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▼01.眠り


 灼熱の太陽が大地を焦がす昼の間、老人は地下室の闇の中で眠りをむさぼる。目の眩むような陽光も、すべてを干上がらせてしまう強烈な熱気も、廃寺の地下深くに位置するこの小部屋までは届かない。ひんやりと冷たい闇の中を老人の意識は彷徨い続ける。夢の流れに身を任せ、当てもなく、自分がどこへ運ばれてゆくのか分からぬままに。
 星を読む者は、眠りを貪る間も、天空の呪縛から逃れることが出来ない。一晩中眺め続けていた星空の記憶は夢の中で姿を変え、隠されていたその意味を自ら語りはじめる。夢のことばは人間のことばとは大きく違っている。時間の流れも、空間のつながりも、物事の因果関係も、地上のそれらとは似ても似つかない。すべてが異なるその世界の中で、老人の意識は解体され、別な存在へと組み替えられてゆく。人が人であることを止めねばならないその過程の中で、引き裂かれてゆくとき、老人は苦悶のうめき声を上げる。しかし、その声は空虚な闇の中に虚しく響くだけで、誰の耳に達することもない。


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