『幕末パノラマ館』 野口武彦
 月刊『歴史読本』(1998年1月号〜1999年12月号)に連載された同名記事を掲載したもの。
 『藤岡屋日記』や書簡類を底本に、マクロ的な視点からそれを支えたミクロ的な視点に移行、「定説」と異なる幾つもの例外を明らかにし、幕末維新をリアルに描写している。
 ただ、それらは全て部隊の制度・装備とそれに依って生ずる精強・劣弱、地理関係等に終始し、ミーハーな英雄伝は存在しない。そうしたドライな描写は自分のようなマニアには嬉しい限りだが、歴史読本の主要読者層であるミーハーな英雄崇拝者には物足りなかったらしく、結局第二次長州征伐が終わる時点で連載が終了している。個人的には、更に鳥羽伏見や奥羽の戦役も同様の手法で切って欲しかったのだが……。
 しかしまぁ、当時の戦闘の実相を見るには一番良い一冊。