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●プロローグ(機上)
上昇を開始すると間もなく、海の向こうに見えてくる標的。
海際に衝立のように並んだホテル群のすぐ後ろの一画をびっしりと埋め尽くす張りぼての城郭や山や遊具施設。
殆ど前進せず、ただひたすらに高度だけを上げて行く。
投下口がゆっくりと開く。
一気に飛び込んでくる耳を劈くような轟音と烈風。
傍らに立って見下ろすと、真っ白な波頭が立つ青い海原がゆっくりと遠離って行く。
身震い。
身体の中に広がって行く痺れるようなこの感覚。
緊張?
それとも静かな興奮?
いよいよこのときが来た。
柴田が何か話しかけてくる。
しかし、そのことばは回転翼が撒き散らす轟音と烈風の中に呑み込まれてしまって聞こえるはずもない。
僕が自分の耳を指さして首を振ってみせると、柴田は耳元に口を寄せて叫んだ。
「覚えていて下さいよ、私はいつだってあなたの味方なんだ。」
柴田はいつも訳の分からないことを言う。
怪訝そうな僕の表情を読み取って、柴田がことばを続ける。
「感謝してるんだ、あなたには。必ず会いに行きますからね。」
ますます訳が分からない。
けれど今はその真意を問い質している暇はない。
装備を素早く点検すると、再び投下口の傍らに立って呼吸を整える。
ヘリコプターは今や標的の真上でホバリングしている。かなりの高度を取っているので、頭上にヘリが静止し続けていることに気付いている者は殆どいないはずだ。この高度からだと施設全体が現実感を失い、まるでミニチュア模型のよう。そこに群を成しているはずの家族連れやカップルたちの姿も判別できない。
僕は身をかがめると、一気に、空中へと跳躍する。
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