インド音楽はお好き?


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責任者は誰だ?

昔から不思議に思っているのだけど、インド音楽って何で流行らないんだろう?
えっ?、もうとっくの昔に流行ったことがある?
でも、それは本当に大昔のことでしょう? 暗くした部屋でを焚いて、マリファナ吸いながら、ラヴィ・シャンカール聞いてトリップするとか・・・
神秘思想だの、哲学だの、もっともらしいこと言ったって、そんなのただのヤク中じゃん。ああ、違うんだ、そんなんじゃないんだ。そんなゆがんだイメージを広めたのは誰だ? 責任者出てこい!



インド音楽は、知的で、オシャレで、カッコイイ

信じない?
私も、インド音楽に限って、そんなことはあり得ないと思っていた。
大昔のサイケとかのイメージがまずあったし、その後も、インドって言えば、河原に無造作に捨てられた人間の死体を犬が食ってるあの有名な写真のイメージが強烈だったし・・・
だどけ、もう何年も前のことだけど、図書館で何気なく借りたCDを聞いて腰を抜かした。
そんな国でどうしてこんなに洗練されて上品な音楽が生まれたんだろう?
これだったら、このオシャレな国日本で流行ったって、全然おかしくないよなぁ。


推薦盤など・・・お断り970825



Shivkumar Sharma(シブクマール・シャルマ)

サントールの名手として有名な人です。
サントールって言うのはおよそ40センチ四方の板きれに針金を張ったような楽器で、それを菜箸みたいな棒で叩いて演奏します。
そんなもんでまともな音楽が奏でられるのかと疑問に思うでしょうけど、それがまともなんです。本当にクールな音がする。
この人のCDはそれこそ腐るほど出ていますが、推薦できるのは以下の2枚だけ。あとは、どれも似たり寄ったりというか、中には知的でも、オシャレでも、かっこよくもない演奏もたくさんあります。残念ながら。

Rag Madhuvanti, Rag Misra Tilang / Nimbus Records / NI5110(英国盤)
本当に知的で、オシャレで、かっこいい、ダントツの一枚!
洗練の極み!
この涼しげで軽やかできらびやかな音色とリズムは、いったい何処からやって来たんだ? 何か、イスラム入ってるんじゃないかなぁ。
民族音楽とか、古典音楽とか言う固定観念がすべて根元からひっくり返されてしまいました。
夏の日の午後、ハイテックな感覚でまとめた部屋の室内装飾音楽にどうぞ。

最近日本コロンビアから日本盤が出ました。
半年ほど前でしょうか、横浜のHMVで一枚見かけ、その後、確か新宿のHMVでもう一枚見かけました。それっきりです。
番号と日本語のタイトルをしっかり控えておけばよかったのですが・・・
日本コロンビアのホームページに行っても見つかりません。
数あるインド音楽の中からこれを選んで日本盤を出した人の見識は素晴らしいと思う。でも、しかし、せっかくこんな素晴らしいものを出したのだから、もっと宣伝すればいいのになぁ・・・ このCDが人に知られないことは本当にもったいないことだと思うのですけど・・・
ええ、その後、横浜駅東口ルミネ4階のtaharaで見つけました。「ニンバス・ワールド・ミュージック・コレクション インド音楽の巨匠2 シヴクマール・シャルマ(サントゥール) COCY80612」です。(19990907付記)

Raga Yaman / Chhanda Dhara / SNCD70490(ドイツ盤)
上に紹介した Nimbus 盤より、切れ味という点では数段劣るのですが、なにぶんにも Nimbus 盤が手に入り難そうなので、次善の策として紹介しておきます。
曲は北インド古典音楽の基本中の基本となる曲で、インド音楽を習い始めると、死ぬほど繰り返して演奏させられることになる音楽なのだそうです。
この演奏での聞き所は最後の15分の盛り上がりでしょうか?
サントールとタブラ(ドラム)とタンブーラ(通奏低音)の3人だけでこれだけ派手に出来るのかよと、目をむくこと間違いなし。
昔、この部分を生まれたばかりの娘に聞かせたら、ヒステリーを起こして、火がついたように泣き出しました。・・・かえって聞きたくなくなったかしら?


Pandit Kamalesh Maitra(何て発音するんだ? パンディット・カマレシュ・マイトラ?)

このおじさんが演奏するのは Tabla Tarang(タブラタラン?)という、これも写真を見ただけで吹き出してしまうような珍妙な楽器です。
要するに土人の小太鼓みたいのが20個近く並べてあって、その真ん中おじさんがあぐらをかいている。
・・・そうです。音程を付けた太鼓をおじさんが一人で叩きまくって演奏するのです。そんな馬鹿なと思うかもしれませんが、これもまた素晴らしい音楽になっているので、驚きです。・・・いや、おじさんの芸に驚いているのではありません。音楽にです。本当に素晴らしい音楽なんだから。

The Voice of Sarod from the Strokes of Drums / the Gramphone Company of India / CDNF150137(インド盤)
前衛の香りがします。
土人の太鼓どころではありません。間違いなく現代音楽のテイストがあります。この乾いた情緒。カッチョいい! クールだぜ。
ねぇ、ちょっと、そこの都市生活に倦み疲れた疲れた現代人の貴方、今夜、一人でこの音楽に耳を傾けてみません?
ヒーリング・ミュージック?
冗談じゃない。あんなの聞いて癒される人って、基本的に現代人じゃないんじゃないの?
渇きを癒してくれるのは渇き、疲労感を癒してくれるのは疲労感、孤独を癒してくれるのは孤独。
正しい現代音楽は渇きと疲労感と孤独を美しく整えて、それ自体を生きる喜びに昇華してくれます。

Tabla Tarang - Melody on Drums /Smithonian Folkways / SF40436(米国盤)
インド盤が入手しにくいかもしれませんので、これも次善の策です。
ほの暗く研ぎ澄まされた感覚という点ではインド盤ですが、この米国盤の演奏も優れたものであることには間違いありません。

余談ですが、これ、初めて見つけた場所は六本木のWAVEでした。一旦手に取って、買おうかなどうしようかなっと迷いながら、もう一度棚に置いた瞬間、横から手が出てきてさっと取り上げられてしまいました。見ればインド人のおじさんがそれを握りしめて一目散にレジを目指して走って行くところではありませんか。おじさんといっても、年の頃は30前後。何となく理科系っぽい雰囲気の漂っている人です。先ほどからこのおじさんが棚の前で決心を付けかねたように行ったり来たりしていることには気が付いていました。奥さんと5〜6歳ぐらいの娘さんが一緒です。娘さんは退屈しきって、早く何処か行こうとごね始め、奥さんはイライラしているようでした。おじさんの手には既に何枚かのCDが握られています。奥さんにしてみれば「あんた、何枚買えば気が済むのよ。ちょっとは生活のことも考えてよね。」というところでしょう。おじさんにしてみれば、異境の地の思わぬところで見つけた故郷の音楽、ああ、もう一枚欲しいが、かみさんがちょっと怖い・・・・ と迷い続けているところに、思わぬ競争相手の出現で、にわかに決心が付いたのでしょう。
・・・鳶にあぶらげさらわれたようなショックはともかく、おじさんのその後が気になります。おじさんも、この音楽を聴いて感動したのでしょうか。だったら私も嬉しいッスよ。でも、奥さんは許してくれたかしら・・・何か、ちょっと気弱そうな感じのおじさんでしたが、家庭の平和は、無事、守られたのでしょうか。


Ustard Zia Mohiuddin Dagar(ズィア・モーヒウッディーン・ダガール)

このおじさんが弾いているのはルードラ・ヴィーナとか言うシタールの化け物のような楽器です。別にゲテモノ楽器の紹介をしているつもりはないのですが、何でインドはこんな変てこな楽器が多いのでしょう。
このおじさんは昔から代々続く宮廷音楽家の家系で、古典の世界ではとても格が高いらしい。伝統的格付けの高さと音楽性は別物だけど、何か時代の流れの中で滅んで行くものの威厳のようなものを感じさせる人でした。数年前に、確か、アメリカで死にました。インドの近代化の中で、居場所を失って、あんなところまで流れていったらしいッスよ。

Great Masters of the Rudra-Veena / Auvidis Ethnic / B6131(フランス盤)
これぞインド音楽の神髄。
腹の底からずーんと響いてくるルードラ・ヴィーナの響きに陶然。
インド音楽の異質な時間感覚がとてもわかりやすい形で顕れているように思えます。
シンプルですが味わい深い逸品です。


Manilal Nag(モニラル・ナーグ )

このおじさんも古典音楽の名門の家庭に生まれた人です。名門の出だから素晴らしいと言うことではなく、本当にこのおじさんの演奏は素晴らしい。北インドの古典音楽のニューズグループ rec.music.indian.classical でも、「インド音楽の芸術性を真剣に考える人たちにとって最も重要な演奏家の一人」と書かれていたことがあって、やっぱりそうだろうと、一人で納得しました。ただ、手に入る録音が少ないことが難点で、キングレコードの2枚と、米国の Raga Record から出ている2枚ぐらいしかないんじゃないかな・・・

シタール幻想 超絶のラーガ / キングレコード / K30Y 5101(多分今は変わってる)
複雑にしてスケール雄大、スケール雄大にして繊細、繊細にして深遠・・・
特にスケールの大きさと、深遠さに関して、これを凌駕するインド音楽には、その後、出会ったことがありません。宇宙とか、神とか、世界の始まりと終わりとかを思い浮かべてしまうのは私の思いこみでしょうか?

ジャッケット写真 これです。
私にとってのインド音楽の最初の一枚がこれでした。
最初に会った一枚がこれでなければ、私はインド音楽など聞き始めなかったでしょう。
実は、オシャレでも無ければ、カッコ良くもありません、この一枚に関しては・・・。しかも決して取っつきやすい曲でもない。
でも、心を込めて注意深く聞けば、そこにもう一つの巨大な音楽世界が広がっていることに気が付いて、驚かれることでしょう。西洋の古典音楽とは異なるもう一つの高度に発達した巨大で複雑な音楽の体系が確かにここにあることが感じられます。もし一回聞いてピンと来なかったとしても、諦めないで下さい。新しい音楽言語の語彙と文法になれるまでには少し時間がかかるかもしれません。

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