私家版「新・必殺仕置人」ストーリーガイド&見所紹介
 第11話「助人無用」・第18話「同情無用」

ニフティーサーブ「必殺会議室」に掲載した文章を改訂

「新・ 必殺仕置人」#11/助人無用

 鉄が最近入れあげている、料理茶屋「たちばな」の美人仲居・おこの(白川和子)が、体の不調を女将のおせいに訴える。俺が揉んでやろうと言う鉄に、「鉄っぁんに揉んで貰ったら、余計に具合が悪くなるよ!」と言い返すおせい。
 表稼業を貶されて憤然となった鉄は「俺は江戸じゃ、ちょっとは名の売れた按摩なんだよ。客なんか、俺んちの前に行列してんだ!」と大言壮語するが、そんなに繁盛してんなら、溜まってるツケを払っとくれ!でなきゃ、お断りだよ!‥‥と言われれば、これはもうさすがの鉄も、尻尾を巻いて退散するしかない。
 更に、たちばなの下足番の鞍三爺さんにまで「なあ、鉄っちゃん。あの女なんぼ口説いてもあきまへんでえ‥‥。悪いけどなあ、あんた見る目がない!まだまだ極道が足らへん‥‥」と言われた鉄は、「うるせえ!鉄ッちゃんて言うなって言ったろ!」と、ほとんど八つ当たりの態で帰って行く。

 ◎今回のメインゲスト・嵐寛寿郎。「鞍馬天狗」役で一世を風靡した名優にちなんで、役名も「天狗の鞍三」(この二つ名は、後で登場。ここでは、単に「鞍三」としか呼ばれていない)と楽屋オチ風だ。

 そして、鉄と入れ違いに、たちばなにやって来たのは、最近深川堀一帯に、七福神の名にちなんだ六軒の「大江戸版キャバレー」を次々と開店している、七福神の富五郎(田口計)とその手下の源六(志賀勝)・源七だ。この店を買い取る算段を持ちかけた富五郎に対し、女将のおせいはきっぱりと拒否する。そんな彼女を前に、ドスを畳に突き立てて、「その内、きっと後悔しますぜ!」と脅しを掛ける源六!そして、店の外で「(店を手に入れるには)女将が邪魔だな」と富五郎が言うや、「旦那、殺っても良いですか?」と、源六が不気味な笑みを浮かべる‥‥。

 ◎ ピラニア軍団の志賀勝は、正に「狂犬」と言った雰囲気で、「人殺しが楽しくて仕方がない」と言った不気味さを漂わせている。  
 一方、こちらは中村家。なぜか元気のない主水に、自分の膳の卵焼きまで進めて、今夜は久しぶりに‥‥とこっそり迫るりつ。「久しぶりとは何ですか?」と尋ねてくるせんを誤魔化し、盛んに目配せしてくるりつに、些かゲンナリの主水‥‥。
 それとは逆に、こちらはアツアツムードの鞍三とおこの。寝込んでいるおこのをかいがいしく看病し、恥ずかしがる彼女の足の爪まで切ってやる鞍三の姿に、直した鍋を届けに来た巳代松も、ほうほうの態で退散!また、街中で中むつまじい鞍三の懐のモノを狙ったおていだったが‥‥。紐付き財布の前に、あえなく失敗!「姐さん、生憎やったなあ!」とまで言われては、おていの面目も丸潰れ。後はスタコラサッサと逃げるしかない!
 たまたま、鞍三とおこののベタベタ振りを目にしたせんとりつも、「いい年をして、あんな若い女と‥‥」「不道徳ですよ!子供に見られたら、どうするんです?」「あのような年寄りがいるようでは、世も末です!」と、言いたい放題!それに比べて‥‥と、なぜか(笑)主水の事を自慢してしまう二人であった。

 ◎ この時、おていと一緒にいた正八は、八卦見の占い師が被るような筒状の帽子と黒の丸眼鏡‥‥と言う奇妙奇天烈なスタイル。おていが掏摸取った財布に紐が付いていたシーンは、おていのトレーディング・カードに使用されている。
 ◎ 鞍三とおこのの仲をボロクソに言っていたせんだが、「仕事人IV」第23話 /せん、遂に再婚を決意する…では、正しくせんがこれと同じ様な雰囲気になっている。人間、自分の身になってみないと分からないものである。

 ツケはお断り…と言われた鉄は、たちばなへ行く(=おこのに入れ込む)為の金を、巳代松に借りに行くが、結局断られてしまった為に、「もう頼まねえよ!バカヤロ!ケチンボ!‥‥ボケ松!」と散々罵って、巳代松の家の障子を両手で破き倒して逃げて行く!更に、正八には「どうだい、景気は?」と刷り寄り、団子を食ってるおていにも「急に色っぽくなっちゃったから、見違えちゃった!」とおべっかを使うが、正八からは「障子の張り替え代として持ってった、一分二朱を返せ」と言われ、おていはおていで着物を買ったからスカンピンだとすげない返事。怒った鉄は、正八の店先の絵双紙を勝手にかっぱらい、慌てた正八に頭から投げつけて走り去って行く!かくして、鉄の借金大作戦は、物の見事に失敗に終わったのだった‥‥。  

 ◎ この一連のシーンでは、鉄(=山崎努)のコメディ演技が大爆走!借金を頼み込むところまでは、ひたすら低姿勢で使い慣れないおべっかを使い、一旦断られるや、後は八つ当たり気味に怒りまくる!ここで見せた「普段からの仲の良さ」が、後期仕事人の「街中で顔を合わせても、無関係を装う」「ただ、裏稼業の仕事の間だけの仲間」のと違う所以だろう。  

 七福神チェーンのお店「恵鬢屋」は、美女のサンドイッチマンの「夕刻五つまで、飲んで騒いで一分二朱!」の呼び込みの声もにぎやかに、今日も客が溢れんばかりの大盛況!酒と食べ物と美女の接待、そして売り物の芸者衆の逆立ち芸「金の鯱」には、袖の下を貰って「ちょっと覗かしてもらうぜ」とタダで見物しに来た主水も大満悦だ!  

 ◎ 芸者が「金の鯱」の如く、体を弓なりにして逆立ち。脚の間に挟んだ着物の裾がハラリとめくれて、真っ白な足が見える芸。昔、似たような芸をTVのCMで見た覚えがある‥‥と思ったら、ラストのクレジットで「芸者連/十三料亭三笠連」の文字が。どうやら、本家本元の出演のようだ!(CMでは、十数人があの恰好でズラリと並ぶ)
 「雁亭のママでございます‥‥宜しくね!」だの「京橋は、ええとこだっせ!」だの「大阪梅田は天遊ちゃん!」等と並んで、関西の深夜放送の合間にやってた、大阪の大人のプレイスポットのCMの一つで、関西人なら知らぬ者はない!(笑‥‥逆に言うと、関西人以外には、何の事だか分からない) 
 ◎ 富五郎が「目標達成」の張り紙と共に貼り出している、深川の六つの店の名は「毘沙門」「弁天屋」「福禄寿」「布袋屋」「恵鬢屋」「寿老人‥‥これに、たちばなや改め「大黒天」が加わる予定。尚、それぞれの店の名前の前に地名が書いてあるが(「毘沙門天」は仲町)、京都人の私にはどこなのかよく分からない。  

 かくして、芸者衆の色っぽい芸を目にして元気一杯の主水は家に帰るや、寝床で腰を高く掲げての自転車エアロビクス・腕立て伏せとやる気満々だ!隣室のせんがぐっすりと寝入っているのを確かめた主水は、ではいよいよ!…とりつに迫るが、帰りの遅かった主水をずっと待っていたりつは疲れ果てたのか、ぐっすりと眠ってしまっていた。「そりゃないよ!」と言った顔をする主水。世の中とは、上手く行かないものである‥‥。  

 丁度その頃、たちばなやに忍び込む一つの影があった‥‥源六だ!手拭いで、女将のおせいを無惨に絞殺する源六!翌日、鴨居に首を吊った態で発見されたおせいの亡骸を前に、取り調べをした主水は「自殺」と断定する。半狂乱になる娘のお千代を、必死に押し止めるおこの。唇を噛みしめながら、おせいに手を合わせる鞍三‥‥。だが、その葬式も終わらぬ内に、この店を売れ!と富五郎が強談判にやって来る。
 子供ながら、それをきっぱりと拒否するお千代。彼女を庇うおこの。そして、鞍三が草履にこっそり仕掛けた釘で、足の裏を刺された源六は鞍三を殴り飛ばす!鞍三を庇ったおこのが、「(あんたらが)お女将さん殺して、この店乗っ取ろうとしてるんだ!」と、ズバリ真実を言い当てるや、源六たちはおこのを路上で殴る蹴るの暴行に及ぶ!
 地面に横たわったまま呻くおこのの異常を見て取った、(たちばなの前で店を出していた)巳代松は、鞍三と共に彼女を医者へ運び込む。医者の見立ては「重度の労咳」。しかも、このまま放っておけば命取りで、高価な朝鮮人参を飲ませれば、何とかなるかも知れないと言う事だ。 「金の工面は何とでも致します!どうぞ、おこのの命を救ってやっておくんなさい!」と必死に医者に訴える鞍三!

 その夜、何も知らずに酔って「たちばなや」を訪れた鉄に、おこのさんが病気で休んでいる事を告げるお千代。見舞いに行こうとする鉄の背中に向かって、お千代が強張った表情で言う。
 「おじさん、仕置人‥‥って知ってる?」
 無表情になる鉄‥‥。  

 ◎ この後、ストーリーの展開から考えると、鉄がお千代に「仕置人」に仕事を依頼する方法を教え、鉄が死神に会ってる筈だが画面上では描かれていない。#3や#5・#14では、虎や死神たちが頼み人と顔を合わせてはいるものの、基本的に「頼み人が、どこにどうやって、仕置きを頼みに行くか?」は余り描かれていないようだ。
 私の想像では‥‥「仕掛人」の音羽屋や「助け人」の清兵衛のように、裏の仕事を引き受ける窓口があり、その後死神から「〜〜で○○刻に待つ」と言う文が頼み人に渡される。そこで、仕置きの依頼と頼み料の受け渡し・寅の会のルールの説明が行われるのではないだろうか?まさか、死神がどこかで常時待機してるとは思えないからだ。
 その場合、吉蔵が表立った窓口の主人である可能性が高い(虎は余り表には出てこないだろうから。最終回で分かった住まいも、長屋だったし‥‥)。

 徹夜で必死におこのの看病をする鞍三。丁度、見舞いにやって来た鉄に後を任せ、鞍三はある決意を胸に秘め、一人の男の元へと向かう‥‥。遙か昔に封印した「修羅の道」へと再び足を踏み入れる為に!
 一方、鉄に「あんな爺いのどこが気に入ったんだ?」と問われたおこのは、自分が男で散々苦労して来た事を‥‥そして、自分を最後の女だと言ってくれたあの人の為に、絶対にあの人より先に死ねない!…と、鉄に訴える。  

 ◎ ここでの言葉と、開幕そうそう鞍三が鉄に言った言葉からすると、鞍三も若い頃は相当女を泣かせてきた「色男」で「極道」だった事が垣間見えてくる。それが、そうではなくなったのは‥‥以下、別項(*1)。

 ‥‥とある神社の境内。天狗と虎が戦っている奉納額の前に佇む鞍三の前に、一人の男が現れる。「虎やん‥‥久しぶりやな!」 
 鞍三に向かって、丁寧に頭を下げる男‥‥それは、江戸の裏稼業の総元締・虎!
 「鞍三さんも、達者なようで‥‥」  

 ◎ 下足番の鞍三爺さんが、何と虎も頭の上がらない兄貴分という、あっと驚く展開!後で死神が鉄に言っているように、天狗の鞍三は、20年も前に足を洗った、虎の兄貴分の仕置人だ。(藤村氏とアラカンの、この時の実年齢は不明だが)20年前と言うと、鞍三と虎(&さそりの弥八)は、バリバリの現役仕置人の頃。年数的には、「元締無用」に登場したおしんが生まれたのも、捨て子だった死神を虎が拾ったのもこの頃だろう。
 鞍三が足を洗った理由だと思われるのは‥‥以下、別項(*2)

 虎に対し、どうしても20両の金が必要な事を打ち明け、その為に仕事がほしい…と頼み込む鞍三。死神が、夕べ仕事の依頼が一件あった事を告げる。頼み料は20両。相手は‥‥七福神の富五郎!余りの偶然に絶句する鞍三!
 「虎、恩に着るぜ!」そう言って立ち去る鞍三。虎が言う「一人じゃ無理だな‥‥」
 そして、死神の呼び出しで現れた鉄に対し、虎は「七福神の富五郎殺しの仕事」を、かつて虎の兄貴分だった「天狗の鞍三」に回した事。鉄たちに、彼の手助けをしてほしい事を告げる。驚きながらも、勿体ぶって「あれはセリに回す筈だった」という鉄に対し、「分かっている。お前に一つ借りが出来た」と死神。虎も「この借りは、必ず返す」と言って、鉄に別口の助け料を手渡す。  

 ◎ もし、富五郎一味の仕置きが、とらの会に掛かったとして挙げ句を考えてみると;
 「深川の〜〜堀に消え行く〜〜七福神〜〜!」 
 ◎ ちなみに、虎が鉄に渡した「天狗の鞍三の助け料」は自腹を切ったものと思える。

 かくして、鉄たち「助け人走る」!自分も仕置人だと言う事を打ち明けて、富五郎殺しの算段を鞍三から聞き出そうとする鉄。「相手は手強いぞ」と言う鉄。
 「やるからには命懸けや」と言う鞍三。そして鞍三は、運命の不思議さを‥‥前の女房の仇を自分が討つ羽目になった事を打ち明ける。そう、おせいはかつて鞍三の女房であり、お千代は彼の娘。そして、たちばなの彼の店だったのだ!驚いた鉄は、頼み人がお千代だと言う事を鞍三に告げる。運命の不思議さに驚く鞍三!
 そして、今夜仕事をすると言った鞍三は、「あんた、一体何を探りに来たんや?」と尋ね、鉄に向かって言う‥‥「助っ人無用!」と!

 *1/2 鞍三が裏稼業から足を洗ったきっかけは、「仕切人」の勘平や「橋掛人」の柳次のように、恋女房と所帯を持つ為だったのではないか?ただ、お千代の年齢からすると、鞍三爺さんはかなりのお年になっても、アッチの方は元気満々だったようだ。

 その夜。おこのがぐっすりと眠っている事を確かめた鞍三は、タンスの中から長ドスを取り出す。刃の輝きを見つめて、決意を固めた鞍三は闇の中へ出陣する!生涯最後の大仕事に向かう為に‥‥。彼を見張っていた正八の通報に、アジトで蕎麦を食っていた四人‥‥主水が、巳代松が、おていが、そして鉄が顔を上げる。
 「行くぜ!」スタートする出陣のテーマ!

 黒のほっかむり、黒づくめの衣装に黒の地下足袋という鼠小僧スタイルで、富五郎の家に潜入した鞍三は、雨戸の溝に油を流して外し、廊下には反物を音もなく放って足音を消す(おおっ!橋掛人・柳次!)と言うプロフェッショナル振りを見せる。そして、標的・富五郎の寝所に接近し、吹き矢一閃!‥‥の筈が、その息の力は弱く、ポトリと落下!気付いた富五郎の声に、慌てて逃げ出す鞍三!その後を追う、富五郎と配下の源六たち!正八がズバリと言い当てたように「20年前の仕置人」は、やはり骨董品だったのだ‥‥。

 そして、いよいよ主水たちが動き出す!先ず、鞍三を追って、材木置き場の路地へやって来た手下共を、主水が二人重ねて串刺し!続いて現れたチンピラ二人を、豪快にぶった斬る!一人きりになった富五郎を密かに狙う鞍三‥‥。だが、逆に彼の動きに気付いた富五郎が返り討ちにしてやろうと、ほくそ笑んでドスを抜いた‥‥その瞬間!鉄の死の指一閃!絶命した富五郎が、ふらふらと歩み出たところを、鞍三の長ドスが突き刺さる!
 最後に残った源六も、鉄鍋で消音機能を備えた短筒を構えた巳代松が、鞍三に向かって突き進む源六の背中に向かって発射!息の根を断たれて呻く標的の腹に、鞍三のドスが見事に突き刺さったのだった‥‥。  

 ◎ このあたり、鞍三に知られないように手助けをする鉄たちの苦労は並大抵ではなく、巳代松も音無し短筒を屋根の上で構えたまま、源六の前になかなか鞍三が現れない事にイライラしている。殺しのテーマも、仕置き場面が流れるようには繋がっていない為、ブツブツと切れてしまうのが残念だ。

 おこのが元気を取り戻した朝。鞍三が魚を捌いているところにやって来る鉄。その余りの不器用さにじれったくなった鉄が、代わっててきぱきと魚を捌く。その見事に見惚れながら鞍三が言う‥‥。
 「わしも年やなあ‥‥死んだ人間、相手にしてるようではあかんわ!」
 ニヤリとする鞍三。一瞬、呆然となった鉄もニヤリと笑う。
 「この爺い‥‥全部知ってやがったのかい!」とでも言うように‥‥。

 これから、鞍三は「たちばな」の新しい女将となったお千代を助け、恋女房のおこのと共に、残り少ない生涯を「ただの市井人」として生きて行くだろう‥‥。これは、彼にとって「最後の大仕事」だったのだ!

                   【終わり】

 「元締無用」とよく似た構成ながら、一大エンターテイメント編の今回。主役は、あくまでもアラカンの「天狗の鞍三」であり、虎や死神・鉄たちも、全て彼を引き立てる為に存在している。決して、演技が上手いとは言えないアラカンだが、逆にそれが役の木訥さを感じさせている。正に好編!


「新・必殺仕置人」#18/同情無用

 呉服問屋・井筒屋の女中・およう(池波志乃)。10年もの間、地道に勤めている彼女は、番頭の嘉兵衛以上に主人の惣右衛門の信頼が厚く、「好きな男はいないのかい?」とか「そろそろ嫁入り先を探さなきゃ!」と、常々気に掛けられている。だが、おようには誰にも言えない秘密があった‥‥。実は、おようは店の金に手を着け、それを恋人の鋳掛屋の礼二郎にこっそりと貢いでいたのだった。  

 ◎ 中尾彬とおしどり夫婦として有名な池波志乃。今回は、惚れた男の為に店の金に手を着け、破滅への道筋を辿る悲しい運命の女性を、悲壮感を漂わせる事なく巧みに演じている。この物語のモデルは、女子銀行員の伊藤素子(だったか?)が巨額の金を着服し、愛人に貢いでいた事件だったと思うが、それが何年だったか?‥‥今回の話の製作時期と前後していたかどうか?‥‥は、記憶がはっきりしない。

 そして、出会い茶屋で密かに逢い引きをするおようと礼二郎‥‥。「俺も一生懸命働いて、お前と所帯を持つから‥‥」と言われて、感極まったおようが礼二郎を抱きしめる。そのまま絡み合い、激しく愛し合う二人!それを隣の部屋から覗いていた一人の男がいた‥‥鉄だ!二人の濡れ場を覗き、生卵を飲んで元気一杯になった鉄は、連れの娘にのしかかるが、その途端娘の父親が乱入!哀れ、鉄は「おぼこ娘を無理矢理手込めにした」罪で、北町奉行所同心・服部左内(犬塚弘)にお縄にされてしまう。  

 ◎ 鉄が番屋で「あいつはおぼこ娘なんかじゃねえ。ガキのくせに達者で達者で‥‥俺が手込めにされちゃった!」と弁明(半分は真実?)して、左内に思いっきり頭をどつかれるシーン。この場面の左内は、ほとんど中村主水のノリだ。 
 ◎ 今回のもう一人のメイン・ゲスト−北町奉行所同心・服部左内を演じる犬塚弘氏。ご存じの通り、藤田まことが「てなもんや三度笠」のあんかけの時次郎で人気者だった頃、同じ様にクレージーキャッツの一員として人気を博していたのが犬塚氏だった。めったに「悪役」をやらない犬塚氏だったからこそ、今回の服部左内(北町の昼行灯で、外道に堕ちた中村主水的存在)が、非常に味のある役柄だったと言えるだろう。

 鉄が捕まった!‥‥と聞いて、慌てて飛んできた主水は、「日頃の行いが悪いからこんな目に合うんだ!」と怒鳴りつける。鉄の入牢期間は10日だ。巳代松達も、下らない事で捕まった鉄に腹を立て、主水も少しでも早く鉄を釈放させようと、彼を捕らえた服部左内に働きかける。 袖の下をせびっていた左内を目にして、「昔はそんな事をする人じゃなかった」と言う主水。  「どうせ先行き・出世は望めねえ。余録でもなきゃ、アホらしくて役所勤めなんか出来ねえ」と、左内は愚痴をこぼす。それに対し、やり過ぎだけは気を付けろ。役所を首になっちまったら元も子もねえぞ‥‥と主水が忠告する。かつて同輩だった二人は、今では「北町の昼行灯」服部左内と、「南町の昼行灯」中村主水と並び称せられる(?)間柄だ。主水にとっては、「もう一人の自分」とも言える存在だった。結局、鉄を早めに釈放させる為の入牢証文書き換えの手数料として、主水は左内から一両要求される。
 「ガッチリしてるねえ、あんたも」と言う主水に、ニヤリと笑い返す左内。  

 ◎ この時点での服部左内は、主水同様行く末に何の希望も持たず、同心と言う役職から余録が入ってくる事だけを楽しみにしているキャラクターであり、主水も何ら左内を咎め立てせず、ただやり過ぎは注意しろと言っているだけだ。いわば、「仕置人」になる前の中村主水そのものだったと言えよう。

 主水は、金を工面する為に巳代松達に話を持ちかけるが、皆渋い顔をしてそっぽを向くばかり。「この際放っとくか?‥‥しかし、世話の焼ける野郎だな!」と言う主水。そんな心配顔の仲間たちを余所に、鉄はいつの間にやら牢名主に大出世!積み重ねた畳の上にでんとふんぞり返り、囚人達にマッサージをさせて、食事も上げ膳据え膳。酒まで飲める大名気分だ!  

 ◎ 牢に入ったと思ったら、次の場面ではもう牢名主になっている鉄に大爆笑だ!

 一方、おようが店の金に手を着けていたのを目撃した、井筒屋の番頭嘉兵衛は、左内の岡っ引き・辰三(清水紘治)を通じて「ある儲け話」を持ちかける。果たして礼二郎は、「井筒屋の女中をそそのかして、店の金に手を着けさせ、貢がせた」罪で、左内に捕らわれる。入牢した礼二郎から一部始終を聞いた鉄の推理は冴え、礼二郎がはめられた事をズバリと見抜く。
 そして、鉄の「女も強請られるだろう」と言う予測通り、おようは辰三から「礼二郎を助けたいなら、左内の旦那に30両用立てするんだな!」と迫られる。苦渋の末、左内と辰三の待つ料理屋に金を届けに来るおよう‥‥。だが、彼女を待っていたのは「これは礼二郎を解き放つ為の金だ。おめえの目こぼし料として、後30料用意しろ」という非情な言葉だった!ずるずると深みにはまって行くおよう。礼二郎を助け、事を公にせずに済むには、彼らの言う通りにするしか道はなかった‥‥。  

 ◎ 今回の副題「同情無用」に言い表されているように、おようは主人の信頼を良い事に店の金に手を着け、礼二郎はおようを甘言で釣って金を貢がせていた。いわば「同情無用」な犯罪者なのだが‥‥その意味で、今回の登場人物は、被害者(=頼み人)も仕置きする奴(=仕置人&寅の会)もされる奴も、皆ことごとく「悪党」だと言えよう。

 真夜中、せんの「火事だ〜〜!」という声で、慌てて飛び起きる主水!一番大事な物を持って、早く非難しましょ‥‥と言う言葉に、主水は枕とガマガエルの置物を抱えて、外に飛びだそうとする。だが、この騒ぎは、せんとりつが主水のヘソクリを見つける為に仕組んだ「避難訓練」だった。主水の持つガマガエルの置物から、まんまとヘソクリを発見。喜び合うせんとりつであった!  

 ◎ 一見、物語と何の関係もないように思える中村家のコント。だが、「最近火事が多いから、避難訓練を奨励している」というせんの言葉が、後の場面での「牢屋での火事騒ぎ」に繋がる伏線となってるのは見事だ!しかし、主水はなぜ枕を抱えてたのだろう?

 左内に言われるまま、再び店の金に手を出そうとしたおように、「前からお前が好きだった」と告げ、彼女が男の為に店の金に手を着けていた事も知っていると言う番頭の嘉兵衛!左内に届ける30両の金をおように手渡し、旦那様には内緒にしておいて上げるから、私を楽しませておくれ!‥‥と、おようの体を求める。番頭と左内達が吊るんでいた事を初めて知るおよう!だが、彼女は嘉兵衛に言われるまま、30両の金と引き替えに、自らの肉体を彼の為すがままにされてしまう‥‥。一方的な情事が終わった後、泣きながら散らばった小判をかき集めるおよう!その時、彼女にはある決意が生まれていた。
 その夜、奉行所の牢屋の側から火が出た‥‥「赤猫」だ!燃え広がる一方の火の勢いに、牢内の囚人達は、一日だけの猶予付きで解き放たれる。喜び勇んでシャバを駆け抜ける囚人達!礼二郎が走る!悪巧みが発覚する事を怖れた嘉兵衛が走る!服部左内が走る!辰三が走る!‥‥そして、顔をススだらけにした鉄が、巳代松たちの前へ悠々と現れる。 「さあ〜〜、これで明日の寅の会に出られるぞう〜〜〜!」  

 ◎ 今度ばかりは懲りたろ?‥‥と、巳代松に言われた(後の場面では、正八にも「ああ言うとこ入ると、やっぱり何か考えるでしょ?時々入ってきな!」とまで言われている)鉄は、「牢屋の生活は非常に快適。牢名主で別格扱い。銭は入ってくる。酒は飲み放題だ!」と余裕綽々の態度を見せるが、釈放された後では「やっぱりシャバの風は良いなあ〜〜!」と正反対の事を言ってるのが可笑しい。 
 ◎ だが、ここで腑に落ちないのが、ヘタすりゃ寅の会に出られなくなったかも知れないのに、鉄や巳代松達が何の懸念も不安も抱いてなかった事だ。偶々火事騒ぎで牢から出られたから良かったものの、もっと主水に何とかしてくれ!‥‥と頼み込んで、早めに行動を起こしてても良かった筈。#14/男狩無用で同様の目にあって、死神に手痛い目に会わされたのを忘れたのだろうか?(この辺り、脚本ミスだとも思えるのだが) 

 火事騒ぎで礼二郎が解き放ちになった事を知り、彼を探しに行こうとするおゆうを押し止める嘉兵衛。辰三が井筒屋を見張っている為に、礼二郎もおゆうに近づけない。思い余った礼二郎は、仕事仲間だった巳代松の元へ駆け込むや、「何とかおゆうさんに会いたい!」と頼み込む。「さんざん女から銭を巻き上げといて、今更悪かった‥‥済まねえなんて、遅せえんだよ!」と巳代松に罵られた礼二郎も、「騙すつもりはなかった。店の金まで手を着けてるとは知らなかった‥‥」と、今では心底から以前の事を後悔してる様子を見せた為、遂に巳代松は二人の手助けをしようとする。  

 ◎ 今も昔も、女のヒモが言うセリフは皆同じである!  

 赤猫で釈放となった間を利用し、まんまと寅の会に出る鉄。今日の殺しの競りは‥‥「北町の〜服部左内〜露と消え〜〜!」奉行所の役人が相手だ。役人が標的なら、25両くらいが相場だな‥‥と言うヒゲの俳諧師を後目に、「15両!」の値を付けて、ギロリと睨まれる鉄だった!  

 ◎ 今回、仕置人達は最小限の範囲内でしか、おゆうや礼二郎達に関わっておらず、被害者と悪党達のドラマがストーリーの中心となっている。従って、必要以上に「泣きのドラマ」「ベタベタした雰囲気」になってなくて、全体にからっとしたイメージだ。 また、はっきりと映像で描かれてないが、寅の会の頼み料30両は、おゆうが自分の体と引き替えに嘉兵衛から手に入れた金だろう(本来は、左内に差し出す筈だったもの)。

 アジトで、今回の標的が服部左内と知らされた主水は「あいつは昔から気心の知れた野郎でな‥‥てめえの分身見てるような気がするんだ。あの野郎、たたっ斬るなんて気にゃあなれねえ‥‥」と、珍しく憂い顔を見せる。「仕事に情けは禁物だぜ」と言う巳代松。「寅の会に上がっちまったら、例え仲間だろうと兄弟だろうと、俺達にとっちゃ単なる獲物なんだよ!」と、ザーとらしく言う鉄。てめえがやらねえなら俺が‥‥と言った鉄に、「誰にも手を出させねえ‥‥やる時は俺がやる!」と主水は言い切った!  

 かくして、刻限までに牢に戻り、罪一等を減じられて明日出てくると言う鉄は、仕置きの刻を明日の夜と決め、それまでに仕事の段取りをつけとけと言う。だが、たった一日仕置きが遅れた事が、おゆうと礼二郎に更なる悲劇をもたらしたのだった‥‥。
 巳代松の伝言により、御輿置き場で遂に巡り会った二人は、今まで自分たちの為した罪を深く悔いる‥‥。主人の惣右衛門に全てを打ち明け、お上に自首して出るから、このまま牢に戻って!‥‥と礼二郎に訴えるおゆう!「罪の償いをしたら、一生懸命働いてお金を返し、二人で一緒になりましょう‥‥」と言うおゆうの言葉に、礼二郎も今度こそ真面目に働くよ!−と真剣な表情で言い返すのだった!
 いつか訪れるであろう、幸せな日々を思い描きながら、牢へ戻る為にひた走る礼二郎!‥‥だが、そんな彼の前に現れたのが服部左内だった!一刀の元に、礼二郎を斬り倒す左内!そして、おゆうも辰三の手に捕らわれる‥‥。御輿置き場に二人の姿がない事から、後を追いかけてきた巳代松は、堀の中で瀕死の礼二郎を発見する!
 「この恨みを、必ず晴らしてくれ‥‥!」そう言い残して息絶える礼二郎‥‥。やがて、鉄も目論見通り釈放され、アジトに戻って来た。巳代松から、事の次第を聞いた主水が吐き捨てるようにして毒づく。「服部左内か‥‥あんな汚い奴だとは思わなかった!」
 かくして仕置人達が立ち上がった!  

 ◎ 赤猫で礼二郎が解き放ちとなった事を知って、嘉兵衛が左内の元へ駆けつけて来た時、番屋に貼ってあった手配書に記してあった名前は‥‥元作州松平藩浪人・楢井俊平。これは、必殺と同じ製作スタッフが生み出したアクション時代劇「斬り抜ける」の主人公だ! 「殺した奴をまた殺す」仕舞人/新・仕舞人特集号によると、「必殺仕舞人」#1で、佐渡ヶ島の番屋に「真野森之助(=赤井剣之介)」「晋松」「楢井俊平」の三枚の手配書が、並べて貼ってある場面があるらしい。その意味で、「斬り抜ける」と「必殺」は同一世界での出来事と言えるだろう。(ちなみに「斬り抜ける」は昭和49年、「仕業人」が昭和51年、「新・仕置人」が昭和52年、「仕舞人」が昭和56年放映である)

 番屋の真ん前で、岡っ引きの辰三を捕らえた鉄は、屋根の上に引き上げて仕留める!川縁に浮かぶ船の中に身を潜めている巳代松‥‥。船の先端には、巳代松手製の照準器が。十文字に組んだ縄目の真ん中に嘉兵衛の姿が映った!
 「四間‥‥三間‥‥」‥‥まだまだ‥‥「二間半‥‥二間!」
 巳代松の竹鉄砲が唸りを上げ、照準器が炎と共に燃え上がった‥‥絶命する嘉兵衛!

 そして、最後の一人‥‥服部左内の背後にゆらりと現れる主水。左内がおようを手酷く強請っていた事を知っていたと告げるや、左内は「あんただって、同じ様な事してるじゃないか?」と言い返す。その言葉に頷きながらも、「俺とおめェの違ってる所は、てめえみたいに汚ねえ手を使って、ダニみたいにへばりつかねえ事だ!」と左内を罵る主水!
 その言葉に、いきなり大刀を抜いて主水に斬りかかる左内!だが、二人の剣の技量には、明らかに違いがあった。簡単にそれをかわした主水は、左内を地面に叩き付けるや、遂に大刀を抜き放つ!
 「ヘタに刀抜かねえとこも、てめえとは違うんだ‥‥」
 遂に観念したのか、首うなだれて小刀を抜き、切腹しようとした左内に、主水が背を向けた‥‥その時!左内の刀が主水を襲った!激しくもみ合う二人。そして、一人の同心の腹に、刀が深々と突き刺さる!殺られたのは‥‥果たして、主水か?左内か? 
 一人の同心が大刀を高々と掲げたまま、身動きしない‥‥その体を、もう一人の同心の刀が切り裂いた!地面に倒れ、絶命した左内の姿を目にした主水が、苦々しく呟く。 
 「いずれは‥‥我が身か」
 己の分身とも言うべき存在を葬った主水にとって、そこで息絶えているのは「自分自身」でもあったのだ‥‥。  

 ◎ この殺陣のシーン。決して派手さはないが、主水の格好良さは、ラストのセリフに至るまで、ベスト10に入る出来だと言えよう。特に(主水が殺される訳はないと知っていても)、腹を刺された同心の顔をなかなか見せようとしない演出は見事だ!

 全ての悪党共を葬った翌日の朝。川縁におようの遺体が上がった‥‥。辰三の手で命を落としたのだ!彼女の無惨な姿を目にして、苦渋に満ちた表情を浮かべる巳代松。
 仕置人は、被害者の恨みを代わって晴らし、悪党共を始末する事は出来る。だが、それが彼らの限界なのだ!例え、何十人‥‥何百人もの悪党を地獄へ送ろうとも、死んでいった者を甦らせる事は出来ない。今度も、微かな希望に満ちた未来を夢見ていた二人を、結局彼らは救う事が出来なかった‥‥。それを思い知らされたのか、巳代松は唇を噛みしめたまま、力無くその場を立ち去るのだった‥‥。 

                       【終わり】

 今回は、被害者と加害者のドラマ、仕置人達のギャグとアクション、そして彼らが持っている「業」を見事に描いていた点で、正に傑作だと言えるだろう。ただ、寅の会と死神の存在感は、今回全く感じられない。極端に言えば、それらがなくっても、物語は立派に成立するのである。(おゆうか礼二郎が、直接鉄たちに頼んだとすれば済む) その意味で、他の主水シリーズの話に近いと言える内容の作品である。


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