はじめに (SCENE7へのコメント)
埋蔵金騒ぎの起こったその日の夜、山田君に頼み込まれたハルナは嫌々ながらも死体を埋める手伝いをする羽目になる。山田君は自分の宝物を誰にも渡したくないと言い張るのだ。
ハルナ・こずえ・山田君の三人が泥まみれになって死体を埋める場面は奇妙な味わいに満ちている。
待ち合わせの場所で待ち受けていた吉川こずえがハルナを見つけた途端、満面に浮かべる如何にも嬉しそうな表情と白々しい台詞(「とんだことになりましたね 若草さんにもめいわくかけます」)が可笑しい。
これを機に吉川こずえはますますハルナに接近してくる。
穴を掘りながらこずえがぶつ演説も傑作だ。こずえのこの言葉はもっともなものだが、物語の中のハルナは全く理解できないようだ。
それを言えば、ハルナは、あれだけ憧れていながら、山田君のことすら理解しているようには見えない。
こずえに至っては、そのハルナの人を理解できない鈍感さを十分認識しているが故にハルナに惹きつけられているようにも思える。おそらくこずえは自分のことを「怪物」だと思っているので、そのことに気付きそうにもないハルナの鈍感さがかえって有り難いのだろう。
ストーリーの要約では省いたが、この章には他にも次のような二つのエピソードが含まれている。何れも物語の次の展開につながる重要な伏線だ。
山田君の家に電話をかける田島カンナ。出かけたと言われてカンナの心の中で山田君とハルナの仲への疑念がますます膨らんで行く。
ルミちんと姉の諍い。
部屋に隠ってジャンク・フードを貪り食いながらヤオイマンガを描き続ける姉の異様な生活ぶりが浮き彫りにされる。家族もデブで怪物じみた容貌の姉を厄介者扱いし、可愛いルミちんを贔屓しているようだ。姉はルミちんの日記を盗み読むことを習慣としており、ルミちんもそのことに気付いている。
尚、前の晩、夜の海の釣りのシーンで空には三日月がかかっていたのに、次の日であるはずの死体を埋めるシーンでは、満月が空にかかっている。
三日月の翌日に満月になることはあり得ない。
作品の価値を損なうようなミスだとは思わないが、作者の関心がもっぱら人間の世界にあって、「自然界」には無いことの左証であるように思えておかしい。「リバーズ・エッジ」はあくまで「人工の世界」で繰り広げられる物語なのだ。