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▼07.探索
直感は正しかった。
少年の探索は留まるところを知らない。暦や蝕の算出方法の大まかなところを一通りさらうと、興味は次第に時をさかのぼり始める。ますます書庫の奥深くまで分け入るようになり、時に、片隅に無造作に積み重ねられた粘土板の山を引っ掻きまわしている。それは古くなってもう誰も読まなくなったものだと、見かねた神官たちが教えてやる。大昔のたわごとです。わけの分からないことしか書いてない。仮に何か意味があるのだとしても、それを説明できる者はもうここにはいない…
神官たちがそう言うのももっともなことで、こうした粘土板には曖昧で訳の分からないことしか書かれていない。多くは夢にまつわるとりとめのない覚え書きだ。いかにして眠りにつき、夢を記憶したまま目覚めるか? 眠りながらも完全に眠ってしまってはいけない。常に心のどこかを目覚めさせておけ。夢の奥深くへ降りて行くときも、自分がたどる道を常に意識しろ。夢に心を任せろ。しかし自分を見失うな…
一体これは何の話なのだろう。少年が疑問を口にすると、神官たちの間に一瞬の動揺が走る。気まずい沈黙が、何か触れてはいけないものに触れてしまったことを暗示していた。神官たちは、逡巡の後、さもさりげなさそうな口調で取り繕い始める。すべては昔のことです。昔の人々もいろいろな考え方を試してみました。そのすべてが正しかったわけではない。むしろその多くが袋小路に迷い込み行き詰まってしまった。そうした無駄な営みを繰り返し、紆余曲折を経たあげくに我々は今ここにたどり着いているわけです。何の実も結ばなかった過去の探究に貴重な時間を費やすより、まず、きちんとした基礎を身につけるべきです。天体の運行、中でも蝕や春分点、秋分点の算出を間違いなくできるように計算の技能を身につけておかなくてはなりません。特に蝕の算出は大切です。人々に神殿の権威と王家の威信を知らしめる重要な道です。それこそが我々神殿に仕える者たちに課せられた使命なのですから…
少年は当惑するばかりだった。どのような思惑があるにせよ神官たちのことばは一応もっともらしい。この街における神殿の役割と責任ということを考えるのであれば、反論の余地もない。しかし少年は、誰にも顧みられることの無くなった古い粘土板に何故か、わけも分からぬままに心を惹かれてゆく自分を感じる。
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