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●求人広告


 ことの起こりは新聞の片隅に見つけた小さな求人広告。
 ただ「テロリスト募集」とあって、その下に電話番号が書かれているだけ。
 これでは何のことか分からない。
 僕は困惑して紙面を見つめる。
 新手の冗談だろうか?
 考えているだけでは分からないので電話してみる。
「はい、お電話ありがとうございます。ご登録ですか?」
 電話交換手や受け付けを生業とする者特有の、個性や感情を感じさせない不思議な声。スピーカーからこんな声が流れてくるたびに、僕は妙に落ち着かない気分になる。自分の声から人間臭さを剥ぎ取ってしまうその行為の不自然さが、僕を不安に駆り立てるのだ。
「登録?」
「はい、ここでは応募者の登録だけ行ってます。こちらにお名前とご連絡先を登録していただければ、後日、係の者から改めてご連絡させていただきます。」
「募集内容について確認させてもらいたいんだけど。」
「申し訳ございません。ご質問等は、後日、係の者の方から連絡させていただいたときに、承ることになっております。」
 これではさっぱり分からない。
「ご登録なさいますか?」
 黙り込んでいると、先を促された。
 取り澄ました声の中に潜む傲慢に対してむらむらとわき上がってくる反撥。相手のガードを何とかして崩したくなって、わざと狎れ狎れしい口調で言ってみる。
「結局、君もテロリストなわけ?」
「は? 何でございますか?」
「だからさ、君もテロ組織の一員なんでしょう?」
「どういうことでございましょうか?」
 声の中にようやく微かな動揺が芽生える。
「まさか君、自分がテロリスト志願者の受け付けをやっていることを知らないの?」
 一瞬の沈黙の後、声が突然仮面を投げ捨てる。
「何よ、それ?」


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