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▼17.傭兵隊長
「ご老人、またまたお勤めですか。ご精が出ますな」
従者が掲げ持つ松明の炎の中に、甲冑に身を固めた巨漢がゆったりと姿を現す。
「成り上がりの傭兵隊長か」
老人の冷ややかな口調。
「これはまた手厳しい。今は将軍と呼んでいただきたいものですな」
巨漢は、穏やかな落ち着き払った口調で、老人の挑発を受け流す。獣じみたその巨体とは裏腹に目元には涼しげで理知的な光をたたえている。
「愚かな奴め。お前の中には二人の人間がいる。お前が栄達の道を歩むほど、その二人の対立は深まって、やがてはお前を文字通り引き裂くことになる」
「ご忠告、有り難く賜りますぞ、ご老人。私自身は決して真実と向き合うことに躊躇するものではありません。しかしながら世間一般の凡人どもはそうもいきませんな。真実を目の前に突きつけられると、怯えの余りすっかり理性を失ってしまい、却って余計な混乱の中に陥ってしまったりするものです。王朝は交代したばかりで、まだまだ世間も落ち着かない。ここは一つ、ご老人には口を閉ざしていただきたい」
巨漢の口調は寧ろもの悲しげだった。
老人は、そんな巨漢を冷ややかな目でにらみつけると、胸元を突き出す。
「さぁ、やれ」
すべては一瞬のうちに終わる。
巨漢が、その体躯に似合わないしなやかな動きで一歩前に踏み出したかと思うと、老人は声もなく崩れ落ちる。
巨漢は、刃に付いた血を拭い、微かにため息をつく。
兵士たちは老人の亡骸を取り囲むと、直ちに、用意してあった袋に包み込む支度を始める。そんな兵士たちに手早く指示を与えた後、巨漢は、初めて少年に目を留めた。瞬間、その目に、哀れみとも侮蔑ともつかない表情が浮かぶ。
「神官長殿、変わり者のご子息をお引き取り願えますか?」
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