|
モバイリィな沼レコード.comへ(携帯の方はこちら)
a b c d 沼レ コード 2005ぉぉぉぉぉおおおお |
|
(1)希望観測所の老人 「そこ」は、多くの子どもが通過儀礼の如くひどく当たり前に集められる場所 だった。希望という形で全ての子ども達の前途をてらし、それは同時に 夢という形で、一つの選択肢となっていった。 「そこ」には、この世の全てがある。無いものはない。在り来たりな日々を 過ごしている。それについていつ不快に思ったのか・・・ マイクは言った 「オレを救ってくれ」 と。救いにいった人たちは、次々と消えていった。「そこ」には、この世の全てが あったからだ。人々の考える理想。それが、「そこ」にはあったのだ。この世の全て が「そこ」にある。とは、そういうことだ。いつからか、世界中に「そこ」はあふれて いった。 大人たちは考える。「そこ」を何か・・・そう、何かに利用する事は出来ないだろうか? 結論がでるまでに多くの時間はかからなかった。 それが、子ども達の通過儀礼として世界に定着。コレまで、世界を形成してきていたのだ。 「そこ」には、この世の全てがある。子ども達の考える輝かしい未来を、実体験として 体験できるのだ。そしてそれは子ども達が自らの夢形成する事に大きく貢献した。 かつて、多くの人々を捕まえ逃がさなかった「そこ」は、子ども達という存在を得て 新しい存在価値を見出す結果となった。 なぜ、このような場所が存在するのか。一体誰が作り上げたのか。それは、 誰にも分からない。だがしかし、過去がなんにせよ「そこ」が「ある」ことは 揺るぎのない事実であり、多くの子ども達が「そこ」を経験する事で、 自らの人生を大きく変化させた。 「そこ」は、幾つもの意味を複合し「希望観測所」と呼ばれるようになった。 しかし、それよりも、最初の発見者である「マイク=ハガー」にちなんだ俗称 「マイクの部屋」として知名度を持っていた。 マイクは言った 「オレを救ってくれ」 と。 あまねく全ての人は、マイクの言う「救う」の意味する所を理解していなかった。 そして、新世界へと移行・・・夢の消失とともに「希望観測所」、俗称 「マイクの部屋」は消えて行った。 一人の老人が呟いた 「常軌を逸して初めて人間だと認識してください。人間だと称された方々は 誰もがみんな狂っています。あなたに一言お教えしましょう。 夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢 ・・・・・・あなたの人生は、全て夢です。」 老人は、ひどく寂しそうな自嘲を浮かべ黙ってしまった。そこは、かつて「希望観測所」 と呼ばれていた。老人に目的はない。老人に希望はない。しかし、老人は「夢」と言う言葉だけを覚えていた。 一人の。一人の女がこの老人の所を尋ねてきた。彼女は自分の事を「夢想代理人」である。 とだけ名乗った。すでに、新世界に移行し数年が経った時のことだ。 6月29日 完成 |
|
(2)対話における成り行き まず何をすべきか。それが重要で、なぜなら、マイクの部屋は作られたものではなく、 あったものだからだ。必要である。この段階の余儀はない。次の段階として考えるとき、 何をすべきか。そこで行き詰まる。瞳は、すでに数週間同じ思考の中をグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグルグル と、出口のない迷宮を歩くが如くさまよっていた。 答えはなかった。そう気付いたとき、瞳は一つの可能性にかけて、 ある場所を目指した。そこは、かつて「希望観測所」・「マイクの部屋」と呼ばれていた。 永遠の堂々巡りから抜け出す具体的な策として動くことを提案したのだ。 そこには1人の老人がいた。そして、寂しい自嘲を浮かべながら同じ言葉を呟き続けた。 「常軌を逸して初めて人間だと認識してください。人間だと称された方々は 誰もがみんな狂っています。あなたに一言お教えしましょう。 夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢夢 ・・・・・・あなたの人生は、全て夢です。」 瞳にとって、老人が「夢」という言葉を何喰わぬ顔で発した事実が嬉しかった。 「良かった。ここに来たことはおそらく間違いではなかった。」とまで思った。新世界、誰もが 忘れてしまって久しい言葉。それが「夢」。繰り返しにはなるが、 新世界には「夢」が存在していなかった。しかし、この老人は「夢」と言った。それは、瞳に 新世界において、すでにさびれたかつての「マイクの部屋」ですら夢を与える力があると 確信させるには十分だった。 以下は2人の会話をまとめたレポートである。 「またみんなが夢を持ち、そして、絶望と栄光を譲り、奪い合う世界になる。 それは、とても素晴らしい事ですよね。そのためには、あたしは、「マイクの部屋」が必要不可欠だと思うのだけれども・・・どうかしら。」 「・・・夢を持ち、絶望と栄光を譲り、奪い合う世界。ワシが聞くべき事は一つ。 夢を持つことと絶望することが同一線上にあるとして・・・ 今、あんたは素晴らしいと言ったが・・・ どちらがいいと思うのかね?」 「どちらが・・・?とは?」 「夢を持ち絶望することと、夢を持たずに絶望せずに生きることとだ。」 「・・・・」 「どちらが正しいとも言いきれないだろう。絶望するのは怖いことだ。夢を持たないことは 悲しいことだ。それを理解できぬ者に、希望観測所を語ることは出来ない。思い知るがいい。 人が生きていく意味と感情を。」 2人は、それからしばらくの時間を沈黙によって共有した。 沈黙を破るものがいた。彼は、当然のようにそこに現れた。「食べているのか名前なのかとにかく正義の味方。」と赤い糸で刺繍された白い旗を手に持って・・・ 7月10日 完成 |
|
(3)バクヲ対夢想代理人 それは、かつてバクヲが経験した事があった。平たく言えば、デジャブではなく 二度目・・・イヤ、数え切れなく経験した事であった。 「お前のやりたい事は分かっている。だがそれは、全ての人類に絶望を 降り注ぐものだ。オレは、取り留めなく全ての人類を救いたい。その為には お前のような人間は必要ない。」 「必要ない?どういう事?まるであなたは、あたしを知っているみたいに・・・」 「はるか昔の話だ。まだ、現在使われている言の葉が使われていなかったほどの昔 ・・・そう、それは旧世界と呼ばれていた。旧世界、全ての人間に夢を与える 事で、いきとし生ける人類に『夢』と言う形で絶望を与える事を職業としている 人間が居た。彼らは、自らが先駆者となる事で、夢を現実のものとして認識させ、 そして、その後真実を知った全ての人類を絶望させた。だが、オレが夢を 無くすと言う『救済』を実食という形で行った結果、彼らは、アイデンティティー を失い、この世のどこかへと消えて行った。しかし、全ては消えなかった。一人 彼らとも、オレとも違う考えをもち生き残ったものが居た。そして、そのものは 再びこの世界に夢を取り戻そうと動き始める事になる。・・・歴史は繰り返すという。 オレは、この場所で、かつて、同じように、一人の女に出会った。彼女は、 自分の事を『最後の夢想代理人』といった。・・・お前もそうだろ?なぁ?女?」 「・・・そんな・・・じゃあ、あたしは予定調和の如く生き残り、そして、 可能性にかけて、ここにやってきたって言うの?」 「そういう事だ。そして、何をしようとしているのかもな。ひとつ教えておこう。 お前のやろうとしていることに何の意味も無い。人間はな、夢を持つために生きて いるのではない。生きるために生きているのだ。だとしたら、ほんの一握りのもの 以外の全てが、絶望するだけの『夢』は果たして必要かな?人は夢を持たなければ どんな絶望も平気なんだ。この世に、夢・希望があるから同じ数だけ絶望があるんだ。 そんなことも分からないのか?・・・分からない理由を教えてやろう。それはな、 お前が、これまで苦しめてきた数え切れない不特定大多数のあまねく人々と 同じ絶望を味わっていないからだ。オレの『実食』は本来、人々を救うためのものだ。 だが、それはおそらく、お前にとってだけ違う事を意味するだろう。・・・すなわち 『絶望』・・・お前はこれから、『夢』という存在を忘れるがいい。そして、 もう二度と、オレの邪魔をするな!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 『実食』の始まりだ!!!!!」 バクヲの実食が始まった。それは、瞳にとって初めての経験で、瞳の思った以上に 穏やかに行われた。ゆっくり、ゆっくり。これまで、瞳が大切にしてきた 夢が消えていく。それが、手にとるわけでも、明らかに見えるわけでもなく、 しかし確実に頭でだけ分かる。「これが終わったあとあたしには何も残らない」 確実にやってくるこの感情は畏怖だったのかもしれない。少しずつ、少しずつ。 「いやぁああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁ!!!!」 瞳は、何もかもが無くなって行く事にひどく悲しみを覚えた。そして、叫んだ。 それでも、瞳はどんどんと空っぽになっていった。何も知らない子どもの頃に、 見るもの全てに憧れ、そして持った数え切れない多くの夢。現実を知ってしまった 今でも、消える事の無かった大切な夢。それが、砂をつかむ様に確実に消えていく。 いつか会える・・・そう思っていた大切な人の事も。これからを幸せに生きていきたい と願う心も。一緒にいたいと心の奥でだけ思っていた人の事も。そして、もちろん 夢想代理人として、この世界に「マイクの部屋」を取り戻す事も。全てが消えて行った。 これが、実食だった。これまで、「レイ=プレイ症候群」にかかった数え切れない 少女たちが、最後の夢を持った人類「ジャック=デマ」が、植物状態だった アナウンサー志望だった少女が、消えて行った瞳以外の夢想代理人が、そして それ以外のあまねく全ての人間が体験した実食だった。 永遠の孤独。そこに身をおくかのように、不意に瞳は気が付いた。この世界 は、自分ひとりの世界で、自分が居なくなったら、きっと世界は消えてなくなる。 それだけの事。自分ひとりでどうこうしても、結局は自己満足で、誰も 理解しない。誰も納得しない。そして、誰も分かち合えない。この世界は広い。 でも、瞳は無限に一人だった。 1時間。瞳にとっては永遠に感じられるかもしれない1時間が過ぎ去った。 瞳の目には、何の光も無かった。ただ、生きていられる。そう思うと、不思議と 笑う事が出来た。それの笑いには希望はない。喜びはない。しかし、絶望もない。 ただただ笑うだけ。瞳が矛盾としていたひどく乾いた笑いだった。 「がががががががああああああああ!!!!!!!!!!!」 不意にバクヲが苦しみだした。 「これは・・・また・・・」 そう言うとバクヲはその場に突っ伏して倒れたのだった。 7月22日 完成 |
|
(4)遅れてきた始まり 夢定限界値。それは、万能であるかの如くこれまで語られてきたバクヲに置いて突如として現れた。 バクヲは、それまでにあった正義の見方と同様に万能であり、そして欠点のない完全な存在として 認識されてきた。しかし、それは大きな間違いであり、バクヲはその殆どが一般的な人間 のそれと酷似していた。つまりは、バクヲは、あくまでも、人間であったのだ。 現在の言の葉が使われていなかった旧世界にバクヲは生まれた。 それは、ただの偶然だったのかもしれない。文明の頂点を極めた旧世界の人類にとって、最後に 残された問題こそが、生命の神秘であった。数え切れない多くの科学者が生命の神秘の研究に 没頭した。不意に、1人の科学者が発見した理論に基づいて作られた生命は、消えることなく肉体に 永遠に留まることが分かった。不死の人類の誕生である。彼らは、画一的にある特殊なモノを 食料とした。人類が持つ、夢・希望である。夢・希望を無くすことは、向上心を消し去り、文明の 発展を抑制するには十分なものだった。もしかしたら、不死の人類に与えられたこの能力は 創造主による文明の抑圧だったのかもしれない。また同時に、不死の人間として作られた人間のうち 、成功。本当の意味での不死を手に入れたのはわずかに2人。 名前をそれぞれに「マイク」・「バクヲ」と言った。 以下は、旧世界が消えていく様についての概要である。 マイク・バクヲはそれぞれに、自らの欲望に忠実に夢・希望を消耗していった。いつしか彼らは、 この行為のことを「実食」と呼ぶようになる。程なくして、旧世界から夢は消えていった。そして、 文明の発展は止まり、緩やかに退化する道を余儀なくされた。その経緯に置いて、妊娠適齢期の 女性のみが存在しない夢・希望を無意識に、そして、確実に妄想として抱く病気に犯され始める。 その病気は後に「レイ=プレイ症候群」と呼ばれるようになる。再び、マイクとバクヲは「実食」を 開始した。本人達の思惑とは裏腹に、2人は「レイ=プレイ症候群」治療の専門家として、 正義の見方と呼ばれるようになる。そして、数え切れない時間が流れた。それはこの世から、全ての夢・希望が無くなる寸前の事。奇しくも、最後の夢想代理人と呼ばれる人種から、本当の意味での 最後の「実食」を行ったときのことだった。 夢定限界値。 実は、消耗したと考えられていた夢・希望は溜められていただけだったのだ。そして、その場所 の限界以上の夢・希望をため込み、それがパンクしたのだ。それぞれに持つ、夢定限界値を初めに 突破したのは、最後の「実食」を行ったマイクだった。これまでにマイクが実食した数多くの 夢・希望は、マイクを離れ、世界中に解き放たれた。夢を持たない全ての人類の目の前に突如として 現れた夢・希望が、欲望に変わるのに時間はかからなかった。何も持たない人類にとって、それは あまりにも魅力的すぎたのだ。欲深い存在となった人類は、程なくしてこの世界から消えていった。 そして、数万年。人類は、現在の世界を作り上げていた。 2人の不死の人間は、それぞれの考えを持ってまだ生きていた。夢定限界値を突破したマイクは、 夢を食べることをやめた。結果、肉体は恐ろしいほどゆっくりなスピードで老いていき、現在では 年老いた老人になり果てた。バクヲは、夢定限界値の突破を恐れ、以前のような急激な「実食」は さけ、それでも、確実に夢を食し人間社会とは触れずに細々と生きてきた。・・・立ち上がるあの日 までは。 突然の夢定限界値突破がバクヲの身に降りかかったのは、新世界における最後の夢想代理人「瞳」 から、事実上最後の「実食」を終えたときだった。そして、かつてマイクが経験したように、夢・希望を 全世界にばらまく事になった。 この瞬間、新世界崩壊は始まり。それは同時に、新しい始まりの入り口だった。 7月30日 完成 |
|
(5)部屋の真実の物語 バクヲが夢定限界値を突破してから、しばらくの時間が流れた。世界は、これまでと同じように 続いていた。ただ異変があるとすれば、正義の見方夢喰いバクヲがいなくなり、変わりに世界中に 希望観測所・通称「バクヲの部屋」が発見されたことだろう。そこには、この世の全てがあった。 多くの人間が、その部屋に入りそして消えていった。しばらくすると、この世には再び「夢・希望」 があふれはじめた。折しも、バクヲに敗北した最後の夢想代理人「瞳」の理想とする世界と なったのだ。しかし、世界は瞳の思惑とは違う方向へと進むことになる。 人類は言うなれば乾いたスポンジであり、突如与えられた夢・希望を恐ろしいスピードで 吸収していった。そしてそれは、純真だった人間を荒ませ、社会を荒廃させるには十分だった。 すでに政府は機能しなくなっていた。それでも、人は次々と「バクヲの部屋」を目指していた。 一度知った快楽は、そうおいそれと忘れることは出来ない。誰もが知る、その事実のために。 夢・希望は、実は、世界に一定量しかない。それは、いつの時代に置いても変わりない。ただ、 それが、人間の中に存在するか、「部屋」に存在するかの違いがあるだけだ。新世界。それは 確実に部屋の中にあった。少なくとも、人間は夢を持てなかった。人間が夢を持つと言うことは、 部屋から夢を取り出す事に他ならない。そして、少しずつ部屋はなくなっていく。では、その部屋 がなぜ新世界においてなくなったと言われたのか。答えは簡単で、夢を溜めることの出来る 正義の見方「夢喰いバクヲ」がその全てを担っていたのである。 しかし、バクヲには夢定限界値がある。それを突破した結果行き場を失った夢・希望が部屋と 形を変え、世界中に乱立。もとの世界の形に戻ったのだ。再び、人は部屋から夢を取り出し、 自分のモノとしていった。しかし、ゼロの状態に置かれていた今の人間にとって、それは、 荒んでいくきっかけに過ぎなかった。 希望観測所には、1人の老人がいる。夢を「実食」する事をやめたため、老いを余儀なくされた かつての正義の見方だ。彼は、誰にも先じて、自らがため込んだ夢・希望をかぶり、 夢を持つこととなった。彼は、自らの夢を「実食」する事は出来ない。もし、それが可能だったら、 人類を救いたいというバクヲの夢は、真っ先に「実食」によって消し去られていただろう。だが、 いつまでも自分の信念を曲げることを彼は知らなかった。夢があるから、絶望する。 もう、人類をとりとめなく救うことの出来ない自分に絶望したバクヲは一言だけ呟いた。 「オレを救ってくれ」 かつての仲間「マイク」と同じようにバクヲもまた呟いた。だが、彼はそれに意味がないことも 分かっていた。 歴史は繰り返す。いつしか、全てを写したのように三度「夢喰いバクヲ」は忘れ去られていった。 8月9日 完成 |