いまだに根強いファンが多いスズキの油冷四発だが、特に最近では92年に生産が終了した油冷GSXRが、一部で「ラストモンスター」等と呼ばれて人気が再燃している模様。
ルーツは85年のGSXR750であり、F1での活躍とイメージが重なって人気を博したが、レースにまったく興味の無かった自分には86年の1100(イレブン)登場時に受けた印象の方が強い。大柄な車体に特徴的な2眼ライトのカウル、基本的に鼓動を楽しむクルーザー志向の自分にも、VmaxやHDドラッグレーサー等とどこか共通するパワー漲る迫力を感じさせるスタイルと、未知の油冷エンジンが非常に魅力的だった。ただし当時大金を費やして乗りたいとまでは思わなかった。
その後映画「ブラックレイン」で、故松田優作が路面すれすれに構えた刀の切っ先から火花を散らしつつ、漆黒のイレブンを突進させる場面にしびれたことを想い出す。
こんなのに乗ったらギンギンの気合いでコーナーを攻めるか、超高速でかっ飛ばなくてはサマにならないもんだと思い込んでずっと避けていたが、MHRを入手しマイペースでワインディングを走る楽しさと、カウルにもぐり込んで淡々と高速クルーズする快感に目覚め、そんな頃90年型の出物を発見、10年も落ちると驚くほど値が下がることも知った。(それまで中古といえば何十年経っても異常なほど値落ちのしないHDや、高年式の国産を中心に乗り継いでいたため、自分には新鮮な驚きだった。まあHDの方が当然おかしいのだが…)
また自分はバイク選択の際にエンジンに主張(独自性)があることを最も重要視するのだが、国産お得意のマルチといえど他のどれとも違うスズキだけの油冷四発を積んだバイク、という事実にも心惹かれた。等々の熟慮(?)を経た末、思い切って初の同時所有3台目となるイレブンを入手してしまった。
デザイン的にはやはり88年までの初期型が良いが低年式故のトラブルが怖かったし、89−90年も充分格好良く思えた。少なくとも91年以降のスラントカウルより数百倍自分の好みである。またメカニズム的にも89年以降は色々と改善されており、特に90年は89年と同一のデザインながら、足周りを中心に89年より大幅に迫力を増していて、結果的に90年が自分にとってベストの選択だった。カラーは当然ブラック/グレーである。
初体験の油冷四発は噂通りのガサツさで、バランサーの無いツインを中心に乗り継いできた自分にも十分楽しめるフィーリングなのが嬉しい。低回転からトルクフルと言われる通り、下のトルク感はツインのMHR並み(900だが)で、回せばもちろん比べモノにならない怒濤のパワーが溢れ出す。当然最新のリッターバイクにはまったく敵わないだろうが、フルパワーのVmaxより加速は断然早く、シグナルスタートでフロントが上がるのだから自分には充分過ぎる性能である。当然高速クルーズも問題無く、20年もバイクに乗っていながら未体験だったオーバー200kmの世界を、ごくあっさりと見せてくれた。
忘れてはいけないのがエンジンの造形美である。独特の細かいピッチでフィンが刻まれたシリンダーは、水冷4発とは明らかに異なる美しさと迫力を感じさせる。エンジンフェチの自分も大満足である。
ただ一つの誤算は自分にとってコーナーが怖いことである。MHRに乗った方が余程スムースかつ速くコーナーを回ることができる。どこか腰高に感じるイレブンでは、どうしても腰が引けてしまい、怖くて寝かせることができない。これは納車翌日の早朝、走り出して200mの交差点でいきなりスリップダウンして転倒した経験が脳裏にこびり付いているのかもしれない。あるいはよく言われる「国産四発とはまったく異なるベベルドカのコーナリング特性」とやらに先に慣れてしまったからか。
あきらめてローダウン、ロングスイングアーム、ポリッシュフレーム、バンスドラッグ管etcの方向でカスタムして、直線仕様にしてしまおうかなどとまた一段と転落しそうな予感が…。
追記
2002年春、結局手放してしまった。なんかやっぱり4発は自分に合わなかったみたいだ。上記のようにカスタムしまくれば愛着がわいたのかもしれないが・・・。