10年ほど前、HDのムックか何かで誕生間もないボスホグのことを知る。他の素人工作然としたV8バイク達に比して遙かにまとまっているものの、やはり異形の乗り物と感じた。それでもその迫力には充分にしびれたし、乗ってみたいと素直に思ったが、もちろん当時の自分にとって全く無縁の、遠い世界のおはなしであった。
5年ぐらい前の別冊モーターサイクリスト誌でボスホスの特集があった。いつの間にか国内で走り回っていることに驚き、食い入る様にインプレを読んだ。ただ登場したオーナー6〜7人の内、1人を除いては皆「自営業」と紹介されており、やはりただのサラリーマンには分不相応なシロモノだよなあとため息をついた。
2〜3年前、どこかのショップが「日本オリジナル仕様のV8バイク、2速AT+バック装備で近日登場、予価298万円」かなんかの前宣伝をバイク雑誌に載せたのを見た。価格的にもなんとか手が届きそうだし、これはいいかもと期待していたが、結局発売されなかった。ちなみに一時公表されたプロトタイプ(?)の写真はボスを格好悪くした様に見えた。
1〜2年前、V8バイクのカノンが日本に上陸したことを知る。ボスに比べ遙かに洗練されたスタイルで価格面でも対抗馬の資格十分と思えたが、依然自分にとっては充分高価でかつ縁遠い存在に過ぎなかった。このころボスの中古で300万円以下のタマを知り一瞬心惹かれたが、深入りしないだけの理性を保っていた。
7〜8ヶ月ほど前、参加していたバイククラブのつながりで、ネットを通じてのみ一方的に知っていた人がカノンを購入したとの情報を得た。これがきっかけで初めてV8バイクの存在を身近なものとして感じ始めることとなった。ましてその人は還暦を迎えかつ自分よりずっと小柄でもあったため、これは自分ごときにもV8バイクに手を出すことができるのかもしれん、と大いに勇気づけられた。
その後ほどなくその人のカノン購入話は冗談のネタだったことが判明したが、一度わき上がった気持ちは既に抑えられないほど大きくなっていた。ボスとカノンのデータを徹底的に調べ上げ、中古のタマを血眼で探し回り、中古と新車で脳の血管が切れそうなほど苦悩し、スモールブロックとビッグブロックに関する将来性で悩み、並行しては最大のポイントであるカミさんの説得に結婚以来の真摯な態度で臨み、カノン購入の冗談話を知ってから僅か1ヶ月にして、ついにボスホスサイクルジャパンへ日本上陸4台目のビッグブロック502の仮押さえを依頼するまでに至った。
カミさんとの約束は単純である。「購入したバイクで安全に長く楽しむこと、今後20年は新たなバイクを購入しないこと」、たったこれだけで年収に近い金額をバイクごときに注ぎ込むことを許してくれたカミさんには、もう頭があがらない。20年は長いよ、と言う向きもあろうが現時点でジャンルの異なる3台のバイクを所有していること、修理(や若干のカスタム)は認められていること、HD等外車の世界では20年ぐらい乗り続ける人はさほど珍しくないことなどを考慮すれば、言うほどきつい条件とは思えない。そして「まあ本来お金は稼いだ人が好きに使うべきものだし」「同じお金でセルシオなんか買うよりもずっと面白そうだし」(実際にはセルシオよりちょっと安い)などと言ってくれたのには、もはや平身低頭・恐縮至極である。
その後間もなく開催された東京モーターサイクルショーへカミさんを同行し、実物を確認した上で最終的に購入を決めた。ちなみに実物を見たカミさんはその異常さに驚きあきれかえっていたが、といって購入に反対はされなかった。
地元のバイク屋を通して購入したため納車まで若干のトラブルもあったが、2001年6月24日、無事に納車された。こうしてあこがれのボスを手に入れた幸運をかみしめる一方で、小心者の自分は「これで貯えもほとんど無くなったし、幼子二人を抱えて今もし会社が潰れたらどうしよう、リストラされたらどうしよう、家族が大病したらどうしよう、火事になったらどうしよう・・・」などと内心ビクビクしながら毎日を過ごしている。カミさんの方がずーっと大らかに構えているのは自分にとって驚きであるとともに、非常に頼もしい(笑)。
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