オークの変貌/進化の謎

 Coveの街から山を挟んだ場所にオーク達の砦が存在する。 お互いの微妙な均衡によって長い間大きな争いが起こることはなかった。 雑食であるオークは人間を食料だとみなしている。 人間はそんなオークを当然のように邪悪な生き物であると考えていた。 幾度かオークを討伐することが論議されたり、実際にオーク砦に攻め込んだがその数の脅威によってオーク達が滅ぶことはなかった。 そんなオーク達の生活に異変が訪れたのはいつからだったのだろう・・・

第2章-隠れたる狙撃手-

調査報告:FATE - Guild TKR

 ここ最近、不思議なマスクの噂をよく聞く様になっていた。 それと共にトレジャーハンター達が戦士を雇ってオーク達の討伐へ行ったと言う話しもよく聞く。 オーク達にしてみればいい迷惑だろうな・・と思う。

 Coveの街の調査を一時中断した俺は近隣の町Vesperに立ち寄っていた。 Coveの街には銀行がない。 それに再び調査を開始するために準備が必要になっていた。 Vesperに幾日か滞在し再びCoveへ向かおうとしたその日、銀行西側の橋を一人の旅人が青い顔をして駆けてくる。

「たっ・・助けてくれぇ!」

 背後を見るとオークが2匹追いかけてきている。

「こんな街のそばでオークが・・?」

 ハルバートを構えるが、もうここは街中だ。 駆けてきた旅人にガードを呼ぶように言い、オーク2匹に対峙する。 2匹のオークはまだまだ非力で戦いもこちらに分がありそうだった。 軽く攻撃を交わしながらオークを翻弄しているところにガードが駆けつける。 さすがタウンガードと言った所か・・。 一瞬にしてオーク達を切り倒してしまう。 ガードほどの力が欲しいと思ったことはあるが、ガードは徳で守られた場所でのみ絶大な力を放てるのだそうだ。 だからこそ、ガードは街を守る最強の存在だった。

 オークに追いかけられていた旅人は一口の水を飲み息を落ちつけている。 一体なにがあったというのだろう?

「はぁはぁ・・」
「助かりました・・」

「いや、構わないが一体どうしたんだ?」

「そう、私はこの街で行商を行う為に・・」
「荷物を荷馬につめて西のMoongateから歩いて来ていたんだ・・」

「その途中に・・途中にやつらが・・!」

「あの2匹のオークに襲われた・・と」

「ちっ、違います」
「いえ、あの2匹もそうですがもっと沢山・・」

「最初、私の荷馬に突然・・矢が突き刺さりました」
「ですから賊か・・とも思ったのですが」
「現れたのは数匹のオークでした・・」

「やつらは私の荷馬を狙って・・・」

「荷馬が襲われている間に私は必死にここまで逃げてきたんです・・」
「その途中であの2匹に・・」

「なるほど・・な」

 どうやら、Coveへ向かう前に一仕事しなくてはならないようだった。 旅人に銀行に来ている冒険者がいればそのことを伝えるように言うとVesperの西側を捜索することにした。

 橋を渡りきり、森にゆっくりと入って行く。 先日のCoveでの失敗は繰り返すまいと慎重に調査していく。 程なくしてオーク達を見つけることができた。 数にして5〜6匹。 オークロードも混じっているようだ。 どうやらオーク達はこちらには気がついていないらしい。

「あれは・・? キャンプ?」

 オーク達の向こうにはキャンプらしき物が見える。 こんな街に近い場所にオークキャンプを張るなんて・・。 その時、さらにオーク達がそのキャンプに集まってくるのが見える。 オークロード数匹を含んだ7〜8匹の集団が追加される。

「これは・・見つかったらまずいな・・」

 そう呟いて一度、Vesperの街へと戻ろうと考える。 森をゆっくりと後退し森の出口に差し掛かったその時・・

ビュンッ

 どこからともなく、矢が飛んできて俺の足近くに刺さっている。 敵!? そう思って木に体を隠しまわりの様子を伺う。 どこだ・・。 飛んできた方向には姿がない・・。 ふと背後に気配を感じ振り返るとそこにオークが弓を構えて狙っていた。

「くぁっ!」

 咄嗟に横に飛び攻撃を交わす。 オークの放った矢は木に突き刺さっていた。

「オ・・オークが弓だと?」

 また、人間があの不思議なマスクでもかぶっているのかと思ったがやつの口から漏れる言葉はオークのソレで、雰囲気もよく知るオークのものだった。

『最初、私の荷馬に突然・・矢が突き刺さりました』

 そういえば、オークに襲われた旅人も矢のことを話していたな・・まさかオークが放ったものだったとは考えもつかなかった

「オークも進化したもんだな・・」

 そう言い放ってハルバートを構え、弓を持つオークに向かって一直線に駆ける。 オークは矢を放とうと構えるが、それを気に止めず斬りかかる。 オークの放った矢は駆ける勢いに狙いを外し俺の身体には当たらない。 斬りつけられたオークは怯むことなく再び矢を射ようとする。 そうはさせまいと再びハルバートを振るう。 手応えがあった! 苦痛に歪んだオークの顔を見た。 そう思った直後、オークは姿を消していた。

「なっ・・どこだ・・?」

ハルバートを抱えたまま、辺りを探す。 姿が見えない・・ その時、なにか包帯を巻いているような・・そう治療を行っているような音を聞く。 そこには誰の姿もない。

「おいおい・・冗談だろ?」

 そう思った直後、その場所に弓を構えたオークが突如現れる。 傷口は治療によって塞がっていた。 呆気に取られていた俺は、反応が一瞬遅れて矢を足に受けてしまう。

「くぅ・・」

 プレート越しとはいえ鋭利な矢が突き刺さっている。 致命的ではないにしても治療なしでは走ることはできないだろう。 このままではやばい・・そう思った時。

「Kal Vas Flam!」

 オークの体を火柱が覆う。 次の瞬間にはオークは姿を消している。

「・・・そこ!」
「Wis Quas!」

 魔法によって姿を現したオークは戸惑いの表情を浮かべている。

「止めです!」
「Corp Por!」

 エネルギーの塊がオークを貫く。 オークはゆっくりと倒れていった。 少し離れた場所に一人の若いメイジらしき男が立っていた。

「助かった・・あなたは?」

「銀行で旅の商人に話を聞いてやってきたんです」
「そしたらあなたが戦っていて・・途中から一部始終を見てましたが」
「このオークには驚かされっぱなしでしたよ・・」
「そして、どう倒せばいいか考えていたんです」

「矢を放ち・・姿を消し・・治療を行う・・」
「面倒なのが現れたものだ・・」

 倒れているオークの手に握られた黒い弓を見つめる。 どんな素材で作られたものなのだろう・・

「ここで何があったんです?」

「全くわからん」
「このちょっと先にオーク達がキャンプを作っていた」
「それを確認して戻ろうとしたんだが・・」

「そこを襲われたわけですね」

「なぜこんな街のそばにキャンプを・・」
「どちらにしても危険だ」
「街に戻って知らせたほうがいいだろう」

「そうですね」

 手早く自分の足を治療し立ちあがる。 そして街に戻ろうとした時・・

ドドドドッ

 戦いの音がオークキャンプまで届いたのだろうか、遠くからオーク達の姿が・・

「まずい・・オーク達がっ」

「返り討ちです!」

 振りかえった男はそう答える。

「10匹・・いや15匹以上はいるな・・」

「・・・・」

 二人は街に向かって走り出していた。

「ふぅ・・オークに追われてばかりのような気がする・・」

 苦笑しながらVesperの街へ向かった駆けていた。

 同時期、フェルッカ・トラメルのFacetを問わず各地で街の近くにオークキャンプが張られているのが目撃されることになる。 そして弓を持つオークも各地で目撃され、オークスカウトと呼ばれ恐れられていた。 同時に臆病な若いオークも目撃されている。 攻撃しようとすると逃げるこちらに敵意を向けるのだがやはり逃げる。 弓を持つオーク・・オークにこんな知恵や戦略を持ったのがいただろうか・・なにか違和感を感じるが今は街の付近のキャンプに注意しなければならないだろう・・


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そして誰かが見つめている