Be Happy!
| 「腹減ったー。何か作ってー。」 「あーもう、うるさいなぁ。今作るって。」 そう言って私は2人分の夕食を作る。私の分と、淳之介の分。 淳之介は私の彼氏。私のバイト先で出会ってつき合うようになってから、淳之介は毎日のように私の部屋に来る。ガキっぽくて淋しがりやで、でも実はけっこう頼りになって…、淳之介は、1人暮らしの私の心を満たしてくれる唯一の存在。 でも、1つだけ…淳之介が、私より年下だってこと。 「あたし、淳之介と同い年だったらよかったのにね。」 最近これが口ぐせになってしまった。つき合い始めてからもうけっこう経つけど、ずっとこのことだけが、私の悩みのタネだった。でもそんな時、淳之介は決まって 「バ〜カ、年なんて関係ねぇよ。」 と言って笑ってくれる。その笑顔が大好き。 私が帰ると、淳之介が待っている。それが私の日常。今ではもう、淳之介は私にとってなくてはならない存在になっていた。 でも、やっぱり生きてきた時間の差っていうのは、予想以上に高い壁になる。 「何?この番組。」 「えっ、知らねーの?今すっげー人気あるんだぜ、これ。そういやこの前、これのことで友達がさぁ、…。」 ホラ、また。私が話についていけないってわかってて、そんな話する…。悪気があってのことじゃないってわかってる。でも、やっぱりつらい。淳之介は、気づいてないだろうけど…。 ある日、私は1人で買い物に行った。たまには1人で、息抜きでもしようかなって思って。淳之介はいっしょに行くって言ったけど、断った。私だってたまには1人で出かけたいって。 でも…言い方キツかったかな…って、今ちょっと後悔してる。淳之介はけっこう甘えん坊だから、私が少しでも冷たい態度をとると、すぐスネる。まあ、そんなところもかわいいんだけど。 でも、昨日は少し様子が違った。なんていうんだろう、とにかくいつもより落ち込んでた。どうかしたのかな…? そんなことを考えながら歩いていたら、後ろからにぎやかにしゃべってる声が聞こえてきた。 「でさぁ、その後…。」 え?聞き覚えのある声…。 淳之介?私は思わず振り向いた。…やっぱり淳之介だった。 「そういや淳之介、例の年上の彼女とどう?」 わ、私のことかな…。淳之介がどう答えるか気になって、私は思わず聞き耳を立てた。 「あいつ、俺の誕生日忘れてるみたいでさぁ、今日は1人で買い物に行くとか言ってどっか行っちゃった。」 「マジで〜!淳之介かわいそ〜!」 え…?今日…。私は急いで手帳を開いた。 するとそこには、『11/29淳之介の誕生日★』と書かれていた。 …そうだ、去年の今日、まだつき合い始めてまだあまりたっていない頃、淳之介が 「今日、俺の誕生日なんだ。来年の誕生日は2人で祝おうよ。忘れないようにメモっといて。」 って言って、私の手帳に書き込んだんだった…。最近忙しかったから、すっかり忘れてた。私、彼女失格じゃん…。 「じゃあさ田口くん、もうそんな彼女やめて、あたしとつき合おーよ。」 その声に、ドキッとした。と同時に、激しい不安に襲われた。もしかしたら淳之介、OKしちゃうんじゃないかって…。私は走ってその場から逃げた。 その日、淳之介は来なかった。しょうがない、私が悪いんだから。ううん、それでも言ってくれれば…。言ってくれれば、淳之介が好きなもの、たくさん作って待ってるのに…。 次の日からも、淳之介は私の部屋には来なかった。連絡もない。こっちから連絡することはできるんだけど…そんな勇気ない。 …淳之介、そんなに悲しかったのかな…。それとも、ホントに私のこと嫌になって、あの子とつき合ってるの?…色々なことを考えた。でも、考えれば考えるほどマイナス思考まっしぐら。もう、ダメなのかな…。 数日間考え抜いて、私はある決心をした。もう迷わない。逃げたりしない。そう誓った。そして、淳之介にメールを送った。『今日の午後6時、いつもの公園で待ってる』って…。 「まだかなぁ…。」 風が冷たい。もうすぐ冬か…。去年の冬は、淳之介と2人で雪だるま作ったっけ。淳之介が上着も手袋も忘れて、それでも作るって言ってきかないから、私も上着脱いで、私の手袋1つずつして作ったんだ…。思い出しても、つらい思い出は浮かんでこない。毎日が楽しくて、幸せで…。でも、やっぱり生きてきた時間の差は、埋められないものなんだ…。 そんなことを考えてたら、淳之介が来た。息切らしてる、走ってきたんだ…。上着も着ないで、ホントわけわかんない奴。私は思わず笑ってしまった。 「なんで笑うの?」 淳之介がムッとする。 「ごめん。なんか、1年前を思い出しちゃって。」 「1年前か…。」 沈黙。 「俺に言うことあるだろ?」 「…ゴメンナサイ。」 「もういいや。許してやる。」 淳之介が笑った。私も笑った。 …でもね、淳之介。私もう決めたんだ…。 「あのね、淳之介…。」 「何?」 「あたし達もう…別れよ?」 淳之介の表情が突然変わった。 「なんで…。」 「お互いつらい思いするの、もう嫌でしょ?」 そんな顔しないでよ、バカ。私だってつらいよ。でも…こうするのが1番、いい方法だって思うから…。 「もう俺のこと、好きじゃないの?」 「ううん、好きだから。淳之介のこと、ずっと好きでいたいから…。」 「…ごめん。」 こうやって淳之介に抱きしめられるのも、最後なんだ…。 「俺が悪かったんなら謝るから、だから、別れるなんて言わないでくれ…。」 私の肩に滴が落ちるのを感じた。淳之介、泣いてるの…?私のために、泣いてくれてるの…? 「ううん、淳之介が悪いんじゃない。あたしが弱いから、時々淳之介が何考えてるのかわかんなくなって、それがすごく不安で、…あたしが悪いの。淳之介は何も悪くない。」 淳之介は、私をさらに強く抱きしめた。 「…ごめん…!」 淳之介…。 「俺、お前がそんなにつらい思いしてるなんて知らなかった。誕生日も、俺がちゃんと言えばよかったのに、気づいてくれなかったからって、1人で怒って…。気づいてやれなくて、ごめんな…!」 こうして私達は、離れる道を選んだ。2人とも、お互いをとても愛してた。それでも、ダメなことはあるって、初めて知った。本当はまだ好きだけど、後悔はしていない。どんなにつらくても乗り越えられる強さが、私達にはなかったわけだし。 だから、いつかもっと強くなって、お互いにピッタリの相手を見つけて、絶対に幸せになろう。そう約束した。いつかまた会ったら、笑顔で話せるように…って。 淳之介、いつか絶対、幸せになったらまた会おうね! |
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