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The tale of Genji

源 氏 物 語

成 立 平安時代

作 者 紫 式部

<物語文学>

* 内 容 *

 帝の第二皇子として生を受けた光君は、母の身分が低く後ろ盾もないため臣籍に落とされ源氏の姓を賜る。幼くして母に死に別れ、母とうり二つだという父の妃・藤壷中宮に許されぬ恋慕の情を燃やしながら、多くの女人との恋愛をかさねる。

 父帝の死後、いちどは須磨へ漂泊の身となるが、のち帰京。順調に出世し准太上天皇と呼ばれる身分にまで昇りつめる。

 冷泉帝(源氏と藤壺中宮との不義の子)の後見としてわが世の春を謳歌する源氏だったが、晩年は年若い妻・女三の宮の不義密通、最愛の妻・紫の上の死去など悲しみにくれながら出家を果たす。

 「源氏物語」最後の十帖は「宇治十帖」とも呼ばれ、源氏の子(実の父は柏木である)薫と、孫の匂の宮が繰り広げる愛憎の物語となっている。

*「源氏物語」の現代語訳 *

・・・いづれの御時にか、女御更衣あまたさぶらひたまひけるなかに、いとやんごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。・・・

 多くの作家が「源氏物語」の現代語訳を手がけてきた。代表的なものをご紹介しよう。

 いつの御代のことでしたか、女御や更衣が賑々しくお仕えしておりました帝の後宮に、それほど高貴な家柄のご出身ではないのに、帝に誰よりも愛されて、はなばなしく優遇されていらっしゃる更衣がありました。
 はじめから、自分こそは君寵第一にとうぬぼれておられた女御たちは心外で腹立たしく、この更衣をたいそう軽蔑したり嫉妬したりしています。まして更衣と同じほどの身分か、それより低い地位の更衣たちは、気持のおさまりようがありません。更衣は宮仕えの明け暮れにも、そうした妃たちの心を掻き乱し、烈しい嫉妬の恨みを受けることが積もり積もったせいなのか、次第に病がちになり衰弱してゆくばかりで、何とはなく心細そうに、お里に下がって暮らす日が多くなってきました。帝はそんな更衣をいよいよいじらしく思われ、いとしさは一途につのるばかりで、人々のそしりなど一切お心にもかけられません。全く、世間に困った例として語り伝えられそうな、目を見はるばかりのお扱いをなさいます。上達部や殿上人もあまりのことに見かねて目をそむけるという様子で、それはもう目もまばゆいばかりの御鐘愛ぶりなのです。
「唐土でも、こういう後宮のことから天下が乱れ、禍々しい事件が起こったものだ」
 などと、しだいに世間でも取沙汰をはじめ、玄宗皇帝に寵愛されすぎたため、安禄山の大乱を引き起こした唐の楊貴妃の例なども、引き合いに出す有様なので、更衣はいたたまれないほど辛いことが多くなってゆくのでした。ただ帝のもったいない愛情がこの上もなく深いことをひたすら頼みにして、宮仕えをつづけています。
   (中略)
 それにしても、よほど前世からのおふたりの御縁が深かったのでしょうか、やがて、世にもないほど美しい玉のような男の御子さえお生まれになったのです。                       (瀬戸内寂聴訳)


 何という帝の御代のことでしたか、女御や更衣が大勢伺候していました中に、たいして重い身分ではなくて、誰よりも時めいている方がありました。最初から自分こそはと思い上がっていたおん方々は、心外なことに思って蔑んだり妬んだりします。その人と同じくらいの身分、またはそれより低い地位の更衣たちは、まして気が気ではありません。そんなことから、朝夕の宮仕えにつけても、朋輩方の感情を一途に害したり、恨みを買ったりしましたのが、つもり積もったせいでしょうか、ひどく病身になっていって、何となく心細そうに、ともすると里へ退って暮らすようになりましたが、帝はいよいよたまらなくいとしいものに思し召して、人の非難をもお構いにならず、世の語り草にもなりそうなお扱いをなさいます。
(中略)
 そのうちに、前の世からのおん契りが深かったのでしょうか、またとなく清らかな、玉のような男皇子さえお生まれになりました。                                   (谷崎潤一郎訳)


 どの天皇様の御代であったか、女御とか更衣とかいわれる後宮がおおぜいいた中に、最上の貴族出身ではないが、深い御寵愛を得ている人があった。最初から自分こそはという自信と、親兄弟の勢力に恃むところがあって宮中に入った女御たちからは、失敬な女として妬まれた。その人と同時、もしくはそれより地位の低い更衣たちはまして嫉妬の炎を燃やさないわけもなかった。夜の御殿の宿直所から退す朝、続いてその人ばかりが召される夜、目に見耳に聞いてくやしがらせた恨みのせいもあったか、からだが弱くなって、心細くなった更衣は多く実家に下がっていがちということになると、いよいよ帝はこの人にばかり心がお引かれになるという御様子で、人が何と批評しようともそれに御遠慮などというものがおできにならない。御聖徳を伝える歴史の上にも暗い影も一所残るようなことにもなりかねない状態になった。
  (中略)
 前世の縁が深かったか、またもないような美しい皇子までがこの人からお生まれになった。 (与謝野晶子訳)

*「源氏物語」の作品化 *

・「新源氏物語」上・中・下(新潮文庫)

 「霧深き宇治の恋〜新源氏物語」上・下(新潮文庫)田辺聖子 著

 田辺聖子による「源氏物語」完全小説化。

・「春のめざめは紫の巻」(集英社文庫)

 「私本 源氏物語」(文春文庫)田辺聖子 著

 「源氏物語」を徹底的にパロディー化した作品。美中年・光源氏とヒゲの中年家来が繰り広げる、ズッコケ源氏物語。玉鬘や女三の宮なんて若い娘には光源氏もタダのオッサン。源氏と家来の関西弁もおかしい。

・「女人源氏物語」(集英社文庫)瀬戸内晴美 著

 光源氏をとりまく女性たちの口から伝えられる「源氏物語」。

・「窯変 源氏物語」橋本 治 著

 豪華絢爛という形容のふさわしい、美しい日本語で描く「源氏物語」。

・「あさきゆめみし」大和和紀 

  学校図書館にマンガ本が置かれるようになったのは、これがきっかけではないでしょうか。「源氏物語」完全マンガ化。王朝の雅の世界を視覚にうったえる不朽の名作。