【南京戦と戦争犯罪‐3】
虐殺の定義


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 虐殺の定義
そもそも虐殺って、何なんでしょ?

所謂「南京大虐殺」について考えるのであれば、 まずはじめに「虐殺の定義」について考えなきゃいけないんですよね。本当は。

ということで、今回は「虐殺の定義」がテーマです。

とりあえず辞書を引いてみましょう。

http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?MT=%B5%D4%BB%A6&kind=&mode=0&jn.x=23&jn.y=7
>ぎゃくさつ 0 【虐殺】

>(名)スル
>むごい方法で殺すこと。
>「一般市民を―する」

じゃあ「むごい」って?

http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?MT=%A4%E0%A4%B4%A4%A4&kind=jn&mode=0&jn.x=32&jn.y=14
>むご・い 2 【▽惨い/▽酷い】

>(形)[文]ク むご・し
>(1)見ていられないくらい悲惨だ。いたましい。
>「―・い死に方」
>(2)思いやりがなくひどい。無慈悲だ。
>「―・い仕打ち」
>(3)程度が限度を超えている。はなはだしい。
>「其のお手もとが―・いほど似まらした/狂言・二千石」
>[派生] ――さ(名)

悲惨、いたましい、無慈悲・・・。
分からなくはないんですが、実際の虐殺事件について議論するための定義としては、 あいまい過ぎると思います。

そもそも戦争そのものが、まさに”むごい”ものでしょうから、戦争はすべて虐殺である とも言えるわけです。 しかも何万何十万もの犠牲が出ることも珍しくありません。 だとするならば、南京大虐殺だけを特別扱いする必要は無いでしょう。 戦争にありがちな光景が、南京でも展開したというだけの事ですから。

しかし、最近の報道によると中国では、南京大虐殺記念館を世界遺産にする計画があるそうです。 戦争で犠牲者が出る度に世界遺産に認定したら、世界中、世界遺産だらけになってしまうでしょう。 つまり通常の戦争で生じる犠牲と南京大虐殺は、異なるというのが、彼らの見解ということになります。

中国側の主張の根拠がどこにあるのかは、分かりませんし、それが正しいとは限りません。 しかし、通常の戦争被害と虐殺が異なるという点では、彼らの主張に同意します。 なぜならば南京大虐殺に限らず、ナチスによるユダヤ人虐殺やカチンの森虐殺事件のように明らかに 他の戦争の犠牲と区別されている例が少なくないからです。

どうやら虐殺を定義するためには、もっと深い考察が必要なようです。
南京関連本には、辞書よりも具体的な定義がありますので、今度は、それを見てみましょう。

■「南京事件」 笠原十九司 岩波新書 P214南京大虐殺事件、略称としての南京事件は、日本軍が南京攻略戦と南京占領時において、 中国の軍民に対して行った、戦時国際法と国際人道法に反した不法残虐行為の総体のことを言う。

  ■「南京事件」 笠原十九司 岩波新書 P215【生命・身体の侵害】戦時国際法に違反して中国の負傷兵、投降兵、捕虜、敗残兵が集団 あるいは個別に殺戮された。日本軍の包囲殲滅戦の犠牲となって住民が殺害され、「残敵掃討戦」 「敗残兵狩り」によって元兵士と思われただけで多くの成年男子が殺害され、日本兵の気まぐれ でも多くの市民が射殺・刺殺された。

この説明に従うと、虐殺とは戦時国際法違反の殺人ということになりそうです。 板倉由明氏は、より簡潔に次のように書いています。

■「本当はこうだった南京事件」 板倉由明 日本図書刊行会 P42【虐殺】 = 戦争法規違反の殺害(不法殺害)

確かに南京事件についてのみ議論するのであれば、この定義で充分かもしれません。
しかし、歴史上の虐殺事件は、ほかにもたくさんあります。そして、その中には、戦時国際法違反ではないものも含まれます。
たとえば、ヒトラーがユダヤ人虐殺に先立って命令したと言われている、いわゆるT4作戦のような国家が自国民に 対して行った犯罪は、たとえそれが戦時中であろうともあくまで内政問題であり、戦時国際法は適用されません。

どうも”【虐殺】 = 戦争法規違反の殺害(不法殺害)”という定義には、違和感を覚えます。

そこで上の二人とは、別の視点から虐殺を分析したものを見てみましょう。

秦郁彦氏は、「南京事件」(中公新書 P186〜187)の中で過去のさまざまな虐殺に共通する特徴として”組織性・計画性”を挙げています。
また西尾幹二氏は、「異なる悲劇 日本とドイツ」(文春文庫 P22〜23)の中で、ホロコーストがナチスやドイツにとって軍事的にも政治的にも 有益ではなかったことを指摘しています。
そして、この本の中で紹介されている「諸君!」(94年2月号)の八木茂氏の記事によると、多数のナチが当時のドイツ国内法に違反していなかったため、結局は裁かれなかったとのこと。ナチ犯罪の中には、T4作戦のように戦時国際法違反ではないものも含まれる事はすでに説明しました。
つまりホロコースト(の一部)は当時の国際法・国内法に違反していなかったことになります。

上記の秦、西尾、八木、3氏の見解から虐殺の特徴をまとめると次のようになるでしょう。

 1.組織的かつ計画的な殺人
 2.加害者(殺人の主体である組織または、集団)にとって有益ではない
 3.必ずしも法律違反とは限らない(合法な場合でも虐殺になりうる)

この三つの特徴を備えたものが、虐殺ということになります。
(ただし3番目は違法合法問わず当てはまりますから、無視してもかまわないでしょう。)

この定義なら、歴史上のさまざまな虐殺事件に当てはまりそうです。

たとえば、中国の文化大革命では、2000万人が虐殺されたと言われていますが、これは毛沢東の指揮の下で 共産党が行った組織的・計画的殺人です。そして、この大量殺戮が加害者である共産党にとっても不利益だったことは 「歴史決議」においても確認されています。

http://www.panda-mag.net/keyword/ra/rekishiketsugi.htm
>「指導者が誤って発動し、反革命集団に利用され、党と国家、各民族人民に重大な災難をもたらした内乱」

もちろん、中には、この定義がうまく当てはまらない事例もあるでしょう(恐らく全ての虐殺に完全に当てはまる定義などないでしょう)。 しかし、【虐殺】 = 戦争法規違反の殺害(不法殺害)という単純な定義よりも、むしろ虐殺の実態をよく捕えている様に思います。


2005/04/16


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