芝天狗

 芝天狗あるいは俗称シバテンの名称は、繁草に棲む天狗という意味で、位の低い小天狗を示しており、別名に同じような意味で木葉天狗(このはてんぐ)とよんでいる。高知県では山の谷川に棲む猿猴(えんこう)が下って平野部に棲んでいるのが芝天狗だとされ、九州地方でいう河童と山童の交代の性質に近いと思われる。ただし、芝天狗と猿猴のいずれにも、どちらが河童で、どちらが山童的な役割なのかがはっきりしていない。そもそもその名が示すように、芝天狗は天狗の類であると思われ、本来は河童を指す名ではないのである。

 静岡県では木葉天狗は烏(からす)天狗の一種で、鳶(とび)に似た羽もつ鳥人であった。こちらは別名境鳥(さかいどり)とよばれ、鳥の嘴(くちばし)をもつ人面に似た顔をしているといわれる。いっぽう高知県の芝天狗は羽はなく、猿もしくは猿人のような姿であるといわれ、猿猴の姿とは大差がないようである。

 静岡県では木葉天狗は、大井川近辺に棲み、空を飛んで川の魚を採るといわれ、水辺には縁が深い。

 川天狗も鳥天狗の一種であるようだが、やはり水辺に縁があり、同じように川の魚を採るといわれる。

 また、磯天狗は海岸に棲む天狗で、やはり魚を採るといわれる。

 さて、ここで河童と天狗との類縁関係を示す次のような一例がある。

 『和漢三才図会』によれば天狗は、冶鳥(治鳥)と同類ではないかという指摘がある。そしてさらに冶鳥は、山ソウや山精と起源を同じくしているようである。山ソウといえば日本の山童の起源となる妖怪である。このように芝天狗や川天狗に、山童との関連がうかがえられるのである。

 

 

戻る