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●日の出桟橋
僕は水上バスの後甲板に立って遠離って行く日の出桟橋を眺めている。
今日も空は綺麗に晴れ上がり、陽射しが眩しい。吹き付けてくる風がとても爽やかだ。あまりにも素晴らしい天気は何故か僕を悲しい気分にする。きらきら煌めく海原や青空を背景にくっきりと浮かび上がる高層ビルの群の眺めが不思議な快感をもたらすほど、逆に、その物悲しさは強まって行く。僕にはその物悲しさの正体が分からない。ただ、それこそが自分をテロリストへの志願という無謀な行為に駆り立てたのかもしれない。
陽の光を浴びながら甲板に立ち尽くす僕の心の内に甦るのは黒幕のことば。
「たかが子供の遊園地などと侮るのがいけない。」
黒幕は、奇妙なほどに似合っているので、かえって胡散臭い雰囲気の漂う顎髭を撫でながらそう言った。
「いつの世でも本当に危険なものは一見無害なものに偽装しているのだ。一見無害でありふれているものこそが大衆の精神を根本から蝕む。まだ間に合うかもしれない。すべては君の双肩にかかっている。」
しかし、いったい何に間に合うというんだろう?
今更この社会が救えると本気で考えているんだろうか?
僕にはよく分からない。
「フィールドワークを実践したら如何ですか?」
考え込んでしまった僕を見かねて柴田が言った。
「行ったことがあるですって? でもどうせ家族連れか女連れででしょう。それじゃダメだ。いいですか、今度は一人で行くんです。たった一人で行って、部外者として他の連中を眺めてみるんです。彼らと自分の間に横たわる深淵を覗き込み、自らの孤独をもう一度見つめ直すんです。」
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