Coveの街から山を挟んだ場所にオーク達の砦が存在する。 お互いの微妙な均衡によって長い間大きな争いが起こることはなかった。 雑食であるオークは人間を食料だとみなしている。 人間はそんなオークを当然のように邪悪な生き物であると考えていた。 幾度かオークを討伐することが論議されたり、実際にオーク砦に攻め込んだがその数の脅威によってオーク達が滅ぶことはなかった。 そんなオーク達の生活に異変が訪れたのはいつからだったのだろう・・・
Vesperの街、ある建物の一室。 幾人かの人々が論議を交わしている。
Vesperの街近郊のオークキャンプについての報告を戦士ギルドに報告を行った俺は会議室に呼ばれ街の市長や戦士ギルド長など街を代表する人間達の前で見てきたオークキャンプの様子を説明した。 そして会議は、オークを討伐するべきだとう案とオークを刺激しないほうがいいという案により真っ二つになっていた。 俺自身は討伐したほうがいいという考えを持っている。 オークは独自の文化と言葉を持つがやつらの人間に対する見かたは敵、もしくは食料でしかない。 危険な存在であることは変えがたい事実なのだ。 ふと討伐案を唱えつづけている戦士ギルド長がこちらを向く。
市長がこちらに顔を向け質問する。
どちらかと言えばオークは自らの本能に忠実に従って生きている。 腹が空けば目の前の生物は食事になるし、頭に浮かんだ考えを否定することはなく考慮するより先に身体が動いている。 そんな種族が戦略的な行動を取ると言うことがいかにも奇妙だった。
俺から意見を聞いた代表者達は再び論議を始める。 決着のつかない論議にすでに飽き飽きしていて話の内容などほとんど覚えてはいなかった。 数時間後・・
討伐案が却下された戦士ギルド長は苦々しい顔つきで俺に伝えギルドハウスへと帰って行く。 どうやら会議は終わったらしい。
翌日、オークキャンプを調査するために数人の冒険者がVesperの戦士ギルドへと集まっていた。 オークをあまり刺激しない為に小人数で調査するということだった。 お互い名前も知らぬ冒険者達は自己紹介をした後、準備を整えオークキャンプのある森へと歩き出した。
橋を渡りほどなくして森が見えてくる。 森に入ってすぐのところに奴らのキャンプは存在する。 慎重に行動するように全員に伝え、ゆっくりと奥へ進んで行く。 オークキャンプが見える場所まで近づき様子を伺う。 キャンプにいるオークの数は4,5匹。 残りのオークはどうしたのだろう。 注意しなければ遭遇しそうだ。 そう思った直後。
背後で草の上を歩く音が聞こえる。 同行する冒険者にも聞こえたのだろう音のした方向に注意を向けていつでも戦える準備をする。
冒険者の一人が木の影から様子を伺う。 そして指を2本立ててこちらに示している。 オークが2匹。 声を上げられる前に仕留めなければいけない。 Coveでの二の舞をしないようにしなくてはと手に持ってる剣を強く握る。
一匹目のオークの姿が見え始める。 オークが気がつかないように木の影に隠れる戦士が一気に斧を振り下ろす。 先頭のオークはなにが起こったのかわからないまま、首は地面を転がることになっていた。 後ろにいたオークはそれを見て混乱している。 俺はそれを見逃さず草むらから一気に飛び出しオークの胸に剣を突きたてる。 オークの身体を突き抜けた剣を引き抜くとオークは声をあげることもないまま倒れそのまま息絶えた。
若きオークは、混乱していた。 今、目の前にいた仲間が前のめりに倒れていく。 なにが起こったのかわからなかった。 ただ、『仲間、死んだ?』 頭に浮かぶのはそれだけ。 次の瞬間に何かが腹を突き抜ける感触を感じ、そこで初めて『人間いる。』と頭に浮かぶ。 『俺、強い。だから、こいつ殺す』 叶わない思いを頭に浮かべながら若きオークは息絶えていた。
キャンプの様子を見ていると、今の戦いには気がついてはいないようだった。 オークのうち片方、剣を突き立てたオークがその装備からオークロードであることに気がつく。
オークロードのヘルムを見た時にすこし違和感を感じる。 微妙ではあるが・・輝いている?
近くいたMageに耳打ちし見てもらう。
そばにいた戦士がオークからヘルムを剥ぎ取りマスクをかぶる。
戦士が率直な意見を述べるとMageもかぶってみたいと戦士からヘルムを受け取る。
この間からどうも不審なことばかりだ、オークに果たしてこんな物を作る技術が存在していただろうか? ふと、オークロードの顔を見るとまだそれほど年を取ってはいないように思える。
オークのマスクに、オークの弓、そしてこのヘルム。 それだけではない、オーク・スカウトという今までにない戦い方、そして戦略のような物を感じるこのキャンプ。 オークの様子がなにかおかしい。 そう思い始めていた。
オーク達は今は人間を自分たちから襲おうとはしなかった。 人が森のそばを通っていても森からじっと監視しつづけている。 姿が人間に見つかった時だけ襲うのだろうか。 この事は報告しなくてはいけないだろう。 なにもかもが謎だらけだ・・。 これらの答えが見つかる日は来るのだろうか。
