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▼18.神官長


 兵士たちが去った後には何の痕跡も残っていない。
 老人の血痕も兵士たちの手によって、きれいにぬぐい去られていた。
 二人の頭上では、星々が先ほどと変わることなく輝き続けている。
 時折流れる星は、老人の死を告げているのだろうか?
 天に記されたことばを理解する術が、老人とともに永遠に失われたしまった今では知る術もない。
「私としては、なるべく穏便にことをおさめたかった。何も生命まで奪う必要はないだろう。どこか遠隔の地に無理矢理追い出してしまえば、それですむことではないのか? だが、それは無理だというのが将軍の意見だった」
 長い沈黙の後、星空を見上げながら少年の父が口を開く。
「将軍は老人を徹底的に消してしまうつもりだ。死体は絶対に見つからないように始末する。寺院の地下にある身の回りの品も持ち去った。世間の連中は老人が何の前触れもなくただ消えてしまったと思うだろうな。中には新しい王家を疑うものも出てくるかもしれないが、何の証拠もない。そのまま、いつの間にか、人々が老人のことを忘れ去ってくれれば、それに超したことはないと将軍は考えているのだ…」
 そこで、少年の父はことばを切って、少年に目をやる。
「今度はお前の番だよ。将軍としては私に始末させたいところだろうが、そうもゆくまい…お前は旅に出るんだ。修行のための長い長い遍歴の旅だ…」


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