演出

今日も土方は朝から涙ぐましい努力を続けていた。

「斎藤君」

偶然を装ってさりげなく斎藤に声を掛ける。

当然ながら土方が声を掛けてくるなんて思ってなかった斎藤は―――土方の存在にすら気付いてなかったかもしれない―――ビクッとして顔を

上げ、土方におはようございますと挨拶をした。にこりともせずに。

今日も良い朝だな、なんて言いながら土方は出来るだけ会話を引き伸ばそうと、どうでも良いような会話を始める。

でも斎藤は急いでいたのかもしれない。

もしくは土方と話すのが嫌だったのかもしれない。

イマイチ気乗りしない表情で、適当に土方との会話を交わしていた。

土方だって別にいつも暇なわけではない。

ごくまれにある暇な時くらい自分に付き合ってくれても良いではないかと不満を頭の隅の方で感じた。

当たり障りの無い事を話している最中も、斎藤のその面倒くさそうな雰囲気が伝わってくる。

―――早く何処かに行ってくれないかなぁ、なんて考えていそうだ。

その事に少しがっかりするモノは感じても、これくらいでめげていたら人生やってられない。

だから土方はここ何日かめげずに頑張っていた。

「あ・・・」

ふいに斎藤がそう一言だけ呟いた。

その視線は土方の体を通り越し、後ろへと向けられている。

何だろう、とついつい思って会話に間が空いた時。

「すいません、私他の隊士と約束がありまして」

その間を待っていたかのように、すかさず斎藤がそう言った。

「え?ちょっと待・・・っ」

慌てて土方が引きとめようとするも、既に遅い。

土方は背を向けていたから気付かなかったのだが、ゆっくりと歩いてくる隊士の傍に駆けより、そちらの会話に混ざってしまった。

――――逃げられた・・・・・・

今までの経験上、こんな酷い仕打ちをされたのは始めてだ。

どうも今回ばかりは勝手が違う。

今までならば男女問わず別に土方から迫らずとも勝手に向こうが寄って来る、と言った具合だったので、斎藤が自分に靡かないのは

正直実に意外な事に感じられた。

―――でも当然っちゃぁ当然か

今までの方がどうかしていたのだ、と。思い知らされる。

横を斎藤達と数名の隊士達が通り過ぎて行く。

彼らの挨拶を適当に交わし、土方は彼らと逆の方向へ逃げるように歩いて行った。

後ろから彼らの笑い声が聞こえる。

誰かが面白い事を言ったのだろうか。

そちらにちらっと視線を向けると、斎藤も土方との会話の時とは違って面白そうに笑っていた。

俺の時とは大分様子が違うじゃねぇか、と独りボソッと呟いた。

足元の土をじゃり、と軽く蹴ってから

「大分お困りのようですねぇ」

ぐい、と袖を後ろから引っ張られてギョッとする。

誰かと思って振り向けば沖田ではないか。

普段ならば決して気付かないわけが無い。それほどに、自分でも思っている以上に、相当こたえていると言う事か。

土方の複雑な心境とは裏腹に、沖田は極めて明るく言った。

「手伝ってあげましょうか」

多分その言葉は土方を心配しているからとかそんな理由ではなくて、ただ単に何か面白い事は無いかなぁという

やや野次馬精神に片寄った発想だと言う感じがした。

「餓鬼が、何言ってやがる・・・」

餓鬼、と言った後に気付いたが沖田と斎藤は同い年だ。

だから沖田を見ていると年齢なんて関係無い、と言い切れるような気がしてくる。

「ガキガキってヒドイなぁ・・・折角土方さんの恋路を手伝ってあげようかなーって思ったのに」

「大きなお世話だ」

沖田は普通にそんな事を言っているが、土方はふと疑問に思った。

「おい、お前・・・何で知っている?」

もしかしたらもう隊内でも噂になっているのだろうか。

今までの自分の行動を胸に手を当てて考えてみる。

一応斎藤が一人の時を狙って声を掛けてはいるが、斎藤がその事を誰かに洩らしたのかもしれない。

なにぶんこの頃は隊内でも衆道が流行っているからあっという間に知られていても不思議はなかった。

しかしそれは土方の杞憂だったようで。

「ふふふ・・・私を舐めてもらっちゃ困りますよ!他の隊士達はさっぱり気付いていないようですが、伊達に昔から土方さんの傍に居たわけじゃ

ありませんから」

その言い方からすると、どうやら他の隊士にはバレていないらしい。

尤も、沖田にバレただけでも十分土方にとって不快な出来事ではあったが。

「大丈夫ですよ。私は言いませんって・・・言わないから手伝わせて下さいよ」

ね?と下から沖田が自分の顔を覗き込んでくる。

彼の差している刀の柄に手が添えられているのは幻覚で無いはずだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・仕方ねぇな」

手伝ってくれ、と溜め息と共にそう言うと沖田は無邪気に喜んだ。

大船に乗ったつもりで居てくださいと言われたが、土方は泥舟に乗った気分だった。

人に頼るのなんてあまり良い気分はしない。

しかしそれによって何か新たな進展があるかもしれない、と土方は自分に言い聞かせる。

そんな土方とは対照的な沖田は、喜び勇んで土方の元から去って行く。実に軽い足取りで。

朝の光は明るい筈なのに、土方の気分はちっとも明るくなんてなかった。

 

それから数日経ったが、あれ以来沖田からの音沙汰は無い。

少し気にはなっていたが、土方も忙しいので構ってばかりはいられない。ただひたすらに仕事に勤しむのみだ。

だから沖田は勿論の事、斎藤とも顔を合わせていなかった。

このまま顔を合わせなかったら―――そんな事無理だろうけど―――いつか諦める事が出来るだろうかと土方は思う。

いや、出来ないだろう。本当は、事実、出来なかったのだ。

土方とて最初から斎藤を振り向かせようとしていたわけではない。

斎藤への想いに気付いてしまった時は、なるべく私生活から遠ざけようとしたのだ。

しかし結局は出来ずに今に至っている。

なんで俺が、と思うときもあるけれどどうしようもなかった。

そんな土方が面倒そうに筆を動かしていると、あの時みたいに沖田が唐突に部屋に入ってきた。

礼儀も何もあったもんじゃなかった。

「土方さん・・・っ!!」

沖田の勢いに一体何があったのだろうか、と土方は目を向ける。

人の仕事を中断するくらいなんだから、とても重要な事だろうと思った。勿論、隊の事だろうと思っていた。

「どうした?」

「あのですね・・・」

大事ぶる割りには余裕があるようだ。少しもったいぶっている。

「一サンが『土方さんと一緒にお酒のみたい』って言ってましたよ」

「・・・・・・・・・・・・」

どんな大事な事かと思いきやそれだけかよ、と土方は素っ気無く言う。

この反応は沖田としても実に意外だったようだ。

「あれ?嬉しくないんですか?」

当然土方が喜ぶものと思って報告をしに来たのに。

「・・・・・お前、隊務はどうしたんだ」

それが土方が喜べない理由の1つに当たるようだ。

「やだなぁ、私は今日非番ですよ」

四六時中仲人の事ばかり考えてるんじゃないんですから、と。

土方も当たり前だと悪態づいた。

「お前は非番かもしれないが、俺は忙しい。そういう話は後にしてくれないか」

尤もなところである。

沖田も土方が公私をきっちり分けているのは解っていたつもりだったけれど、言わずには居られなかったのだ。

二言三言何か呟いてから、潔く部屋を立ち去って行った。

立ち去った後。

土方は見た目平静を装っていたが、正直な所心の中までそうはいかない。

心はどうにも落ち着かない。

一人になってニヤついてしまいそうな自分を叱責しながら、なんとか「副長」を維持しつづけた。

早く仕事が終われば良い。

そうすれば沖田から詳しい事も聞けるのに。

そんな時に限って時間の流れは異様に遅いものだった。

それでもなんとか夜まで持ち堪え、沖田が訪れてくるのを待っていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・来ねぇ」

来い、と言ったわけではないが。

夜になっても沖田が訪れてくる気配は無い。

もういい加減、性格から考えてもここへ訪れても良い頃合である。

昼間ぞんざいに扱った分、喋りたがっているかと思いきや、そうでもないのだろうか。

しばらくは自室で大人しく待っていた土方も段々そわそわし始めてきた。

ここで自発的に沖田の元を訪れるのはいかにも頼っていると言う感じで癪だが。

癪だが仕方が無い。

目的達成の為に形振りなんて構っていられなかった。

土方は心を決めてすっくと立ち上がり、廊下に出た。

外は既に真っ暗だけど、屯所内にはまだ起きているものがいるらしい。

ぼそぼそと話し声が虫の鳴き声に混じって聞こえてくる。

ぎしぎしを古い板張りの廊下を歩く。沖田の部屋までの距離は当然の事だがそんなに無い。

だから彼に会うなんて思っても見なかったのだ。

寝間着姿のままこちらに向かって歩いてくる人影が誰かと言う事を知った時、土方は慌てた。

何故斎藤がこんな処に居るのか。

土方が一人で慌てている間にも距離は縮まっていく。

「副長」

斎藤の方から声を掛けてくるなんて思わず、つい反応が遅れてしまった。

それでも何とか声を絞り出し、今日1日の労いの言葉をかける。

そう言われてしまうと斎藤もこの前のような態度は取れず、「副長もお忙しいようですが、休める時はしっかりと休んでくださいね」

なんて事も言ってきた。

この前邪険に扱われた分、その喜びもひとしおだ。

嬉しさのあまり、うっかり沖田の事を忘れてしまいそうになった。

「斎藤君・・・」

「はい?」

「今度一緒に・・・」

酒を飲みに行こう、と言いかけて途中で止めた。

折角斎藤が普通の態度で接してくれているのだから、ここで引かせてしまってはいけない。

今晩は良い状態で分かれたいものだ。

それに土方が酒嫌いだと言う事は斎藤も知っているだろうから、あまりしつこく誘うとこちらの思惑がばれてしまうかもしれない。

思惑、という単語が頭に浮かんで土方はまた一人で慌てる。

―――思惑?それじゃ俺が何か斎藤に対して良からぬことを企んでるみたいじゃないか・・・

別に酒のどさくさに紛れて、なんて事は考えていない。

でも出来たら良いな、くらいには思った。

土方は小さく頭を振って「いや、なんでもねぇ。とにかくゆっくり休んでくれ。明日また頑張ってもらわなきゃならない」とそれだけ言った。

斎藤は、相変わらずキツイなぁと苦笑しながら去って行った。

しばらくその場から動けず、ただぼうっと突っ立っていたがいつまでもこうしている場合ではない。

沖田の元へ行こうと足を速めた。

部屋の外から声をかけると、まだ起きている。

だけどその声は眠そうだ。

しかしそんな事には構わず、ずかずかと部屋に入って行った。

「あれ?どうしました?」

「どうしましたじゃねぇよ」

沖田はまた何か気分を害することをやってしまったかな、と首を傾げている。

それがじれったくて土方は自分から切り出した。

「斎藤の事だ。昼間の話の詳細が聞きてぇ」

土方がそう言うと、沖田はまじまじと顔を眺めてくる。

なんだ、興味無かったんじゃないのか、と言っているようだった。

ぷっと吹き出して、沖田は手をひらひらと振った。

「あの話ですか。ええ、斎藤さんは確かにそう言ってましたよ」

曰く、今日の昼間に沖田は斎藤の元を訪れたらしい。その際、さりげなく沖田が斎藤に飲みに行こうと誘ったらしい。

斎藤が頷いたところにすかさず土方さんも誘いましょうと沖田が言った。

すると斎藤は相手が沖田だった事もあってか、あっさりと頷いたと言う。

自発的に言ってくれたんじゃないのか、と少し悲しいものを感じたがこれで少し先は開けてきた。

これはもしかすると沖田に頼んだ、と言うか頼む事になったのは正解だったかもしれない。

胸を心持仰け反らせ、誇らしげにそういう沖田が眩しく見えたくらいだ。

「さっき一サンが来てたんですけどね。こっちで勝手に日にちを決めさせてもらいました」

「・・・・・・あぁ?」

だから斎藤があそこに居たんだ、なんて納得している場合ではなかった。

―――日にちを決めた?

「勿論行くでしょ?」

「何処に」

「お酒飲みに」

どうやら事は土方の知らないところで進んでいたらしい。

まさか、と思ったがそれは冗談では無かった。

こうして見事土方は斎藤・沖田の二人と遊郭に繰り出す事になったのだった。

 

土方にしてみれば待ちに待った夜。

しかしこんな夜に限って土方はツイてなかった。

いざ行こう、とした寸でのところで平隊士が声を掛けてきた。

―――副長、局長がお呼びです

思わず土方もその時ばかりは間の抜けた声を上げてしまった。

その土方の様子をあらあら、と言った感じで見る沖田。

どうすべきか、と土方が考える前に沖田は何か考えがあるのか何なのかさらっと言った。

「では土方さん。私と一サンは先に行っていますから。すぐに来てくださいね」

沖田と斎藤は屯所を出て行った。

近藤に愚痴りたい気分だったが、そうもいかない。

大人しく近藤の部屋へと向かい、話が終わるやいなや夜道を全力疾走だ。

店の暖簾をくぐった時に鼓動がどうしようもないくらい早くなっていたのは、息が切れていたからだけではない。

「連れが先に着いているはずなんだが・・・」

名乗ると、店の旦那が、聞いております、こちらへどうぞと土方を案内する。

案内され、奥まったところにある座敷の前まで連れて行かれた。

もういい、と旦那を追っ払って土方は自身の手で閉じた襖を開ける。

「あ、早いですね」

秋なのに汗をかいている土方を見て、沖田がくすっと笑ったのが分かった。

この時土方は、おや、と思った。

二人の周りには早くも何本か空の徳利が転がっていた。

普段はそんなに飲む方じゃなかったはずだが、と不思議に思ったが、すぐそんな事は気にならなくなる。

さぁさぁと腕を引かれて腰を下ろした。

もう酔っている事はすぐに分かった。

そんなに遅れたつもりではない筈だが。

いつの間にか土方も猪口を持たされ、並々と酒を注がれていた。

「さ、さ。グイッと!」

二人して土方にそう言うものだから、つい土方も一気に飲み干してしまう。

大した量ではないが、基本的に酒の嫌いな土方にとっては十分すぎる量だった。

その事を沖田も察したらしく、それからはあまり酒を注いでこなくなった。

斎藤も土方の事は悲しい事にあまり気にしていないらしく、どうしても場の中心は沖田になる。

しかし沖田は最初からそれを狙っていたのかもしれないと土方は思い始めた。

「・・・でね、土方さんったら・・・」

さっきから聞いていると、どうも土方の過去の話が多い。

斎藤がそれを笑いながら聞いているからあまり不快には思わないが、他の奴らが相手なら間違い無く土方の拳がうなっているはずだ。

「はは・・・なんだかすっかり土方さんの印象が変わってしまいましたよ」

コレだ。

沖田がそんなに気の利く奴かは知らないけれど、これを狙った可能性は大いにある。

斎藤は大分酒が回っているらしく、さっきから笑ってばっかりだ。

沖田も飲んではいたが、土方が来てからは大分控えているようだった。

つまり、酔っているのは斎藤のみ。

自然、斎藤が一番最初に酔いつぶれるのは当然の事であった。

「ふふふ・・やっと酔いつぶれましたよ!」

寝息を立てている斎藤を見て、沖田が上機嫌でそう言った。

「・・・・・お前はこれも狙ってたのか」

常日頃から策士だと称される土方でさえ、感心してしまう。

「で、お前はこの酔いつぶれた斎藤で何をしようってんだ?」

土方は真面目にそう聞いたつもりだったのに、沖田の笑いのツボを突いたようだ。

少々酔っている所為もあるだろうが、いつも以上に笑っている。

「やだなぁ、土方さん。いつからそんな良い人になっちゃったんですか?」

鬼だ鬼だと思っていたのに。

「・・・・まさか・・・」

「そうですよ、折角私がここまで準備してあげたんだから」

さっさと実力行使しちゃえば良いじゃないですか。

まだ餓鬼だ、と思って見ていた沖田の口から飛び出した言葉だけにちょっと衝撃的だった。

「待て待て・・・俺は別にそういうつもりは無い。酔っ払ってる相手をそんな・・・」

明かに狼狽している土方にぴしゃりと沖田が言う。

「じゃあ良いんですか!?土方さんはこのまま一回も想いが果たせなくても良いんですね!?」

そう訊かれると頷けない。

むしろこのままでは嫌だと思う。

「・・・それは嫌だが。しかし・・・」

まだ渋っている土方に沖田はキメの一言を放った。

「自信が無いんだ」

「ぁん!?」

「下手だから、抱いたら余計愛想つかされるから嫌なんだ」

これは昔から女に人気のあった土方にしてみれば、聞き捨てならない科白だ。

「・・・こいつ・・・」

「どうなんです?違うなら早く抱けば良いじゃないですか」

お前に言われるまでもねぇ、と土方は喧嘩越しで言い返した。

酒で赤く染まった斎藤の頬に手を伸ばし、触れる。

彼の唇に自身の唇を押し当てると、酒のにおいがした。

いつも嫌だとしか思えない酒のにおいも、今は気にならない。

その様子を見ていた沖田が部屋を出ようと立ち上がった。

「内緒だったんですけどね、実はもう1つ座敷をとってあるんですよ」

迷惑な客ですよね、なんて一人で呟きながら部屋を出る。

残された土方と酔いつぶれている斎藤。

やはりここでキメねば男でない、などと自分でもよくわからない事を考え、斎藤の頬にもう一度触れた。

斎藤が起きる気配は今のところ無さそうだ。

起きて欲しい気もするが、起きないで欲しいとも思う。

徐に斎藤の肩を上から押さえ、体重をかける。

片手で肩を押さえ、袴の隙間から手を差し入れた。

斎藤が気付くわけなんて無かった。

布越しに斎藤のそれに触れると土方の気分も昂ぶる。

それを布の上から手で包み込み、先端を擦った。

刺激するようになぞってきゅっと握り込む。

それだけでは物足りず、いっそこの邪魔な布を取ってしまおうとした時だ。

「・・・・・っん・・・」

斎藤の口から声が洩れたのにビクッとして顔を眺める。

「・・・・・・・・・・・」

目があった。

「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・?」

一瞬間を置いてから、斎藤が跳ね起きようとするが、肩を押さえているためになかなかそうはいかなかった。

「ななな何を・・・っ!!」

「すまん!」

もう一度肩を押さえる腕に力を込め、土方が斎藤の首筋に顔を埋めた。

舌で舐めると斎藤が仰け反る。

「ちょ・・・」

肩を押さえるだけだと抵抗がキツイので、体全体で覆い被さった。

その空いた手で衣服を剥ぎ取りに掛かる。

意外な事に抵抗はそこまで激しいものではなくて、脱がすのは思ったよりも簡単だった。

露になった胸に手を這わせると、斎藤の口から嬌声が洩れる。

それを聞きながら、明確な意図を持って手を這わせた。

酒で朱に染まっていた斎藤の頬が益々朱に染まって行く。

「ん・・・ん・・・っ」

突起を摘むと体をくねらせて手から逃れようとする。

しかしそこで逃してやれるほど土方もお人好しでは無かった。

斎藤の中心も次第に形を変えて行くのが分かったが、それは土方も同じである。

土方は斎藤の中心に手を添え、直にそれを扱いた。

先端からは先走りの蜜が零れ、土方の指を濡らす。

扱くたびにくちゅくちゅと音が部屋に響く。

斎藤の顔を見ると、気持ち良いのか目を閉じて土方に任せきりだ。

早くも抵抗がない、というところを土方が不思議がる余裕は無い。

ただ斎藤に夢中で行為に没頭する。

土方の頭の後ろに斎藤の手が回り、胸に抱いた。

ぴちゃ、と舌で突起を甘く噛むとビクビクと斎藤が震えるのが分かる。

分かるから余計にそこを苛めたくなった。

「は・・・っぁあ・・・」

快感をやりすごそうと斎藤が頭に回した手に力を込める。

唾液にまみれてツンと尖ったそこを責めながら、手の中にある斎藤に限界が近い事を感じた。

そこはもう堅く張り詰めている。

「良いぞ・・・一度イって・・・」

斎藤は嫌だ、と弱々しい声で言ったがぎゅっと握り込むとあっさりと欲望を吐き出した。

斎藤が大きく息を吐き、恍惚とした表情を浮かべている。

それを土方は見ながら、荒い息をついている斎藤の唇に指を当てた。

「舐めて」

そう一言だけ言うと、従順に斎藤はそれを口に含んで舌を絡める。

生暖かい口腔で舌を絡められて。

土方の指は斎藤の唾液にまみれている。

その指を程なく引き抜いて、今度はつぷと蕾に埋めた。

「ぁ・・・っ」

斎藤が上にずれて逃れようとするが、腰を掴んで引き戻す。

「逃げないで」

やわやわと内壁を弄り、斎藤が嬌声を上げた部分を執拗に責める。

擦るたびに腰が跳ね、体が震えた。

熱を放ったばかりのはずの斎藤のモノがまた頭を擡げ始めていた。

土方のもそろそろ限界に近くなってくる。

この今指が入っている部分に挿れたくてたまらない。

「・・・なぁ、良いか?」

良いか、と訊いても斎藤は堪えなかった。

土方の方も答えは期待しておらず、むしろ黙っているから指を引き抜いた。

そして斎藤の脚を掴み、大きく広げさせる。

その脚の間に土方は体を割り込ませ、先端を押し当てた。

「ん―――――っ」

ぐっと力を掛けて、先端が埋まる。

それだけですぐにでも放ってしまいたくなったが、堪えて腰を押し進めた。

「・・・っは・・・ぁあ・・・」

力を抜いて、と囁きながら埋めていった。

根元まで埋まり、そこが焼けるように熱い。

「大丈夫か?」

「・・・っ、だいじょうぶです・・・っ」

斎藤が絶え絶えに言う。

そんな事より、と斎藤が土方の背中に腕を回した。

「・・・動いて良いですよ・・・」

「え・・・っ」

その意外な言葉に驚く土方ににこりと微笑み、さぁどうしたんですか、とたき付けるような事を言った。

土方もいつまでも待ってるつもりは無いから、それならお言葉に甘えさせて貰おうじゃないかという気分に土方もなる。

「余裕じゃねぇか・・・」

少し抜くようにして、一気にまた貫く。

斎藤の口からは甘い悲鳴が洩れた。

「・・・っく・・・ぅ・・・」

とても中はキツイ。

硬いモノが内壁を擦りあげる。

その度にぎゅっと締め付けられ、また少し大きくなった。

「―――――――・・・・・っ」

最後に一際強く貫かれ、斎藤と土方は同時に欲望を吐き出した。

 

行為を終え、土方は気になっていた事を思い切って口にしてみた。

「・・・お前、俺の事好きか?」

その問いに斎藤は困ったような顔をして、次に笑った。

「・・・さぁ」

「はっきりしねぇな」

誤魔化すように笑いながら、斎藤は黙々と服を身に着ける。

「内緒です」

「ケチくせぇ」

ただ1つ、斎藤に言える事は。

―――嫌な相手に黙って抱かれるほど私は甘くないです

だけどそれは口に出さない。認めるのは癪だから、一人で悩んでいれば良い。

それは斎藤だけの秘密。