はじめに (SCENE8へのコメント)
次の日曜日の出来事。
横浜でのハルナ・観音崎君のデートと、品川水族館での山田君・田島カンナのデートの二つが、カットバックで繋ぎながら、平行して語られる。
無理やり引っぱり出されたハルナは最初のうちこそ乗り気でない。しかし、素直に喜ぶ観音崎君の姿を見るうちに妙にしみじみとした気分になってくる。
考えてみれば、昨年の秋、観音崎君の家は大変だった。父親の会社が潰れたり、父親本人が他の女性と失踪したりしたのだ。
観音崎君が執拗にハルナにすがりついてきた背景には、家庭内の事情もあったのかもしれない。
観音崎君が苦しかったときに自分が何の救いの手も差し出さなかったことに対し今更のように罪悪感を覚えて思わず「ごめんね」と言ってしまうハルナ。
結局二人はホテルに行くが、それが「ごめんね」の続きでしかないことはハルナが一番よく分かっている。
こうして訪れたつかの間の偽りの和解だが、テレビをつけた途端、画面の中に吉川こずえが姿を現し、ハルナをヤブの中の白骨死体の世界に引き戻す。
山田君と田島カンナのデートはもっと悲惨だ。
如何にもつまらなそうな山田君を目の前に、カンナの孤独感はかえって深まって行く。
水族館の水槽の前に立ったとき、異様なほどの違和感に襲われる山田君。居るべきところではないところに居る不自然な魚達の姿に自分自身の姿を投影する。しかしそれは山田君だけでなく、人工物に囲まれて生活する我々自身の姿そのものかもしれない。
二人のデートは新宿駅で終わる。駅の群衆の中を遠離って行く山田君の後ろ姿を見守るカンナの目には見る見るうちに泪が溢れてくる。圧倒的な孤独感がカンナを襲う。
実際、山田君はデブの中年おやじと逢うためにホテルの一室へと向かったのだ。
下着姿で冷蔵庫の中のものを手当たり次第貪り食らう吉川こずえの姿が短く挿入される。
ハルナの家には田島カンナからの無言電話。