下げれば、足を伝って落ちた血で靴下はそれはもう酷いことになっていた。

「ぁ〜…;」

流石にこんな靴下をはいて帰ったら奈々さんにいらない心配をかけてしまいそうだ。
ツナもきっとやかましく騒ぐだろう(心配すると言ってやれ)
はベッドに座った状態のまま前屈みに身体を折ると、靴下の端に手をかけた。
脱ぎやすいように足を動かすと、傷が引きつって少し痛かった。

「…ッはぁ」

薬棚から要りような物を適当に見繕って振り返った雲雀は、そんなの姿にギョッとした。

「わぉ、ストリップでも始める気かい?」
「なッ///////!?靴下脱いだだけですッ/////!!血みどろだったから!!」

真っ赤になって必死に否定するに雲雀はクッと笑いを漏らした。
まったく…君って人はホントに飽きない子だね。
今朝だって素直に返事したと思えばいくら待っても全然応接室に来ないし、仕方なしに巡回してたら窓をぶち破ってるし、
怪我してると思えば気づいてないし、歩けもしないのに歩こうとするし、包帯探してあげてたらいきなり靴下脱ぎだすし。

「僕はてっきり誘ってるのかと思ったよ」

雲雀はニヤリと笑いながらゆでダコみたいになってるの前に跪いた。
とたんにワタワタとしきりに動いていた彼女の腕も身体も表情もカチンと固まった。

「君ってよく固まる子だね。病気かい?」

不可解な物を見るような目で見てくる雲雀には反論の声も出なかった。

ツナ…ツナ…ツナ…どうしよう…;

あの雲雀さんが跪いてます。

治療のためとはいえ(←だいたいそれ自体あり得ない)明日は雨だよ。台風だよ。

「ま…固まっててくれた方が作業しやすいしけどね」

雲雀は手近にあったティッシュを数枚引き抜くと、それを傷の下に押しあてて、が抵抗する間もないまま上からマキ□ンを盛大に噴射した。

「g1rみpぎぃdwッッ〜〜!!!!」

言葉にならない叫び声を上げているを見上げながら雲雀は平然と(若干楽しそうに←S)作業を続けた。
雲雀の手つきは優しい物だったが、マキ□ンから繰り出される痛みは尋常じゃなかった。

「ひ、ひ、雲雀さん。も、もう勘弁してください(泣」

これは新手の拷問ですか!?

はグッと目を瞑って繰り返し襲ってくる痛みに呻きながら、無意識に雲雀の肩口をキュッと掴んだ。
だが、この治療行為で苦しんでいるのは決して彼女だけではなかった。

「静かにしてなよ。治療中だよ」

淡々とした言葉を返しながらも雲雀の手は徐々に早まっていた。

「はぁ…////;」

まったく…。
きっと彼女は僕がどれだけ理性を総動員させてるかなんて考えもしないんだ。
君が痛みを噛み殺す声だとか、身をすくめるたびにちらちら揺れるスカートの裾が
どれだけ僕を誘惑してるか解ってるの?(ワォ僕、変態みたいだ)

「ぃッ…たい…ひ…ばりさ…ん(泣」
「//////ッ…;」

ホントに何なのさ…これは新手の拷問かい?

 

 

「「ッはぁー…」」

器用に包帯の端を止めて治療の終わりを雲雀が宣言したとたん、二人は揃って息を吐いた。

「何で雲雀さんまで疲れてるんですか?」
「うるさいな。咬み殺すよ?(僕だっていろいろ耐えるものがあったんだよ)」
「す、すいません…;ありがとうございました」

雲雀はプイッとそっぽを向きながら空になったマキ□ンをくずかごに捨てた。

「別に」

いくら何でも手当の最中に理性を失うわけにはいかないからね。
この感情が初めてだからと言って僕だってバカじゃない。
常識くらいはあるさ。(ま、そんな物に縛られないけどね)
強引に事を進めれば彼女が僕を拒絶することくらい想像がつく。
何でか知らないけど、ただでさえ怖がられてるみたいだしね。
でも、このまま何もしないで彼女を帰すのは何だかとっても気に入らなかった。
彼女の一挙一動に踊らされそうになってる自分も、赤ん坊の言ったことを几帳面に護る結果になってしまってる自分もとても不愉快だ。
だいたい僕が我慢なんて、それ自体似合わないって言うのにこんなにがんばったんだよ?
何か特典くらいついたって…。

「ん?」

ふと座ったまま包帯を巻かれた足の様子を見ていたに、雲雀はグイッと顔を近づけた。

「ねぇ」
「は、はい…;」

は雲雀の突然の接近に思わず体をそらしたが、そらした分だけ前にのめってくる雲雀との距離は一向に変わらなかった。

「ココ…」

雲雀はその細くて長い指での首筋を指さした。

「怪我してる」
「ええ?!」

雲雀の言葉に慌てて首に手を添えると確かにぴりっという痛みが走った。
足の傷ほどではないようだが、切れてるのは確かだった。

「み、見えませんでした…;」
「見えてたら僕は君の目の位置を疑うよ」
「そうですね…ってさっきから雲雀さん近いんですけ…どぉッ!?ちょッ何してるんですかッ////////!?雲雀さんッ/////!?」

そらしすぎた体を支えきれなくなった腕がくだけて、ベッドに倒れたに雲雀は躊躇なく覆い被さってきた。

「君っていちいちうるさいよね(ま、その反応が可愛いんだけど)」

遮るように前に突き出される手をどけながら雲雀はツッ…との首に舌を走らせた。

「や…ちょ…雲雀さんッ//////!?何にしてんのッ!?」

淡々と恥ずかしげもなく答える彼の声と同時に、熱くて湿った感覚のとピリッとした痛みが一定のリズムで首に伝わってくる。

「消毒だよ」

思わず敬語も忘れて叫けぶから身を起こした雲雀は、こころなしか楽しそうな顔をしていた。

「傷って舐めると治るんだって。良かったね」
「なッ///////!??!」

そう悪びれなく笑う雲雀には一瞬言葉を失った。
が、流石にここで流されるわけにはいかない。

「よッ良くないですよ///////!??マキ□ンはどうしたんですかッ///////!!?」
「無くなっちゃったよ。まったく用意が悪いよね」
「あれだけぶっかければ当たり前ですッ//////!!!!」
「ぁ、足の傷も舐めてほしかった?」
「何言ってるんですかッ///////!!!」

っていうか何なんですかこの人は!!!!

突っ込みどころが多すぎて、もうどこから突っ込んで良いのか解らなくなってきた。
漫画越しにもぶっ飛んだ人だとは思っていたけど、やっぱり神経がぶっ飛んでるとしか思えない。
思っていたよりも乱暴な人ではないのは解ったけど、別の意味で気が抜けないよ!!(泣

「なんかまたいつの間にかお姫様だっこなんてされてるしッ//////!!?」
「だって君歩けないでしょ…;だから僕が送っていくんだし」

さも当たり前だという態度の雲雀には二の句が付けなくなった。

あぁ…突っ込むだけ…無駄なのかな?

 

を腕に抱えながらも律儀に校内を見回る姿は、流石風紀委員長と言った所だ。
校内を一通り回ったおかげで途中しっかり二人の荷物も回収することもできた。
だが、それはそれ。これはこれだ。
いくら委員の仕事だからって抱れっぱなしで、学校中歩き回られたら堪らない。

「雲雀さん…;やっぱりおろしてください///////」

二人分の鞄を抱えながら雲雀の腕の中ではボソボソと言った。

「自分で歩きますから(意地と根性で)」
「やだ」
「即答ですか!!?(泣」
「どうせ歩けないよ。二度手間になるからやだ」

泣きそうな顔(すでに半泣き)で訴えるを雲雀はバサッと切り捨てた。
だがここで引き下がるじゃない。
顔を赤くし過ぎて、鼻血でも出してしまうんじゃないかという心配まで浮上してきたくらいだ。
流石にそんな失態はしたくない。

「巡回するなら保健室においてったら良かったじゃないですか〜ッ//////(泣」

っていうか絶対のその方が楽でしょ!?
何でわざわざ重荷を抱えて学校一周してるんですか貴方は!!
一気に喚くに雲雀はやかましそうに眉をひそめた。

「だって君、逃げるでしょ?(別に重荷でもないし)」
「速攻で!…じゃなくて、なんでそんなに信用無いんですか!!」
「人間、そう言う不意に漏らした本音から信用が無くなっていくんだよ」

いくら訴えても雲雀がをおろす気配が見あたらなかった。
寧ろ暴れて無理矢理降りようとするの気配を察したのか、微妙にまわされる腕に力が込められたくらいだ。
背中と足にまわされる腕が…触れている部分が熱い…。
意識しないようにしてもどうしても意識してしまう自分に更に恥ずかしさが募った。


「君は…」

ふと、雲雀の足が止まった。

「僕に触れられてるのがそんなに嫌なの?」

一瞬、ふせていた顔を上げることができなかった。
頭の上から降ってきた声が彼の物だと思えなかったのだ。
意地悪く笑う声でも淡々とした事務的な声でも、呆れた溜息混じりの声でもなかった。
例えるならガラスを弾いた瞬間の大きくともすぐに消えてしまうような声。
そんな声があの雲雀の物だとはとても思えなかった。
顔を上げてはいけないような気がした。
見てはいけないような気がした。
いや、ただ私自身が見たくなかっただけなのかもしれない。
そんな声を出させてしまっていることに罪悪感すら感じてしまっている自分がいた。

「そ…んなこと、ないです」

気付いた時には口が勝手に動いていた。

「嫌だなんてこと…ないです////////」

恥ずかしいなんて感じる間もなく声が勝手に飛び出していた。

「…死ぬほどドキドキしますけど、ちょっと嬉しかったりしますし…///////」

にへらっと照れたように笑いながらは恐る恐る雲雀を見上げた。

「へぇ、そぅなんだ」

見上げた先の雲雀は良いのか悪いのか、いつも通りの底意地の悪笑みを浮かべていた。
安心した反面、先程の自分の台詞に赤面する。
今度はが顔を見せられなくなる番だった。

「じゃぁ問題ないよね」

笑いを噛み殺したようないつもの意地悪い声に、ダッシュで地球の反対側くらいまで逃げたくなったが、そんなの到底無理なのは解ってる。
足もそうだがそれ以前に、雲雀さん相手に逃げきれる気がまったくしない。

「雲雀さんなんか、腕グダグダになって明日の書類整理すらできなくなっちゃえばいいんです/////」
「そしたら君が代わりにやってね」

気のせいか先程より上機嫌で歩き出した雲雀にはとうとう観念するしかなかった。

「大好きなトンファーが振り回せなくなってもしりませんからね…//////」

 

 

玄関口から見えた空は時間の割にまだずいぶん明るかった。

「雲雀さんおろしてください」
「いい加減くどいんだけど」

もう昇降口も目の前だというのに、往生際が悪すぎると言わんばかりの目で見てくる雲雀に、は苦笑いで返した。

「いえ…そうじゃなくて靴…;」

帰るには上履きを履き替えなければならない。
勿論おろして貰ったついでに、あわよくば逃げようとも思ったが
この体勢のまま靴を履き替えるのは流石に難しいのではと思ったのも本当だ。
しかしそんなの思考を読んでいるのかいないのか雲雀は冷静に答えた。

「君はもう外履きでしょ?」
「雲雀さんは?」

入ファミリー試験から履き替えていないとは違い、雲雀は勿論、内履きのままだった。
彼の性格上このまま帰るなんて事は間違ってもあり得ない。
だからと言って、人を抱えたまま下駄箱から靴を取り出して履き替えるなんて芸当、なかなかできる物でもない。

ここは大人しくをおろして履き替えるかと思われた。

・・・・思われたのだが…。

「雲雀さんにできない事ってないんですか…;」
「ふん。誰も僕を常識で縛ることはできないよ」
「いえ、そう言う問題じゃないと思うんですけど…;」

どうやって身につけた技なのか、雲雀はを抱えたまま自分の靴を履き替えた。

 

 

「はい」
「んぎゅッ」

バイクの後部座席におろされたと思ったら、間をおかないままヘルメットが降ってきた。

「ちゃんと捕まっててよね」

身軽にバイクにまたがってキーを差し込む雲雀に、は大きすぎるメットをかぶりなおしながら首をかしげた。

「雲雀さんヘルメットは?」
「必要ないよ。ほら捕まって。行くよ」
「だ、ダメですよ!!ノーヘルなんて!!私はいいですからかぶってください!!」

淡々という雲雀には慌てて自分の頭にあるメットを脱ごうとした。

「いらないよ」

もっとも、ボスッと上に乗せられた雲雀の手によってそれは阻止されたのだが…。

「ぃ、いらな、くない、で、すよぉ〜ッ…;」

言葉を切らせながらはヘルメットを持ち上げようとしたが、成果は出なかった。
片手vs両手(必死)なのになぜ勝てないのでしょう。
いくらがんばってもビクともしないヘルメットからは諦めて両手を放した。

「はぁ…雲雀さんの顔に傷が付いたら泣きますよ…?(ファンが)」
「へぇ、それは面白いね」
「面白がる話じゃないですよ…;」

まぁ「傷ついてこそ!」って喜ぶファンもいますけどね…;
確かに漫画で見る限りじゃ雲雀さん、結構頻繁に生傷と流血だらけになったりするし
「今更顔に傷が!?」なんて生易しいこと言ってるのもバカみたいな気もするけど…;
それでも実際、目の前にこんな綺麗な顔があったりすると…。

「…事故おこさないでくださいね?」

傷ついて欲しくないな…と思ってしまう。

「僕は事故なんておこさないよ」

心配するをよそに雲雀はくだらないとばかりにエンジンをかけた。
いったいどこからそんな自信が沸くのだろう。

『まぁ大丈夫かな…;(そんな展開はなかったはずだし…;)』

はそっと彼の学ランを掴んだ。
だがいくら待ってもバイクは走り出さない。

「雲雀さん?」
「あのさ君、馬鹿?」

呆れかえった表情で振り返ってきた雲雀には何も返せなかった。

「学ランなんか掴んでどうするの?君、落ちるよ?」
「ぁはは…」

私はとりあえず笑ってみた。
ええ、解ってますよ。
解ってますよそんなこと。
羽織ってるだけの学ランなんて掴んだところでほとんど意味がないって事くらい。
上手くバランスとってやるぜ!!くらいの意気込みだったんです。
だってだって…学ラン以外にどこを掴めって言うんですかッ//////…;

「百面相してないで早く腕まわしなよ」

だがそんなの気持ちなんて知りもしない雲雀は「早くしなよ」と催促してくる。

「落ちても僕は拾いに戻ったりしないからね」
「失礼します(抱き)」>(反応0、5秒)

先程までのためらいや恥じらいはいずこやら。
言うが早いがは雲雀の腰に抱きついた。

「最初からそうすればいいのに」
「…はぃ//////」

かぼそい声と背中に伝わる頷きに、雲雀はバイクを走らせた。
いろいろな意味で赤くなる顔がヘルメットの下に隠れていることに心底安心していた。
プライドも何もないけど、私は恥より命の方が大事だ。
だって、この人なら本当に捨て置かれそうな気がしたんですもん(泣

「しっかりつかまってないと落とすよ?」


そら見たことか…(泣


平然とスピードを上げようとする雲雀には泣きそうになった。

「脅かさないでくださいッ!」
「本気だよ」

そんなとは裏腹に雲雀はどこか満足そうに笑っていた。

「あぁ…何だか私、雲雀さんと一緒にいると、泣くか、喚くか、赤面するか、青ざめるかしかしてない気がする(泣」
「(クス)…なんか余裕みたいだからスピード上げるよ」
「嘘?!ちょ、ちょっと余裕なんて無いですってばぁッ!!!(泣」

思いをはせる間もなく告げられた雲雀の言葉に、は慌てて意識を引っ張り戻した。

「しっかりつかまってれば問題ないでしょ?」←S(笑
「もぅ〜ッ////////(ぎゅッ)」

は雲雀の背中にまわす腕に力を込めながら今日最大の溜息をついた。


ツナ〜帰ったら癒してね(泣

この世界でちゃんと話が通じるのツナだけな気がする。

私、疲れちゃったよ。(こっち来てまだ二日目だなんて信じらんない)

何か凄く忙しない一日だった気がするし…;

こうして策士でドSな彼に文字通り振り回されながら、は帰路についたのでした。

 

NEXT

 

ーあとがきー

別名、雲雀さんやりたい放題の巻。
本編ではまだまだ出番のない雲雀さんがしびれを切らしてで張っちゃいました…;
つか、マキ□ンって…;ちっとも伏せ字になってない(笑
次はビアンキですね!!獄寺が動いてくれると良いのですが^^;
何せあのツンデレ、同じツンデレでも雲雀さんと違って奥手で…;
因みにヒロインはめっちゃドキドキはしてますが漫画のキャラだと割り切ってますので、
がっばってる雲雀を始め山本、獄寺、リボーン、綱吉、骸などを恋愛対象と見るのはまだまだ先だったりします。(笑


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