オークの変貌/進化の謎

 Coveの街から山を挟んだ場所にオーク達の砦が存在する。 お互いの微妙な均衡によって長い間大きな争いが起こることはなかった。 雑食であるオークは人間を食料だとみなしている。 人間はそんなオークを当然のように邪悪な生き物であると考えていた。 幾度かオークを討伐することが論議されたり、実際にオーク砦に攻め込んだがその数の脅威によってオーク達が滅ぶことはなかった。 そんなオーク達の生活に異変が訪れたのはいつからだったのだろう・・・

第1章-オーク族のマスク-

調査報告:FATE - Guild TKR

 俺はある調査のためにCoveの街を訪れていた。 調査の内容はオーク達を目撃することが極端に減っている原因だった。 ただ、いなくなっただけならその付近に住む者は喜ばしいことだろう。 しかし、そのオーク達の行方は問題だった。 仮にオーク達がいずこかに集結しているのならば人間にとって脅威になりうるからだ。 そしてその集結する可能性の高い場所としてCove南のオークの砦の調査に出ることになった。

 Coveの街に変わりは無く、オークの脅威と隣り合わせにある街には思えないほど静かだった。 そんな街中で囁かれている話があった。 それはこれまで見たオークとは雰囲気が違い、人間を見ても襲ってくるわけではないらしい。 そんなオークらしき影がCove付近でよく目撃されているらしい。 今回の調査の手がかりになるかもしれないと心に止めオーク砦へと足を運ぶ・・。

 今回の調査ではオーク達と戦う必要はない。 オーク達の様子をうかがい怪しい動きをキャッチすることが目的だった。 もちろんオークと鉢合わせになれば戦いは必至だが・・

 オーク砦のそばの森でさっそくオークと対峙することになってしまう。 仲間を呼ばれる前に倒さなければ調査ができなくなってしまう。 ハルバートを構え一気に斬りつける! オークは大きくよろけるが、感じた手応えは・・

「くっ・・浅い!」

 まずい! そう思った直後にオークは叫び声を上げる。 

「ホウ!ホウゥ!」

それはこの場所に侵入者が現れたことを示す叫びだった。

 いつのまにか、四方を囲まれている。 砦の方からもオーク達の声が響いている。 突破する為にオークの数の少ない方角を把握する。 一呼吸を付き一気にその方角へ駆ける! 先頭のオークをハルバートで殴り倒し、2匹目は無視して横を駆けぬける。

 オークの斧が腕を傷つけようとするがプレートに阻まれて打撃の衝撃を受けただけで大きな問題にはならなかった。 どれだけオークを避けたり斬りつけたかわからないが、なんとかオーク達の囲みから脱出できたようだ。 そして、かなりの距離を取ったことでオーク達の追撃はもうなくなったと考えてよさそうだった。 調査は失敗。 ともかく森を駆けぬけCoveの街に戻らなくてはと足を速める。 目の前に別のオークの群れがいることを知らずに。

 森の少し開けた場所に、オーク達は群れをなしていた。 オークロードを筆頭に若いオーク達の訓練を行っているのだろう。 その訓練の場に突然人間が現れたことでオーク達は混乱していた。 オークロードはさすがに冷静で配下のオークに命令を下している。 若いオーク達もオークロードの指示によって冷静さを取り戻しながらその場に現れた人間を囲むように行動する。 若いオークにとって初めての実戦になるのだろう。

 オークの群れに突っ込んでしまった不運を恨みながら様子を伺う。 数はオークが6匹。 オークロードらしきオーク以外は一様に自分に対して恐怖を抱いているのが見て取れた。 しかし、オークロードの一咆えでオーク達は冷静になっていく。 またも回りを囲まれ逃げ道を失う。 しかし、このオーク達は素手の上に戦い慣れしていないのはその動きから見て取れた。 なら力押しで突破するまでと目の前のオークに肩から突っ込む。

「グフゥッ・・」

 肩で胸を突かれたオークはよろけてそのまま倒れる。 気を失ったようだ。 肩といってもプレート越しだ。 それなりのダメージがあったのだろう。 それをみたオークロードは若いオーク2匹に対して何かを命令する。 若いオーク2匹はオーク砦のある方向に走り出した。 またあの群れに襲われてはたまらないとこのまま走り去ろうとするが目の前にオークロードが立ちふさがっていた。

 1匹の若いオークが俺を背後から殴ろうとしていた。 とっさに身を翻して反撃しようとする。 距離が短い・・ そう判断してハルバートから手を離し腰の剣を抜く。 そして抜く勢いでそのまま斬りつける。 この剣撃をオークは避けきれずに血を流しながらゆっくり倒れた。 剣をそのまま握りオークロードと対峙する。 まだ他にオークがいたはずだがとオークロードに注意しながら周りの様子を伺うとオークロードの背後でこちらの様子を伺っているようだった。 オークロードは一声上げた後、詰め寄ってくる。 手に持つ斧を振りかざす。 それを剣で受け流そうとするがオークロードの力は強い。 最初に受けた衝撃で剣が弾かれそうになる。 しかしそれを受け流すことには成功し体勢を崩したオークロードを斬りつける! 深手を負ったオークロードはそれでも斧を振り上げる。 その一撃をかわしオークロードに止めの剣撃をお見舞いする。

 オークロードの背後にいるオークはそれでも様子を眺めているだけだった。 俺はハルバートを拾い上げ、構えたまま徐々に距離を詰めていく。

「やるな、あんた」

 その声はオークから放たれた言葉だった。 オークが話す・・? 警戒を解かないまま言葉を話した不審なオークに向かって話しかける。

「お前・・何者だ・・?」

 ふと街での噂、人を襲わないオークの話しを思い出す。 しかし言葉を話せるとは聞いていない。

「ふふ、何者に見える?」

 目の前のオークは意味ありげな言葉を言う。 その時、背後からオーク達の声が響いてくる。 さっきの若いオークの報告でやってきたんだろう。

「・・・場所を変えよう」
「こっちだ」

 そのオークはそう言うと走り出す。 罠か? とも思ったがオークとは明らかに違った雰囲気を持っている・・。 誘いに乗ってみるのも手か、と後を追う。

 しばらく走りつづけCoveの町の近くまでやってくる。

「ここまでくれば、やつらは来ない」
「やつら意外と臆病だからな」

「・・・・」

「ん?ああ、そうか」

 そう言うと、オークは顔に手をもっていく。 そして、その顔は剥がれていく・・。 残された顔は普通の人間の男のそれだった。

「ふぅ、まぁこういうわけだ」

「どういうことだ?」

 いまいち要領を得ない。 男が手に持っているのはオークの顔をしたマスク。 これと同じような物はいままでも幾度と見たことがあるがそれは明らかに作りものとわかるものだった。 しかし、さっきまでのこの男の姿はオークと見間違えるほどだったはずだ・・。 今の姿はどこから見ても人間だった。 たしかにオークに比べると若干やせた体格ではあったが・・。

「そのマスクは・・?」

「これか?拾った。」
「うちの近くにな、オークが住みつきやがって・・」

「そのオークが危険だってんで近くの住民で討伐したんだよ」
「そしたらこのマスクをそのオークが落としていったんだな」
「いい売り物を見つけたぞって家でかぶってびっくりだよ」
「鏡に映る自分の姿がオークにしか見えないんだからな」

「そしたら興味がわいてこれをかぶったままオークに近づいてみたんだが」
「オークのやつら全く気が付かないってわけだ」

「そのマスクには・・なにか魔法でも掛かってるのか?」

「そんなのわかんねーって」

「そーいやあんた、あんなとこに一人でなにしにきてたんだ?」

「俺か?俺は・・オークの生態調査かな・・」

「なんだ、俺と一緒か」

「オークの生活なんて滅多にみれないからな」
「このマスクかぶって見てたがなかなか楽しかったぞ」

 もしかしたら・・この男がなにかを見たかもしれないな・・

「オーク達を観察してどう思った?」

「どうって・・別に普通ってのかな? わからないけど」
「俺ら普通の人間にはオークの普段の姿なんて知らないからな」

「そうか・・」

「ああ、でもなんだか若いオークがやけに目立ってたな」
「訓練、訓練ばっかりだった気がする」
「ふっ、オークの世界も人手不足なのかもな」

 男は笑いながら話す。 オークが持っていた謎のマスク・・若いオークが目立つ。訓練。人手不足・・・ 冗談のような言葉でさえもどんな有益な物になるかわからない。 覚えておくことにしよう。 その後、男は去っていった。 数日後、冒険者の間に不思議なオークマスクの噂が流れていた。


関連情報&Item

Dudagogの物語