夢を、見た。

 真っ赤な着物を着た少女。

 その少女は漆黒の髪。

 透けるような白い肌。

 この世のものとは思えない華麗。

 その少女が顔を向けると、その翠の瞳が僕を射貫いた。

 

 

 

 

 

 蝶夢

 

 

 

 

 

 「何じゃ、お前」

 少女は僕を見咎めると、形よい眉が怒りを著わす。

 「僕は・・・あき」

 鮮烈な怒りに押され、素直に名乗る。

 「ここで、何をしておる」

 「え・・・・」

 「ここで、何をしておると聞いているのだ」

 「僕は・・・・」

 

 

 君を見ていた。

 ずっとここで。

 

 

 「脆く、儚いものが何故このような所に・・・毒気にあたって死ぬるぞ」

 「ここは、どこですか?」

 僕が尋ねると、少女は艶然と微笑んだ。

 「ここは、死と生の狭間。お前が居て良い場所ではない」

 「じゃあ、僕が居て良い場所はどこなの?」

 尋ねると少女は少し驚いたような表情をする。

 「僕にはどこにも居場所がない。両親もいないし、友達もいない。

 僕が居て良い場所はどこなの・・・?」

 

 僕は一人ぼっち。

 誰も僕に『ここ』に居て良いと言ってくれない。

 

 「なるほど・・・」

 少女はその紅い唇を笑みにかたどった。

 「お前はだからここに来たのだな・・・」

 

 

 

 

 生きていてはいけない。

 存在理由がない。

 だったら、死を。

 

 

 

 

 「けれども死にも拒否されたか。ここに居るということは・・・」

 赤い唇は、美しい声で残酷な言葉を吐く。

 「生にも拒否されて、死にも・・・だったら、消えるしかないの・・・?」

 僕がそう言うと、少女は皮肉げに笑った。

 「自分の居たい場所くらい自分で決めよ。自分の居たい場所に居ればよいのだ」

 だったら・・・僕は紅色の少女を見る。

 「だったら、僕は君の側に居たい」

 鮮やかな存在の少女。

 一瞬で目を奪われた。

 「・・・好きにせい。お主名前は?」

 「あき」

 

 「それは、聞いた。真実の名を名乗れ」

 

 

 

 

 真実・・・・?

 

 ああ、そうか・・・・。

 

 僕は・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 袂から白い指が伸びる。

 その指には真白き蝶。

 何ものにも染まない色。

 

 ―――だからこそ、美しく思い、また、憎く思う。

 

 

 

 私でもお前に心奪われたというのに。

 お前に惹かれる者はたくさんいるだろうに。

 それでも、お前は私を選ぶのか?

 

 

 「・・・お前は愚かじゃの。白(あき)」

 

 愛しそうに、少女は艶やかな笑みを浮かべた。

 

 

<了>

 

 

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