『維新の嵐』シナリオ 「過去からの刺客」
始めに
・このシナリオは製作して間もないのキャラクター4〜6名を対象としています。
・初めて維新の嵐を行うプレイヤーに向いた構造となっています。
シナリオの概要
PCは全員新選組の隊士となります。
出来れば、一人は「監察」に所属するようにして下さい(導入が楽になります)。
また、他の一人を新撰組創設直後から参加していた古参隊士に設定していただけると、シナリオの進行が楽になります。
さて、監察に所属するPCは、土方から「尊皇派の盗賊団『赤心隊』について探索せよ」と言う命令を受け、その他の部署に所属するPC達は懇意の商人から、「御用盗に狙われているので守って欲しい」と頼まれます。
しかし、赤心党は新選組の内情に精通し、情報はなかなか思い通りに集まりません。
それもその筈、赤心隊を指揮しているのは既に「死んだ」筈の元新選組隊士「平間重助」だったのですから……。平間重助はかつて自分の馴染みの芸者であり、現在では近藤勇の妾になっている深雪太夫の下女にスパイを送り込み、新撰組情報を引き出し、新撰組に対抗しようとしますが……。
第一幕 導入
慶応2年5月、新選組の最盛期。屯所は西本願寺境内。隊士も200名を数え、長州征伐を間近に控え、士気は極めて盛ん。確かに、谷三十郎組長は謎の変死を遂げたし、伊東派は密かに何やら画策しているが、表だった動きは無し。
ちなみに、近藤局長は大坂に出張中。大坂城の幕府重役に掛け合って、新選組も長州征伐に加えて欲しいと嘆願して廻っている。その為、現在の指揮官は土方副長である。
そんなある日の夕方。
監察所属隊士の所に山崎奨さんが現れ、
「こりゃ○○はん、土方はんがお呼びでっせ」
と声を掛ける。知力+捜索技能判定/難易度11に成功すれば、山崎が右足を僅かに引きずっているのが分かる。それについて尋ねると、
「いやぁ、何ともお恥ずかしい…野良犬に噛まれまして」
「それがどうも、その野犬わての事をしっとったような…いや、これはわての推測やがな」
土方は副長室におり、PCが来ると、厳しい顔をして座布団に向かって顎をしゃくる。
「君は確か○○流を使うと聞いていたが」
「なかなかの腕前だ、と○○(所属している組の隊長/PCが監察なら山崎奨)も誉めていた」
「口は堅いか?」
「最近、『神州赤心隊(しんしゅうせきしんたい)』と名乗る盗賊団が跳梁しており、佐幕派の商人ばかりが襲撃されている」
「奉行所でも手を尽くしたが、賊は剣の使い手も多く、手が出せないと云って来た」
「そこで、我々も密偵を放って動きを探ろうとしたが、逆に腕利きの密偵を斬られ、思うように身動きが取れない有様だ」
「このままでは新選組の威信に関わる。現に既に何軒かの商人が賊を恐れて尊皇派に資金援助を申し出たらしい。君にはこの賊の動きを探り出し、私に知らせて欲しい」
「他の者に助力を仰ぐのは構わないが、信用出来る者を選んで機密が漏れる事が無いように」
土方は無駄口は一切叩かず、必要な事だけを手短に伝えると、他に聞きたい事が有ったら監察方に行くように、と言い捨てて仕事に戻る。勘の良いPCが裏切り者の可能性を示唆すると、土方は薄笑いを浮かべ、「軽々しく口にする物ではないよ」と窘める。当然、その辺の事も考えて、信用出来る監察隊士(若しくは、縁故の少ない若手隊士)に任せたのだから。
| 土方歳三の人物像については、本編の人名録を参照されたい。 土方が監察方のPCに此の仕事を依頼しようとしたのは、此の事件が新撰組内部の裏切り者の仕業であると考えているからである。 |
第二幕 導入パート2
その頃、他の隊士。
偶々非番で、飲みにでも行こうかと迷っている隊士達の元に、ひょっこりと顔見知りの商人が現れる。彼は米問屋の武蔵屋籐兵衛と云う者で、武蔵出身の商人。近藤達とは故郷が近く、幕府贔屓でもあるので、新選組成立以来支援を呉れた恩義有る人物。特に、古参隊士のPC等は良く知っている。
若松屋は古参隊士の顔を見ると頭を下げて歩み寄ってくる。
「あ、これはこれは○○様、ご健勝のようで何よりで御座います」
「実は、これから日頃王城警護の任でお疲れの皆様をお慰めしようと、酒席を設けようと思っているのですが…○○様、宜しければお越し願えませんでしょうか?」
彼は駕籠を手配し、三条河原町の大きな料亭に案内してくれる。
宴も酣の時、若松屋は突然落涙する。理由を聞かれると、芸子達を下がらせ、語り始める。
「実は、今日皆様をお誘いしたのは、今生のお別れを申し上げる為なのです」
「近頃京都市中を跋扈する盗賊『神州赤心隊』の事は皆様もお聞き及びでしょう。私の店にも、遂に盗賊一味からの脅迫状が届き、今晩夜半、船岡山の建勲神社に千両の金を持って来い、さもなくば一家は皆殺しだと云うのです。私は痩せても涸れても元は天領でお上のご恩を受けた者。その様な脅しには屈するわけには参りません。そこで、今晩にも船岡山に赴き、せめて賊に一太刀を浴びせて死なん、私の命も今日までとこうして皆様とお別れの宴を開いているのです」
PCが「ふーん、じゃ、頑張って」と言うと、「では皆様、お名残惜しゅうは御座いますが」と言い置いて席を立つ。
「そうそう、ここのお勘定は皆様にてお願い致します。私は賊に鐚一文渡すものかと、手ぶらで参りましたので。それでは、おさらばで御座いまする」
ちなみに、料亭の食費は一人頭5両。
| 高慢なNPCを演じたいGM諸氏には非常に申し訳ないが、此処では兎に角PCに仕事に乗って貰わなければシナリオが始まらない。顔で笑って心で泣いて、此の強かな商人若松屋を、低姿勢に、コミカルに演じてPCを乗せていただきたい。最後に、料亭の勘定を持ち出してPCを脅迫するような言動を行うが、此処も飽くまで低姿勢に徹し、PCが苦笑しながら引き受けてくれるような雰囲気を作って欲しい。 |
予想される質問及びその回答
−彼らに渡す金は無いのか?−
「我が店を処分すれば参千両も出来ましょう。しかし、すぐに準備出来る金等僅か二百両に過ぎませぬ」
−彼らを迎え撃つ作戦は?−
「それでは、砂を入れた(上だけ小判でも良いか)千両箱を運び、皆様には人夫として同行して頂き、敵を欺き、隙を突いて敵の大将を討ち取るというのは如何でしょう?
石を詰めた千両箱と人夫の服なら既に整えて御座います」
非常に手際が良い。これは予め新撰組の助力を得る積りであったからである。もし、PCがその事で若松屋を疑うようであれば、GMは「ちゃっかりした商人だからね」と疑いを緩和するように努めるのが望ましい。
−脅迫状は?−
「これに持参いたしておりまする」
脅迫状の筆跡は、学問の有る武士が書いたものである事が分かる。
『姦賊若松籐兵衛
汝は上は幕府に金を渡して恐れ多くも天朝様に弓を引き立て奉り、下は罪無き民百姓を虐げて暴利を貪り、其の罪は天人共に許し難し。よって、此処に汝を斬罪に処し、以て天下にその罪悪を明らかにせんとす。もし汝に些かでも天恩に報いるの志あらば、改心の証として金参千両を明日夜半丑刻に船岡山の建勲神社に寄進し奉るべし。神州赤心隊』
明け方、番頭が店の前に出た際に、雨戸に小柄で打ち付けられていた。
−敵の人数は?−
「私どもは5〜6名と踏んでおりますが……所詮は盗賊、何の恐れる事が御座いましょうか」
戦うのは他人事と有って随分暢気だ。
−店に用心棒や戦力は無いのか?−
「うちは新選組の皆様をご信頼申し上げておりますので、左様な物騒な連中はおいてません」
随分調子が良いが、実際それ程の大店でも無いのでそんなものだろう。こうした商店で本当に用心棒が必要な場合には、口入れ屋に頼むのが普通なのだが、今回はより強力な組織にコネが有ったので、使ってみたみたいだ。
−報酬は?−
「無事自宅に帰りますれば、お一人様に10両ずつお包み致します」
一両が1万円で、10万円。命を懸けるのに値するかは各自の判断に任せるが、池田屋事件の報奨金も20両程度だったから、この様な物だろう。
献上金受け渡しの現場
今晩は可成り月が明るい様子。支度を整えて神社に向かうと、境内には6名の浪人が居る。そしてその奥にもう一人、宗十郎頭巾を被った、稍細身の浪人が鎮座して居る。
一行が境内に入ると、敵の雑魚浪人が周囲を取り囲み、呼びかける。
浪人達「金は持ってきたであろうな」
籐兵衛「へへぇ、これに」
浪人達「うむうむ」
以後、PC達の行動により、パターンAとBに分岐する。
パターンA)PCの作戦を見破る
PCが人夫に化けたり周囲に潜伏して様子を見ており、先手を打って行動するつもりが無い場合に発生。
浪人が喜んで千両箱に近づこうとすると、奥の覆面の浪人が制する。
「待て。其処に居るのは○○……三年ぶりだな」
浪人達は慌てて抜刀する。続いて、浪人が指示。
「こいつらは新撰組だ、三人一組で懸かれ」
浪人を相手に戦闘開始。
覆面の浪士は戦闘には参加せず、すぐに逃走してしまう。
パターンB)PCに先制される。
PC達が積極的に攻撃に転じた場合に発生。その場合には、正体を現した古参隊士を見て、
「お前は○○……三年ぶりだな」
と呟く。何故か、その呟きは古参隊士にはよーく聞こえる。古参隊士は捜索判定を難易度19で行い、成功すればかつての上司「平間重助」であった事、そして、自分が近藤の命令を受けて平間を殺そうとした事を思い出す。
平間はすぐに逃走を指示する。戦闘は発生せず、浪人達は分散して逃走する。敵を捉える為には、体術技能判定(難易度15)に成功しなければならない。追いつかれた敵は、応戦する。
A、Bどちらの場合でも、敵は、可能な限り千両箱を持って逃げようとする。その際には、「一番上の(一番手近な)」千両箱を担いで逃げる。
金の入った千両箱を取られたなら、若松屋はにこやかな顔をしつつ
「いや〜皆様のお陰で助かりました。でも、皆様お渡しする報酬も、あの中に入って居るんですよねぇ」
と暗に金を捜索しろと要求してくる。先の料亭での料金を支払う能力がある者は、断る事が出来る。
捕虜の知っている情報
・覆面の浪人は全く正体不明。第一、滅多に溜まり場にも顔を出さず、余り喋らない。但し、新選組に対しては異常に詳しく、捕まったならさっさと知っている事を全て話し、拷問等の辱めを受けず、斬られた方が良い、と云っていた。
・溜まり場は紫竹の荒れ寺。多分、もう引き払っているだろう。
・「赤心隊」の構成員は各藩の尊皇派浪士。覆面の浪人が仕切っている。覆面の浪人は剣技も学問も出来、仲間からは一目置かれていた。
・訛りは水戸のものであった。
・人数は合計で20人。今日、6人殺されたから、残りは14人(覆面を含まない)。
残りの浪人は、尾根を伝って行き先を隠蔽しつつ逃走。どの方向に逃げたかを探るには、知力+捜索技能で難易度13に成功しなければならない。成功すれば、北に逃げていった事が分かる。
第三幕 情報収集
◎紫竹の荒れ寺
田園風景の中にぽつんと立っている。
10人位の人数が生活していた痕跡は有るが、手がかりは0。
付近の住民の話からは、以下の情報が得られる。
・浪人が住み着きだしたのは一ヶ月前程から。
・その荒れ寺に場違いな若い女性が入っていくのも何回か目撃された。
・女性は西本願寺(新撰組の屯所)の方に歩いて行き、更に南の方に向かった(此処で、難易度16の国学技能判定を行い、現在の新撰組屯所の南、醒ヶ井と云えば新撰組局長近藤勇の休息所(下宿)が有る場所と分かる。此処には近藤勇の妾が居ると云う事は、新撰組隊士で有れば誰でも知っている)。
・その女性は一ヶ月前に島原でも見掛けた覚えが有ると言う。
◎監察部
監察部屋には、いつもなら重要任務の連続で席の温まる暇も無さそうな山崎さんが、書類の整理などを行っている。足を怪我しているので、出動しないのだ。
監察では以下の情報を握っており、新選組隊士であるPCの質問には特に隠し立てもなく情報を提示してくれる。
・多くの探索方が殺され、探索業務が滞っている。特に、壬生以来の古参の熟練した探索方が殺されている。裏切り者の仕業では無いのか?
・盗賊の被害は京都市中でも北に偏っている。北に本拠地が有るかも知れない。もっとも、欺瞞の可能性も否定できない。
・盗賊の首領は覆面の浪人者。
・盗賊の被害は1ヶ月前から。一ヶ月前に起こった事件には、河合耆三郎斬首事件等が挙げられる。
・河合事件……表向きは、河合耆三郎が隊費を使い込み、斬首された事件。しかし、実際には偶々近藤さんが深雪太夫を身請けするとかで金を使う為に土方さんが金をチェックして発覚したり、事件後に河合の父親が不足分の金を持って上京し、近藤・土方に面会を求めたが断られたりと、新選組にとって不名誉な部分が多く、余り公に出来ない事件である。
・河合の父親(兵庫の酒屋河合信兵衛)は、最初の内はお坊さんを雇って屯所の前を行列を組んでお経を上げさせたりして嫌がらせをしていたが、最近来ない。
・三年前の事件……芹沢鴨・平山五郎・野口健司・平間重助らが襲撃された。全員戦死。下手人は不明だが、長州藩の尊王派志士によるものと推定される。それ以上は資料無し。勿論、古参隊士はこの情報が嘘である事を知っているが。
| 三年前の事件は、既にご存じとは思うが、近藤勇一派による芹沢派の粛正である。此の暗殺は会津藩からの内命を受けた「公務」の一環では有ったが、内外に及ぼす悪影響を考えて、尊皇派の仕業に見せかけることになった。 此の真相について、新撰組の幹部達は絶対に口を割ることはないし、薄々は事情を知っている筈の古参隊士も話さない。では秘密は保持されていたのかというと、新撰組の屯所が有った八木邸の子供は知っていて、近藤がしかつめらしく芹沢らの葬式を行っているのを見て、苦笑してしまったと云う程だから、近所での聞き込み等によって真相に到達する可能性も有る。 勿論、PCの内の古参の者は、薄々感づいていた事にしても構わないし、或いは、自ら切り込みに参加した事にしても構わない。実際、此の切り込みには誰が参加したのか、正確な所は分かっていないのだから……。 |
◎屯所前
−以下の場面はミスディレクションです。あからさまに暇そうな人が居たなら、少し引っかけて上げて下さい−
何やら、怪しげな浪人者がウロウロしている。見かけは恰幅が良く、目つきも鋭い。しかし、新選組隊士が声を掛けると、
「いやなに、その、拙者は……」
とどもりだし、「兎に角、この手紙を局長である近藤殿にお渡し願おう」と云って立ち去ろうとする。PCがそれを止めようとすると、最初の内は虚勢を張って張り合うが、武器を取ると途端に「いや、その、儂には家に女房と6人の子供がおってな……すまん、言い過ぎた。許してくれ」と云って謝り、全てを白状する。
彼は三条大橋たもとの宿屋に投宿している河合信兵衛に雇われた用心棒で、河合から手紙を預かって来たという。案内しろ、と云われればすぐに案内してくれる。
手紙の内容は、「もっと我が子の側にいたいが、実家の商売もあるのでそろそろ京都を離れたいと思う。最後に、近藤様にお尋ねしたい。我が子耆三郎が死んだのは新選組の規律を正し、天下国家の為に死んだのか、それとも近藤殿の女遊びのとばっちりを受けて死んだのか、どちらなのか。何としても、それを聞かない内には帰れない」と言う感じ。
近藤が本当に出張中だと云えば、「ふむ、お主達が嘘を吐いているようにも見えぬ。多分、河合殿も納得してくれる…筈だ。屹度」と納得して、PCに一緒に河合老人に会うように勧める。
もし、PCが同意しない場合には、手紙だけを隊士に預け、逃げるようにして立ち去る。
三条の宿屋に行けば、河合に会える。
河合は元々は人の良い老人であったのだろうが、今では息子を失って以来ずっと悲嘆に明け暮れ、鬼気迫る様子。彼は隊士が来ると身構える。
「儂は耆三郎の父、信兵衛ですじゃ」
「あの子が死んだのはもう仕方がない。あの子は昔からお侍に憧れとったから、お侍として死ねたのだから本望じゃろう。ただ、あの子の死は名誉あるもの、無駄ではない、とあの子が尊敬しとった近藤様から一言、ただ一言云って貰いたかったんじゃよ…」
彼に対して難易度16を目標値とした交渉判定に成功すれば、河合は納得して今日にでも帰るという。またPCが近藤は居ない、若しくは近藤局長も彼を認めていた、等の適当な言い訳を考えることが出来たならば、難易度を13に下げる。説得に失敗したなら、河合は取り付く島も無い。PCを追い出すと同時に、この場所に案内した(この場所を教えた)細谷を首にする。
もし、説得に成功したなら、河合は以下の情報を伝えてくれる。
「そうそう、京都滞在中に奇妙な出来事がありまして……御坊様に頼んで屯所の前を練り歩いた帰り、頭巾を被ったお侍に『近藤を暗殺したい。資金を貸しては呉れまいか』と云われた事が有りました」
「そのお侍は、何やら新撰組縁のもので、近藤様の弱みを握っているとの事でした」
一件落着すると、細谷は大いに喜び、
「いや、事件も解決、怨恨も消えて目出度い、目出度い」
「しかし、それがしはまた失業か…とほほ。っと、こうしてはおれん。家には女房と6人の子供が腹を空かせて待っているのだ。そーゆー訳で、それがしはまた仕事を探しに行ってくる。さらばじゃ!」
と立ち去っていく。
| 河合信兵衛について云えば、彼は全くのミスディレクションである。GMは、此の時点で彼が容疑者から外れていることをきちんとPCに認識させ、シナリオが迷走するのを避けなければならない。もし、PCが彼を疑って見張るようで有れば、早々に京都を発ち、故郷の岡山に帰らせてしまうべきである。更にもし、非常に疑い深いPCが、なおも彼をつけ回すようで有れば、仕方がない。 「ふーん、じゃ、君のPCは事件に間に合いませんでした」 と切り捨ててしまって構わない。あからさまに間違った判断を許容できる程、TRPGと云うゲームは甘くないのである。 怪しげな浪人・細谷に付いては、以後の展開でもPCに手掛かりを渡す事になる重要なNPCだ。だからといって、PCが殺そうとするのを無理に止める必要はない。後々、PCが苦労するだけなのだから。 |
◎色町(島原)
PCが「紫竹の荒れ寺」の若い娘について聞いて回ると、以下の事が分かる。
・その女性は新撰組局長近藤勇の妾深雪太夫ことお雪の下女。
・下女は「お冴」と云い、3年前に深雪太夫が輪違屋に逃げ込んで来た時からの関係らしい。
輪違屋は新撰組御用達の揚屋であり、PC達も何度か通った事が有るので、場所はすぐに分かる。
輪違屋では多くの芸妓が働いており、一人の女将が全てを仕切っている。PCが現れると、女将が愛想良く近づいてくる。PCは、交渉判定(難易度12)に成功すれば、彼女は「ホントは働いてる娘の事はあれこれ言いたくないんどすけどなぁ」とぼやきながらも、色々話してくれるので、情報を得る事が出来る。また、公務で来ている事を強調するか、金を1両以上渡せば、難易度を10にまで下げることが出来る。
輪違屋で入手できる情報は以下の通り。
・深雪太夫は3年前(文久3年9月)に店の前に刀傷を負って倒れて居た。以来、この店で働いてきた。気だても良く、なかなか学問に通じた所もあり、見所のある(?)芸者だった。
・ココだけの話し、多少尊皇派に同情的で、以前の禁門の変の時にも、水戸浪士とかを可成り親身になって助けていたっけ。
・最初は近藤局長のことを全く相手にしていなかったけど、禁門の変で水戸浪士を助けたのを近藤局長が武士の情けと言って見逃してくれた上に、恩に着せなかったので、以来近藤局長の事を憎からず思うようになったとか。
・一ヶ月前、500両で身請けされ、下女の「お冴」と共に近藤の妾宅に移動した。
・故郷は関東らしい。
・そういえばこの前、頭巾を被った浪人を見掛けた。その浪人は店の前を彷徨いた挙げ句、PCみたいに根ほり葉ほり「深雪太夫」の事を聞いて帰った。
| GMの為に真相を明らかにすると、近藤の妾「深雪太夫」の前身は、かつて暗殺された新撰組隊士平間重助の馴染みの芸者糸里であったのだ。平間の死後、糸里は名前を深雪太夫と改めた。「深雪太夫」は島原輪違屋出身。一ヶ月前、近藤局長に身請けされた。 |
◎役所
PCの中には、新撰組以外の幕府機関に助力を求める者が居るとおもわれる。その場合には、以下のように処理する。
それぞれの役所に行くと、中に通され、お茶菓子と羊羹まで出て鄭重にもてなされる。やがて、与力(同心の上官クラス)が現れ、何でも質問に答えてくれる。昔の資料も調べてくれる。
奉行所で入手できる情報は監察と殆ど変わらない。しかし、昔の事件に関する資料は新選組以上であり、例えば「3年前の事件」「一ヶ月前の事件」と言う漠然とした物言いでも分かる。
・3年前の事件
新選組の幹部、芹沢鴨・平山五郎・野口健司・平間重助らが就寝中に尊皇派浪士に襲撃されて死亡した事件。と言っても、奉行所は遺体の検分すらやらせて貰えなかったけど。噂では、野口健司と平間重助は逃げ延びたとも、捕まって斬られたとも。
(以下の情報は、金3両の賄賂を渡すか、難易度14の交渉判定に成功すれば聞き出せる)
しかし、奉行所の調べでは、暗殺したのはどうやら現新撰組局長近藤勇の一派だったらしい。勿論証拠はなく、この様な事を公言すれば命が危ういので、奉行所でも手を触れないが。
・一ヶ月前の事件
新撰組隊士河合某が処刑された事件。河合は公金を横領した疑いで処刑されたのだが、その不始末は何と土方が近藤の妾を身請けする為に公金を使おうとしたためらしい。
(以下の情報は、金3両の賄賂を渡すか、難易度14の交渉判定に成功すれば聞き出せる)
なお、奉行所の調べではその後河合の父親河合信兵衛が上京。最初新撰組に訴えて息子の無実を訴えたが、聞き入れられないと知るや奉行所にも駆け込んできた。奉行所では新撰組は京都守護職である会津藩の預かりで、管轄外であるとして訴えを退け、更に非公式に、新撰組と関わると命が危ない、と忠告した。しかし、信兵衛は聞き入れず、相変わらず新撰組に抗議行動を行っている。
奉行所では、いざと成ったら密かに逃がすつもりで見張りを続けていたが、怪しげな浪人と接触した他は特に危険な行動もしなかったので、最近では見張りを止めた。信兵衛は、三条大橋たもとの旅館に泊まっている。
◎壬生寺
壬生寺とは新撰組の菩提寺である(まぁ、情報網としてここを押さえて居るプレイヤーは余程の新撰組マニアなんだろうけど、実際に来たプレイヤーが居たので、付け加えておく)。新撰組に対しては極めて好意的で、住職が応対し、以下の情報を伝える。
・そういえば、この間芹沢さんのお墓に長い間手を合わせていた人がいた。供養料として20両もくれた。
・覆面をしたお侍で、しきりと近藤の近況を聞きたがっていた。
・なので、最近美人で有名な深雪太夫という芸妓を身請けした事等を聞かせたところ、目を輝かせて立ち去った。
何故この様に近藤の事をぺらぺらしゃべるのだ? と聞かれても、「芹沢様は長州浪士に殺されたのではないので?」ときょとんと問い返してくるのみ。彼は、新撰組の宣伝を真っ向から信じているようだ。
◎近藤の別宅
近藤局長は大坂に出張していて留守。現在は、妾のお雪と下女がいるだけである。この事は、新撰組隊士なら誰でも知っている。
1)見張り
裏口前に何やら怪しげな浪人が現れる。
浪人は、周囲を注意深く見回す。この時、近藤の別宅を監視している隊士は難易度13の潜伏判定を行わねば成らない。潜伏判定に成功すれば、細谷は誰にも見られていないものと考えて中に入る。失敗すると、浪人は逃走する。それが適わないときは、降参する。
浪人の正体は細谷という浪人。彼は
彼は、手紙を持っている。文面は、名前を明かしては居ないが、「準備は整った。今晩にも長州に立つ。一緒に来い。今夕下鴨神社近くの賀茂大橋の上で待つ」と言うような内容。学問が有るらしく、なかなか達筆。
上手く中に入ると、浪人は深雪太夫(現在はお雪)に手紙を渡し、
「では、確かにお渡ししましたぞ。賀茂神社ですぞ」
と云って立ち去ろうとする。
浪人が知っているのは以下の通り。
・自分は、赤心党の一員である。
・現在の集合場所は下賀茂神社。神主を脅して居座っている。
・何回か、覆面の首領から近藤の女房宛に手紙を預かって、ここに来た事がある。首領の昔の女らしい。
PCが捕まえなければ、浪人は下賀茂神社に向かう。浪人は使命を果たしてすっかり油断しているので、尾行は捜索技能・難易度13で成功する。
さて、PCが既に細谷を殺してしまっている場合、事態は複雑である。彼の代わりに此処に登場するのは平間の腹心の浪士であり、当然、細谷の如くヒントをばらまきながら行動する事はない。彼は、先ず近所の子供を小銭で雇い、家の周囲を彷徨かせ、PCが来たら全速力で逃げるように伝える。そしてPCが離れたのを見計らって、町人姿に変装し、裏庭に向かって石に包んだ手紙を放り投げる。手紙の内容は同じ。手紙は既に打ち合わせ済みの下女の手に渡り、お雪に手渡される。PCが複数で見張りを行わない限り、此の連絡を見る事は難しいだろう。
また、捕まった場合には歯に仕込んだ毒薬で自殺を図り、如何なる情報も漏らさない。例外は、非常に厳しい拷問を行った場合だが、この場合には設備や時間が必要となり、その間に平間は長州藩に逃走してしまう。
2)見張り
夜半、皆が寝静まった頃、裏口から下女が出てくる。下女は密かに周囲の気配を調べる。見張っているPCが潜伏技能(難易度16)の判定に失敗すると、下女は何気ない振りで外出し、まずいきなり走り出し、角を曲がった所で「木遁の術」で逃れ、それでも駄目なら「金遁の術」で追跡を断とうとする。これを突破する為には、8m跳躍可能な術が必要。
潜伏技能判定に成功すれば、PCは下女を尾行出来る。下女は下賀茂神社に向かう。
| 真相は、深雪太夫は情報をリークしていない。情報は新選組にも出入りが自由で、目を付けられていない彼女の下女から漏れている。 |
3)深雪太夫に会う。
最初、深雪太夫に会っても、特に情報は無し。
警護しよう、と申し出ても、夫(近藤勇)の留守中に殿方を家に泊める訳には、と謝絶。
前身についての質問や、過去の経歴に関する質問についてはかなり神経質になっており、答えない。
但し、浪人を捕らえ、手紙を突きつけるなら、彼女は自分が元は平間の馴染みの芸者「糸里」であった事を告白し、あの事件の夜、自分は咄嗟に着物を投げて近藤の目を塞ぎ、平間は近藤の手を逃れて生き延びた事、自分もそこに居合わせて襲撃されたが、逃げ延び、元の女郎屋に戻っては近藤に殺されるかも知れずと輪違屋に逃れた事、でも今では近藤を愛していること、この手紙は平間のものである事を明らかにする。
では、誰が情報をリークしたのか、と言う段になると、庭で気配が感じられる。
気配の元は斬りつけられたり呼ばれたりすると、(回避できれば)ひょいっと壁の上に上る。見ると、下女。
下女は「くのいち」だったらしく、屋根を伝って逃走しようとする。
PCが追撃すれば、伊賀流及び共通忍術4レベルを駆使し、逃げようとする。戦闘不能になると、
「烈公様(水戸藩の先代藩主斉昭の号。斉昭は既に故人だが、尊皇派の思想的象徴)…申し訳有りませぬ」
と言って歯に仕込んだ毒で死ぬ。
この様に問いつめず、見張りを続けるならば、お雪は夜半に頭巾を被って出ていく。
賀茂大橋に行くらしい。(「賀茂大橋」へ)
第四幕 下賀茂神社
神社の周囲には川の水を利用した堀と土塀が巡らされており、門の前には2名の浪人が見張りに立っている。四隅にはそれぞれ見張りが2名ずつ立ち、それぞれ小銃を持っている。門の内部には木砲も用意されており、敵襲が有ればすぐに撃てるように成っている。
本社に詰めている浪人は8名。2人づつ4交代で寝ずの番を行う。夜間には四方に篝火を焚き、まるで大名屋敷の様である。
例の千両箱は神社の屋根裏に仕舞ってある。
神社は彼ら赤心隊が神主を武力で脅し、占拠している。神主達は本社の奥に監禁されている。
第五幕 賀茂大橋
月明かりの明るい夜。橋の上には月光を背景に一人の男が立っている。男は頭巾を被っていない。古参隊士PCが見れば、間違い無く「平間重助」であることが分かる。
捜索技能判定(難易度16)に成功すれば、橋の下には6名の浪士が隠れているのが分かる。もし、彼らに気がつかずに戦闘に移行した場合、最初のターンにはPC達は行動できない。
・古参隊士PCが来た場合
平間は古参隊士を見ると、
「また会ったな、○○」と親しげに声を掛けてくる。
平間:「まだ新選組に居るのか」
平間:「そりゃ良かった。何しろ、貴様には借りがあるからな。我が恩師、芹沢先生の仇、ここで討たせてもらう!」
・其れ以外のPCが来た場合
男はPC達を見ても、何の感慨もなさそうである。ただ一言、「ふられたか」のみ。
PCを無視して反対側の端に向かおうとする。つられてPCが追いかければ、橋の下から浪士が現れて攻撃を始める。
・お雪が来た場合(その場合、伏兵の一人は下女)
「良く来たな、お雪」
「…私は、今では新選組局長近藤勇の妻お雪。かつての糸里ではありません」
「ならば、何故来た?」
「貴方を、討ち取るためです!」
懐剣を抜いて斬りかかるお雪。男は油断していたので手に軽く傷を負うが、次のターンにはお雪は反撃で殺されるだろう。どうする!?
| 平間は、京都での活動を一時終了し、此の資金と対新撰組活動の実績を持って長州藩に高飛びしようとしている。 もし、平間が逃げたなら、新撰組の内部情報は長州藩に筒抜けとなり、今後の活動は非常に不利になるだろう。 |
エピローグ
平間達を殲滅すると、シナリオは終了。お雪が生きていれば、近藤から多大な謝辞を受ける。もし、近藤にお雪は平間の馴染みの芸者でした、と告げても、近藤は一笑し、「そんなこたぁ、3年前から分かっていたよ。あん時は、女ながらに度胸の据わった女だ、と思ったものよ」と云う。また、近藤のポケットマネーから5両ずつの報償が与えられる。
お雪が死んでいたなら、近藤は大いに泣き、暫くは隊務にも出ない有様。この間隙を埋めるかのように現れるのが、深雪太夫の妹「お孝」なのだが、それはまた別の話。
そうそう、千両箱を取り返すと、若松屋から約束の金(一人頭10両)が支給される。