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▼09.邂逅


 後になって息子から記録係の諫言のことを打ち明けられたとき、神官長はいつものように苦笑しただけだ。別にかまわない。結局は、お前の好きなようにするしかないだろう。人は自分の欲望を選択することは出来ない。お前も神殿の神官になりたくないのであればならなくてもいい。私たちの仕事は決して自分の子供たちに継がせたいような仕事ではないんだよ…。
 しかし実際の所、一番途方に暮れたのは、神官長自身だった。こうなると少年の体内に流れる古いシャーマンの血のことを思わないわけには行かない。宿命とか血筋とかいう考え方を毛嫌いする神官長であったが、そうしたものを頭から否定することを拒んでいるのも、神官長自身の現実主義に他ならない。少年が占星術師の生き残りに出会う日が来るのは、もやは時間の問題だった。旧市街の片隅、忘れられた古代の寺院の廃墟に、少年がとうとうたどり着いたとき、老人は、正面の石段の上に一人ぽつんと腰を下ろしている。近づいてゆくと、すべてを見通すような鋭い目でこちらを見据え、少年が口を開く前に、しゃがれた声で問い質したのだった。
「お前は神官長の息子だな?」
 少年の驚愕の表情から答えを読みとると、老人は深く頷き、独り言のように呟く。
「待っていた…」


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