岡崎京子「リバーズ・エッジ」

あとがき抜粋−その1−


 彼ら(彼女ら)の学校は河ぞいにあり、それらはもう河口にほど近く、広くゆっくりと澱み、臭い。その水は泥や塵やバクテリアや排水口から流れこむ工業/生活廃水をたっぷりとふくんだ粘度の高い水だ。
 流れの澱み、水の流れが完全に停止した箇所は、夏の水苔のせいですさまじい緑となり、ごぼごぼいう茶色い泡だけが投げこまれた空カンをゆらしている。その水には彼ら(彼女ら)の尿や経血や精液も溶けこんでいるだろう。
 その水は海に流れ込んで行くだろう。海。その海は生命の始源というようなイメージからはうち捨てられた、哀れな無機質な海だ。海の近く。コンビナートの群れ。白い煙たなびく巨大な工場群。
 風向きによって、煙のにおいがやってくる。化学的なにおい。イオンのにおいだ。
 河原にある地上げされたままの場所には、セイタカアワダチソウが生い茂っていて、よくネコの死体が転がっていたりする。

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