聖なるチョコ in バレンタイン

〜アリオス編〜

作:キョンシー

絵:文月 忍丸

「アリオス〜っ」

「あン?」

向こうから走ってくるのは、新宇宙の女王アンジェリーク。

彼女は、行程から故郷であるこの宇宙を救うため、旅をしている真っ最中だった。

「あの…アリオスってチョコ、好き?」

「………は?別に嫌いじゃねぇけど…」

「よかったぁ」

アンジェリークは安堵の表情を見せると、またどこかへ走ってゆくのだった。

「…変な奴」

そう呟くと、アリオスもまたその場を離れるのだった。

 

 

 

アンジェリークは宿屋の台所にいた。

アリオスに手作りチョコをプレゼントするためである。

ここの女将さんは親切な人で、快く台所を貸してくれたのだった。

が、しかし!

「あ〜っ!チョコに水がぁ〜っ」

「チョコが焦げるぅ〜っ!」

「え〜ん、また温度を間違えちゃったよ〜」

…そう。もうお解りだろう。

アンジェリークは最強に(?)料理が下手だったのである。

「…日が暮れちゃう……(遠い目)」

頑張れアンジェリーク!負けるなアンジェリーク!

未来はキミの肩にかかっている!!!(なんでやねん)

 

「でっ、できた…」

チョコと格闘し始めて十数時間。

手のひらサイズのハート型のチョコができあがった。

あとはラッピングをするだけ。

「やったぁ☆」

アンジェリークは飛び跳ねて喜んだ。

コチコチコチ…

ふと時計を見ると、針は11時53分を指し示していた。

「きゃ〜っ!早くしないと14日が終わっちゃう〜」

アンジェリークは目にも留まらぬ早業でラッピングすると、マッハ5のスピードで駆けていった。

 

 

 

バタンッ

「アリオス、起きてる?」

…アンジェリークの目が血走って見えるのは、気のせいだろうか…。

「…人の部屋に入るときは、ノックぐらいしろ」

「ごめんなさい…」

とたんにシュンとしてしまった。

「そんな顔するなって。別に怒ってねぇから。

で、何しに来たんだ?」

「えっと、これ…」

と、アリオスがラッピングされた包みを広げる。

中にはハート型のチョコが1つ。

「クッ、お前わざわざこんなモン渡しに来たのか?」

アリオスは笑った。

「笑わなくたっていいじゃない。

すっご〜く苦労したんだから!」

アンジェリークはプイと背中を向けてしまった。

「冗談だよ、冗談。怒るなって」

「〜   

アンジェリークはジト目でアリオスを睨んでいる。

「ああ、わかったよ。俺が悪かった。

…これでも一応、嬉しいんだぜ」

アリオスはテレているらしい。

「……ホント?」

「嘘言ってどうする」

「…アリオスが喜んでくれて、私も嬉しい」

やっとアンジェリークは笑った。

それを見て、アリオスも少し笑った。

「じゃ、食うぞ」

アリオスはチョコを割って食べようとした。

「そのチョコは割って食べちゃいけないの」

アンジェリークは真剣な表情で言った。

「何でだよ」

不思議そうにアリオスは尋ねた。

「ハートが割れちゃうから」

なんてバカらしく、そしてアンジェリークらしい発想なんだ、とアリオスは思った。

それと同時に、そんなくだらない事にまで気をつかってくれるアンジェリークの心がくすぐったかった。

「一口で食べて☆」

キラキラと瞳を輝かせるアンジェリーク。

この彼女の表情に勝てる者は、誰ひとりとていないだろう。

「…お前、俺を困らせて楽しんでねぇか?」

と、文句を言いながらも、アリオスはチョコを一口で食べたのだった。

…さすがに、かなり辛そうだったが。

「ふふっ。ホワイトデーのお返し、楽しみにしてるね」

「…何にもやんねぇよ」

それは、寒い日に起きた、とても暖かい出来事。

 

   この幸せがずっと続けばいいのに   

 

 

 

アリオスの心の中で、問いかける声がある。

   お前にこの少女が殺せるのか、と。

 

 

 

〜Fin〜