特別編キノコ廃菌床の正しい使い方
キノコ廃菌床ほど素晴らしい資材は他にはない!。
廃菌床の性質や使い方。分解・養分化の仕組みや特徴。圃場でのキノコ菌の役割など、菌床についての質問が多いためまとめました。いままで未処理のキノコ菌床が使われることがなく、キノコの専門家でも全くお手上げの分野です。
キノコの人工培地
キノコ菌は木材腐朽菌(機能)・白色糸状菌(形態)と呼ばれ、カビなどと同じ菌類の(分類学上狭義の)仲間で子実体(キノコ)を作るものを指します。写真(右)は接種後8日 寒天培地上に広がったキノコ菌糸。栽培種には培養期間の長いブナシメジやシイタケ、比較的短いマイタケやナメコ、短いエノキタケ、エリンギタケ、ヒラタケなどが主なものです。 キノコ栽培の人工培地は単に菌床とも呼ばれ、培地の基材には、オガコ(針葉樹、広葉樹)やコーンコブ(トウモロコシの芯)、豆殻などがあります。栄養剤として重量比で20%〜50%程度の糠類やオカラなどが使われます(コーンコブ、豆殻は栄養剤としての作用もある)。 培地は材料を混合、水分を加え調整し、ビンや袋詰めにして蒸気で殺菌(加圧120度または常圧100度)。冷ましてから無菌状態で、種菌(菌糸体)を接種し培養。10〜20日程で培地全体に菌糸が蔓延します。
一定の培養期間と菌体重量になるとキノコが発生。早い種類では培養開始から30日。遅い種類で120日ほどでキノコが収穫できます。この使用済み培地が廃菌床(培地)です。写真(左)はビンからの掻き出し作業。培養期間中はフィルターを通し呼吸が行われ、他の雑菌は入りません。たとえ入ってもキノコ菌が先に蔓延し、ガードしてしまえば雑菌は繁殖しません。糸状菌は有機物を一旦ガードしてからゆっくり分解するという性質があり、この特性が重要な意味を持ちます。 例えば、シイタケ菌床でキノコを収穫せず培養を続けた場合、発生したキノコはキノコ菌に再利用されます。分解物質も分泌物も同様に再利用。キノコの種類にもよりますが1年半で、培地をほぼ食べ尽くし、残るのは水とスプーン一杯ほどの培地だけです。
イタケ菌床:
オガコ(広葉樹、水分10%)180g、米糠(水分10%)18g、水302ml、合計500gの培地を作り、800mlの瓶に詰め120℃で30分殺菌。シイタケの種菌を接種して室温で培養(無菌操作)。培養中はフィルターを通し呼吸が行われ、瓶に入るのは無菌の空気だけ。1年半そのまま培養を続けます。 キノコ菌は、先ず分解容易な栄養材を食べます。短期培養のキノコは、この時点でキノコが発生します。 長期培養のものは次に、基材のオガコを食べます。しかし、オガコには窒素がほとんど無いため(C/N比500〜1000)、分解物や分泌物の窒素を再利用しながら、徐々にオガコを食べます。 キノコ菌による高炭素有機物の分解ビン内のような閉鎖環境下では、窒素を始めとする必須成分やミネラルを何回も再利用し(己自身を食べ)、炭素が尽きるまで分解し続け、炭酸ガスにしてビン外に放出します。菌床を土に入れた場合も基本的には同じ。キノコ菌は土壌中からも多少養分を吸収しますがビン内同様、必要なものは酸素だけの自己完結型分解機構。 培地の基材も栄養剤も、元をただせば植物が土壌や大気中から吸収固定した、水溶性成分。ビン内で水だけ残し消えるのは当たり前。土に入れても何一つ残留する懸念はありません。 実際に畑に入れた菌床の分解期間は、培養期間が長く分解が進んでいるブナシメジや発生期間の長いシイタケ、培地基材がコーンコブなどは早く。エノキなど培養期間が短く培地基材のオガコが分解されていない場合は長くなります。 土壌中での分解期間は、半減期で捉えると分かりやすく、たとえば2ヶ月で半分になるとすると4ヶ月で1/4、半年で1/8。実質的にほぼ分解が終わったと考えて良いでしょう。 投入された菌床の分解速度は量の多少に関わらず一定。菌床1個でも100個でも分解期間は全く同じ。一度に大量に入れたからといって何時までも残っていません。連続使用(2〜3回/年)すれば常に、ほぼ一定量の分解が行われ、養分供給量が安定します。 団粒(形成と解体)難分解性の高炭素有機物による土壌改良効果は、糸状菌(キノコ菌)の有機物分解に伴う大量の分解物、分泌物が糊の役目をし、大粒な団粒を作るためです。その団粒化成分の大量生成を可能にするのが、炭素密度の高い有機物=木質(オガコ)=セルロースやリグニンです。他の成分(窒素など)はリサイクルするため大量には必要とせず、投入資材の最適バランスはC/N比40以上。 団粒化成分は同時に、細菌類(バクテリア)の餌でもあり、細菌類は団粒解体作用があります。一口に微生物と言っても、団粒化作用を持つものと、逆に解体作用を持つものがいて、養分循環が成立。両者とも必要で要はバランスの問題。 完熟堆肥などのようにC/N比が低く炭素量が少ない物は、細菌類による団粒化物質の分解作用が相対的に勝り、団粒化は僅かしか行われません。 また、腐敗現象は細菌類による、無秩序で強力な分解作用。団粒を壊し土を硬くします。浄化作用があるEM菌でも有機物を食べ尽くせば、菌は餓死し土壌は硬化します。 有機物のガード作用を持つキノコ菌(糸状菌)が、細菌類による無秩序な分解を抑え、秩序だった無機養分化を、制御しているわけです。 使い方
ところが廃菌床と同様の状態の物が自然界には存在し、人がそれを有り難がって利用しています。落ち葉などが降り積もり一定の条件が整えばできる、キノコ菌のコロニー“はんぺん”(写真)です。 家庭菜園などでは山から“はんぺん”を採取し無農薬栽培を可能にしています。プロの畑でも“はんぺん”ができれば作物の生長がよいことは周知の事実です。自然のキノコ菌コロニーより、完璧なコロニーが廃菌床。堆肥化せず生のまま使って悪かろう筈がありません。 しかし、誰も生での使い方や機能を知りません。生のオガコと菌床中のオガコが同じだと思っているのです。オガコが、どのような場(性質・状態)になっているか見ず、単にオガコだけの物としか見ていません。C/N比が低いコーンコブだと生で使うのがその良い証拠です。 また、キノコ屋は廃菌床をダンプカーに積んだままにしたり、空き地に山積みしたりします。これでは、1日で蒸れて菌は死んでしまい、使えば各種障害の原因になります。これも生では使えないということになった理由の一つでしょう。 菌床を無処理で使うなんて、慣行農法から見れば非常識と思えるでしょう。でも、それにはそれなりの理由があるのです。 菌床の性質や養分化の原理が分かれば、堆肥化するなんて何とも勿体無い話で、紙が有機物で堆肥資材になるからといって札束を堆肥にするようなもの、とても正気の沙汰とは思えません(笑)。 使い方に特別の方法はありません。活きの良い新鮮なものを、土に混ぜるだけ。菌が生きていることだけが使用条件。絶対条件。一応、投入後5日程してから菌糸が伸びているか確認してください。 廃菌床は土(土壌微生物群)にとって完璧な完全食品。使用上の注意点は、雑草や緑肥、高温発酵処理した高炭素資材以外の他の資材は一切使わないということくらいです。 ビン栽培の菌床は、掻き出すため細かく砕かれていて菌が弱ります。土に混ぜられない場合は土で薄く覆うなり、黒マルチや有機物マルチで保護します。 袋栽培の菌床なら袋だけ取り除き、そのまま圃場にゴロゴロと転がし、ロータリーで掻き混ぜれば省力的で、適度な塊(2〜数cm)になり菌が弱りません。栽培期間が短い作物なら細かく、長ければ大きめの塊が適しています。 最良の使い方は、雑草や緑肥がある程度繁ったところに、廃菌床を撒き(混ぜない、大きめの塊が良い)雑草の炭素固定量が最大(登熟)になった時に鋤き込む。この方法だと雑草(分解が早い)と廃菌床(分解が遅い)の短所を補い合い、炭素固定量も増えます。 雑草が日陰を作り乾燥を防ぎ、菌床が雑草へ養分を供給。無施肥栽培への転換初期など、どんなに土壌条件が悪くても、表面に置くだけなら酸欠を起こさず、たとえキノコ菌が多少死んでも大した問題は起きません。 乾燥期や分解の進んだブナシメジ(オガコが少なく菌糸が裸)などの菌床には向きませんが、梅雨時期や、その後の急激な温度上昇時には、最も安全、且つ最大効果が得られます。 キノコ菌が生きている菌床は、放置すると分解が進み炭素は炭酸ガスとなって大気中に放出。全くの無駄。CO2排出削減に逆行。直ちに土に入れるのが鉄則です。入れておきさえすれば着実に土を団粒化し、無駄なく炭素を有効利用できます。 入手した時点で、作物の植え付けとは無関係に、ドカンとまとめて入れます。入れた時から働きます。特にプロは施肥感覚が抜けず、植え付け前に何か入れたがり、それまで廃菌床を取って置くという勿体無いことを平気?でします。また、施肥栽培のような肥切れはなく追肥的使用は無用。 使用量1000kg/10a/1作、前後が標準的な量。炭素量に応じ他の成分も循環するため、炭素量だけをみます。緑肥(生)の収量を、仮に2500kg/10aとして炭素量を比較すると、緑肥と同量です。廃菌床 1000kg × 0.4(乾物比率) × 0.5(炭素比率) = 200kg
緑肥 2500kg × 0.2(乾物比率) × 0.4(炭素比率) = 200kg
緑肥は無理なく採れる量で、作物と交互に栽培すれば無施肥が可能な量。廃菌床1000kg/10a/1作で緑肥の替わりをします。実証例では、800kg/10a/1作。土は確実に肥沃化しています。
不経済ですが、基材のオガコが未分解なら10倍量使用しても何の問題も起きず、使用量に実質的な上限はありません。ただし、作物の根本に厚く敷くと根が酸欠と蒸れで腐ってしまいます(特に果樹では要注意)。 分解が進んだものは炭素比が低く、必要炭素量を満たすために増量。コーンコブは炭素比が一桁小さく、より多くの投入が必要です。5倍程度までなら特に問題は起きません。ただし、ポストハーベストには要注意。 菌床に限らず、炭素比が低い(窒素が多い)ほど要注意。高いほど使いやすく安全です。
写真(右:シイタケ菌床)袋入りは培養開始10日目。半分ほど菌糸が蔓延。重量2.5kg。キノコの生えた小さい菌床は、5ヶ月経過したもので約1kg。培養開始時の40%の重量で廃棄寸前。減量分60%はシイタケ菌が食べてしまいました。凄い食欲です^-^。この菌床1個/m2 が標準使用量。写真(左:ヒラタケ850ml ビン 菌床のみ約500g)2本/m2で適量。オガコは全く分解されていず、減量は僅か25%。栄養剤もかなり残っている。キノコ収穫まであと2日、1回限りで廃棄(設備稼働率などの理由から)。キノコ屋としては少々勿体無い^^; 。でも畑には最高級のご馳走。 死なせるな
キノコ菌糸は特に高温・酸欠(蒸れ)に弱く、ビンから掻き出し後、堆積し時間が経過したものは要注意。キノコ菌は40度を超えると極端に弱り、それ以上では死に始めます。菌糸は呼吸し熱を出しているため(発酵状態)、たった1日で危険温度になります。止むを得ず堆積する場合は20cmほどの厚みに広げ(写真:左)、酸素補給と放熱ができるようにしておきます。ブナシメジの菌床は長期培養で分解が進み水分が多く、掻き出し後は短時間で、菌床表面にバクテリアが繁殖。強烈な腐敗臭を発します。でも、土に入れれば腐敗はすぐ止まり、盛んに菌糸を土壌中に伸ばし始めます。ただし内部が生きていればの話。死んだものは絶対に入れてはいけません。 圃場に入れてからは乾燥や排水不良、冠水による溺死に注意する程度で十分。多くの種類の菌糸の最大伸張温度は25度前後。高温に弱いと言っても、一般圃場で地温が40度を超えることは、通常の管理ではまずあり得ないでしょう。 低温には比較的強く、菌糸は零度近くでもゆっくり成長します。低温期は二次・三次分解者の、細菌類の活性低下が養分供給の制限因子になります。 もしも死んだら土壌中でキノコ菌が大量に死ぬと、菌体は動物の肉同様、高蛋白(窒素)のため、急速に腐敗分解が始まります。多くの炭素資材は分解の難易度が異なるものが混じっています。廃菌床も例外ではなく、キノコ栽培で使い残された、比較的分解容易な炭素資材の分解に、菌床中の窒素だけでは足りず、土壌中の窒素を奪い、いわゆる窒素飢餓が起きます。菌が完全に死んで窒素飢餓を起こした場合、2ヵ月ほどは雑草でも黄色になり成長しません。 バクテリア汚染でシイタケ菌の培養に失敗した菌床(C/N比100〜150前後)を畑に入れれば間違いなく窒素飢餓を起こします。しかし、バクテリア汚染のない菌床なら菌が生きている限り窒素飢餓は起きません。比較的C/N比の高い落ち葉等でも白く菌糸が繁殖していれば問題が起きないのも同じ理由です。 キノコ菌による分解が更に進んでいて、分解容易な残存炭素化合物が少ない物が死ぬと、窒素を使い切れず窒素過剰になり、化学肥料や堆肥の過剰施用などで起きる一連の施肥障害が現れます。 冠水などで菌が死にその後、急激な無機化が起きたような場合で、作物の葉色が濃く、苦くなり、酷ければいわゆる生理障害「萎れ」がでます。 このような急速な腐敗分解が起きた場合、難分解成分のリグニンなどが、直ぐには役に立たない腐食として残ります。慣行農法ではこれを神の如く崇め?ありがたがっています。なんとも滑稽なお話^-^。
培養期間の短いエノキやヒラタケなどの廃菌床が早期に死んだ場合は、キノコ栽培中に使い切れなかった栄養材や菌体が分解・無機化されるだけで、オガコがそのまま残る場合があります。表面に撒き乾燥し、菌が死んだ場合に起きやすい現象で、少量のボカシと生のオガコを入れたのと養分的には似たような状態です。オガコは枯れ枝や砂粒同様、養分的には益にも害にもならず被覆材の役目をします(写真右)。廃菌床の上面施用は、効率が悪く大量に廃菌床が使える場合に限られ、土壌中にも混ぜておく必要があります。 しかし、そのオガコを次作で鋤き込めば一度、キノコ菌が利用して分解されやすくなっているため、未分解の木質を利用できないキノコ菌(畑の土壌中にはこの種のキノコが多い)が再利用・分解します。 ただし、培養期間が短い場合、基材の樹種によっては、オガコに含まれる作物生育阻害物質などが、未分解のまま残る可能性もあり、その場合は害作用の懸念が無きにしも非ず。そのため、廃菌床は生で使ってはいけないと言われています。しかし、ある程度の培養期間があれば、その懸念はありません。 木質資材の作物生育阻害物質:タンニン、テルペン類、各種フェノール酸など。水溶性フェノールは針葉樹の樹皮中に多い。キノコの種類によっては作物同様、生育阻害物質となる。
菌が死んでも腐敗しなければ、さほど問題は起きませんが腐敗すると、過剰無機態窒素で苦くなるだけではなく、腐敗成分も同時に吸い上げ、作物は「腐敗風味」^^;。慣行栽培物でお馴染みの味です。 ある日系二世は、廃菌床は味噌の匂いが・・・。なるほど言われてみれば固有のキノコ臭を別にすれば、ヒラタケの廃菌床は味噌の匂い?。でも野菜は味噌風味にはなりません^-^。味噌も糸状菌による発酵ですから、醗酵臭が似ていても不思議ではありません。 何故に廃菌床、何故に生
必ずしも必要な資材というわけではありませんが、自然の仕組みを知り応用する上で、最も理解しやすく、使いやすい資材の一つで、農地での炭素循環を知る上で、最も適した教材と考えてください。 通常、木材の窒素放出は数年から30年程かかると言われています。それをキノコ菌なら容易に放出させることができます。ビン内で長くても2年程度。土壌中ならそれ以下で完全に放出します。 緑肥(雑草)栽培の期間が省け、有害成分・ガスなどの発生もないため投入後、直ちに植え付けでき、時間の無駄がありません。作物の根が直接菌床に触れても大丈夫です。菌床塊があると根は、それを包み込むように伸びます。 更に、根が伸びるとそれを追いかけるように、キノコ菌も伸びます。キノコ菌も根圏を形成する、共生微生物の仲間の一つです。 効果が3日で現れます。常に分解が行われ、植物が利用可能な成分を分泌したり、バクテリアなどにより速やかに二次・三次・〜分解が行われ可吸可能な低分子状態にするためです。 それでいて、分解が緩慢で持続性があり、作物に使われない分解成分は、雑草や微生物として温存され、作物の成長に伴う必要養分量との間に差があっても、不足は起こりません。 使用量に事実上の上限がないため、投入量の増減により野菜の大きさを自由にコントロール出来ます。日本の一般的な堆肥の推奨量は3000kg/10a/年前後ですが、未分解の廃菌床はC/N比が高く、半分以下で十分。高炭素比=高カロリーです。 多くの菌類、細菌類は動物と同じ酸素呼吸で、炭素がエネルギー源。それ相応のカロリーが必要です。施肥栽培ではカロリー価など考えも及ばないでしょう。でも、微生物を飼う以上、重要な要素の一つなのです。 堆肥化では、更に数分の一に減量。実質的には堆肥の1/10以下の有機物資材で済み、炭素の持つエネルギーを最も効率良く利用。その分、省資源で環境保全に貢献します。 廃菌床さえあれば、他に何一つ入れる必要はありません。木材(オガコ)は木が長い歳月をかけ蓄積したエネルギーと、微生物、植物の必須成分の塊り。そのまま使うことができればパーフェクトなのは当たり前。それを堆肥化し養分バランスを、わざわざ崩し、10倍量使うなど愚の骨頂。 シイタケなどは例外ですが、設備の稼働率や労働効率等から通常は1〜2回しかキノコを収穫せず、廃菌床にはキノコに使われた分より、大量の養分が残ります(菌糸体を含め)。 窒素や他の養分もリサイクルする自己完結型の分解のため、緑肥などで起爆剤として併用される米糠などは無用。むしろ腐敗を招きかねません。 オガコは生では使えず処理も難しい、扱いにくいと言われる資材です。キノコ菌はその木材を専門に処理する解体屋。「餅は餅屋に・・・」です。キノコ屋だから言うわけではありませんが、廃菌床はまさに金床^-^。これほど優れた資材は他に見当たりません。 慣行(施肥)栽培では使えないキノコ菌の多くは弱酸性を好み、pH6.5以上になると菌の成長が抑制されます。キノコのビン栽培で、殺菌不良でバクテリアが繁殖しただけならキノコ菌はある程度成長します。しかし、腐敗が進行しアンモニアなどが発生、pH7.5程度になると菌糸の成長が止まり、菌が回らない部分の栄養剤(米糠など)はバクテリアが食べてしまい、オガコだけが残りスカスカの状態になります。でも、単にpHの問題だけではないようです。バクテリア汚染されたキノコ菌はシャーレ上で、成長が著しく阻害されます。菌糸先端の汚染されていない部分でも成長が芳しくありません。腐敗成分が原因と思われます。 慣行農法で硬盤層ができるようだと腐敗が酷い証拠で、キノコには良い環境とは言えません。施肥による無機態窒素も悪条件。土に埋ける栽培法では、痩せた綺麗な土で良くできます。菌床は生かしておくことができなければ、生で使ってはいけない資材なのです。 死なせないために重要なことは、土壌中に遊離状態の窒素がないこと、すなわち炭素比を下げない(細菌類から守る)ことです。菌床の炭素比は分解の結果としてキノコ菌自身が下げます。菌床を使うなら、無機態窒素や無機化しやすい堆肥やボカシは、使ってはいけません。 腐敗土壌でEM菌(製品、天然を問わず)を働かせると、腐敗成分の浄化や有機酸によるpH低下などで、キノコとEM菌は相性がよいと言えます。廃菌床を使わなくても、十分な高炭素資材があり、腐敗もなく多種多様なキノコが生える状態では、pHは弱酸性で安定します。 当然、pH調整し肥を効かせるための石灰施用も不要。むしろキノコには害があると考えた方がよいでしょう。 菌床使用でも、施肥栽培で一般的にみられる病虫害、生理障害、濃度障害、各種の養分不足などの、施肥栽培では極ありふれた症状が出ることがあります。何らかの原因で菌床成分が肥効を現した結果です。これは菌床が微生物叢を豊かにする前に肥になって、見た目の“かたち”(施肥・無施肥)と関係なく、実質的な肥による栽培です。 肥効による養分バランスの崩れから、養分の過不足が生じ作物が弱っているわけで、キノコ菌を生かしていないのが真の原因です。 通常、無施肥栽培での養分不足は、絶対量の不足で養分バランスは崩れず、葉色は正常です。菌床使用でも無施肥であることには変わりなく、単に成長速度が遅く、作物が小さくなるだけで、病虫害や他の障害も出ないのが普通です。 単なる「物」を使って作物を作るのが慣行栽培。資材の生死を問題にすることはありません。しかし自然農法では自然の力を借り「命」を解体したり、組み立てたりしていると考えるべきです。 「菌床を使う」これを言い換えれば「キノコ菌を畑で放し飼いにする」。生きていれば人が直接手を出さなくても勝手に、より活きよく生きようとするのが、生き物の持つ本来の姿です。 未処理のオガコを畑に入れても難分解性成分が主で炭素比が極端に高く、たとえキノコ菌がいても分解できません。勿論バクテリアも全く歯が立たず、新鮮なオガコだけなら、作物生育阻害物質の問題はありますが、直ぐに効果もないかわりに窒素飢餓も起きません。 無機物や枯れた物=死んだ物を使いこなす(生き返らせる)のは、難しいのは当たり前。生きていれば、容易に次の命に変換されます。 生のオガコと菌床中のオガコは全く別物。木の死骸をキノコ菌が生かしているから「生」で使えるわけです。何十、何百年と時間をかけ蓄積した死骸(木質部・リグニン)はキノコ菌でも、それ相応の時間をかけないと生き返りません。菌床はそれだけの、環境と時間をかけ生き返らせているからパーフェクトな資材なのです。 それでも一度に生かせず、取り合えずガードしているだけ。キノコ菌の邪魔をしないように、余計な物は一切入れない方が良いわけです。 使って良いのは微量養分くらい、それも無施肥に転換した初期だけ。微生物による養分供給体制が整えば、養分バランスは崩れません。微生物の餌がバランスの取れた植物体であり、それを無処理で投入するから崩れようがないのです。 廃菌床を使おうと思ったら、限りなく減肥。これが廃菌床の正しい使い方。自然農法では常識以前。 畑にキノコが・・・キノコの種類を問わず、キノコが生えるということは、土が良くなっている証拠。キノコ菌も有用微生物の一つ。有用微生物に適した土壌条件は、作物にもキノコにも適しています。キノコ菌が十分繁殖し菌糸が養分を蓄えたところに、適度な刺激(降雨や気温変化)が加わるとキノコが大量発生。春や秋に多く見られます。ヒラタケ、マイタケなどの菌床や原木栽培では、畑に埋けてキノコを発生させる栽培法もあり、アガリクス茸栽培では、ほとんどが畑に埋め、キノコ栽培をした畑では、慣行栽培の土地でも、ほぼ無施肥・無農薬で野菜が育ちます。 キノコ菌は菌糸の量(菌体重量)がある程度ないと、キノコを作ることが出来ません。廃菌床の使用と無関係に、多種類のキノコが生えるようなら、有機物量が十分あり分解が進んで、キノコ菌糸が養分を蓄えた証拠です。 ということは、キノコの発生をみたらキノコ菌の食べ物が底を尽きかけているとの見方もできます。キノコに限らず、生存の危機(ストレス)に瀕した場合、生物は子孫を残そうとします。 そろそろ「有機物を追加しなさい」という信号と受け取ることもできるわけで、キノコ発生は歓迎すべき現象です。 補足日本のキノコ生産量は生換算で42万ton(菌床栽培36万ton)/年。これは廃菌床140万トン(菌床重量の25%のキノコ収量として)、廃ホダ90万ton(ホダ重量の6.5%のキノコ収量として)、合計230万ton/年ほど出る計算です。20ton/ha(10ton/haを2回)施用なら11.5万haの畑を無施肥にできる量で、これは普通畑117万haの約10%に相当します。 キノコ栽培は薬剤に頼らない栽培法に転換しつつあります。しかし、日本ではコーンコブのほぼ全量を輸入に頼っていて、ポストバーベストの汚染問題があります。栄養剤に使われる米糠やオカラ(大豆)も汚染度は低いと考えられますが、農薬使用の物が殆どです。更にキノコ栽培に使用が認められている農薬(殺菌剤等)もあります。 機能性が高い食品と言われるキノコですが、残念ながら全てが完全無農薬というわけにはいかないのが現状。一部の廃菌床は高度に汚染されている物もあると思われ、使用に際しては確認が必要です。 あらゆる物は最終的には大地に還ります。その大地は汚染物質に溢れ、決して安心できる環境にあるとは言えません。キノコ菌がダイオキシンを効率よく分解することが知られています。農薬なども分解されると言われます。 過信は禁物ですが、微生物相を豊かに、微生物バイオマスを大きくすることは、農地の汚染物質の分解除去には必須と考えられ、廃菌床を使わずとも高炭素有機物を入れ、畑で多種類のキノコ菌を大量に育てることは、食の安全面からも重要でしょう。
キノコ菌による汚染物質の分解(参照): 白色腐朽菌によるバイオレメディエーション (環境バイオネット)
弱酸性を好むキノコ菌が多いとはいっても、黄土地帯などph9以上の強アルカリ土壌でも木質は分解され、植物も育ちます。有機物全体を菌糸でガードする性質を持つキノコ菌は、菌槐内部の条件さえ良ければ生きられるわけです。 土壌中の天然のEM菌とキノコ菌が協力して、pHを下げ(有機物分解の際に有機酸ができる)強アルカリ条件下でも植物が育つ環境を作っていると考えられます。 キノコの種類によっては、植物に寄生するものもあり、エリンギ茸はセリ科の植物(ニンジンなど)に寄生することが知られています。では害菌、と考えるのは早計。 寄生を受ける作物の方が悪いのです。作物が弱れば普段、害作用を持たない菌でも病原性を現します。人でも良く見られる現象で、これは動植物みな同じ。 全ての生き物が日和見的性質を持っているためで、それぞれの生き物の活きの良さ(健康度)により、相手が命の解体屋として働くという、相対的関係にあるためです。 菌床が腐ると強烈な腐敗臭がします。これは菌体に蛋白質が多く含まれているからです。また菌床を焼くとエビやカニを焼いた時と同じ匂いがします。菌類の外殻はエビやカニの甲羅と同じキチン質。菌類は植物より動物に近い生物です。 何もわざわざエビ・カニ殻を畑に入れる必要などありません。エビ・カニ殻は他の多様な用途があり、注目されている貴重な資源です。
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