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▼02.旧市街
太陽が西に傾き、赤茶けた大地にわずかな風が吹き始める頃、一人の少年が、新市街から旧市街へと足を踏み入れた。迷路のように入り組んだ路地のあちこちでは早くも夕餉の支度が始まり、往来はつかの間の活気を見せている。煮炊きを路上で行うのが旧市街の習わしだ。竈の上にかけられた鍋が煮立ち、強い香料の香りが漂う。そのひどく風変わりな臭いや、わけの分からない旧市街の住民たちのことばが、どっと一度に押し寄せてくると、少年は、何か、軽いめまいに似た感覚を覚える。何度来ても、まるで見知らぬ異国の街角に迷い込んだような気がしてしまう。実際、ここに暮らしているのは街の先住民たちで、新市街の住民たちとは、見かけも、ことばも、しきたりも、すべてがまるっきり違っていた。互いに異なる層が幾重にも積み重ねられ、互いの違いを保ちながらも密接に絡み合うとき、そこに初めて都市というものが成立する。その意味で、この小さな都は、間違いなく都市そのものだった。
少年が身にまとう神聖な白衣は雑踏の中では場違いで、ひどく人目を引いてしまう。ただでさえ他所者に敏感な旧市街の住民たちは、遠慮会釈ない好奇の視線を浴びせかける。しかし、明らかに神殿に属するこの少年と悶着を起こすことは得策でないと考えてか、誰もあえて手を出そうとはしない。少年は動ずることなく、街の奥へと歩みを進める。辿り着いたところは見捨てられた寺院の廃墟だ。
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