五月雨錦

五月も中頃を過ぎた友引。

瓦を打つ雨の音と、地面に吸い込まれる水の流れ。

鮮やかな緑葉に弾かれた雫は四方八方に飛び散り、蛙が小さく歓喜の声をあげる。

空を埋め尽くす雨雲は遥か遠い空の果てまでその裾を広げ、白い線を地上に落として動いていく。

前日から続く五月雨は不穏な京都を更に怪しく包み込んでいった。

それを無視するように、火影がぼんやり肌寒い暗闇に広がる。

雑音を凌駕する静けさが、部屋の空気を満たす。

全てが止まり始める丑の刻。

筆を滑らせる音は長く、すでに4時間以上続いていた。

煙管から上がる煙が部屋に充満し、土方の体を掠めては僅かに開いた障子の間から逃げていく。

「来たか・・・」

そう呟いて、土方は筆を止めた。

墨のついたままの筆を机の上に置き、人気の感じられない襖に目をやる。

用意されていた茶を啜り、一息ついてから脇息にもたれ口を開いた。

「報告を」

「はい」

声が聞こえ、襖がゆっくりと開かれる。

襖の奥は引き込まれるような黒で、畳が深く吸い込まれていた。

開かれた襖から半分だけ体が見える。

わりと細身の監察が正座をしていた。

後ろで髪を一つに結い、前髪を上げている。

「奴らの動きは?」

「この雨で、まだ。ただ、徐々に仲間と思わしき者が数人、別々の宿屋に」

「そうか」

「雨が止み次第何らかの動きがあるかと」

「まぁ、すぐには動かないだろうな」

「はい」

綺麗に折りたたまれた紙をすっと畳に置き、土方に差し出す。

山崎は薄手の着物を着ていた。

「入れ、襖が開いてると寒い」

そう言われ、山崎は襖をしめて中に入る。

ぱたんと襖が閉まり、出口を失った空気の流れが変わる。

山崎は一度畳に置いた紙を掴むとすっと立ち上がり、それを直接土方に渡した。

山崎の手は冷たく、土方の右手には濃い墨が肌に滲んでいた。

「早くて今週中か・・・。何か対策でも取るか」

煙管を吸いながら、紙を開く。

三つ折にされていた紙を伸ばし、片手で持って目を通す。

頬杖をつきながら、眉をひそめて白煙を吐き出した。

「どう思う?」

「・・・個人的な考えは・・・」

「かまわねぇよ。一つの意見だ」

「・・・私的には、まだ様子を見てもいいとは思いますが」

山崎の言葉をうけ、土方は重い溜息を漏らした。

早急な判断は必要ないが、長州側が何をしでかすかは計り知れない。

だからと言って、新撰組として、今すぐ動くこともできない。

いつ行動に移すかは、難しく、危険な賭け。

「もう暫く待つか・・・」

「明日には雨も止むと」

「感か?それとも確証あってか?」

「根拠はあります」

少し間を置いて、土方はもう一度茶を啜る。

湯のみの中身はぬるくなり、書いていた墨の字も乾いていた。

自然と溜息が漏れて、硬くなった左肩を揉む。

「疲れていらっしゃるのでは?」

「まだやることが少し残ってるからな・・・」

「早く寝たほうが宜しいですよ」

「総司みたいな事言ってんな」

すでに敷かれている布団に視線を移し、落ちた前髪を掻き揚げる。

大分前、六つ半頃に総司に言われた小姓が敷きにきたのだ。

「心配しておられるのです。ずいぶん長く寝ていられない御様子ですので」

「この天気だ。あいつは自分の心配をした方がいい」

「執務は明日にでも。体を壊されては元も子もございません」

「それでも、明日は明日の予定があるからな」

「たまには、組の事を忘れることも必要です」

びゅっ、と強い風が吹き、戸を叩く。

蛙ももう鳴かない。

がたがたと揺れる戸の音を聞きながら、山崎はふと思う。

監察として、とても似つかわしくないことを。

「組のことを忘れる時は、長州を潰した時だ」

土方は手についた墨に気が付き、今更ながら拭いている。

下を向くその姿を見ながら、山崎は唇をかんで同じことを考える。

先刻と同じことを。

「・・・そうですか」

「ん?」

土方が俯いていた顔を上げる。

立ち上がった山崎は机にあった紙や、筆や、硯を片付け始めた。

慌てた土方がそれを止める。

「おい、何しやがる」

「あんさんは、誰かが無理矢理休ませんと駄目なお方のようや」

「まだ八つだぞ・・・。仕事も残ってる」

「もう、八つ半を過ぎとります」

声を荒げて手を伸ばす土方の手を山崎が掴む。

しっかりと、腕に、紅い痕が残るほど。

意外と無骨な手で、力いっぱい。

無言の警告、意識的な行動。

「心配しとるんです」

―――――――――失敗した

そう思ってももう遅く。

怒らせてしまった。

「最後です。・・・お休み下さい」

静かに、普段より低い声で促す山崎に、とうの土方は小さく聞く。

「・・・嫌だといったらどうなる?」

自分を見上げる土方に、山崎の目が冷たく光る。

「お分かりやと思いますが?」

苦笑する土方に、突き刺すような視線をくれる。

煙管の煙は上がらない。

持ち主の口から離れたそれは、畳に落ちて冷めていく。

「鬼を喰らうか?」

「今更。己も鬼や思おとりますから―――――――」

「今から寝るといっても、どうせ無駄だろう?」

「俺も、それなりに男なんで・・・」

土方は溜息をついて、目を瞑った。

後悔と、自嘲を含んで。

 

行燈の火の消えた部屋。

立ち尽くしたまま、向かい合う二つの薄い影。

「俺を抱こうとする奴なんておまえぐらいだ」

「そうやないですよ」

軽く接吻して、離れる。

見詰め合い、また口付ける。

「どう言う?」

「さぁ?」

「性格の悪い・・・」

「鬼退治は皆、狙っとるいうことです」

「わけがわからん」

「こんな時に口数多いんは、不粋や思いますけど」

「それは・・・んっ」

ふいに、重ねられた唇の温かさに酔いしれて。

角度を変えて何度も触れて。

そう、触れるだけ。

いずれ息苦しさに開かれた唇の間から、ここぞとばかりに差し出された舌を甘受した。

逃げるそれを捕まえて、絡め取る。

「ん、・・・ぅん」

歯列をなぞり、吸い付いて、水を得た魚のように。

奪うように強引に、優しく。

甘くくぐもる声が喉の奥に蹲る。

「ぅふ・・・はっ・・・はぁ」

「ふっ・・・」

わざとゆっくり、最後に土方の唇を舐めて離れた。

透明な細い糸が後を引く。

淫猥なその情景に山崎は目を細めて笑った。

「はぁ・・・」

「この体勢・・・」

「ん?」

「身長・・・」

耳元で囁いて、首筋に口付ける。

強く吸って、紅い痕をきつく残す。

「布団。副長も、きついんちゃうかと」

「そのつもりだろう?」

「元より・・・」

腰に手をやって、敷かれた布団へと導く。

白くしわ一つないその場所。

「ぁっ・・・」

「この着物、肌蹴とって」

「あぁ・・・あ、う・・・ぅん」

「手間が一つ省けます」

そう言って、鎖骨に口付ける。

淀むことなく降りていく唇が心臓を擽った。

途中で引っ掛かった突起を甘噛みして、口を離す。

土方の反応を楽しむ意地の悪さ。

「てめっ・・・何して・・・」

「綺麗やなぁ思って」

「何が?」

「筋肉のつき方とか、見惚れます」

「見えねぇくせに」

「ちゃんと、見えとります・・・」

「んっ・・・あっ」

紅くなった果実を含んで、舐めあげる。

瞬時に返ってきた反応に、山崎はにやりと笑って土方を見あげた。

「あ、ぁ・・・んぅ!・・・」

硬くなった実に歯をかけて、吸い上げる。

小さく存在を主張するそこは、土方の意思とは無関係に淫らに形をかえていく。

刺激に背を反らした土方の背中に左腕を回して、背筋に指を這わせた。

名残惜しげに唇を離して、もう片方へと移る。

急に外気に晒されたそこの刺激に首を反らせ、くぐもった声をあげる土方の乱れた黒髪に指を絡める。

執拗に、ある種拷問のように続く小さな快楽。

それを止める微かな理性。

「唇、かまへん方がええですよ」

山崎の言葉に土方は首を振って一言。

「組にばれたら・・・困るだろう」

「どっちがです?」

しばらく口篭もって、迷った挙句放り出す。

「考えろ」

「まぁ、俺としても副長の声は誰彼に聞かれとおないんで」

「くぅっ・・・」

「でも、我慢は止して下さい」

とっさに漏れた自分の声に目元を紅くさせて横を向く。

なぜ自分はこんなことをしているのだろうと、一瞬我に返った。

なぜ自分が組み敷かれているのだろうと。

しかしそれは逆に羞恥心を煽るだけで終わった。

「ぅるさい」

「強情なお方や・・・」

すでに腰帯で止まるだけとなった着物の隙間から。

乱れた裾からてを忍ばせて、太腿をやんわり撫でる。

白い布に手を掛けて、山崎は当たり前の事を聞いてみる。

「ええですか?」

「馬鹿が・・・たたっ斬るぞ」

「ほんま、嘘吐きや・・・」

着物が脱げきらないように。

この、濃い着物の乱れた状態がとても好きだから。

「ぁっ・・・あぁ」

張り詰めたそこに指を添える。

「口の方がええですか?」

土方が首を横に振ったため、山崎はそのまま行為を続けた。

先走りを塗り付けて、わざと音が出るよう。

なんだかんだと言いながら、結局は快楽に落ちていく己の浅ましさ。

それを悔しく思いながら、土方は気を抜けば溢れる喘ぎを殺すので必死になっていた。

「ふ、っく・・・う・・・ぅ」

「声、そんなに出しとおないですか?」

「・・・たり前・・・だ・・・あっ」

「これだけ雨降っとれば、外になんて聞こえへんですし、聞かれても吹聴などせえへんと思いますよ」

そう言って、ほんの一瞬外に耳をやる。

雨は弱まりつつも、強い風が戸を叩き、木々を揺らしてざわつかせる。

空中を舞う塵や葉の無力さも。

地を濡らし、全てを浸す雨の、最後は乾いてしまう無情さも。

移り行く雲のように消えていく。

「唇切れます」

血の滲む土方の唇を舐めて、覆うように接吻する。

漏れる声を飲みこんで、深く求めて追い上げる。

「んっ・・・ん、ん、ん」

口の中で溶ける矯正。

頭を狂わす強烈な感覚。

「ふ・・・ん・・・んぅ!!」

朦朧とする意識の中、ぼやける視界が捕えたのもは、妖しく光るその瞳。

山崎の手を白濁した涙が濡らす。

微かに震えながら、力の抜けた躯を放り出し解放の余韻に浸った。

「はっ・・・はぁ、はぁ・・・」

「どうですか?」

「てめっ、俺を・・・殺す気か!」

土方が乱れた呼吸で、声を荒げる。

肩で息をしながら、目の前にあった山崎の顔を押しのけた。

「こっちの方がええかと思って」

「息が・・・出来ねぇだろ」

ようやく落ちついてきた呼吸と、高鳴る鼓動を抑えて、文句を垂れる。

照れ隠しのために。

「先いきますよ?」

「少し待てねぇのか」

「今更何言っとるんですか?もう慣れたんやないですか?」

―――――――――――怒ってやがる

「あぁ、もういい・・・。相手がおまえだってことを忘れていた」

諦めて手を布団に下ろす土方を見て、満足げに山崎が言う。

「組のことなんて、すぐに忘れますよ」

その言葉に、土方は途方もない眩暈を感じた。

山崎の指が抗う蕾に滑り込むと、土方の背がひくりと僅かにずり上がる。

恐怖心のような、絶望のような、はたまた喜びのような。

ひどく不思議な感覚に陥りながら、土方はされるがまま、目を瞑る。

「いっ・・・ぐ・・・」

「痛いですか?」

「っるさい・・・続けろ」

山崎は小さく溜息をついてさらに指を挿し入れる。

そのたびに土方は小さく呻き声を漏らし、指を白くして布団を掴んだ。

「うっ・・・っくぅ・・・つ」

「平気ですか?」

「んっ・・・う」

何とか、それなりに溶けたソコから指を抜く。

蛙がまた、鳴いていた。

「いきますよ?」

「聞くんじゃねぇ・・・」

目尻に光る雫を拭いて、綺麗に筋肉のついた、決して細くはない腰を引き寄せる。

逃げないように。

山崎自身を感じて窄まるソコに押し当てて、探るように食い込ませる。

指とは比べ物にならない質量と火傷するのではないかと思う灼熱。

「きっつ・・・」

「ぐっ・・・あ、ぃ・・・いっ!」

「少し、我慢して下さい」

下腹部を襲う圧迫感に、心臓さえも潰される。

土方の口からは悲鳴のような声しか出ない。

異物を排除しようとうねる肉壁を擦りながら、無理矢理奥へと進んでいく。

全てが紅い世界。

「ふっ・・・は、は、ぁ・・・あ」

「少し待つんで、落ち付かせて下さい」

土方は、内に納まったまま、動かずに自分の痛みが治まるのを待つ山崎の髪を掴んだ。

結ってある髪の束を引っ張って、息も絶え絶えに一言詰る。

「てめぇも取れ」

「なんでです?」

「人のばっか・・・どれもこれも、剥きやがって」

「あぁ・・・。ええですよ」

そういって、下半身は動かず、手だけ動かして髪を解く。

なぜかゆっくりとした山崎の動きを見ながらに土方は唇を噛み締めた。

自分の鼓動と同調し始めた内の脈動に焦りを感じて。

妙に現実的に感じる山崎自身に、土方は布団を握る手に再び力を込める。

「俺、副長の黒髪好きなんです」

それを察したかのように、笑いながら、微妙に腰を動かす。

ほんの少し残った理性の片隅で、土方はふと考えた。

自分は、とでもない奴に好かれたものだと。

「んっ」

「長うて綺麗やないですか」

「ん、ぁん・・・・あ」

隠しても明らかな、甘く下半身を刺激する艶声。

うっすらと肌に滲む汗と、そのせいで顔にこびり付く黒髪を山崎がそっと掻き揚げる。

下腹部を掻き回す熱の凶器に神経を焼き切らして、ただ目を瞑って、堪え凌ぐ。

あまりに強暴な悦楽を受け流すこともできず。

脳天を突き抜けては全身に流れていく痺れに土方はひたすら躯を痙攣させた。

「ひっ・・・ぁ、あ・・・んぁ」

「布団にばかり縋っとらんで・・・」

「んっく・・・うん、ん・・・う!!」

「たまには俺にも頼って下さい」

そんな言葉を無視して、嫌みったらしく布団からはみ出た手で畳を引っ掻く。

土方の手が、無造作に転がっていた煙管にぶつかった。

カリカリと音を立てて、整った畳がささくれていく。

「・・・ええですけど・・・」

土方を貪りながら、山崎はそう呟いた。

喉奥に詰まる嬌声にうっとりと耳を傾け、激しく愛撫を繰り返す。

躯と心の全てを翻弄し、厚い意識の壁をはがしていく。

「あぅっ・・・あ、んあ・・・」

「本番はこれからやて」

「っん・・・やめ・・・ぁ」

「監察を舐めたらあかんって、以前・・・」

「うん・・・んんっ」

「副長のこと、一番よう知っとるんは俺やて言ったはずです」

「あっ・・・」

くすりと淫逸に微笑んで、わかりきった躯を攻める。

脆くなった理性を砕いて、張り付く媚肉を擦り上げる。

「ひぁ・・・ばっ、か・・・やめ」

「ここ、好きでしょ?」

「あ、あっ・・・あ」

「んっ・・・素直ですね?」

「はぁっ、あぁ・・・あぃ・・・いっ」

「下は」

「あっく・・・あ、ふ・・・」

しっとりと汗ばんだ肌に酔いしれて、限界の近い自分を抑える。

無表情に。

土方に気付かせまいと、山崎は余裕のあるふりをする。

それは、山崎がもっとも得意とする分野。

普段は笑わない自分が、こんな時だけやけに笑うのはそのため。

一方、そんな山崎にさえ気がつかないのは、快楽の波に揺すられる切ない人形。

「うぁ・・・ああ・・・あ」

「くっ」

「やま・・・ぁ、きぃ」

「・・・何、ですか?」

「あ、も・・・焦らす・・・なっ」

「ええんですか?・・・そんな声、出し取ったら組に・・・ばれますよ?」

腰を掴む手により一層力を込めて、熱い息を吐きながら問いかける。

精一杯、平静を装って嫌味を言う。

「んなこともぅ・・・う、関係あるか」

「そうですか・・・」

確認して、突き上げる。

もはや開かれた口からは、甘い声しか上がらない。

下から拓かれる衝撃に、土方は朦朧とした意識で山崎の着物の袖を掴んでいた。

それに気付いた山崎が、土方に口付ける。

雨の音が、全ての音を隠していた。

「ああ・・・あん、ん、ん・・・いぁ!!」

「ええですか?」

「ふぅ・・・う」

「副長」

「やはっ!!・・・は、ぁあ、あ・・・んあ」

「副・・・長?」

「ああ・・・んぁっ・・・山、崎・・・い」

呼ばれた名前に、本来の目的も記憶の彼方に消え失せる。

寝かせたくないと思ってしまう。

それが魅力。

「こっちももう・・・限界なんで」

「あっつ・・・ん」

吐息混じり囁いて。

「イって下さい・・・」

「んっ、あぁぁ!!」

山崎の言葉の意味を理解する前に、土方は欲望を解放した。

同時に、締めつけられた山崎自身も絶頂を迎える。

心臓が一際大きく脈を打つ。

体内を満たすのは奇妙なモノの感覚。

ばらばらになった神経の中、土方はそのままその意識を飛ばしていた。

瓦を打ち続ける雨の音と、戸を叩き続ける風の音に助けられながら山崎は深く息尾吐き出す。

眠り続ける人間達。

動き続ける黒い雨雲。

淫蕩に気がつくのは小さな蛙。

空から落ちた雨水が、地に吸い込まれ流れ去る。

大きな水溜りをつくり、葉を濡らす。

とても暗いひつの部屋。

それを満たすのは煙と代わる、妖艶な雰囲気。

行燈の消えた暗闇で、二つの肢体は絡まり合う。

狭い狭い布団の上。

残るのは後ろ髪を引かれる思い。

傍らの寝息が雨に浚われるのを感じながら、山崎は一人部屋を出る。

――――――――組のことなんて、すぐに忘れますよ

それは五月雨の降る真夜中のこと。

 

 

 

≪おまけ≫

「山崎・・・」

「はい」

「いったい何時だと思ってんだ?」

「・・・9つ過ぎに」

「なぜ起こさなかった」

「それでは私が昨日やったことの意味がなくなります」

「これでどう、昨日と今日の仕事をしろって?体が痛くて動けやしねぇ」

「いっそ今日も休養なされれば、体調もよくなります」

「馬鹿が」

「ちょうど今日は先負ですし、急用にはむかないかと」

「それで・・・・・・はめたつもりか?」

「いいえ」

「・・・調子が悪ければ自分で何とかする」

「できていれば昨日のようにはなりません」

「女でも掴まえればいいんだろうが」

「そこらの醜女に、副長満足させられるだけの技量があるとは到底思えまへん」

「・・・自惚れか?」

「確信です」

「・・・」

「体は大切にせえへんと、また、鬼退治狙っとるのに喰われます」

「冗談のつもりか?」

「その身でお確かめになれば、わかることです」

――――――――――嫌な奴だ・・・