食卓塩は人類社会の裏側に暗躍する奴等を撃退すべく設立された諜報機関である。
先進のコンピュータ・プログラムを駆使して
奴等に挑む、有給休暇なき諜報員たち。
社会に安寧と平和をもたらすため、彼らは今日もネットサーフィンする!







・新たなる敵

 ものすごくワンパターンな気がするが、今回も始まりは一本の電話だった。
 私ことアジシオ太郎の携帯電話を鳴らす相手の名は、ドイテフ。

エージェント・ドイテフ Agent "Doichef" Rank B+
専属カメラマン。にも関わらずカメラの操作がよくわかっていない。
諜報機関のエージェントらしく数多くの偽名を持っているが、多すぎて自分にも把握できていない。
ピンチに陥ると「頭トリックス」と呼ばれる、脳内仮想空間へ逃げ込んでしまい役に立たない。
ピンチに陥らなくても大抵は頭トリックスの中にいるので、やっぱり役に立たない。


ドイテフ「もしもし、大変だ」

アジシオ「どうした? 何があった?」

ドイテフ「実は、また凄いジュースを手に入れてしまったんだ。見てもらえばわかるが、これは本当に凄い。特命リサーチのネタになるぞ」

アジシオ「なんだとっ! でかした、大手柄だ!」

ドイテフ「ちなみに、出所はヴィレッジヴァンガードだ」

アジシオ「またあそこか! しかしドイテフよ、お前は何か勘違いをしてるみたいだが、別に特命リサーチ食卓塩は、マズいものを食べるコーナーじゃないぞ」

ドイテフ「え、そうなの?」


アジシオ「ああ、俺達エージェントが奴等の陰謀に立ち向かうコーナーだから、マズいもの専用ってわけじゃない。確かにそれ系のネタが目立つけど」

ドイテフ「とにかく検証だ。そのジュースを出すから、うちに来てくれ!



 そして私は、期待と不安を胸に抱き、ドイテフ宅へ車を走らせた……。








特命リサーチ食卓塩

File−06

恐怖! 爆発系飲料水!







・突撃、そして……

ドイテフ「よく来てくれた。さっそくだがブツを見てもらおう。これだ」

 そう言ってドイテフは、一本の缶ジュースを取り出した。
 その名は“ニトロン”!


アジシオ「ニトロン……! なんという過激な名前なんだ……! まるで今にも爆発して、周りのすべてをフッ飛ばしそうだぜ……」

ドイテフ「ああ。しかも
“ライフリセット”とも書いてある。意味はわからないが、不吉な名前なことは確かだ。俺は、こいつが奴等の刺客に間違いないと思う。そう感じた理由は、これだ」


 ドイテフは缶を回転させ、私にそれを示した。

!?微調整


※人体に影響はございませんが、飲み過ぎには注意しましょう。



ドイテフ「そして、これだ!」

!?


■香料に香辛料を使用しておりますので、皮
 膚についたり目に入ると刺激を感じる場合
 がありますのでご注意ください。



アジシオ「なんだこれは! 注意書きだらけじゃないか!」

ドイテフ「ああ、これはいくらなんでも怪しすぎる。これが
奴等の陰謀でないなら、何だというんだ」

アジシオ「まったくだ。奴等め、だんだんと行動が露骨になってきてやがる……!」

ドイテフ「じゃあ、そろそろ行くぞ? 覚悟はいいな?」


アジシオ「ああ、頼む」



 そしてドイテフは缶を開け、グラスにそれを注いだ。



アジシオ「あれっ? 意外と……」

ドイテフ「ああ、意外ときれいな色だな」


アジシオ「ていうか、旨そうじゃないか、これ?」

ドイテフ「ああ、飲んでみたくなるな」


アジシオ「じゃあ飲んでみたくなった所で、行ってみるか?」

ドイテフ「よし、それじゃあ……」





カンパ〜イ!





ングッ、ングッ、ングッ……。

















ブハァ!!


アジシオ「ゲホッゲホッ、痛い痛い痛い! 喉が痛い、口が痛い!」

ドイテフ「痛い痛い! あり得ない! なんで、
なんでジュースが痛いんだ!!


 そう……極端に“辛味”を強調されたそれは、口に含むと強烈な激痛が口内から喉に伝わり、咳が止まらなくなるという、喘息発症ドリンクと呼ぶに相応しい劇物だったのである。
 断っておくが、炭酸ではない。純粋に辛くて、辛すぎて痛くて咳き込むのだ。
 この味を一言で表すなら、おかしい。
 甘いとか酸っぱいとかじゃなくて、おかしい。おかしい味。
 おそらく、これが缶に記されていた香料(香辛料)の刺激なのだろうが、いくらなんでもやりすぎである。「辛さ」という地平を500km/hオーバーで通り過ぎちゃってるし。おそらくこれは、辛い物が苦手な人でも問題なく飲めるはずだ。だって辛いんじゃなくて、痛いんだもん。



ドイテフ「なるほど、これで缶に記された注意書きの意味が、身をもって実感できた。確かにこれは、飲み過ぎたら危険かもしれない。ていうか、
これを飲み過ぎる奴なんかいない

アジシオ「実感? ドイテフよ、お前はこの程度で、このドリンクの危険性が実感できたというのか?」

ドイテフ「え?」


アジシオ「そんなんだから、お前はいつまでたってもBランクエージェントなんだ。缶をもう一度よく見返してみろ。飲み過ぎ以外にもう一つ、注意書きがあっただろう?」

ドイテフ「もう一つ? “皮膚についたり目に入ると刺激を”……ハッ! あ、アジシオ、お前、まさか!?」


アジシオ「その“まさか”さ……。やっていないことがある。俺達は、試さなければならないんだ。この注意書きを、実際にな!






俺の生き様を見とけーー!!


※動画ダウンロードはこちら(笑)※

※動画その2はこちら※



 ストローで作った手製スポイトで、ニトロンを目に注入する私。





ポタッ





痛い痛い痛い!
痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!




 あまりの激痛に、悲鳴を上げてのたうち回る。
 だって本当に痛いんだもの。

 そして、さらなる悲劇が私を襲った。




鼻に入った!




 目も痛いし、鼻もイテェ!!
 かつてない衝撃に、私はもはや為す術なく、ただ裏返った声で絶叫することしかできなかった……!
 死後の世界を、垣間見た。



ドイテフ「大丈夫か、アジシオ?」


アジシオ「ああ、なんとかな……!」

ドイテフ「だが、お前のおかげでこのドリンクの危険性がよくわかったよ。これは、ヤバすぎる……」


アジシオ「ちょっと待て。“よくわかった”だと? それはおかしいだろう」

ドイテフ「え? しかし、そのためにお前はニトロンを目に入れたんだろう?」


アジシオ「その通りだ。おかげで、俺は文字通り身を持って実感することができたよ。けど、お前はまだよくわかってないと思うぞ。いや、絶対にわかってないね」

ドイテフ「えっ、ちょっと待って、それってどういう……?」


アジシオ「だって、お前はまだ、鼻で飲んでいないじゃないか




鼻で!?


ドイテフ「えっ、ちょっ、うそ、マジで?」


アジシオ「うんマジ♪」

ドイテフ「だって鼻だよ?」


アジシオ「俺は目だよ? しかも2テイク撮ったから両目にたらしたんだよ?」


 押し黙るドイテフ。
 ようやく覚悟を決め、鼻にストローを差しグラスを手に取った。

 そして一気に息を吸い込み、両鼻からニトロンを飲む!


※動画ダウンロードはこちら(笑)※



 ズズーーッ……






 グハッ!!


 ゲホッゲホッ、ガハ、グホッ、ゲホッ!



 とにかく咳き込むドイテフ。見るも無惨な姿だ。
 悶え、苦しみ、咳き込むドイテフ。
 息も絶え絶えになった彼が、ようやく発した一言は、


「息ができない」


 という、非常に切実なものだった。そりゃ息できねえだろうなぁ。鼻だし。


 と、いうわけで、我々エージェントは奴等の刺客、ニトロンに惨敗。ことごとく返り討ちにされるという、かつてない失態を演じてしまった。
 だが、我々はあきらめない!
 どんなに辛い目にあっても、傷ついても!
 希望を持って、勇気を持って、前へ前へと進み続ける!


 それが──


 それが我々、特命リサーチ食卓塩なのだから!





──このネタを発表するんですか?


まだネタはある。まったくよぉ……。

知人にこのサイトを教えりゃ、こう聞かれる。

“おいアジシオ。なんでバカなことをする? 何故だ? もしかして、頭がおかしいのか?”

俺は一言も答えない。

何故か?

どうせわかりゃしない。

奴らにゃ理解できない。

笑いのために、体を張るってことが。

それだけ。

それだけだ。


(『ブラックホークダウン』フート軍曹のセリフより抜粋) ←ウソ





To Be Continued...