
あまりにも美しすぎる格闘漫画
たなか氏が世に放った格闘漫画である。クラッシュ正宗に見られるような勝負シーンでのさまざまな美しい比喩表現がこの漫画にもふんだんに使われている。菅原との決戦ではいったん潮が引いてから大波が来る海の風景を描いて菅原の底知れない強さを表現することに成功した。さらにリョウと菅原との死闘の決着シーンには都会での若者の日常生活のカットや、公園で寝るホームレスのカット、セックスのカットなどを織り交ぜ、3巻にも及ぶ死闘の決着を美しくも醜く表現している。こうした大胆なコマ割とページの使い方で芸術的な作品観を生み出しているのが、掲載雑誌を生で読むと正直しんどいものがある。大胆な表現方法が魅力のこの作品が、一向に話が展開しない、読者をイライラさせる漫画になってしまうのだ。だから、なるべくならコミックスでまとめて読むのが一番である。そうすれば、この作品の美しさが堪能できる。
こうした表現方法もさることながら、主人公・成嶋リョウの存在が今までの格闘漫画と比べるとあまりにも逸脱しすぎている。たいていの格闘漫画の場合、己から強くなることを望み、戦いを始める。例えば、「バキ」では父親・勇次郎が母を殺し、その復讐を父親にすることがバキの戦う理由ともとれるが、母を殺される前からバキは己を鍛え世界最強の男を目指していた。これは自分から強くなろうと言う気持ちの現れであろう。「はじめの一歩」もいじめられている自分から脱皮しようと自主的に強くなろうとする。しかし、軍鶏の主人公・成嶋リョウは違う。強くならなければならなかった。リョウがいた環境では強くならなければ殺されてしまうのである。もはや、普通の生活を送れなくなった少年Aにとって「社会」は脅威であり、恐怖そのものである。社会に殺されないためにもリョウは強くならなければならなかった。
軍鶏のストーリー
主人公・成島リョウは有名高校に通い、東大合格確実といわれていた優秀な少年だったが、ある日突如キレた。ナイフで両親をメッタ刺しにして、殺害してしまう。もちろん、この事件はマスコミにより大きく取り上げられることとなり、リョウは少年Aとされ、世間を騒がす。そんなリョウが収容された少年院で待っていたのは地獄のような日々であった。この地獄で殺されないためには強くなるしかない。そんな時にリョウは少年院で空手を教えている終身刑囚・黒川と出会う。黒川から空手を教わったリョウは空手という”力”のおかげで何とか少年院から生きて出ることができた。
しかし、親殺しの少年Aとなったリョウが世間でまともに生きていけるわけがない。リョウは仕方なく新宿の裏社会に身を投じることとなる。そんな時にテレビに映った一人の男・菅原。空手で富と名声、そして芸能人の恋人と「すべて」を手に入れた男だ。リョウと菅原は同じ空手家であるにも関わらず、まったくの対極にいた。リョウにとって空手で「すべて」を手に入れた菅原はあまりにも自分とかけ離れすぎていて、気に食わない存在となった。そして、リョウは菅原と闘う為に深い闇のそこから動き始める。
軍鶏のデータ
| 著者 | (原作)橋本以蔵 (画)たなか亜希夫 | ![]() |
| 連載期間 | 1998年〜 | |
| 掲載雑誌 | アクション | |
| 出版社 | 双葉社 | |
| 巻数 | 現在14巻まで |
軍鶏と私の出会い
「クラッシュ!正宗」でたなか氏の作品が好きになったので、読んで見たところハマってしまった。
軍鶏の中古価格
現在かなりの人気で買取が300円の店もある。人気の割に刷られている数が少ないのでこれほどまでの価格になっているのだろう。新品で買おうと思っても売っていないことが結構ある。中古で全部揃えるとなると結構気合を入れてやらなくてはならない。しかも、だいたいは350円〜400円である。ちなみに私は奇跡的に1冊250円のレートでゲットすることができた。しかも何故か1〜12巻揃った状態でだ。この時は一瞬神というものに始めて感謝してしまった。