星の贈り物

制約は導きを曲げる

2003年8月の日記

2003年8月25日

苦しみながらできあがるのを待ちつづけるのもいいけど、納得いくまで何度も何度も検討するよりもいっそ時間を区切って後でやり直した方がよっぽどいいかもしれない。日記に書く事なのだから、過程であっても構わないはずだ。……そのことをずっと忘れていた。

そういうわけで時期的な要請もあるし、今度こそ月姫をはじめます。影響を受ける事を恐れるよりも、それと一緒に足掻こう。

日常風景

[topic:まんが]

この間のコミケで3サークルのお手伝いに駆り出された(6人のうちの1人は本当は来れない予定の人だったし、もし私もその人も行けなかったらどうするつもりだったんだろう……)時、暇つぶしにとトリコロを貸されて、その後「苺ましまろとトリコロ」という記事を見つけたので何か書いてみようかなと思ったものの、何も書けない。

しのぶさん日記の8月13日分から始まる苺ましまろの感想を見て、流石だなと思っているのが1つ。もう1つは、そこで繰り広げられているシチュエーションが何も特別ではないまさに普通のありうる光景だからだ。まんが的なお約束で慣れている部分もあるけれど、そこで描かれている光景は単行本一冊に一つぐらいは実際にやったり見たりしたことのある、今目の前で起こっても全然不思議でないし、それに対して特別な想いを抱く事のないまさに日常。それがそこにあるということを気に入りつつも、だからこそキャラクターを意識せずに感想を書くのは難しい。

私の中で少しずつこれらの存在が大きくなってきます。弟くんに教えたら買ってきそうだけど……やっぱり自分で買おうかな?

メジャーな言語であれば、マニュアルを読めって話になりそうですが……

[topic:Haskell]

hugs のガベージコレクタが文句たれてきて動かない のは default で確保してある heapsize を超えてしまったのが原因なので、option で heapsize を変更しましょう。 コンパイルすることによるhref 0.2からの利点を失って欲しくありませんが、一応。

文字入力システム情報 WikiProxima を参照しつつ、真に Haskell に向いたシステムってなんだろうと考えている今日この頃。

時空の放浪者 (4)

[topic:創作、小説]

次の瞬間、男の喉元には短剣が突きつけられていた。

「ふざけてるの?」その切っ先には明らかに殺気がこめられている。

だが男は平然としていた。

「ふざけてはいない。『ユニシアン』のようにSFやファンタジーなどの世界を体験するためのテーマパークとか、客のために特別なものが用意されている、といった発想は昔からよくある。ここがそうでないとは言いきれないよね?」

男はそこで一息置き、もう一つ、別のものを提示する。

「また物語には、作者の考えによって組み立てられたいくつかの仮定に基づくシミュレーション、という側面もある。例えば、文明が衰退し得る物なのか、あるいは知の定着という特性によって地域的に剥がれてしまうものなのか、そうした考えの違いは物語に影響を及ぼす。物語には考えが含まれていて、時にそれは予言的な性質を持つ。……それでも物語を羅針盤として使う事を無意味だと思うかい?」

「……あなたは本当は全てを知っている……知っていてはぐらかしている……そうじゃないの?」少女は男の答えを端から信じようとはしなかった。男は方向をずらしただけで、そこには少女の期待に添うようなものなど存在しない。

「いや……推測に過ぎない。確証を得るためには一つ一つ可能性を調べていかなければいけない。」

「……信じない。」少女はつぶやく。

「信じなくてもいい。だけど約束は果たす。私に与えられた救い、私の望み、そして果たされなかった約束のために、約束したことをだから。」男は懐かしむように優しく微笑む。

「……信じない。」少女は繰り返した。

「それと―」男が顔を元に戻し短剣に首を近づけると、まるで絵に手を加えるかのように男に近い側から短剣が消え失せていく。

「私に攻撃は通用しないよ。……あれの残り香があるから。」

「……分かっている。」

少女は手を引く。そこには微かに、長い間少女と接してきた男でなければ分からないほど微かに、苛立ちが混ざっていた。

「前の私はどうだったか知らない。でも今の私は私よ。」

「分かっている。」少女の前を思う男の心がほんの少しだけ表情に表れたかもしれなかった。

口を閉じて、二人はじっとお互いを見つめる。男は優しく、その中に僅かに哀を秘めて。少女は無意識に気づいていたのか、鋭く、睨めつけるようかのように。

静かに時が過ぎていく。二人はただ相手の次の言葉を待ち続けた。

静かな時を破ったのは、部屋の外のくすくすと笑う声だった。

笑いの主は顔を綻ばせたまま、すぐに部屋に入ってきて二人の側に立った。少女と同じ姿をしている。

「ごめんなさい。二人共せっかく一緒にいるのに全然笑っていないようだから、どうやってなごませるか考えていたら、楽しくなって……。」部屋に入ってきた少女はそれだけ告げるとすぐに、堪え切れなくなって再びくすくす笑い出す。

「聞きたい? ……やっぱり内緒。ふふふ……」

男はそんなもう一人の少女の様子にとまどった。今ここにいるもう一人の少女は、男の持っていた彼女に対するイメージから外れていた。彼女がこちらに向かって、こういう笑顔を見せるとは思えない。それとも、心変わりしたのだろうか?

そんな男の様子と笑っているもう一人の少女の姿を交互に見て、「私も言っていないことがあなた以上にあるなら、おあいこね。」と、少女は言った。

しばらくしてようやく笑いの止まったもう一人の少女が答える。

「そうね。少しは内緒にしましょう。まず最初に、私は彼女と違って前回のことを覚えているのは確かよ。それと、目的を変えたわけでもないの。私は誰をも幸福にする。だから、結果的に誰かを犠牲にするつもりはない。それだけよ。」

「結果的に?」

男はその言葉の含みに気づいた。できれば気づきたくなかった、そんな気もする。

「そう。結果的に生きて幸福を実感させれるのであれば、例え殺しても構わない。だけど、それができない場合にはどんな些細な犠牲を払わせてもいけない。そういうこと。」男の予想通りの答えを返し、無邪気に笑った。「あなたもそうしてきたでしょ。」

「傲慢ね。」少女は二人に向って言った。


声なき言葉へ