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▼13.預言
寺院の裏手の階段を上り詰めて屋上に出ると、既に満天の星だ。
見渡せば、新市街の王宮と神殿にわずかばかりの灯火が望まれるだけで、都の大部分は闇の中に沈んでいる。昼間の熱気は早くも去り、大気は冷ややかに澄み返っている。
老人はしばらくの間、ものも言わず、空を見上げている。
月は無い。
北の地平から発した銀河が、天頂を横切り、南の地平へと音も無く流れ落ちる。その所々で、幾つもの大きな星が、眩いばかりに燦然と輝いている。
少年は老人とともに空を見上げ、見覚えのある星座を探し始めた。あれは天の竪琴、あれは冠、そしてあれは海の国の女神だ。何故か、今夜の星空はひときわ美しいように思える。空全体が不思議なオーラを発して透明に輝いているように見えるのは気のせいだろうか?
星が流れる。
南の羊飼いと海蛇の間を鮮やかな青い光の線が走り抜けて行く。
老人はふと、少年を振り返る。
老人の静かな目が少年を見つめる。
少年には老人の目が読めない。自分を見据える老人の目が、何を語ろうとするのか、いつも懸命に理解しようと努めるのだが、結局は居心地の悪い当惑の中に取り残されるのだ。
いつものように沈黙が少年の当惑に変わったとき、老人は静かな声でぼそりと呟いた。
「私は死ぬ」
その余りにも静かな口調に少年は虚を衝かれる。
「今夜だ」
「…何故?…」
少年はやっとのことで問い返す。その声は掠れている。
「邪な刺客の手が忍び寄ってくる。あいつらだ」
老人の指し示したその先には、星空を背景には王宮のシルエットが黒々と浮かび上がっている。
「役にも立たぬ老いぼれなど放っておけばいいものを、そうも考えない奴がいるようだ」
「逃げよう…逃げればいい」
「逃げる?」
老人は皮肉な笑いを浮かべる。
「何故逃げる? 私の命は、今夜、必ず終わりを迎える。それが私の予言だ。お前は予言者に自分の予言を覆せと言うのか?」
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