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●廃墟

 ……すべてが終わったとき、僕は呆然として、廃墟の中に立ち尽くしている。
 最初に意識の中に上ってきたのは、視界を横切って行く煙。
 ぼんやりとその元をたどると、数多くの遊戯施設は、崩れ落ち、モクモクと黒煙を噴き上げている。小型ミサイルの直撃を食らったのだ。
 耳元を吹き抜ける風の音と、地鳴りのように低く空気を震わせる炎の音しか聞こえない。静かだ。
 あちらこちらにゴミの塊のようなものが転がっている。歩み寄って、その、かつて人間だったものを見下ろす。若い女は腹部を撃ち抜かれ、死ぬまでに相当の時間悶え苦しんだのだろう、カッと目を見開いたまま凄まじい形相で息絶えている。苦しみのあまりコンクリートの地面を素手で掻きむしったらしく、指の爪は剥がれ血塗れだった。幼い男の子は頭の半分を吹き飛ばされていた。脳漿の噴き出した傷口とその下の蒼白く傷一つない顔面がぞっとするほど鮮やかな対照を見せている。かと思えば、その傍らに横たわる中年の男は穏やかな表情で目を閉じ、まるで眠っているとしか思えない。
 みんな、殆ど無抵抗で、なすがままに撃ち殺されて行った。銃弾が急所を貫ぬくとき、彼らの面に浮かぶ驚愕の表情。拍子抜けするほど簡単で、その簡単さが奇妙なことに僕の怒りを掻き立てた。銃弾が続く限り引き金を引き続け、弾が尽きると、投げ捨てて、次の武器に切り変える。そんな動作を何度も続けるうちに、現実感が消えてゆく。すべてはまるで夢の中の出来事のよう。
 今や僕は手ぶらだ。
 ヘルメットもジャケットも脱ぎ捨てて、廃墟の中を当てもなく彷徨い続ける。煙を噴き上げる遊戯施設の残骸と点々と転がる死骸がどこまでも続き、辺りに漂い続けていた腐敗臭は、硝煙と血の臭いの中に紛れ込んで、消えていた。
 どこかでサイレンの音が鳴っている。
 互いに呼び交わしながら、次第に近づいてくるようだ。
 やがて、見たこともないような重装備に身を固めた制服の一団が僕を取り囲む。
 中の一人が進み出て、敬礼をすると、こう言った。
「お役目ご苦労様でした。」
 そして、恐縮しながら僕を後ろ手に縛り上げ拘束した。


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