はじめに (SCENE2へのコメント)
前章を受けて登場人物の各自の状況が更に詳しく掘り下げられて行く。
川べりの空き地の草むらの中に横たわる白骨死体。(今の段階では犬が囓っている何かとしてその存在が暗示されるだけに過ぎない。)
山田君を挟んでいよいよ鮮明に浮かび上がってくるハルナと観音崎君の間の亀裂。
周囲の冷ややかな視線を浴びながら不安げな表情を浮かべて教室の入り口に立ちつくす島田カンナの孤独。
貧血で保健室通いを続ける吉川こずえ。
ハルナの姿を探して血相を変えて学校中を走り回る観音崎君の不安と焦り。
そんな彼を見守るルミちんとよっちゃんの視線も決して暖かなものではない。特に、観音崎君と隠れて関係を続けるルミちんにとっては、ハルナばかりを追い回すその姿が愉快なものであるはずがない。
ハルナを校舎の屋上に連れ出して、この頃冷たいのではないかと激しく迫る観音崎君。ハルナは冷ややかだ。
ハルナがごく短く回想するところによれば、前の年の夏にハルナは初めて観音崎君と関係を持っている。その年の秋に二人だけで旅行に出かけ、そのあと急に自分の気持ちが冷めてくるのを感じたようだ。観音崎君に言わせれば、そもそもその旅行自体、ハルナが誘ったものだという。
結局のところ、ハルナが観音崎君と関係を持った動機は性に対する「好奇心」に他ならない。しかしながらハルナにとって「性」に伴う生々しい親密さは心地の好いものではなかったらしい。
観音崎君が親密さを要求するほど、ハルナは息苦しくなって嫌気がさしてくる。
ハルナにとって他の人格というものが重すぎ煩わしいものなのだろう。彼女が心おきなく愛せるものは例えば人ならぬ子猫。彼女自身もそんな自分の資質に気が付いており、そのことに対して必ずしも肯定的ではないようだ。
ハルナと観音崎君のやり取りを物陰から垣間見る吉川こずえの視線。彼女はひとけのない屋上の片隅に隠れてジャンクフードを貪り食っているところだった。
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