集英社に宛てられた抗議文とは?

抗議文は2通あります。
まず、「集英社問題を考える地方議員の会」による抗議文を見てみましょう。

株式会社集英社 代表取締役 谷山 尚義様    平成16年10月5日
              『ヤングジャンプ』編集長  田中 純 様
              「国が燃える」作者     本宮ひろ志様

     集英社問題を考える地方議員の会 代表   犬伏秀一大田区議
                     事務局長 松浦芳子杉並区議

古賀俊昭東京都議・土屋たかゆき東京都議・高橋雪文岩手県議・鈴木正人志木市議・白土幸仁春日部市議・新村和弘雄踏町議・渡辺眞日野市議・沢田力さいたま市議・大田祐介海老名市議・宍倉清蔵千葉市議・大関修右内原町議・上島よしもり世田谷区議・鴨打喜久男小平市議・上橋泉柏市議・吉住健一新宿区議・大西宣也町田市議・伊藤玲子鎌倉市議・井出口良一大分市議・井上健国立市議・三宅隆一川崎市議・梅田俊幸日野市議・頼重秀一沼津市議・小畑くにお浜北市議・三宅博八尾市議・水ノ上成彰堺市議・木村徳国分寺市議・広重市郎宇部市議・吉田信解本庄市議・中田勇新座市議・新井よしなお町田市議・佐々木祥二元長野県議・森高康行愛媛県議・天目石要一郎武蔵村山市議・岸田正大田区議・田中健大田区議・伊藤たけし渋谷区議・稲川和成川口市議・井野兼一塩尻市議・矢本おさむ南海市議 (10/4現在 順不同)

              抗 議 文

私たちは、各地域において、青少年の健全育成と、異常な自虐的歴史観の排除に奮闘している地方議員です。
貴社が平素より、出版物を通じ、青少年の健全育成に努められている由、敬意を表するものでございます。しかしながら、貴社発行『ヤングジャンプ』42、43号に掲載されている、本宮ひろ志氏作「国が燃える」については、その史実考証の稚拙さなど、看過する訳にはいきません。つきましては、各議員連名のうえ、下記のとおり抗議いたしますので、平成16年10月12日までに誠意ある回答、対応及び面会を求めます。

1. 所謂『南京大虐殺』は、当時の体験者や、研究者、学者により、諸説が分かれているところであり、ないという強力な証拠があるものの、あるという確証がない状態で、松井石根氏、岸信介氏等実名を使用し、これをあたかも戦争の真実として漫画化している。

2. 中国の真偽定かでない写真を用い、百人斬りを事実として記載し、意図的に歴史を歪曲している。

3. 歴史的認識が確立されていない青少年に多大なる影響を与える貴誌に、史実ではない残虐なシーンが登載された事は、次代を担う青少年の心を傷つけ、遺憾である。

4. 事の重要性を認識せず、問題の事実関係についての調査研究を怠り、大東亜戦争従軍の将兵、遺族さらには日本国及び国民の誇りに傷をつけ、辱めさせた行為は厳に慎むべき行為であり、フィクションと記載された「漫画」であっても許されない。
 
以上
              
連絡先:144-8621 大田区蒲田5-13-14    大田区議会 犬伏 秀一
    166-8570 杉並区阿佐ヶ谷南1-15-1  杉並区議会 松浦 芳子

 だ、そうです。さっそく内容を見てみましょう。

>1. 所謂『南京大虐殺』は、当時の体験者や、研究者、学者により、諸説が分かれているところであり、
>ないという強力な証拠があるものの、あるという確証がない状態で、松井石根氏、岸信介氏等実名を
>使用し、これをあたかも戦争の真実として漫画化している。


 南京虐殺を否定する人々は、現在では南京虐殺は捏造だと明らかである、虐殺否定派が既に完全な勝利を収めているのだ、としばしば主張します。この抗議文でも南京大虐殺否定説には「ないという強力な証拠がある」、肯定説には「確証がない」と書いてあります。まるで否定説が証拠の点でずっと優勢であるかのような文章です。
 しかし、言葉によく気をつけて読んでみましょう。確証とは「確かな証拠」つまり疑問の余地なく「○○だ」と確信できるほどの証拠です。一方、「強力な証拠」とは普通の日本語では、「○○だろう」と言うことが比較的強い自信を持って言えるほどの証拠、という程度の意味になるでしょう。
 つまり「確証」のほうが「強力な証拠」より強い証拠なのです。
 では、この抗議文は否定説と肯定説を証拠能力の点で比較できていません。否定説には確証があるのかないのか、肯定説に「強力な証拠」があるかないかを全く言っていないからです。

 それでは、否定説と肯定説の実際の勢力図は?本当に否定派が優勢なのでしょうか?
 とりあえずウィキペディアの南京大虐殺論争の項目を調べてみました。
 被害者数は30万人、10数万人、4万人、一万数千以下説など諸説が紹介された上で、次のように書かれています。

 否定説はほとんどの歴史家の間では受け入れられる傾向はない。現在では歴史研究者の間では南京事件の有無を問うことは、中国政府をいたずらに刺激し、研究活動に支障が出るという声も聞こえてくる。また一部の社会学や心理学の研究者の間では、『なぜ大衆が非学術的な言述を信用するのか』という研究の対象となっている。」

 モルモット扱いされている模様(w。
 『日本史辞典』(角川書店)『國史大事典』(吉川弘文館)などの歴史事典や、『広辞苑』『大辞林』といった大国語辞典も調べてみましたが肯定説ばかりでした。『國史大事典』を除き、否定説には触れてさえいません。
 中国政府への配慮という要因がないわけではないものの、「なかったことが明らかになっている」という頻繁にネットで見られる勝利宣言はどうやら大本営発表と思われます。
 学界で意見が分かれているのは被害者の人数についてであって、そもそも無かったという極端な説を採るのは極少数派というのが現状のようです。学界ではほとんどが虐殺肯定。非学術的な世界でも、すくなくとも「南京大虐殺論争」が戦われているのですから。
 『国が燃える』は被害者数を明記していません。絵のみからは沢山殺されたとしか読み取れず、否定とされる一万人説にさえ十分当てはまるものです。
 つまり『国が燃える』の南京虐殺に対する態度は、殺された人数については漠然としているものの虐殺自体は肯定ということになり、学界の基準では圧倒的多数説に準拠していたことになります。
 なお一部には、南京「大」虐殺というのは中国政府が主張する30万以上の虐殺のみを意味するという定義を(おそらく勝手に)持ち出し、南京大虐殺という言葉を使った時点で30万以上説を採用しているのだと主張する人もいます。しかし、漫画内では「南京虐殺事件」であり、大虐殺とは書かれていません。

 “大”はついてませんね。

2. 中国の真偽定かでない写真を用い、百人斬りを事実として記載し、意図的に歴史を歪曲している。
 
 フィクションを「歴史を歪曲」などと言ってくる発想がまずイヤです。
 また、この抗議文では「真偽定かでない写真」がどれなのか明かされていません。(次に紹介する抗議文では全てがニセモノと断定しています)
 ちなみに百人斬りというのは南京虐殺事件の有名なエピソードで、向井・野田両少尉が中国人を斬り殺す競争を行い、向井氏が106人、野田氏が105人を斬殺したとされる事件のことです。現在、捏造であるとして彼らの遺族と、ジャーナリストらが裁判中のようです。
 用いられた写真や百人斬りが仮に史実でないとしても、『国が燃える』が「意図的に」間違ったことを書いたとどうやって判断したのか、一切記されていません。

4. 事の重要性を認識せず、問題の事実関係についての調査研究を怠り、大東亜戦争従軍の将兵、遺族さらには日本国及び国民の誇りに傷をつけ、辱めさせた行為は厳に慎むべき行為であり、フィクションと記載された「漫画」であっても許されない。

 フィクションであっても許されないのだそうです。

 真逆です。

 フィクションでなくても許されるのです。
 この人達は、歴史の本を読んだことがあるでしょうか。歴史には不確実な部分があります。専門書であろうと一般書であろうと、歴史の失われた事実を様々な資料から補充する仮説を、自分なりに組み立てた本などいくらでもあるのです。確証がなくとも、そのような説を公表することはもちろん自由です。その内容が誰かにとって不名誉な内容であることもあるでしょう。
 国粋主義的な人の中には「その本で描かれた悪役が自分と同国人だ」という理由で不快感を覚える人達がいます(彼らが織田信長の虐殺行為を描いた漫画に抗議するかどうか分かりませんが)。だからそのような本は書いてはならない、たとえフィクションであっても。集英社問題を考える地方議員の会はこう主張していることになります。果たして妥当でしょうか?
 こうした国粋主義的な人は「日本人にはこんな恥ずべき売国奴が溢れている」とよく主張します。肯定説論者が「こんな恥ずべき殺戮を行った日本人が数多くいた」と発言するのと同じ様にです。日本国民の誇りを傷つけないでしょうか?
 本宮ひろ志氏は日本人です。南京虐殺肯定説を唱えた学者やジャーナリストにも日本人が数多くいます。彼らを糾弾することは、虐殺糾弾と同じく日本人の行為を否定することです。(『国が燃える』に抗議した人々が主張するように)南京虐殺が偽りであるかどうか分からないとすれば、彼らもまた「諸説が分かれている」「真偽定かでない」根拠を元に、同胞日本人の行為を侮辱していることになるのです。 
 国民の誇りとやらのためには日本人の行った不名誉な行為を描写してはならない、と主張する以上、彼らもまた本宮氏の行為への非難を抗議文で描写してはならないでしょう。

 もちろん、本当はそんなこと気にする必要はありません。南京虐殺がないと思ったらそう言えば良く、歴史学者や本宮ひろ志が間違っていると思ったら間違っていると言って良いのです。フィクションでなくてもです。これが「言論の自由」というものです。言論の自由からすればもちろん構わないわけですが、彼ら自身の主張とは矛盾します。
 ましてやフィクションの歴史漫画が、諸説のうちの一つを選択してストーリーに組み入れることの何が悪いのでしょうか? 少数説だろうと完全に自分で考えた話だろうと、フィクションの展開をどうしようと作家の自由のはずです。ましてや『国が燃える』は歴史学の常識的な説を採用しています。

 二番目の抗議文に移ります。

抗   議   文
平成16年9月29日 集英社本社にて手交



集英社社長 谷山尚義殿
「ヤングジャンプ」編集長 田中 純殿
 貴社発行の「ヤングジャンプ」42、43号の本宮ひろ志作「国が燃える」で、所謂「南京大虐殺」を歴史の真実として漫画化しているが、本宮が参考とする資料など全てに亘りずさん極まりないものばかりで、読者に与える悪影響たるや計り知れない。
写真などは既に出所元が明らかである中国共産党発の反日ニセカラクリ写真ばかりある。しかも本宮は、百人斬りをあたかも史実の如く描き日本軍と日本人の名誉、誇りをズタズタに傷つけている。現在、でっち上げの「百人斬り」で処刑されたご遺族が名誉回復を掛けて毎日新聞、朝日新聞を相手取り裁判を闘っている最中である。本宮の作品は、処刑されたご遺族である原告の向井千恵子様(向井少尉の長女)と野田マサ様(野田少尉の妹)の心情を逆撫でにするお二人への重大な人権蹂躙といってよい。
 いうまでもなく、南京大虐殺は事実検証を抜きにした中共による反日政治工作の要である。一切の反論を許さず、日本人の精神的自立を許さないとする中共の一貫した戦略である。先のアジアカップサッカーで、目おそむける反日に狂奔するシナ人の狼藉が、以上の事を証明して余りあるだろう。
 ゴミ箱から拾い出したニセ写真を意図的に用い、歴史を偽造・歪曲しなければならない集英社と本宮ひろ志は、何を目論見、何を意図したいのか。マンガを通して日本人の精神に毒を注入しているのが実態だ。将来の日本を担う青少年をシナ・中共の精神的奴隷にし、未来永劫にわたり精神的自立を許さないとする彼等の手立てに乗った集英社と本宮ひろ志の罪は余りに重い。表現の自由とか言論の自由などで釈明できない売国行為であることを、谷山社長と田中編集長は銘記すべきである。
 よって、以上の事柄を要求する。

一 「国が燃える」の青少年に与える悪影響並びに本宮ひろ志の歴史歪曲を検討する 調査委員会を設けること。
二 「国が燃える」を青少年に偽造の歴史を注入する有害図書として、掲載と販売を中止すること。
三 本作品は、本宮の完全なる空想であり、歴史の事実とは全く無縁である旨を「ヤングジャンプ」を通じて広告を出すこと。



集英社の不買運動を検討する会代表 西村 修平   
宮内 瑞生    
本宮ひろ志の歴史偽造を糾弾する会代表 柳川 友裕   
連絡先 西村修平

 集英社問題を考える地方議員の会が提出した抗議文は、少なくとも文体は紳士的なものを保っていました。腐っても議員です。
 こちらはいかにも暴力的右翼という感じで、とにかく勢いで書かれています。「目おそむける」「反日ニセカラクリ写真ばかりある」などの誤字脱字も散見されます。特に後者はギャグ漫画の中国人みたいあるよ?(パソコンで打った段階でのミスかもしれませんが)
 写真に対する批判も、議員版が「中国の真偽定かでない写真」ですが、この抗議文では「中国共産党発の反日ニセカラクリ写真ばかりある」と、かなり激走しています。また南京虐殺についても議員版では「諸説が分かれている」、こちらは「いうまでもなく、南京大虐殺は事実検証を抜きにした中共による反日政治工作」。
 どうも国粋主義者たちの間でも、虐殺否定的態度の強さが理性と逆相関しているような気がなんとなくします。

 この「集英社の不買運動を検討する会」代表の西村修平という人物(威力業務妨害罪で執行猶予中)は、「桜チャンネル」の番組内で、次のように語っているそうです。

 私は集英社の編集長に雑誌を叩き付けて言ってやったんですよ。
 “もし本宮のマンガを見た支那人がここに描かれている事を真に受けて、
 お宅のお嬢さんをレイプしたらあんたどうしますか、
 それでも許せるんですか?”ってね。

 これが愛国的日本人の正体か。
 なお、編集長は広報室長の間違いだという話もあります。
 ……いわゆる右翼と左翼の戦いに口を出すのは今回が初めてですが、正直「極右ってこういう人たちを言うんだな」と思いました。よくあるヤクザめいた右翼のステロタイプまんまじゃありませんか。
 もうちょっと詳しく見てみましょう。
 なおこの掲示板のこのスレには、チャンネル桜開設準備室、共に抗議に行った柳川友裕氏、その他西村氏の支持者が多く書き込んでいます。まさか騙りってこともないでしょう。
 西村氏の発言を読んでみましょう。

>adorok626殿へ
>「集英社を恫喝したような右翼」だと。何を具体的に意味するのか。何を言いたいんだ。あんた正気なのか。それとあんたはかなり意図的に嘘を書き込んでいる。
> いま、朝日やその連中は、今回の掲載中止を「右翼の圧力で集英社が譲歩した」と書くため必死になっている。既に西村には「週間金曜日」その他不明の連中から情報収集でコンタクトが幾つか来ているよ。おまえは、その先導者になっている。
> 小生は第7巻を床にたたきつけた。編集長は同席していない。その7巻の場面は、シナ人の少年の露天から日本兵が商品をただ食いした挙げ句、その子を叩きのめし、店を滅茶苦茶に壊した場面だ。これでもって、面前に座った広報室の連中に、「これであんた等は何を言いたいんだ?何を訴えたいんだ?」と質問してもひたすら沈黙だった。連中は7巻を見てもいなかった。
「そんなに日本人を悪辣極まる描写をしたら君ら楽しいか?」それでも沈黙だ。だから彼らの目を覚ますために7巻を床にたたきつけたんだよ。
> そしたら室長が「目を覚まし」、「興奮しないで下さい」といった。小生は「まともな日本人だったら皆興奮するんだ。あんた等まともじゃないから興奮しないんだ」と言うしかなかった。
> あんた、ぼけているのか寝ぼけているのか!そうじゃない、あんたは巧妙に攪乱をしているんだよ。
> こっちは、毒の入った水道水を止めに集英社に行ったんだよ。真ん中だとか、保守だとか講釈たれてるあんたとは人間の質が違うんだよ!
> あんたのような親から貰った本名も名乗れないでいる連中とは違うんだ。名を名乗ってじっくり論じ合うことはできるかい?24時間、玄関のドアを開けて待っているよ。

 ヤクザそのものです。こんな態度でいたのなら、そりゃ反省の色なし再犯の虞ありで有罪判決も受けるでしょう。確かに人間の質が違うようですねw
 同席した柳川友裕氏も「そりゃぁね、本をたたきつけたりもしましたよ。それでびっくりした集英社側の男が『感情的にならないでください』などと言っていたのも事実。」と、この事実を追認しています。付け加え「悪意に基づいた行動は一切ありませんよ」と言っていますが、ではどういった行動が悪意なのでしょう。
 柳川氏は西村氏のこの行為に、その場でこう言ったそうです。「これが国民感情なんだよ」と。冗談じゃありません。いったい日本人が、いつからこういう品の無い恫喝をしたがり、それを悪意とすらみなさないような低劣な「国民感情」を持ったのでしょうか? 柳川氏は『国が燃える』を、「日本人愚弄漫画」としていますが、日本人愚弄などという言葉は彼の発言にこそ向けられるべきでしょう。
 
 次に、本を叩き付けた件。この掲示板では「編集長に叩きつけて」「床に叩き付けた」と2通りの言い方がなされています。編集長と広報室長を記憶違いすることはあっても、単に床に叩き付けたのなら「誰々に叩き付けた」という言い方はしたでしょう。ふつう相手に相当近い場所に叩きつけた時でなければ使わない表現ではないでしょうか。西村氏は「だから彼らの目を覚ますために」などと表現していますが、早い話が威嚇行為です。威嚇なら、相手のすぐそばに叩き付けた方が効果は高いわけですw
 であるとすれば、暴行罪が成立する可能性が大です。
 「支那人」発言は放って置きましょう(言葉狩りは好きじゃないし)。しかし「真に受けて、お宅のお嬢さんをレイプしたら」という発言は看過しがたいものがあります。過去の虐殺事件を知れば、かつての被害国の人は加害国の女性をレイプするとでも思っているのでしょうか? 他の国の人はしないが中国人ならするとでも考えているのでしょうか? そもそも「ここに描かれている事を真に受け」るまでもなく、中国人で南京虐殺事件を知らない人なんているんでしょうか?
 いいえ。
 そんなこと、この男は百も承知で言ったのでしょう。「中国政府・反日組織が南京捏造の大プロパガンダを行っている!!」と、常日頃主張しているのは彼ら自身なのですから。この支那人レイプ発言の、真に意図するところは何でしょうか?
 想像してみましょう。漫画の内容について抗議に来たはずの組織のリーダーが、その雑誌の編集長に娘がいることをなぜか調べ上げており、「あんたの娘がレイプされたらどうする?」……言われた父親はどういう心情を抱くでしょうか? 本当に中国人にレイプされることだけ心配するとは思われません。
 ヤングジャンプ編集長の娘さんがレイプの被害に遭うとしたら、「支那人」ではなく、こうした全然誇れないタイプの日本人の仕業とみて間違いなさそうです。

 さらに10月22日に、西村修平・宮内瑞生・柳川友裕の3氏(議員側ではなく、後者の抗議文を出した団体のメンバー)がヤングジャンプ田中編集長などと“交渉・対談”し、次のことが決定しています。

 一  指摘された四十二,四十三号の「南京大虐殺」の描写、ニセカラクリ写真を単行本において
全て削除する。
 二  特に、「百人斬り」を想起させた描写は訴訟を係争中の原告・ご遺族に多大なご迷惑を
おかけし、読者に過った認識を与えたとして、極めて遺憾である旨を集英社は自覚する。
単行本においては全面削除する。
 三  十一月十一日発行のヤングジャンプ誌上で以上の点を、最低見開きページ以上をもって、
使用したニセ写真等のカットを用い、上記一、二を訂正・削除のうえ、読者並びに関係各位に
謝罪する。その社告には、作者の本宮ひろ志も作家としての重大な過ちを反省・自覚した証として
連名する。(ページ数は三,四ページになると思われる)
 四  「訂正・削除」の自社広告は、ゲラ刷りの段階で西村修平の確認を受ける。
参考URL

 この抗議を擁護する人々は言います。
 『国が燃える』への抗議は言論の自由のまっとうな行使であり、弾圧や圧力などまったくなかった。抗議した人たちは、ただ正論によって集英社に南京虐殺の誤りを認めさせただけなのだ、と。

 しかし、両抗議文が主張している内容は大して変わりがありません。
 にもかかわらず、割と紳士的な態度の議員ではなく、より暴力的な連中との「一時間に渡」ったやりとりが、集英社や本宮氏の譲歩を引き出しているのです。
 編集長に雑誌を叩き付け、娘がレイプされることを匂わせる、執行猶予中の男が率いる右翼集団が、一時間にわたり……何をしたのでしょうか? 
 歴史事実に関する知的な討論でもし、「ニセカラクリ写真」を使ったことを証明したのですか?
 レイプがどうのと無駄口叩きながらそんなことをして、一時間で終わるでしょうか?

 10月27日、「地方議員の会」代表の犬伏秀一氏は、「西村氏が『集英社で暴れた』というウワサを流す輩がいるようなので」集英社をわざわざ訪問し、広報部長らからそれらを否定するコメントを得たと主張しています。
 しかし、当の西村修平氏はすでに、自分がおこなった行為をTVで公言しています。「ウワサ」の出所は他ならぬ西村氏ではないでしょうか。(それとも、この暴行以外にも「暴れた」という情報があるのでしょうか?)編集長の娘さんが(自分らがやるとは明言してませんが)レイプされることを匂わせたことも言っています。
 この時点で「圧力などまったくなかった」などという言い訳は決して成り立たないでしょう。