鋳鉄製パーロット砲陸戦用パーロット砲
 アメリカの砲術家パロットによって開発された、前装式ライフル砲。此までのライフル砲は、旧式化した滑腔砲を改造する、と言う形式が多かったが、此のパロット砲は最初からライフル仕様で設計された世界で最初の鋳鉄砲ちなった。
 1834〜1835年にかけてアメリカ陸海軍の火砲検査官を担当したロバート・パロット大尉は、1836年に退職、企業家として火砲製造業を興した。そして遂に1860年に至って10ポンド・パロット砲を開発した。パロット砲の前に開発されたダルグレン砲(開陽に装備。滑腔砲とライフル砲の二種類が存在する)に比べると、当初からライフルが刻まれている分、よりカノン砲としての性格が強い。そして何よりのパロット砲の特徴は、その安い価格、高い生産性、優れた操作性に集約される。逆に性能はそれ程画期的な物ではなく、また砲尾の強度が低い為屡々暴発した。現に幕末の日本でも、小倉海戦で回天に搭載されたパロット砲が暴発するという事故が発生した程である。しかしその優れた生産性は、大量の火砲を必要とした南北戦争中の北軍に高く評価され、主力野戦砲として多用された。
 此のパロット砲には構造にも特色があり、従来の一体成形で砲尾を肉厚にして破裂を防いだ砲身と異なり、砲尾を余り肉厚にしない代わりに細い鉄板をコイル状に巻き付け、強化を図っていた。即ち、後年の「鋼線砲(ワイヤード・ガン。砲の内側に鋼線を巻く)」の走りである。
 また、此の「最初からライフル砲として設計された」パロット砲を皮切りに、砲のサイズを砲弾の重量で量る「4ポンド山砲」や「6ポンド野砲」と言った呼び名は廃れていった。と言うのも、砲弾が球形ではなく椎の実型になったライフル砲では、例え砲弾の重量が同じでも同じ口径になるとは限らず、現に同じ8pパロット砲でも陸軍は200ポンド砲弾を用い、海軍は150ポンド砲弾を用いていたからである。此では用兵上は元より兵站業務でも混乱を避けられないので、以後火砲は悉く口径や砲身長で呼称されるようになった。
 尤もWW2の戦車ファンなどは、此処まで読んで「おや?」と思うかも知れない。そう、マチルダ、クルセイダー等々のWW2英国戦車砲は、全て「○○ポンド砲」と名付けられているからだ。その他にも、英国は砲の名称に砲弾の重量を付けている物が多いが、此は飽くまで伝統の国イギリスが特殊である、と認識して置いて欲しい。